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はじめに

腰痛の治療法の一つとしてコルセットの利用が挙げられます。腰痛の原因によっても選択すべきコルセットとその利用期間は異なります。コルセットは正しく使えていないと、腰痛を悪化させてしまう原因になるかもしれません。
今回はどういった腰痛にコルセットが有効なのか、またコルセットの正しい選び方と使い方を紹介したいと思います。

コルセットの種類

コルセットには次のような種類があり、それぞれ特徴があります。種類により使用されるシーンが異なります。

硬性コルセット

手術後や骨折治療などとにかく安静が必要な時に使われます。プラスチック製で硬く、患部を厳しく固定します。

半硬性コルセット

コルセットの後方はプラスチックで、前方は軟性素材(メッシュなど)で作られています。硬性コルセットよりも可動域が制限されませんので、退院後に日常生活をしながら、ある程度は腰の動きを制限しておく場合に使用されることが多いです。

軟性コルセット

メッシュなどの軟性素材で作られており、腰痛軽減によく使用されます。ある程度の固定と可動域の制限が必要な場合に選択されます。装着することで腹腔内圧を高め、脊柱の動きを制限することで腰痛の軽減をはかります。軟性コルセットは市販されているものもあり、比較的簡単に入手できます。

コルセットの選び方

コルセットはサポーターのような柔らかさのある軟性のものから、スポーツ用に開発されているもの、医療用の軸芯の入った固定性の高い硬性コルセットまでさまざまです。まずは腰痛の原因と安静度に着目してみましょう。
圧迫骨折や疲労骨折が原因の腰痛は、固定性の高い医療用コルセットや、場合によってはギプスを巻く場合があります。

これは骨折初期の段階で十分な安静が守れないと骨折部位が偽関節になり、腰痛が将来的に残ってしまう可能性があるからです。
骨折の治療は骨折の程度や年齢によっても安静度が異なってくるため、安静度は医師の指示に従いましょう。

脊柱管狭窄症やヘルニアなどの疾患の場合、症状や活動性に合わせてコルセットを選択します。
より安静が必要な場合は硬性コルセットを、安静だけでなく適度な筋肉運動が必要な症状が軽度の場合は軟性コルセットを選択します。
筋筋膜性腰痛の場合、スポーツ用コルセットやサポーターにて筋肉にかかる負担を軽減するといいでしょう。
コルセット選択の基準の1つとなるのは腰痛の原因つまり診断名とその重症度です。

また、コルセットは自分の体のサイズに合ったものを使いましょう。体格や年齢によっても合うサイズが異なります。

家族や友人間で使い回す場合は、サイズもしっかりチェックしてから使い始めましょう。

コルセットの値段

薬局やオンラインから購入できるサポーターやコルセットは、その機能やサイズに応じて2,000円〜5,000円程度が相場です。

それに比べて病院でオーダーメイドで処方される医療用コルセットは30,000円〜40,000円と高額です。
しかしコルセットが疾病または治療の遂行上必要なものと認められる場合は医療保険適応となる場合があります。

腰痛の状態や安静度は診断名だけでなく、その重症度によっても異なってくるため、必要なコルセットがわからない場合は医師に相談するといいでしょう。

コルセットの効果

コルセットを装着すると圧迫されることにより腹圧が上がり、腰の動作が制限されます。
そのためコルセットをしたことで腰痛が楽になったと感じる人も少なくありません。

しかしコルセットで腰痛が良くなるのではなく、コルセットをつけることによって腰にかかる負担が少なくなるため腰痛がでにくくなるだけです。損傷を受けた部位は繰り返し損傷を起こさなければ自然治癒力で自然と回復していくため、腰痛初期はコルセットの着用が効果的です。しかしコルセットはあくまでも対症療法の一つで、コルセットが腰痛を治しているわけではないことは理解しておきましょう。

コルセットの使い方

コルセットをつける位置はコルセットの大きさによっても異なりますが、幅の広いものの場合は骨盤の上半分から腰にかけて覆うように装着しましょう。背骨と骨盤の位置関係をコルセットでしっかりと固定することで、腰にかかる負担が軽減されます。また、コルセットは軽く圧迫感を感じる程度で、呼吸が楽に行える範囲で締めましょう。緩くつけていても、反対に締めすぎていてもコルセットの腰痛軽減効果は薄れてしまいます。

コルセットを使用する期間

コルセットは腰痛の発生初期〜中期にかけての利用が理想的です。特に腰痛になってしまってからの数日間は、コルセットでしっかりと腰部を保護することで痛みの軽減と二次的な痛みや機能障害を予防することができます。

コルセットは活動性を制限して保護する働きがあるというメリットの反面、筋力低下を起こしてしまうというデメリットもあります。コルセットを長期的に使用するのではなく、腰痛が落ち着いてきたらコルセットを使う機会を減らしていき、筋力トレーニングとともに少しずつ活動量を上げていきましょう。

コルセットを使用するときの注意点

コルセットは様々な効果が期待できる反面、正しく使用しないと患部の可動域を制限することで体に悪影響を招くリスクもあります。

体幹の筋力低下

コルセットは腰痛の軽減に効果が期待できますが、ずっと装着していると体幹の筋力低下に繋がります。コルセットにより体幹が固定されていると楽ですが、自分の筋力で支える力が衰え、コルセットを外すと痛みが再発することを繰り返し、最終的にコルセットを手放せなくなる悪循環になります。
コルセットはあくまで補助的なものととらえ、日常的に筋肉量を維持、向上をすることが大切です。

血行不良

患部を締め付けることにより、血行不良になる可能性もあります。締め付けが強い状態で長時間装着していると、血行不良により筋肉が凝り腰痛を悪化させてしまいます。また、胃や腸などの内臓が圧迫されると、悪心や嘔吐、便秘などが引き起こされます。胸の動きが制限されると、呼吸をしにくくなり息苦しさに繋がります。

コルセットは締め付けすぎないように調整しましょう。誰かに装着してもらう時も、苦しかったら遠慮せずに苦しいと伝えましょう。

関節可動域の低下

さらに、コルセットを長期間装着していると関節が固まり、可動域が低下するリスクがあります。コルセットに頼りすぎず、あくまで一時的な補助と考えましょう。

また、コルセットを装着しているときに腰の動きが制限されることで、他の部位に負担がかかりやすくなります。例えば後ろを振り向くときに、腰が動かないので、その分首を捻って見ようとします。そうすると首に負担がかかり、首の凝りや痛みに繋がることも考えられます。

コルセットを外す準備

コルセットを使っていた腰部は少なからず筋力低下を起こしている可能性があります。
また、腰痛があることによってアンバランスな筋緊張になっていることも多いです。
腰痛が落ち着いてきたら、関節運動を起こさない筋力トレーニングを行うといいでしょう。筋肉は体に備え付けられた自然なコルセットとも言えます。筋肉がしっかりとしていれば、腰にかかる負担も軽減されて痛みも出にくくなります。
ここでは関節運動を起こさずにできるコルセットの役割を果たす筋肉の筋力トレーニングを紹介します。

腹式呼吸

腹式呼吸は体幹深層筋を鍛えるのに適したトレーニングの一つでもあります。
あおむけで寝た姿勢でできる運動を紹介します。

トレーニングを行うときは、コルセットは外しておきましょう。
1. ひざを立てた状態であおむけで寝ます。
2. 両手をお腹の上に乗せて、お腹の動きをチェックします。
3. ゆっくりと5秒数えながら鼻から大きく息を吸います。
4. 一気に空気が出ていかないように、お腹に力を入れながら口をすぼめた状態でゆっくりと10秒かけて息を吐いていきます。
5. 同じ動作を5回繰り返します。

腹直筋の筋力トレーニング(頭を上げる運動)

体幹の筋力はまさに体に備え付けられた自然なコルセットとも言えます。
腰の関節を動かさずに行える腹筋の筋力トレーニングを紹介します。

1. ひざを立てた状態であおむけで寝ます。
2. 両手をお腹の上に乗せて、お腹に力が入っていることを意識しながら頭をゆっくりとあげてきます。
3. このとき胸が床を離れないようにしましょう。動かすのは首までです。
4. 頭をゆっくりと下ろしていきます。
5. 同じ動作を20回ほど、自分が少しつらくなるまで繰り返します。

腹横筋、多裂筋を鍛えるトレーニング(よつばいの運動)

よつばいの姿勢で行う体幹筋トレーニングです。
この運動はコルセットをつけたままでも行えます。
バランスを崩さないように注意しながら行いましょう。

1. 両手とひざを床についてよつばいの姿勢になります。肩関節90°、股関節も90°曲げて、両手とひざで四角形をつくるようにしましょう。このとき腰は丸まったり、沈み込んだりしないようにまっすぐになることを心がけましょう。
2. 顔は床を見たままで右手と左足を体とまっすぐ水平になるように伸ばします。バランスをとるのが難しい場合は手を上げる運動と足を上げる運動をバラバラで行います。
3. 手足を上げた姿勢で10秒間キープします。
4. ゆっくりと手足を下ろします。
5. 次は左手と右足を同じように10秒間上げた状態でキープして、下ろします。
6. 交互に10セットほど行います。

コルセットを使うタイミング

仕事や生活動作で腰痛が出る場合、腰痛が出る動作のときだけコルセットを利用するという人も少なくありません。コルセットを利用することで痛みが予防できているのはいいことなのですが、それと同時にコルセットは関節運動を阻害するため筋肉も働きにくくなります。

仕事や生活動作で腰痛がでてしまうという場合は、コルセットに頼るばかりではなく、仕事内容や生活動作を見直したり、自分の体づくりに再度目を向けてみるといいでしょう。

コルセット装着期間に鍛えたい筋肉

スクワットをする男性
コルセットは長期間装着していると体幹の筋力の低下を招きます。コルセットに頼りすぎず、体幹の筋力を鍛えましょう。鍛えたい体幹の筋肉は次の筋肉です。

腹直筋

腹部の前方に位置し、体を曲げたり、捻る時などに使用します。いわゆる腹筋です。

内外腹斜筋

脇腹あたりの筋肉で、体を捻る時になどに使用します。

腹横筋

コルセットのように腹部全体を覆う筋肉で、お腹にきゅっと力を入れて腹圧を高めたり、内臓を支える働きがあります。

多裂筋

背筋の中で最も深部にある筋肉で、背骨を支える働きがあります。

トレーニング方法

体幹を鍛えるための手軽なトレーニングにドローインがあります。ぜひスキマ時間に取り入れてみましょう。

ドローイン

1. 仰向けの姿勢で膝を立てます
2. 大きく息を吸いながら、お腹を膨らませます
3. 息を吐きながら、お腹を凹ませましょう。この時、腹式呼吸を意識します
4. ③の状態を30秒キープします
5. これを3セット行いましょう

スクワットは体幹だけでなく太ももの筋肉も鍛えることができ、効率的です。

スクワット

1. 足を肩幅に開き、背筋を伸ばす
2. 体を下におろしていきます。この時に前屈しないように、背筋を伸ばしましょう
3. 膝の角度が90度になるまで身体をおろす
4. ゆっくりと元の姿勢に戻す
5. これを1日2セット行いましょう

また、座りながらできる手軽なトレーニングに次の方法があります。仕事の合間にできるのでおすすめです。回数や時間は決まっていませんので、できる範囲で取り組みましょう。

椅子に座ったまま体を後方に傾ける運動

1. 椅子に浅く腰かけ、背中を伸ばします
2. 座ったまま体を後ろに傾けます
3. そのまま姿勢をキープします
4. 余力がある方はそのまま両足を浮かせるのも効果的です

机に手をついて両足を浮かす運動

1. 椅子に浅く腰かけ、机に手をつきます
2. 手で体を支えながら両足を浮かせます
3. そのまま姿勢をキープします

体幹の筋肉は他の筋肉のようになかなか目に見えませんが、身体を支える重要な筋肉です。腰痛予防のためにも日頃から鍛えるようにしましょう。

寝るときはコルセットを外すべき?

私たちの体は血液が巡ることで自然と疲れや損傷を修復していきます。つまり血行がいい方が腰痛が良くなるスピードも早いのです。起床時はコルセットを着用することで腰にかかる負担を軽減してくれますが、寝るときは血行を阻害しないためにもコルセットは外した方がいいでしょう。

おわりに

腰痛でコルセットを使う場合、まず腰痛がどのような原因で起こってしまっているのか、またどれくらいの安静度が必要なのかを知る必要があります。腰痛の原因を明確にして、治療手段の一つとしてコルセットをうまく活用できるといいですね。

【参考文献】
サポーター・コルセットを就寝時につけっぱなしにしてませんか?
http://iwasaseikotsuin0310.com/サポーター・コルセットを就寝時につけっぱなし/

疲れも腰痛も解消する!スタンフォード式「腹圧呼吸」のやり方
https://www.kanaloco.jp/news/life/entry-31306.html

コルセットのつけ方
http://itoshinkyuu.com/blog/コルセットのつけ方/

腰痛ベルトの正しい選び方
https://yamahack.com/1874

体幹トレーニングと腰痛
https://www.fungoal.com/core-and-back-problem/

株式会社 徳田義肢製作所

コルセット


日本腰痛会誌 腰痛性疾患にみられる「コルセット筋」の筋力低下と簡便な座位トレーニング
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/13/1/13_1_52/_pdf
アレックス脊椎クリニック
https://ar-ex.jp/spine/266902300121/%E8%85%B0%E7%97%9B%E3%81%A8%E4%BD%93%E5%B9%B9%E6%B7%B1%E9%83%A8%E7%AD%8B%E6%A9%9F%E8%83%BD#:~:text=%E5%A4%9A%E8%A3%82%E7%AD%8B%E3%81%AF%E8%83%8C%E7%AD%8B,%E3%82%92%E7%B9%8B%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
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腰痛メディア編集部
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