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はじめに

ここでは前回に引き続き、栄養素と腰痛についてをご紹介したいと思います。皆さんはカルシウムは骨を強くするために重要であるという事は小さいころから言われており実際に牛乳を毎日飲んでいるなど食生活を気にしている人が多くいます。ではその他の栄養素についてはどうかというと、なかなか意識していない人が多いというのが現実です。ここでは栄養素の重要性について前回に引き続き確認していきます。

ビタミンB1

このビタミンは別名はサイアミンとして知られています。主な効果としては脚気を防止する事や神経炎を予防するために効果があるとして知られています。はるか昔に米ぬか含まれている事で発見されました。脚気とはビタミンB1の不足により発症する病気として知られており、主な症状として全身浮腫や倦怠感、心機能の異常を引き起こすことがあります。
脚気の初期には食欲不振が出現し食事摂取が出来なくなったことで全身倦怠感が強くなってしまい自力で動くことが出来ないなどの症状を呈します。また軽症の場合にはビタミン不足による神経症状を呈します。この症状は腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と同様に下肢の痺れを引き起こします。ひどい場合には歩行が困難になることもあります。

※ビタミンB1を摂取できる食物:豚肉、レバー、大豆製品

休日の救急外来に来た女性

ある休日の午前中に下肢の痺れと歩行困難、腰痛を主訴に50代の細身の女性が受診しました。歩行をしていると太ももの裏から足の指先にかけてびりびりとするというもので時間経過で少しずつですが痺れが悪化していると話しました。また腰痛も少しあるという事で当然このような情報がありますと腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などを疑います。
すぐにレントゲンやMRI検査を行いましたが、ハッキリとした所見は見当たらず原因不明とされ翌日の平日の内科外来で詳しい検査をすることになりました。詳しい血液検査を行う中でその容姿などから栄養失調が疑われました。検査をするメルトビタミンが基準値よりも低く、脚気の診断を受けました。下肢の神経症状は脚気の症状と一致しますが、腰痛はなぜ引き起こされたのでしょうか。
ビタミンB1の不足は脚気を引き起こす原因になるほかに、筋肉の疲労を回復させるという効果があります。これは筋肉を使ったりしていると筋肉の中に乳酸が蓄積していきます。乳酸が蓄積していくと筋肉が硬くなり張ったりする原因になります。この人の場合にも同じような現象が起きていました。特に腰の筋肉が固縮している状態でそれによって腰の疼痛を引き起こしてしまっていました。ビタミンB1が不足したうえに、筋肉の疲労が蓄積してしまうとこのような疼痛を引き起こすことになります。

CMでおなじみの○○

ビタミンB1は疲労回復に効果があることは様々なサプリメントや薬でも紹介されています。特にエーザイの販売しているナボリンやタケダ製薬で販売しているアリナミンなどがこのビタミンB1を補充する事で筋肉の疲労回復を図ろうというものです。今ではビタミンはこのような薬やサプリメントを使用する事で簡単に摂取することが出来ます。毎日三食しっかりと食べることも重要ですが、どうしても食べる時間がないという人はこのようなサプリメントなどを使用してみるのも一つの手段だと思います。

マグネシウムが重要!?

あまり知られていませんが腰痛を予防するための栄養素として、マグネシウムが必要であるとされています。このマグネシウムはカルシウムと同じように骨を丈夫にする作用があるとされています。そもそもマグネシウムの働きとはなんでしょうかここで確認していきたいと思います。
マグネシウムの働きには前述した骨を強くする働き以外に、タンパク質の合成、神経伝達物質の調整、神経伝達の調整、筋収縮の調整といった働きがあります。ここで腰痛に関与してくるのは神経系の働きと筋収取に関するものです。マグネシウムが不足し神経調整がうまくいかなくなると、筋緊張の調整がうまく行えなくなってしまいます。例えばですが睡眠時などには人間の筋肉は弛緩し脱力していると言われています。もしこれが睡眠時にも筋肉が緊張した状態ではどうでしょうか。
筋肉が眠っている時に緊張している場合には疲労回復はされずに筋肉にも乳酸が溜まった状態となってしまいます。その結果として筋固縮が発生します。神経伝達物質の調整がうまく行われずに適切なタイミングで筋肉の緊張と弛緩が行われなければけがをする原因になるとされています。骨折の事例を基に次項で紹介します。
骨について触れたいと思います。骨はミネラルと骨基質で構成されています。ミネラルとはカルシウム、リン、マグネシウムで構成されています。このマグネシウムがカルシウムと協働する事で骨を強くしているとされています。もしここでマグネシウムが不足してしまうと骨の強度が落ちてしまい骨折をしやすい骨になってしまいます。
マグネシウムは加齢やストレスなどによっても減少していく性質があります。高齢になればなるほど骨折しやすくなる理由の一つはマグネシウムの減少や筋肉量の低下や伝達速度による防御の低下などが挙げられます。とくに座っただけで腰椎の骨折をするなどの原因にもなります。

※マグネシウムを摂取できる食物:乾燥わかめ、豆腐、ヒジキ

転倒による骨折

ボクシングを考えてみてもらいたいと思います。相手からのパンチを受ける際に、筋肉はどのような動きをしているか知っていますか。パンチを受ける瞬間に筋肉は緊張し硬くなります。それにより内蔵や骨などを守っています。ですのでパンチを受けたとしてもダメージを多少なりとも軽減することが出来ます。しかし高齢者などは転倒した際にこの筋肉に指令がいきわたるのに時間がかかってしまいます。そのため筋肉による防御がされないままに転倒してしまい骨折につながります。
また、ミネラルの低下や骨密度の低下により骨の強度自体が低下してしまいます。それによりちょっとした衝撃などでも簡単に骨折しやすくなります。実際にあった例としては、少し勢いよく椅子に座った高齢者が腰椎の圧迫骨折を発症したという事です。それにより腰痛を引き起こした事例が多く存在します。

👉腰椎圧迫骨折を起こしてから日常生活に戻るまでのリハビリのポイント

さいごに

年をとればとるほど、骨を強くしたりする栄養素は減少していき骨折や腰痛を引き起こす疾患に繋がるリスクが高くなります。若いころから正しい生活習慣や食生活習慣を定着させていき常に健康を意識する事が最大の腰痛の治療でもあり、将来の腰痛の予防にもつながります。
ストレッチや有酸素運動も腰痛に効果的です。生活に取り入れる事で生活習慣を見直し、自律神経失調症の改善や睡眠の質を高めましょう。
急に変化させることはものすごく負担やストレスがかかりますので、まずはできるところから始めてみてはどうでしょうか。食事に一品サラダを付け加えるだけでも栄養は変化します。次回で栄養と腰痛については最終回になります。
~第3弾:食生活を改善する事で腰痛の改善や予防が期待できるという事実~

<参考文献>

若林秀隆「サルコペニアを知ろう」 医学書院
東京都健康長寿医療センター研究所「ビタミンCが足りないと老化が進む」
・内田淳正 「標準整形外科学」 医学書院
・細田多穂 「運動器障害理学療法学」 南江堂

著者情報

ショーン
ショーン

保有資格

正看護師国家資格

日本コミュニケーション協会認定 心理カウンセラー

日本コミュニケーション協会認定 コーチングコーチ

経歴

武蔵野大学 人文科学部卒業

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