日本人の8割以上の人が一生のうちに一度は腰痛に悩まされる可能性があると言われているほど、腰痛はわれわれが生活していく中で起こりやすい症状の一つです。

しかし、これだけ多くの人が腰痛に悩まされるのに、腰痛になった際にどうしたら良いのかわからず、我慢したり、マッサージに行ったりしてなんとなくその場凌ぎの対応をしている人が多いと思います。

人生の中でもし、腰痛になってしまった場合、そのまま様子をみても大丈夫なのか、自分でできる対処法はあるのか、それとも一度病院に行った方が良いのか判断しづらいと思います。
今回は腰痛になった場合、どうしたら良いのかを書いていき、腰痛で悩む時間を減らせればと思います。

腰痛の原因は23種類以上もある

結論から言いますと、腰痛になったら専門的な病院やクリニックに行くことをお勧めします。
理由としては腰痛になる原因が多数あるので自分で解決することが難しい可能性があるということが挙げられます。

そもそも腰痛の定義とは、日本整形外科学会・日本腰痛学会が監修している 腰痛ガイドラインによると「体幹後面に存在し,第 12 肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも 1 日以上継続する痛み.片側,または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も,伴わない場合もある.」とされています。

ガイドラインによると腰痛に至ったプロセスは関係なく、腰に痛みがあれば定義上腰痛となります。では、この腰痛を引き起こす原因となる病気がどれくらいあるかご存じでしょうか?

同ガイドラインによると、腰痛の原因となる病気はがんや神経・腎臓・血管・脊椎(背骨)などに由来する23種類に大別されます。そして、そこからさらに細分化されていきます。

例えば、脊椎由来であれば、脊椎腫瘍・脊椎感染症・脊椎外傷・腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・腰椎分離すべり症・・・・などです。

つまり腰痛になる原因はたくさんあるのです。

腰痛といえば重たいものを持った時や腰をかがめて作業したときに生じるイメージですが、実はこれだけ原因に種類があるのです。

そして腰痛の定義が上記のものである以上、腰痛は病気ではなく、何かしらの原因によって引き起こされる症状の一つであるということは、単に腰の痛みを緩和したからといって腰痛が治るわけではないことを示唆しています。

腰痛の原因となっているものを取り除いた方が、結果として腰痛を改善することにつながるのです。

また、専門の病院に受診した方が良い根拠として、2016年に日本の山口県で腰痛の治療のために受診した患者の腰痛の原因を特定しようとした研究が発表されており、これによると78%の腰痛は原因が特定できたことが書かれています。

整形外科など専門的な科目のある病院やクリニックで受診することが条件ですが、診察を受ければ腰痛の原因の病気が何かわかる確率が高いということになります。

腰痛の原因になっているものが解明できれば、その病気の治療をすれば自ずと腰痛も治る可能性が高くなります。そのためにも腰痛になったり、気になってしまったりした時点で病院やクリニックに行くことをお勧めします。 

薬はその場凌ぎにしかならない?

腰が痛んだら、痛み止めを使用して痛みを和らげれば良いと考えいる方もいらっしゃるかもしれませんが、それもリスクがあることを理解しておいた方が良いです。
確かに、鎮痛剤の中でもよく使用される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)という薬が腰痛に有効な鎮痛剤であると腰痛ガイドラインにも記載されています。
ロキソニンなどが有名ですね。

ガイドラインの元となった研究で非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が腰痛に有効かを検証した研究が、2008年に発表されています。

この研究では合計65の試験(総患者数=11,237人)を統計しており
NSAIDsはプラセボと比較して急性腰痛に統計学的に有意な効果が認められたと結論づけられています。

腰の痛みに対して、鎮痛剤を使用することによってその痛みを緩和することはできるのですが
、最初にお話ししたように腰痛という症状はあくまでも結果に過ぎないため、鎮痛剤で腰痛が緩和されたとしてもそれは一時的なもので、腰痛の原因を取り除かないと腰痛が完治することは難しいです。

「鎮痛剤は痛みを取り除いているだけであり、原因の治療をしているわけではない」

この部分を理解せずに鎮痛剤を飲むことによって腰痛の痛みを取り除いて、それで安心してしまうと、腰痛の背後にある病気を見逃してしまって、原因の病気への対処が遅れて原因の病気が進行するという結果を招きかねません。

そうならないようにも、痛いから鎮痛剤を使用する、とシンプルに考えずに腰痛が気になったら専門の病院へ行きましょう。

マッサージが腰痛に効くのは1日だけ?

それでは、腰痛になった際に腰のマッサージを行うのはどうでしょうか

2015年に腰痛に対してマッサージが有効かどうか調べた研究が発表されています。この研究は 3096人の診断できない非特異性腰痛を対象に、手や機械を使ったマッサージを受けた人・エクササイズや鍼治療など治療を受けた人・何も治療を受けなかった人の3グループに分けて、それぞれ腰の痛みがどうなったのかを比較しています。

その結果、マッサージはエクササイズや鍼治療を受けた人に比べて短期的に痛みの除去という点では優れていましたが、機能面では違いは無く、長期的に見ても違いはありませんでした。

また、何もしていない人たちと比べても、短期的には痛みを軽減させる点で優れているが、長期的には優れていないという結果になりました。

特に機能面では何も治療をしていないのと同様の程度であると結果から、マッサージによる治療は効果が乏しく、腰痛になった際に積極的に選択するものではないと考えます。

腰痛は病院に行った方が治る確率が上がる

最後に腰痛に対する治療の効果について解説していきます。
腰痛になった際に「ちょっと腰が痛くなっただけだし、1週間くらい我慢してればそのうち治るでしょ」と考えてしまうかもしれませんが、その考えは危険かもしれません。

2カ月以上腰痛で悩まされている患者208人を対象として、医療的処置を行った場合と医療的処置を行わず歩行など自由に過ごしていただいた場合を比べて、仕事に復職した時期や腰痛の症状の軽減に違いが出るかを比較した研究が発表されています。

それによると各々の治療を始めて15カ月後の時点での仕事への復職率はどちらも同程度のものでしたが、3カ月後の評価では症状の軽減や機能の改善、患者の満足度といった点で、医療的処置を行った方が良いという結果になりました。

この研究によって、医学的な処置を行った方が自然と腰痛を治すよりも効率が高いことが示されたことになり、腰痛を放っておくことは、障害を悪化させ、結果として腰痛で仕事を休む期間が長くなる危険性があります。

まとめ

 
マッサージや鎮痛剤の使用は一時的な効果はありますが、腰痛を完全に解消するわけではありません。また、自然に治るのを待つより医療処置を介入した方が効率よく改善していきます。
何よりただの筋肉の痛みだけではなく、腰痛の影にはもっとよくない病気が隠れているかもしれません。
腰痛になってしまったら痛みの軽重に関わらず、できるだけ早く一度専門医に見てもらいましょう。

【参考著書】
松平 浩,磯村 達也,岡崎 裕司, 三好 光太,小西 宏昭;日本人勤労者を対象とした腰痛疫学研究;日本職業・災害医学会会誌 JJOMT Vol. 63, No. 6
日本整形外科学会,日本腰痛学会;腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版);南江堂
Suzuki H, et al. Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan:
The Yamaguchi Low Back Pain Study. PLoS One 2016;11(8)
Roelofs PD, Deyo RA, Koes BW, Scholten RJ, van Tulder MW. Non-steroidal anti-inflammatory drugs for low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2008
Andrea D Furlan 1, Mario Giraldo, Amanda Baskwill, Emma Irvin, Marta Imamura;Massage for low-back pain;Cochrane Database Syst Rev
. 2015 Sep 1
T A Torstensen 1, A E Ljunggren, H D Meen, E Odland, P Mowinckel, S Geijerstam
Efficiency and costs of medical exercise therapy, conventional physiotherapy, and self-exercise in pa-tients with chronic low back pain. A pragmatic, randomized, single-blinded, controlled trial with 1-year follow-up;Spine (Phila Pa 1976). 1998 Dec 1;23(23):2616-24.

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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