胃痛や腰痛は多くの人が経験したことがあることでしょう。「突然痛くなった。」「何日も痛い。」「決まった時間帯に痛む。」など、痛みの程度や症状の出方は人それぞれ異なります。薬を飲んだり、湿布を貼ったり、整体に行ったりといろいろ試してみても再び痛くなることもしばしば。
症状が繰り返すのは、“なにかの病気の前兆かも?!”とお悩みの方必見!
今回は、そんな腰痛と胃痛の関係について深めていきます。腰痛を伴う内臓の病気や受診の目安についても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

腰痛と胃腸の関係

腰痛の原因は、骨の異常や筋肉の凝りだけではありません。胃腸など内臓の病気が原因で起こることもあります。
胃痛と腰痛、あまり関係がなさそうなこの2つは実は密接な関係にあります。腰痛が原因で胃が痛くなることや、胃痛によって腰痛も引き起こされたりする場合もあります。
それには関連痛後腹膜への接触が関係しており、こういった場合、根本的な原因を見極める必要があります。
腹痛と胃痛

関連痛とは

関連痛とは、痛みの原因のある部分とは全く別の部位に生じる痛みのことです。
内臓の知覚は、脊髄で他の臓器や皮膚の知覚と一緒にまとまって脳へ情報を伝えられます。
脊髄では多器官の情報がまとまるため、内臓に強い痛みがある場合、その痛みの刺激が脊髄を刺激し、他の部位(主に皮膚)に痛みを感じるのです。
胃を例にあげると、胃の痛みの信号が伝えられる脊髄の部位と、腰(胃では背中の真ん中付近)の感覚の伝達される脊髄の位置が同じであり、胃の痛み刺激が誤って腰に伝えられ、腰に痛みを感じるようになるのです。

後腹膜への刺激とは

人間の内臓は、腹膜で覆われた腹腔内にあるものと、その外側にあるものに分かれます。腹膜の前方(お腹側)を前腹膜、後方(背中側)を後腹膜と言い、後腹膜より後方にある臓器は後腹膜臓器と呼ばれます。
後腹膜臓器は、十二指腸、膵臓、腎臓・副腎、尿管、直腸、腹大動脈、下大動脈などが含まれます。これらの臓器に異常があり後腹膜を刺激すると、腰や背中に痛みが生じるのが特徴です。

実は多い!?ストレスが原因の痛みについて

ストレスは大なり小なり誰もが抱えています。身体の中でストレスに弱い部位として胃腸が挙げられます。ある一定以上のストレスが加わった時、自律神経の乱れなどから、胃酸の分泌量の増加、血流量の低下、胃粘液の分泌量の低下などが進みます。「ストレスで胃が痛い。」「緊張で胃腸の調子が悪い。」などよく耳にしますよね。

実はあまりピンとこない方もいるかと思いますが、腰の痛みの原因としてストレスの場合があります。心因性腰痛と言われており、精神的なストレスが続くと脳の痛みを抑制するシステムがうまく働かなくなります。痛みが長引くことの多い腰痛では特に心の状態による影響も大きいと考えられています。

この場合、やみくもに薬を飲んだり、運動をしたりしていても根本的な解決にはつながりません。ストレスの原因となっている根本的な問題を軽減することで、心の安定とともに腰や胃の元気を取り戻すことにつながります。

胃痛や腰痛を伴う内臓の病気や癌(がん)について

“ただの腰痛、胃痛だと思っていたら実は内臓の病気が隠れていた!”といったケースがあります。重篤な病気が原因となる場合もありますので、早めの発見・早めの治療につきます。今回は、代表的な病気をいくつか紹介します。


胃・十二指腸潰瘍
胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃・十二指腸の組織が剥がれ落ちた状態を潰瘍と呼びます。胃潰瘍に比べて十二指腸潰瘍は若年層に多く発症しやすいと言われています。症状としては、心窩部(みぞおち)の痛み、お腹の張り、悪心、嘔吐、胸やけ、吐血や下血を呈し、腰より右上の背部に痛みを感じることもあります。吐血といっても、真っ赤な血を吐くわけではなく、コーヒーのような色の血を吐きます。下血とは、便に血が混じることを言いますが、これも真っ赤ではなく、真っ黒なタール便と言われる便が排泄されます。腹痛(みぞおち)と腰痛が同時に起きている場合、そして上記のような消化器症状を伴う場合は、まず胃・十二指腸潰瘍が疑われます。 特に、喫煙・飲酒習慣のある方は要注意です。悪化すると、出血が増えてショック状態や急性腹膜炎を生じることがあるので、早期に受診しましょう。
急性腎盂腎炎
尿を作る役割がある腎臓。腎臓内にある尿を溜めるところである腎盂で最近が繁殖し、腎臓まで炎症が及んだものを腎盂腎炎といいます。通常、細菌は陰部から尿道を通って侵入します。細菌の侵入経路である尿道は男性よりも女性の方が短いため、女性の罹患率が高い疾患になります。
急性腎盂腎炎の症状は、排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状に加え、悪寒や震えの伴う高熱、全身倦怠感などの全身症状、腰や背中の痛み、さらには悪心、嘔吐などの消化器症状を認めることもあります。
重症化すると命の危険を伴うため、注意が必要です。腎盂腎炎の疑いがある場合は、早めに病院で診察を仰ぎましょう。
悪性腫瘍(がん)
消化器に悪性腫瘍が生じている場合、また体内の悪性腫瘍が脊椎に転移している場合、腰に痛みを生じることがあります。腰に痛みがあり、安静にしていても良くならない場合や他に症状を伴う場合には、悪性腫瘍の可能性が少なからずあります。安静にしていても腰の痛みが続く場合、悪性腫瘍ではないか確認する意味でも早期の受診をお薦めします。
胆石症
胆石症は胆のうや胆管に結石ができる病気です。胆石の中で一番多いのが胆のう結石です。主にコレステロールが結晶化したもので、脂っこい食事が好きな人や血中コレステロール値の高い人、肥満体形の人は特に注意が必要です。
特徴的な症状は右のみぞおちまたは右の肋骨下の痛みです。みぞおちの痛みの他に、関連痛として、肩や背中、腰に痛みが生じます。これらの痛みは、食後に出ることが多いと言われています。上記のような症状を伴う場合には、胆石症を疑いますので、早期に受診することをお勧めします。

受診の目安

腰の痛みと消化器症状が併発した場合、急いで受診すべき場合はどういった場合なのでしょうか。
まず、内臓が痛みの原因である腰痛の場合、安静時も痛みが続きます。普通の腰痛であれば、動作時に痛みが増強し、安静時は痛みがないことが多いので、まずは腰痛が筋や骨によるものなのか内臓が原因なのかの判断の参考にしてみてください。
とはいっても自分で判断するのは難しいですよね。大動脈系の疾患や、悪性腫瘍など早期発見が重要な疾患が隠れている可能性があります。安静時にも腰痛が続き、他に消化器症状や上記でお伝えしたような症状を伴う場合には、早めに病院を受診することをお勧めします。

胃腸と腰痛まとめ

いかがでしたか?
今回は全く関係がなさそうで、実は深い関係にある「内臓」と「腰」について解説してきました。
腰痛と消化器症状が併発している場合、大きな病気が隠れている可能性もありますので、一生使い続けていく身体ですから、面倒臭がらず早めに受診しましょう。


▼参考文献
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 急性腎盂腎炎」
日本消化器病学会ガイドライン「胆石症」
下津浦宏之, and 井上聖啓. “デルマトーム図.” 脊髄外科26.2 (2012): 147-161.
病気がみえる vol.1 消化器.第4版,メディックメディア,2015(ISBN9784896323245)

著者情報

腰痛メディア編集部
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