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腰が痛くなった時に皆さんはどうやって痛みを和らげていますか?

多くの人は腰が痛くなった時に腰をよじったり、ストレッチしたり、揉んだりして痛みを緩和させたことがあると思います。
また、横になったりしていると腰が痛いけど、動いてる時は痛みが気にならなくなる経験をしたことがあるかもしれません。

腰の痛みを緩和するために身体を伸ばしたり、揉んだり、運動するリハビリテーションは、威迫的に確立された対処法の1つです。今回はこのリハビリテーション(以下リハビリ)が本当に腰痛に有効なのかをいくつかの論文をご紹介しながらお話しします。

リハビリの効果

そもそもリハビリとは本来どういう効果を期待して行われるものなのでしょうか。まずはリハビリテーションとは何かについてから説明していきます。

リハビリってなに?

リハビリは筋肉や骨の痛みを軽減するために行われる方法の一つで、日本障害者リハビリテーション協会によると、リハビリテーションとは「もともとはラテン語で、re(再び)+habilis(適する)からきて」おり、その目的は「心身機能の回復、維持、強化など」です。

リハビリは痛みによって動かしづらくなった部位を、再び適応させることが目標であり、痛みがある部位への負担の軽減と再発リスクの低下・筋肉や腱などの痛みの軽減・痛みのコントロールをすることにより、普段の生活において、痛みが発生するタイミングや痛みの強さを抑えることを効果として期待して行われます。

リハビリの種類

リハビリにはいくつもの種類があります。代表的なのが、ストレッチマッサージ・運動などですが、これらの他にも電気を用いて神経を刺激する方法や、レーザーを使用した治療、痛みがある部位を温めたり冷やしたりする方法、精神療法などもあります。

リハビリとは痛みを軽減させるための多種多様な運動器具や運動療法・精神療法の総称と言ってもよさそうですね。

今回はリハビリの中でも特に「運動療法が腰痛に有効なのか」について解説いたします。

リハビリは腰痛に効くのか検証

腰痛の運動

ここからは、運動療法のうち、「腰回りの運動」「有酸素運動」「ヨガ」「気功」が腰痛に効果があるかについて順にお話しいたします。

2020年に「Rehabilitation for Low Back Pain: A Narrative Review for Managing Pain and Improving Function in Acute and Chronic Conditions」という腰痛に対するさまざまな運動や機械を使ったリハビリテーションを評価している論文が「Pain and Therapy」誌で発表されています。

総論としてこの論文によると、運動療法と腰痛の関係において、方法などに関係なく、一般的な評価は「急性の腰痛には効果がなく、約12週間以上続く慢性の腰痛には効果が期待できるかもしれない」とされています。

では、具体的に見ていきましょう。

腰回りの運動

運動療法の中で、腰とその周りの筋肉を積極的に動かす運動を多く取り入れた運動では、腰椎屈曲、伸展、身体をひねる動きなどを繰り返すことで、腰痛患者に持続的な疼痛緩和をもたらします。

腰回りの運動を重点的に行うことが腰痛に有効なのかを調べるため、急性〜長引く腰痛の患者312人を対象とした研究をみたところ、74%が腰回りを動かす運動に良好な反応を示し、腰回りの運動を重点的に行わなかった他の運動と比べて有意に大きな改善が見られました。また、投薬量は1/3に減少したと記載されており、腰を集中的に動かすことは腰痛の緩和に効果が高い可能性があります。

有酸素運動

有酸素運動は、フィットネス(健康や体力の維持・向上を目的として行う運動)や心血管系の健康に有益であることが知られていますが、腰痛に関しては効果があるのでしょうか。腰痛が長引いている患者46人を対象とした研究では、15週間に渡って陸上での運動を含めた理学療法を行なったグループとそれに加えて水中ランニングを週3回行ったグループにおいて、水中ランニングを追加した患者では、水中ランニングを行わなかった患者と比較して痛みの強度が有意に低下したと結論づけています。

研究目的は水中ランニングの有無に関わらず、有酸素運動が腰痛に効果があるのかを調べるために行なったそうですが、水中ランニングを取り入れた方が、疼痛軽減、筋力と持久力の向上、腰部可動域の拡大いずれにおいても効果が出ることが確認されました。

ヨガ

姿勢を維持する状態を続けることで、体幹の強度を高め、神経筋制御を強化し、持久力を促進する効果が期待されます。腰痛に対しても痛みの緩和や機能的な改善が得られますが、同じような運動であるヨガは腰痛に関して効果があるのでしょうか。

1080人の慢性腰痛患者を対象に、ヨガが治療として効果があるのか評価した12の研究がまとめられた論文があります。
腰痛がある患者が12カ月間ヨガを行なった結果として、ヨガを含め何も運動を行わない場合と比較して、3ヵ月と6ヵ月の時点で背中の機能を改善したことが報告されています。
しかし、他の運動療法とヨガを比べた実験では、治療後3カ月で背中の運動機能にほとんど違いがない結果となっています。
ヨガとヨガ以外の運動療法の間で怪我などのリスクに差がないと結論づけられていることもあり、ヨガは腰痛に対して痛みの軽減や腰の機能回復することは期待できそうですが、他のリハビリと比べて特段良いとは言えなさそうです。

気功

運動と腰痛の関係について調べたところ、中国の気功が腰痛に効果があるのかどうかを調べた論文がありました。興味深い内容なので記載しておきます。

2018年に腰の痛みを訴える患者に気功の練習方法を指導し、その効果を検証した論文が発表されました。
※気功運動は中国の伝統的な運動であり、注意を集中させ、呼吸を整え、静的な姿勢から動的な姿勢へとスムーズに移行することを目的として、ゆっくりと流れるような特定の体の動きと瞑想を組み合わせたものです。

この論文では72人の腰痛患者を2つのグループに分け、一方には気功の練習を1時間行い、各自自宅へ帰っても気功を行なうことをすすめています。もう一方のグループには腰痛の管理に関する一般的なアドバイスを提供しています。

結果として、気功を習ったグループは腰の痛みの強さと背中の機能障害の程度が減少しており、長引く腰痛患者の痛みの軽減・バランスの改善・障害の軽減を期待できる運動として論文の結末でも書かれています。

運動によって腰痛の軽減や再発の防止をしていくには、コアマッスルという腰や姿勢を支える深部の筋肉を成長させることが必要ですが、気功などのゆっくりとした動きは姿勢を維持する筋肉を発達させるのに良い効果があることが、腰痛に効果があった要因と考えられます。

腰痛のリハビリをした人(B様)の実例

柔道整復師として5年以上、介護に携わっている人の体験談を紹介します。

「徐々に腰痛が」その原因とは

B様、70代女性
要支援1
一人暮らしで、身の回りのことは一通りできる
性格は明るく、社交的

B様は、数カ月前から腰痛に悩んでいました。腰痛が原因で、B様は趣味のプールも中止して、自宅に引きこもることも多くなってしまったそうです。

B様を担当していたケアマネージャーは、その状態を心配して、近所の運動ができる「リハビリ特化型デイサービス」へ通所することになりました。

私は運動プランを作成すべく、B様から詳しいお話を伺いました。

B様の訴えをまとめると

• 転倒や尻餅などはしたことがない。
• 腰痛が酷くなる前の過ごし方は、自宅ではテレビを見て過ごすことがほとんどだった。
• ここ数カ月体重が増加している。それに合わせて腰痛が酷くなった。

というものでした。

通常、高齢者が腰を痛がっている場合は、まず「圧迫骨折」を疑います。「圧迫骨折」とは、背骨の椎体と呼ばれる部分の骨折で、尻もちをついた時などに発生します。

しかし、今回のB様の場合、尻もちをした経験がないので圧迫骨折の可能性は考えにくいものでした。そこで、私は腰痛の原因が他にもないか、探ってみることにしました。

腰痛の原因は「腰の歪み」と体重増加

続いて気になったのが、

• 腰痛が酷くなる前の過ごし方は、自宅ではテレビを見て過ごすことがほとんどだった。
• ここ数カ月体重が増加している。それに合わせて腰痛が酷くなった。

B様の腰痛が強くなったここ数カ月、体重が増加しています。また家の中で過ごすことが多く、座りっぱなしの生活を送っていました。

私は、B様の今回の腰痛の原因は「腰の歪み」と「体重の増加」ではないかと考えたのです。

腰の歪みとは

腰の歪みとは、「腰のアライメントが崩れた状態」のことを指します。

「腰のアライメント」とは腰にある骨の位置関係です。腰は、「寛骨」と呼ばれる骨盤の上に、背骨が位置しています。

背骨は通常、上記の写真のようにS字を描いています。しかし、骨折や筋肉のバランスが崩れたなど、腰に負担が掛かると背骨のS字カーブが乱れる原因になります。
「腰の歪み」とは、腰にある骨の位置関係が、正常でなくなったこと状態を指します。

B様の場合、座っている時間が長く、同じ姿勢を続けていました。結果、腰の筋力バランスが崩れて、腰のアライメントが乱れた可能性があったのです。

案の定、B様はかなりの反り腰になっていて、腰のアライメントが崩れていることが分かりました。

体重の増加

体重が増えたことで、腹圧が弱くなります。腹圧とは、お腹にかかる圧力のことで、コルセットのように体を支える役割を果たしていています。

体重が増えるとお腹が前に出て、反り腰になるでしょう。反り腰の姿勢では、お腹に力が入りにくい状態で、腹圧が弱くなる原因になります。

体重が増えたことで腹圧が弱くなり、体を支える力が低下して、腰への負担が増加したと言えるでしょう。

B様が取り組んだ内容

B様には、3つの体操に取り組んで頂きました。

• 腰椎5番体操
• 骨盤体操
• ヒップアップ
• 有酸素運動

B様は自宅に引きこもっていたことが原因で、腰の筋肉バランスが乱れ姿勢が悪くなってしまいました。さらに運動不足により体重は増加し、ますます腰痛が酷くなりました。

そのため姿勢を正してから、筋力をつけるリハビリメニューを提案しました。
それと並行して有酸素運動を行い、ダイエットも行うことにしたのです。

腰椎5番体操 目的 (姿勢を正す)

①腰に手を当てる

②顎を引く

③腰を下に押しながら。頭を後ろに引く。
後ろに転倒しないように、注意しましょう。
これを10秒×3回繰り返します。

腰椎とは、腰にある骨のことです。「第5腰椎」とは寛骨の上にある腰椎の一番下の骨のことです。

この「第5腰椎」は一番下にある骨なので重さを受けやすく、腰のアライメントが崩れて反り腰の原因になります。

今回のB様も、この「第5腰椎」が触れにくい状態でした。なので、まず「腰椎5番体操」で腰のアライメントを正常な位置に戻すことにしました。

骨盤体操 目的(腰の筋肉バランスを整える)

①腰骨を親指と4本の指で挟む
②息を吐きながら、腰を丸める
③息を吐きながら、腰を反る

②③を交互に3回ずつ繰り返す。できるだけ大きく腰を動かすことがポイントです。

ヒップアップ(目的 腰の筋力アップ)

①膝を曲げて仰向けになります。

②腰を持ち上げます。
③そのまま10秒キープします。これを3回繰り返します。

有酸素運動 目的(ダイエット)

B様の腰痛は体重の増加も関与していました。体重が増加すると腰に掛かる負担も大きくなります。そこで有酸素運動を行い、ダイエットをすることにしました。

• デイサービスに通所した時は、エアロバイクで有酸素運動に10分。
• 自主訓練として、毎日ウォーキングを10分

慣れてきたら時間を増やしていき、「最大で30分間の継続」を目標に運動を継続していきました。

ただ、ダイエットがB様のストレスになってはいけません。リハビリメニューが終わったあとは、ティータイムに参加し、他の利用者様とのおしゃべりを楽しんでいただきました。

リハビリ後のB様

B様がリハビリに取り組んで3カ月後、腰痛はまだあるようでしたが、「ピーク時に比べてだいぶ和らいだ。掃除もかなり楽にできるようになった」と仰っていました。

有酸素運動は、デイサービスに通所している時は続けられましたが、自主訓練としてウォーキングを続けることは難しかったようです。

体重の変化はありませんでしたが、趣味だったプールも再開して、充実した毎日を過ごしているようでした。
その後もB様はデイサービスを継続して、運動も続けられています。

リハビリのポイント

• 腰のアライメントを正したうえ、筋力アップに取り組んだ
• 有酸素運動に取り組んだことで、体重の増加が防げた

今回B様の腰痛が「腰のアライメント」の乱れが原因だったと評価し、適切なリハビリメニューを提供できたことにあるでしょう。

実際に利用者様の体に触れて原因を評価することは大事なことですが、専門家ではないと難しい技術です。

まとめ

4種類の運動療法リハビリが腰痛に効果があるのかを見ていきました。効果の程度に差はあれど、体を動かすことは、長引く腰痛患者では痛みの軽減、障害の軽減、バランスの改善につながることがわかりました。

運動が腰痛に効果があるとは言っても、痛みを我慢して腰を動かしてしまったりして、容態が悪化する危険性もありますので、一度医師に診察をしてもらい、専門家の意見を聞きながら安全に治療をしていきましょう。

【参考文献】
日本障害者リハビリテーション協会HP:https://www.jsrpd.jp/
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著者情報

腰痛メディア編集部
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