腰痛は若い人からお年寄りまで多くの人が悩んでいる症状ですが、原因がわからないものも少なくありません。原因や対策方法がわからない腰痛は改善するのが困難で、なかには3カ月以上も症状が続く慢性腰痛もあります。

ときには夜も眠れないほどの腰痛が生じ、痛みが和らいだ後もストレスによる不快感はなかなか拭えずつらいものですよね。そんな慢性腰痛を改善する可能性のある、食事法についてまとめた論文が最近発表されました。

慢性的な疼痛は体の炎症とも深く関与していると言われており、不規則な食事を続ければ悪化の原因にもなってしまいます。そこで今回は、慢性腰痛に関する基本的知識と、腰痛を改善する可能性のある具体的な食事方法についてご紹介します。

慢性腰痛とは?

腰痛が3カ月以上続く状態を慢性腰痛といいます。慢性的な腰痛にはさまざまな原因や症状があり、若い子供から高齢者まで幅広い層に見られます。その中でも特に、30~50代の都市部のサラリーマンに多いといわれています。1)

腰痛は、特異的腰痛と非特異的腰痛に大きく分けることができます。特異的腰痛は検査によって原因が特定できる腰痛であり、原因に対するアプローチが可能ですが、非特異的腰痛は原因を特定することが困難であり、根本的な治療が難しいものです。また、なかには腰痛全体の約85%を非特異的腰痛が占めるというデータもあります。2)

慢性腰痛が長引く原因

痛みが長引く原因としては、精神的ストレスが関係しているのではないかとされています。近年、痛みをコントロールする脳のメカニズムであるドーパミン系が解明されてきました。

腰から痛みの信号が脳に伝わると、脳はドーパミンという神経伝達物質を放出します。これは、私たちが感じる痛みを軽減しながら、私たちを守ってくれる脳が本来持っている機能です。

ドーパミンが放出されると、脳はμ-オピオイドという物質を大量に放出します。μオピオイドが放出されると、セロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質が放出され、痛みの信号を脳に伝える経路が遮断されます。

この一連の流れが、基本的に腰痛をコントロールする方法です。 しかし、日常的にストレスを受けていると、脳内の物質のバランスが崩れ、このシステムがうまく働かなくなることがあります。すると、脳からドーパミンが放出されにくくなり、腰痛が長引いたり、ちょっとした痛みにも敏感になったりします。さらに痛みがストレスとなり、ドーパミンの分泌量がさらに減り、慢性的な痛みの悪循環にも陥ってしまいます。

これに加えて、筋力の低下や神経も腰痛の慢性化に関与しているとされます。例えば、腰痛のために不自然な姿勢で長時間動けない状態が続いたり、痛みへの不安から不自然な姿勢でいたりすると、筋肉が硬くなり腰痛が長引いてしまいます。

また、末梢神経からの痛みの信号を受け取る中枢神経が興奮したままだと、病気やケガが治った後も痛みの信号を脳に送り続けたり、痛みを伴わない刺激を誤って痛みの信号として使ってしまったりすることがあります。腰痛は動けない状態が続くと、さらに精神的なストレスも重なり、最初の状況へもどるという腰痛の堂々巡りを繰り返すことにもなりかねません。

慢性腰痛の治療

特異的腰痛の場合は、医師による問診・診察を行い、レントゲンやMRIなどの画像検査を経て、腰痛の原因に応じて治療法を組み合わせていきます。非特異的腰痛の場合はそれに加えて、心理的・社会的要因も考慮して治療法を選択します。

・薬物療法
急性期の痛みを抑えるために使用される消炎鎮痛剤は、慢性腰痛にはあまり効果がありません。そのため、脳や神経、心理的要因による痛みに対して、抗うつ薬や抗てんかん薬が使われることがあります。

脳に作用してセロトニンやノルアドレナリンの分泌を増やし、痛みを和らげるメカニズムを活性化させるデュロキセチンという薬もあります。モルヒネなどのオピオイド鎮痛剤は、がんなどの激しい痛みの治療に使われる医療用医薬品ですが、他の薬や治療法では十分な緩和が得られなかった場合に使用が検討されることがあります。

・神経ブロック
脊髄の近くや末梢神経に局所麻酔薬を注射する治療です。一定期間、脳への痛みの信号を遮断し、筋肉のコリをほぐしたり、血流を良くしたりすることで痛みを改善することもあります。

・理学療法
運動やマッサージを行うことで、代謝や身体機能の向上を目的としています。理学療法士や他の医療専門家によって、個々の状態に合わせた適切な運動療法を行い、慢性的な腰痛の改善を目指す治療です。

・カウンセリング・認知行動療法
認知行動療法とは、痛みに対する誤解を正すための認知療法と、痛みと行動の関係を理解し、日常生活でできることを増やすための行動療法を組み合わせたものです。整形外科やペインクリニックだけでなく、精神科や心理学、理学療法などを巻き込んだチームでの治療が必要です。

慢性腰痛を改善?具体的な食事方法

これまで慢性腰痛に関する原因や治療についてお伝えしてきました。ここで慢性腰痛を改善する食事はないのかと気になりませんか?その疑問について調べた最新の論文があるのでご紹介します。3)

2020年9月に発表された論文です。この論文では系統的レビューという方法を用いて、過去の38の実験から慢性痛を改善する可能性のある食事方法について信頼できるデータを分析し結論を出しました。

腰痛だけではなく、頭痛や腹痛などさまざまな痛みについて膨大な量のデータを解析しており、それぞれの痛みに効果的な食事が選び抜かれています。今回はこの中でも特に腰痛に効果的な可能性のある食事について見ていきましょう。

アミノ酸サプリで腰痛が改善するかを調べた研究があります。この研究では18〜72歳の慢性腰痛の患者122人を3つのグループに分けて、28日間観察しその後の痛みの程度や体の炎症の値を調べました。
①アミノ酸ブレンド単体
②イブプロフェン単体
③アミノ酸ブレンドとイブプロフェン両方

イブプロフェンは消炎鎮痛剤のことで1日400mg、アミノ酸ブレンドは医師が処方した医療用食品で355gを1日2回服用しています。その結果、腰痛の障害を表す指数で、①で41.9%の改善、②では4.52%の悪化、③では62.15%の改善でした。

また他の指標を使って調べてみても、①で50.3%の改善、②で0.73%の悪化、③で63.1%の改善と、アミノ酸ブレンドとイブプロフェン併用で最も効果が表れました。さらに体の炎症を表す、CRPやIL-6の値を調べると、①と③すなわちアミノ酸ブレンドを服用していた群での改善が見られたとのことです。

慢性疼痛は神経伝達物質の枯渇が原因として考えられており、その前駆体であるアミノ酸を服用したため、改善が見られたのではないかとされています。また、慢性腰痛に用いられる治療薬の副作用や痛みの刺激が神経伝達物質を減少させる可能性があり、痛みが長引く原因にもなっていると考えられています。

実際に実験の前後で体内のアミノ酸濃度を測定したところ、慢性腰痛の患者では治療前に各種のアミノ酸濃度の大幅な減少が確認されています。さらに効果が見られた治療では、アミノ酸濃度の上昇が確認され治療の直接的な関連性を示唆することができました。

まとめ:腰痛予防には健康的な食生活から

今回ご紹介したように、アミノ酸が腰痛の改善に効果があるのかもしれません。まずは健康的な食生活をこころがけるというのが大切ですね。アミノ酸はタンパク質に含まれるので、まぐろや肉、卵などに多く含まれています。腰痛でお悩みの方はアミノ酸が豊富な高タンパクなお食事を試してみてはいかがでしょうか。

1)NHK 健康ch 慢性腰痛とは?ストレスやうつなどの精神的要因が痛みを招く
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_512.html

2) JAMA 268: 760-765, 1992 What can the history and physical examination tell us about low back pain?
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/399079

3) Nutrients. 2020 Sep; 12(9): 2510.Published online 2020 Aug 19. doi: 10.3390/nu12092510 Dietary Patterns and Interventions to Alleviate Chronic Pain
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7551034/

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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