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「首のヘルニアは痛い」
「首のヘルニアは手術しないといけない」
そういった話をよく耳にします。

首のヘルニア(以下:頚椎椎間板ヘルニア)になると肩や腕に痛みが出て、症状が悪い方は手術で治療することがあります。しかし頚椎椎間板ヘルニアの治療では運動療法(リハビリ)が重要なことをご存知でしょうか。運動療法を十分に行うことで悪化や再発を防ぎ、手術なしでも治ることがあるのです。

頚椎椎間板ヘルニアとは首の骨同士を挟むクッションが飛び出す病気

椎間板の断面図

頚椎とは首にある7つの骨のことです。そしてそれぞれの頚椎を挟むようにクッションの役割を果たす組織があります。これらを椎間板といいます。椎間板は周囲を線維輪、内部に髄核と呼ばれる組織で成り立っています。頚椎椎間板ヘルニアでは何らかの理由で線維輪が損傷し、中にある髄核が椎間板から飛び出した状態になっている病気です。

さらに髄核が大きく飛び出すと椎間板の後ろにある神経に圧迫が加わります。そして圧迫された神経に対して痛みや障害が出てくるのです。

頚椎椎間板ヘルニアの症状①:首肩腕に強い痛みしびれ

頚椎椎間板ヘルニアでは椎間板が飛び出す位置によって症状が変ります。ヘルニアが頚椎の斜め後ろに飛び出した場合、神経根と呼ばれる末端の神経の根元になる場所が圧迫され障害が出ます。

頚椎の神経根がヘルニアによる圧迫を受けると、肩や腕に強い痛みやしびれが出ます。これを神経障害性疼痛といいます。また首を斜め後ろに傾けると神経根がより強く圧迫されるため痛みが強くなるのです。多くの場合数週間から数か月で軽減していきますが、症状が長引く場合は神経根がつかさどる領域の感覚や筋力に異常が現れます。

頚椎椎間板ヘルニアの症状②:手足の筋力低下など神経の障害

頚椎椎間板ヘルニアが真後ろ飛び出した場合、頚椎の中を通る脊髄と呼ばれる部位を圧迫し障害が現れます。脊髄には体中の組織に関わる神経が脳から直接つながっています。そのため神経根のヘルニアよりも広範囲に症状が現れるのです。

例えば手の指が全体的に機能低下し、細かい作業ができなくなります。また下半身の筋力が低下し歩行困難になることもあるのです。ひどいケースでは排尿や排便の機能に障害が出ることがあります。

※神経根と脊髄の両方が圧迫を受けてそれぞれの症状が出るケースもあります

頚椎椎間板ヘルニアは悪い姿勢やスポーツ・重労働の影響がある

頚椎椎間板ヘルニアは20代以降の様々な年齢で発症します。30~50代の男性が多いとされていますが、それ以外の方でも発症することがあります。原因としては姿勢が悪い・ストレートネックといった生活習慣、首への負担が強いスポーツや重労働があるとされています。しかし椎間板は加齢による劣化が早いため首への強い負担が少ない方でも発症することがあるのです。

頚椎椎間板ヘルニアの診断は痛みの出方とそれを裏付ける検査

頸椎椎間板ヘルニアの診断では問診にて痛みやしびれのある場所や、どのように変化してきたかを確認します。次に頚椎の整形外科的テスト(※①)や感覚や筋力の検査、そして腱反射測定(※②)を実施して障害を受けている神経を推測するのです。そしてレントゲンやMRIといった画像検査を実施して診断します。

※①:頚椎の整形外科的テストとは首に一定のストレスや動きを加えることで痛みが出れば頚椎椎間板ヘルニアの可能性があると評価できる検査です。
※②:腱反射測定とは体の特定の場所に刺激を加えることで体が反射的に動く機能を確かめる検査です。

頚椎椎間板ヘルニアの治療法は保存的療法から行われる

頚椎椎間板ヘルニアの治療は保存療法と観血的療法(手術療法)の2つに分けることができます。頚椎椎間板ヘルニアでは数ヶ月で痛みやしびれが治まることがあるので発症直後は保存的療法が選択されます。しかし数ヶ月以上過ぎても症状が治まらない、もしくは悪化するようであれば手術による治療が選択されます。

保存療法

頚椎椎間板ヘルニアの保存的療法では以下のような治療が行われます。
安静:痛みやしびれが強く出る姿勢や動きを避けるようにします。
薬物:痛みやしびれを抑える薬や注射を行います。
物理療法:牽引療法や各種電気治療で痛みの軽減を目指します。
装具:頸椎コルセットを着用して痛みやしびれの出る動きを制限します。
運動療法:痛みの増強を防ぎながら筋力の維持や、姿勢の再教育を行います。

手術療法

頚椎椎間板ヘルニアの手術ではMRIなど検査で確認できたヘルニアの状況と患者さん自身の現状に合わせた手術が行われます。一般的には首の前方から皮膚を開いてヘルニアを除去する手術が行われます。近年は内視鏡を用いた手術が主流になっているため、手術後の傷は数㎝程度で収まり手術後の回復も早くなっています。

手術後は傷やリハビリの経過が順調であれば2週間程度で退院することができます。しかし手術前から歩行困難な状態であった場合はリハビリに1~3ヶ月を要します。

頚椎椎間板ヘルニアの再発防止はリハビリ(運動療法)が重要

このように頚椎椎間板ヘルニアは適切な治療を行うことで治る病気です。しかし生活習慣や姿勢が悪いままでは再発する可能性があります。また椎間板は加齢による劣化があるので予防をしなければ再発する確率は高くなるのです。

人の頭は水をいっぱいに入れたバケツ

頚椎の働きの1つに頭を支えるというものがあります。人間の頭は全体重の10%を占めています。体重50㎏の人なら5㎏になります。つまり偏った首の使い方や姿勢を続けていることは、5リットルの水を入れたバケツを首の一部の筋肉で支え続けていることと同じです。そして首の筋肉だけでは頭を支えきることができなくなるため、頚椎(椎間板)に大きな負担がかかっていくのです。

正しい身体の使い方を取りもどすことが再発を予防する

したがって頚椎椎間板ヘルニアの予防には首への負担を減らす姿勢を覚えることと、首を支える筋肉の力と柔軟性を取り戻すことが重要になります。もちろん筋トレやストレッチは患者さん自身の努力が必要です。かといって適切なストレッチやトレーニングを自分ですぐに見つけることはできません。中には自己判断で過剰なトレーニングを行い、症状が改善しないこともあるのです。

そこで体の仕組みや運動に詳しい理学療法士によるリハビリ(運動療法)を受けることで、安全かつ適切なトレーニングを進めることが重要になります。

頚椎椎間板ヘルニアの運動療法とは?

頚椎椎間板ヘルニアの運動療法は頚椎の可動範囲を広げる治療、低下している筋力を強くする訓練、そして姿勢や生活習慣の指導です。これら3つの治療・訓練を理学療法士が適切な評価に基づいて患者ごとにプログラムを立案し、実行します。

頚椎の可動性を取りもどす

頚椎椎間板ヘルニアでは頚椎の偏った使い方によって本来の動く範囲を失っていることがあります。そのため運動療法では頚椎の可動域を広げる治療が行われます。例えば7つある頚椎の間にある関節(椎間関節)に直接ストレッチを加える治療や、頚椎周囲の筋肉に対してストレッチをかける治療があります。

正しい姿勢を保つためのエクササイズ

頚椎椎間板ヘルニアでは頚椎を正しい位置に戻しても、頭を支えるだけの筋力が備わっていないことがあります。そのため運動療法では体操を用いて頚椎周囲の筋力強化を行います。例えば頚椎運動の各方向に抵抗を加えて頭の位置を保持してもらう訓練を行います。

また頚椎椎間板ヘルニアの患者では本来の姿勢に自ら戻すことができないことがあります。そこで運動療法では鏡や体操を用いて頚椎の正しい位置を再教育するのです。例えば顎を引くような体操や両側の肩甲骨を挟む体操を行います。

日常生活の指導

頚椎椎間板ヘルニアでは病状によって適切な生活指導が必要です。急性期では頚椎を伸展させる(首を反らす)と痛みが強くなるため、患者には顔を上げる動作を避けるように指導します。一方で急性期を脱し痛みが軽減してくると理学療法士は患者から聞き取った頚椎に負担をかけていた動作を分析し、生活上の改善ポイントを提案します。

例えばパソコンのモニターやキーボードの位置を変えてもらうことや、普段使っている椅子の高さを変えることを提案します。

参考:日本脊柱外科学会http://www.neurospine.jp/original24.html

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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