最近、慢性疼痛に悩む患者の間でロコアテープの鎮痛効果が話題になっています。
痛み止めを飲んでもなかなか楽にならないぎっくり腰にも、ロコアテープは使用できるのでしょうか?
今回は【ロコアテープの適応、効果】【ぎっくり腰に使用できるのか】お伝えしていきます。
目次
ロコアテープとは
ロコアテープは、2016年1月から販売開始になった新しい痛み止めの貼り薬で、関節の痛みや炎症を抑える効果があります。
有効成分は、エスフロロビプロフェンとハッカ油で、ロキソニンやイブプロフェンと同じNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)に分類されます。
従来の痛み止め貼り薬よりも、より薬剤が吸収され効果が得られるように開発されました。ロコアテープの吸収率(2枚貼付の場合)は、飲み薬と変わりないとの報告があります。(※1)
ロコアテープの効果・効能、用法・用量
効果・効能
変形性関節症における鎮痛・消炎
用法・用量
・1日1回患部に貼付する。1日に最大でも2枚まで
・原則痛み止めの飲み薬との併用は避ける
ぎっくり腰への使用
ロコアテープの適応は、今のところ変形性関節症のみです。
新しい薬であるため、使用実績が少なく適応の疾患が限定されています。これから実績が増え、研究が進むと適応疾患が増えてくる可能性はありますが、現段階では変形性関節症のみの適応ですので、ぎっくり腰や肩こりは適応とはなりません。
ぎっくり腰と診断された場合は、他の湿布薬・テープ薬や飲み薬を処方されるでしょう。
変形性関節症とは
変形性関節症とは、関節と関節の間にある軟骨がすり減ることで、骨同士が擦れあって炎症を起こす疾患です。骨と骨が擦れ合い、削れた骨が骨棘(こっきょく)というトゲのようなものを形成して関節が変形していきます。
変形性関節症は膝、股関節、背骨(腰)など、負荷の大きい関節に生じることが多いです。
初期には動いた時に「イタタ…」と、痛みを感じる程度ですが、進行すると痛みが強くなり日常生活に支障をきたすこともあります。
膝や股関節などの大きな関節に生じると、日常生活に支障をきたす可能性が高いため、進行してしまう前に早期に受診することが重要です。
普通の腰痛への使用
原因の特定できる腰痛は、全体のうち約15%と言われています。それ以外の約85%の腰痛は画像検査などで異常な見られない原因不明の腰痛(非特異性腰痛)です。(※2)
前述の通り、原則ロコアテープは変形性関節症のみが適応ですので、非特異性腰痛に対しては他の消炎鎮痛剤が使用されるかと思います。
ロコアテープについて
変形性関節症と診断されれば、ロコアテープが処方される場合があります。
ここからはロコアテープについて、もう少し詳しく書いていきます。
ロコアテープの薬理
冒頭でも触れていますが、ロコアテープの有効成分はエスフルルビプロフェンという消炎・鎮痛効果のある物質です。このエスフルルビプロフェンは、炎症を引き起こすプロスタグランジンの生成に作用する、シクロオキシゲナーゼ(COX)というという酵素を働かせないようにする作用があります。
炎症・痛みのもとである、プロスタグランジンが生成されなくなり結果的に炎症が鎮まり、鎮痛効果が得られます。
ロコアテープ使用上の注意点
使用は1日最大2枚まで(患部が複数ある場合も)
ロコアテープは薬剤の吸収率が従来の痛み止め貼り薬より向上しており、薬効が出やすくなっています。しかし、貼付部位から全身にまわる薬の量は2枚貼付時で飲み薬と同程度と報告されています。
1日に使用できるのは最大2枚までです。
原則他の消炎鎮痛剤との併用は避ける
ロコアテープは吸収率が高く、飲み薬と同程度体内に吸収されるため、他の鎮痛剤(飲み薬、貼り薬)と併用すると副作用が出現する可能性が高くなります。
市販の非ステロイド性消炎鎮痛剤を含む薬(ロキソニンやバファリン、ボルタレンなど)を使用しなければならない場合は、必ず医師に相談しましょう。
消炎鎮痛剤の他にも、キノロン系抗菌薬では併用するとけいれんを起こす可能性があったり、抗凝固薬ワルファリンや、抗リウマチ薬(リウマトレックスなど)、精神安定剤、利尿剤などと相互作用を起こす可能性があるため、他の薬との飲み合わせには注意が必要です。
使用出来ない人は
以下の人は使用できません。
これまでにブロロビプロフェン、ロコアテープで過敏症を起こした方
過敏症のある方では、使用によりアレルギー症状を引き起こし最悪の場合アレルギー性ショックを生じることもあるため注意が必要です。
今まで使用したことの無い方では、冷や汗や顔面蒼白、血圧低下、めまい、息苦しさ、蕁麻疹や気分不快なと過敏症のアレルギー兆候が表れた場合は直ちに使用を中止し、受診しましょう。
胃潰瘍などの消化器潰瘍の治療中である方
ロコアテープの薬効により働きが抑制されるプロスタグランジンには、胃酸分泌を抑制したり、胃粘膜を保護する働きもあります。
ロコアテープ使用によりそれらの働きが抑制されることで、胃粘膜保護作用が失われて胃炎や胃潰瘍が発生または悪化する可能性があります。
これまでに鎮痛薬や解熱剤で喘息を起こしたことのある方(アスピリ喘息の方)
喘息発作を誘発する可能性があるため注意が必要です。
妊娠後期(妊娠28週以降)の女性
ロコアテープではありませんが、他の非ステロイド性抗炎症薬の貼り薬を妊娠後期の方に使用し、胎児性動脈収縮が起きたという報告があるため、妊娠後期での使用はできません。
妊娠中の使用での安全性は確率されておらず、危険性を治療の有益性が上回る場合にのみ使用されます。
ラットでの実験結果では、乳汁への移行も確認されているため、授乳中の使用も避けましょう。授乳中、やむを得ず使用しなければならない場合には、使用中・使用後の授乳は中断します。
重篤な肝臓・腎臓・心機能低下・高血圧のある方
副作用により、肝臓、腎臓、心機能低下のある方では状態が悪化してしまう可能性があります。
また、ロコアテープ使用によりプロスタグランジンの働きが阻害されることで、体内の水分・ナトリウムが貯留し、更に血圧を上昇させる可能性があるため高血圧の方での使用は原則できません。
出血傾向のある方
血液の異常を更に悪化させる可能性があるため、使用はできません。
ロコアテープとぎっくり腰まとめ
従来の貼り薬より確実に、強い鎮痛効果を得ることのできるロコアテープですが、現段階では変形性関節症のみの適応で、ぎっくり腰には処方されません。
処方、または市販のロキソニンやボルタレンなどの鎮痛剤を使用することになることが多いですが、規定量使用して安静にしていても痛みが長く続く場合には、ぎっくり腰ではない場合も考えられますので、受診することをおすすめします。
※1:大正製薬株式会社 医療者向け情報 ロコアテープ インタビューフォーム
※2:厚生労働省 腰痛対策
参考文献
大正富山医薬品株式会社 TENJIN ロコアテープを適正にご使用いただくために