人類が二足歩行するようになってから出現した症状であるといわれている「腰痛」。二本足で起立歩行することで体重の負荷が背骨にかかり、とくに腰椎への負荷は全体の60%とも言われています。その腰の部分をサポートしているのが「腹筋」「背筋」です。体の動かす方向によって腰椎の負担を軽減する働きがあります。その筋力を維持することが腰痛悪化防止への近道といえるでしょう。

腰椎の負担を軽減している筋肉「腹筋」と「背筋」

上半身と下半身の連結やその体重の負荷を受ける「腰椎」。その腰椎をサポートしているのが、腹横筋・内腹斜筋・外腹斜筋などを含めた「腹筋」、上半身を前屈させるときに働きます。脊椎起立筋や広背筋など背中を覆っている筋肉の総称を「背筋」といいます。おもに体をそらすときに働きます。

腹筋と背筋はそれぞれが単独で動いているわけではありません。たとえばですが、何かを下から持ち上げる際には、脊椎が前屈し、体を折り曲げます。背筋で体幹を支え、腰椎が前に弯曲しないように腹筋を緊張させ腹圧をあげ、腰椎を押し返しているのです。このようにして腹筋・背筋が連動して動作をするとともに、腰椎にかかる負担を軽減するように働きます。

運動が腰痛対策としていい理由

腰痛を防ぐためには運動が欠かせないとよくいいますが、なぜ運動が必要なのかを考えてみましょう。一般的に、筋力は20代前半をピークとして、毎年1%衰退していくといわれています。加齢にともない腰痛の有訴率が上がってくるのは、脊椎の加齢性変化ばかりが要因ではなく、腰椎を支えるための腹筋や背筋が衰えてくることも、要因のひとつであるといえます。

また、運動すると骨に刺激が伝わり、骨代謝を促進します。新しい骨が常に作られることによって、骨の丈夫さを維持し、骨変性や骨粗鬆症を予防します。

運動により筋力や骨を丈夫にするばかりではなく、体全体のバランスや反射機能を整えることによって、けがや転倒を防ぎ、骨折や受傷の機会を減らします。運動不足となると筋力が低下するばかりではなく、骨がもろくなり、体の機能低下につながります。日ごろから、なにかしらの運動習慣をつけておくと安心です。

腹筋と背筋を鍛えるための考え方

腰痛予防のためには、まずは腹筋と背筋を鍛えることが大切です。腰痛予防につながるような筋力を維持できることが目標ですので、ボディビルダーのようなムキムキの筋肉は必要ありません。腹筋と聞くと尻込みしてしまうような苦行の腹筋をイメージする方もいるとおもいますが、ここではあくまでも「腰痛予防」になるような腹筋や背筋の方法をまとめています。

腹筋を鍛える

日常生活において、どちらかというと「前かがみ」の姿勢をとる機会のほうが圧倒的に多いはずです。つまり、腹筋を使う機会が多くあるということです。腹筋が弱くなると、体動時に腹圧が高まりにくくなり、腰椎の前弯が増強し腰椎への負担が増えます。

腹筋運動の方法

あおむけになって両ひざを立てます。足は肩幅くらいに開くとよいでしょう。両手は両頬に添えて、この後頭を持ち上げます。腹筋に力を入れながらゆっくり頭を持ち上げ、5秒くらい静止します。ゆっくりと腹式呼吸で、10~20回繰り返します。

完全な起き上がりが難しい場合は、床から背中を離すことを意識してみましょう。それでも難しい場合には、両手をおなかの上にのせて行います。腹筋に力が加わっているのを十分に感じながら行いましょう。腹筋運動の際には、腰が床から離れると腰椎が前弯し、腰に負荷がかかります。腰は床にしっかりとつけることを意識してください。

寝ている姿勢での腹筋が難しいようならば、椅子の上で行う方法もあります。椅子に座って足を軽く開き、上半身のみを使用して腹筋を意識します。おなかを軽く引っ込めておへそをのぞき込みおしりの筋肉に力を入れます。これも10~20回繰り返し、呼吸を止めないようにしましょう。

背筋を鍛える

背筋も日常生活のなかでよく使われます。腰痛対策にも重要な部位で、腹筋と同じように鍛えることで腰痛予防につながります。腹筋を鍛えることのほうが先決で、腹筋が十分鍛えられた状態(腹圧をしっかりと高められる状態)で行うことで、腰痛の増強を防ぎます。背筋は腹筋のおよそ2倍の筋力が必要とも言われています。

背筋運動の方法

うつぶせになり全身の力を抜きます。両手は体幹に沿わせるとよいでしょう。その状態から頭を持ち上げ、状態をゆっくりとそらせます。5秒ほど静止し、ゆっくりと元の状態に戻ります。呼吸は止めないことが大切です。10~20回繰り返します。

この運動が難しい場合にはうつぶせになって、両肘を90度に曲げ床に肘をつけます。腰の部分に力を入れて、上半身をゆっくりと持ち上げます。両肘はついたままでかまいません。そのまま5~10秒静止し、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。10~20回繰り返します。楽にできるようになったら徐々に肘を伸ばしていきましょう。

骨粗鬆症などで円背(背中が前向きに丸くなっている状態)の場合にはうつぶせになるだけでも背筋のストレッチにつながりますので、腰痛が緩和したり、腰痛が出現したりすることを防げます。円背の場合は、無理をせず、できる範囲で行ってきましょう。

運動をするときの注意点

腰痛予防のために、腹筋や背筋を鍛えることの有用性は高いのですが、やりすぎてかえって腰痛増強してしまったり、正しい方法で行われず、腰痛の原因になっていたりすることもあります。

寝て行う場合は、そのまま床に横にならずに、何かのクッションやマットなど適度な厚みと硬さがあるものの上で行いましょう。動作に反動をつけないことも大切です。痛みの実感があれば無理に行う必要はありません。現在治療中の急性期症状がある場合には、医師の指示に従い、運動を行ってよいかどうかを確認します。

一般的に運動をおこなってはいけない場合もある

腰痛のために、運動するのが良いとはされていますが、全身の状態によっては運動をしない方がよい場合もあります。腰痛の有無にかかわらず、全身状態が悪く、運動そのものが体の負担になる場合や、循環器や呼吸器疾患を有していて、運動することで息切れや立ちくらみ、冷や汗などが出現する場合も運動をしない方がよいでしょう。運動強度を見直すことも必要です。また、腰痛が受傷直後である場合や、炎症反応がまだ残存していて、運動により腰痛が悪化してしまうことが想定される場合には運動は控えましょう。

いずれの場合にも、各疾患の主治医に、運動が可能かどうかを確認し、指示を仰ぐことをおすすめします。

まとめ

いかがでしたか?腰痛予防における、運動療法の有用性や方法をまとめてみました。今回紹介した運動は、ほんの数分でできるものばかりで、道具も何もいりません。自宅で手軽にできる方法なので、ぜひ毎日の生活習慣として取り入れ、腰痛予防につなげてください。

参照URL
私達の身体機能改善に欠かせない運動器リハビリテーション

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る
バナー画像