はじめに

腰痛で悩んでいる方の中には、鎮痛剤を使用している方も多いのではないでしょうか?
私が理学療法士として勤務している整形外科病院でも、治療手段として鎮痛剤を使用しています。しかし、初診で来院された患者様に対して問診を行うと、受診までに市販の鎮痛剤を乱用していた方や効果的ではない薬を選択していた方などが多くいらっしゃいます。
今回は鎮痛剤との上手な付き合い方をご紹介しますので、鎮痛剤を使用している方はぜひチェックしてみてください。

痛みとは何か?

「痛み」は体に何かしらの異常が生じていることを知らせるセンサーです。 痛みを生じた場合には医療機関を受診することが望ましいですが、市販薬などで様子をみている方も多いのが現状です。
しかし、「痛み」として体が異常を知らせてくれているにも関わらず、市販薬によって「痛みを一時的に封じ込む」ことは非常に危険な行為です。
痛みを発している原因は何なのか?医療機関を受診し、医師の判断で適切な対処を行わなければ取り返しのつかない状態となる可能性もあります。
鎮痛剤の使用に関しては自己判断では行わないように注意しましょう。

痛みの種類について

痛みの種類は非常に多く、①炎症が生じている急性痛、②炎症は治まったが痛みが継続している慢性痛などの「期間」を示すものや、①打撲や骨折を生じた際に発生する侵害受容性疼痛、②神経そのものに炎症などが生じて発生する神経障害性疼痛、③情動面などの心理状態が影響して発生する心因性疼痛など、痛みを発生させている「原因」を示すものなどがあります。
腰痛などの「痛み」の種類は多種多様で医療機関においても、どの痛みに当てはまるのかの判断が難しい場合があります。

腰痛に対しての治療法について

腰痛に対しては、ブロック注射、鎮痛剤、手術、物理療法、理学療法士によるリハビリテーションなど症状に合わせてさまざまな治療方法が選択されます。
鎮痛剤は初診時から痛みが軽減するまでは治療手段として選択されることが多く、保存的治療が選択された場合には理学療法や物理療法と一緒に薬が処方されます。
腰痛などの痛みでは心理的苦痛となることが多いため、医師の管理下で痛みをコントロールする目的で鎮痛剤が処方されます。

薬の種類について

痛みの種類が多種多様あるように薬の種類もさまざまです。前述したように腰痛などの痛みの原因は筋肉、骨、脳、脊髄、神経など多くあります。実は腰痛の際に医師が処方した薬を調べれば、医師がどの部位にどのような効果を狙って薬を処方したのかが分かります。
市販薬や医療機関でもよく処方される「ロキソニン」は抗炎症薬として、捻挫や打撲後の炎症がある部位(侵害受容性疼痛)に効果的な鎮痛剤です。けがをしてすぐに受診した際にはロキソニンなどの抗炎症薬が処方されることが多いです。
しかし、慢性腰痛となると「心理的な影響」も加わるなど原因が多岐にわたるため、医師によって処方される薬も患者様によってさまざまです。
また、動けないほどの急性痛には内服薬よりも、短時間で即効性のある坐薬を使用するケースや、鎮痛効果が長時間持つものを選択するケース、他院での治療歴をチェックしながら内臓器へ配慮した処方など患者様一人一人に合った鎮痛剤を医師は検討します。
鎮痛剤を一定期間服用しても効果みられない場合は、痛みの原因となっている部位に対して、処方された薬が合っていない可能性が高いです。あまり効果がない場合は再度、医療機関を受診し医師に相談をするようにしましょう。
薬の効能はインターネットですぐに調べることが可能なので、ご自身の腰痛を医師はどう判断しているのかをチェックしてみてください。

鎮痛剤のベネフィットとリスクとは

薬には効果やメリットを示す「ベネフィット」と、禁忌や副作用を示す「リスク」の二面性があり、双方のバランスを考慮する必要があります。強力に腰痛を抑えられることや、長時間効果が持続するなど、ベネフィットばかりを求めて作用の強い薬を内服することは非常に危険です。
薬には必ず「リスク」がありますので、強い作用の薬ほど副作用も強く出現します。臨床でよくみられる副作用は胃痛、嘔吐、薬疹、眠気、意識障害、臓器の機能低下などです。実際に作用の強い薬を服用した状態で意識が朦朧とし、交通事故を起こしたケースも報告されています。
ご自身の判断でベネフィットとリスクのバランスを考えることは非常に難しいと思われますので、医療機関で医師に相談し症状に合った鎮痛剤を服用しましょう。

バナー画像

鎮痛剤のこのような使用方法は要注意!

鎮痛剤は使用方法を間違えなければ腰痛に効果的な治療手段となります。よくみられる注意が必要な使用方法は、用法用量を守らないことです。私が臨床で出会った症例を2例ご紹介します。
1例目は、朝昼晩に60mgのロキソニンを1回ずつ服用するように処方されているにも関わらす、痛みが緩和しないため1回分の量を1錠増やし120mgを自己判断で服用していたケースです。
2例目は、市販薬の鎮痛剤を数カ月や数年単位で長期使用していたケースです。
これらは内臓だけでなく体全体に多大なる負担をかける可能性が非常に高く、避けるべき行為です。
2例ともにこのような服用方法が危険行為であることを認識しながらも行っていました。このような鎮痛剤に対して依存性の高い患者様は臨床ではよく出会います。
この2例も含めてですが、そもそも鎮痛剤が合っていない可能性や、根本的な治療となっていないことが考えられます。心当たりのある方はすぐに整形外科を受診するようにしましょう。

鎮痛剤は病院で処方をしてもらう!

病院で鎮痛剤を処方してもらうことは多くのメリットがあることをご存じでしょうか?
医師に効果的なもので副作用が現れにくい鎮痛剤を選択してもらえるだけでなく、合わなければすぐに変更をしてもらえるというメリットがあります。
また、治療に必要な鎮痛剤であるため会計時には医療保険が適応され、ドラッグストアよりも安価で安全な鎮痛剤の使用が可能です。
腰痛の際に自己判断で市販薬を購入して服用することは前述したように危険な場合が多いため、鎮痛剤は医療機関で処方してもらうようにしましょう。

鎮痛剤だけでなく理学療法を併用する

鎮痛剤を単独で使用するより理学療法と併用する方が腰痛治療には効果的です。腰痛が出現した原因はさまざまですが、筋力低下や柔軟性の低下、日常生活の中での動作や姿勢などが影響している可能性が非常に高いと報告されています。これらは鎮痛剤の服用のみでは改善できません。
理学療法士による筋力や柔軟性の身体機能改善と、原因となっている姿勢や動作の修正が必要不可欠です。整形外科を受診すれば内服薬の処方と、理学療法士によるリハビリテーションが医師によって処方されます。ご自身の体の弱点を教えてもらい、自宅で行える運動を指導されることで自分自身の体と向き合う良い機会となるでしょう。腰痛で悩んでいる方はまず整形外科を受診し、鎮痛剤だけに頼るのではなく理学療法士による身体機能の改善に向けたリハビリを受けることが重要です。病院でのリハビリと自宅でのセルフケアを行うことで鎮痛剤が無くてもいい体を目指していきましょう。

まとめ

今回は鎮痛剤の使用方法と注意点についてご紹介しました。鎮痛剤だけでは腰痛の改善は難しく、市販薬の乱用は非常に危険です。また最終的には鎮痛剤を使用しなくてもいい状態を目指します。
そのためにはまず整形外科を受診し、ご自身の腰痛の原因は何なのか?どのような治療が適しているのか?を医師に確認することが大切です。
自己判断で市販薬に頼るのではなく、自分に合った鎮痛剤を医師に処方してもらい、理学療法士によるリハビリを一緒に受けることをおすすめします。
早期に治療を始めることが腰痛改善には必要不可欠ですので、我慢をせずに整形外科を受診するように心掛けましょう。
鎮痛剤の使用方法には十分注意し、根本的な原因を解決することで腰痛を解消しましょう。

【参考文献】
腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf
沖田実、松原貴子著(2019年3月)「ペインリハビリテーション入門」三輪書店

バナー画像

著者情報

枡中 昂也
枡中 昂也

保有資格

理学療法士

経歴

整形外科病院勤務12年目。現在は臨床業務を行いながら、当メディア内でWebライターとして記事の執筆と校正・校閲業務に携わる。

この著者の他の記事を見る