腰痛が起こる原因は、骨や筋肉の異常である整形外科的なもの以外にもさまざまです。
腰側にサインを出しやすい臓器として、腎臓・膵臓・子宮があり、実は隠れた病気のサインの可能性も!
一見疲れがたまり腰痛が起きていると思いがちですが、“私の腰痛って内臓の病気かも”と思いあたる方はぜひ参考にしてみてください。
今回は、腎臓が悪い時に起こる腰痛について、原因と症状、見分け方について深めていきます。

腎臓の役割

腎臓の5つの大きな役割について説明していきます。

1. 尿をつくる
腎臓の最も大きな役割は、尿をつくって不要なものを体の外に出す働きです。
心臓から送り出された血液の約4分の1が腎動脈を通って腎臓に流れ込みます。腎臓は流れ込んだ血液中から体に「必要なもの」と「不要なもの(余分な水分や塩分、老廃物など)」を分別し、不要なものとして分別されたのが尿となって体の外に排出されます。
~尿がつくられる過程~
1.腎臓に流れ込んだ血液はまず糸球体のフィルターでろ過され、原尿になります。
2.原尿には、体に必要な物質(水分、当分、ナトリウムなど)と不要な老廃物が含まれているため、尿細管を流れている間に中身をチェックしていきます。
3.必要な物質は尿細管を流れる間に吸収されて血液中に戻り、不要な老廃物は尿となって、尿管を通り膀胱へいき、体の外に排出されます。
⇒腎臓では絶えず血液がろ過され、一日に約150リットルもの原尿が作られています。そのうち約1.5リットルが尿として排泄されます。
2. 体内環境を一定のバランスに保つ
腎臓の大きな役割である尿をつくって尿を排泄する働きにより、体に必要なものを再吸収し、体の中の余分な水分や塩分、老廃物などを体の外に出すことで、体の中の水分量やイオンバランスを一定に保っています。
汗をたくさんかいたときは尿の量を減らし、暴飲暴食により体内の水分量が増えたときは尿の量を増やして、体内を一定の環境に維持しています。
また、人の体は約60%が水分で中性に近い弱アルカリ性に保たれています。体の中で糖質やタンパク質などの栄養素を代謝するために常に酸がつくられています。そのため、余分な酸は尿として体の外に排泄され、体を弱アルカリ性の状態に保っています。さらに、腎臓では体に残ってしまった酸を中和する重炭酸イオンと呼ばれる物質の量を保つ働きもしており、これによって体内を弱アルカリに保っています。
3. 血圧を調整する
腎臓ではさまざまなホルモンがつくられています。
その中の1つに血圧を調整する「レニン」というホルモンがあります。
血液の流れが悪くなる(血圧が低下する)と、それを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンは血管を収縮する作用をもつ「アンジオテンシンⅡ」というホルモンに働きかけて血圧を上昇させます。
その結果、腎臓は血圧を一定に保たれ、腎臓の機能のひとつである「ろ過機能」が円滑に働きます。
4. 血液(赤血球)をつくる働きを助ける
腎臓でつくられる2つ目のホルモンに「エリスロポエチン」があります。
腎臓には血液中の酸素の状態を感知するセンターがあり、酸素不足と感じると酸素を運ぶ血液を増やすために、エリスロポエチンという酵素が分泌されます。
エリスロポエチンは血液をつくっている骨の中にある骨髄の造血幹細胞とよばれる組織に働きかけて血液(赤血球)をつくる指示を出します。
5. ビタミンDの活性化
腎臓でつくられる3つ目のホルモンに「活性型ビタミンD」があります。
骨をつくるのに必要な栄養素であるビタミンDはそのままの形では働くことができません。肝臓と腎臓の尿細管で酵素の働きを受けて、体内で活性型ビタミンD3に変化させることによってはじめて働きます。
活性型ビタミンDは小腸から血液中へのカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にする働きがあります。
腎盂腎炎

腎臓はどこにあるの?

背中側の腰よりやや高い位置に背骨をはさんで左右に1つずつあります。
詳しく説明すると第11胸椎から第3腰椎の高さに位置します。右側には肝臓があるため左腎より少し低い位置にあります。
そら豆の形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器です。
腎臓の位置

腰痛を引き起こす腎臓病とは

尿路結石

腎臓で作られた尿は膀胱にためられ、尿道を通って体の外へ排出されます。
この腎臓から尿道までの通り道(尿路)に結石と呼ばれる塊ができてしまうのが尿路結石です。


尿路結石

症状

左右どちらかに限局した腰や背中、側腹部(わき腹から下腹部にかけて)の痛み
・頻尿や残尿感、血尿
・吐き気、嘔吐
・冷や汗
・高熱(細菌感染が起こると)

結石の移動により痛みの強弱があります。通常、数日から数十日痛みが続きます。

原因

結石ができる原因はまだはっきりと分かっていないことも多いですが、一つの原因で起こるわけではなく、さまざまな要因によって起こると言われています。
リスク要因としては、食事などの生活習慣や代謝異常などの体質、遺伝などです。
一般的には女性より男性の方が尿路結石になりやすく、男性は約7人に1人、女性は15人に1人が一生に一度は尿路結石になるといわれています。
年々結石になる人の若年化や女性にも増えてきている背景には、食生活の欧米化や動物性たんぱく質の摂取量の増加が指摘されています。

結石を構成する成分は数種類ありますが、尿路結石の約90%は「シュウ酸カルシウム」と「リン酸カルシウム」などから作られるカルシウム結石になります。
肉類が主体の食事を続けていると、シュウ酸や尿酸などの物質が体内に増えます。シュウ酸はカルシウムと結合しやすい性質があります。
本来であればシュウ酸は腸内でカルシウムと結びつき、便として体の外に排出されますが、過剰摂取をしてしまうとシュウ酸が尿の中に出てきます。
このシュウ酸が尿の中でカルシウムと結合すると、結晶化して結石になります。


腎盂腎炎(急性・慢性)

腎臓の中で尿をためる部分である腎盂内で細菌が増殖し、炎症が腎臓にまで及んだ病気です。

急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎の違い

腎盂腎炎には急激に発症して単発で終わる急性腎盂腎炎と、炎症を繰り返す慢性腎盂腎炎があります。
尿路結石などの基礎疾患がある方や尿路カテーテルを留置している方は細菌が増殖しやすいため慢性化しやすく注意が必要です。

急性腎盂腎炎の症状

・悪寒や高熱
強い腰痛

慢性腎盂腎炎の症状

・倦怠感
・吐き気、嘔吐
・頻尿や残尿感、排尿痛、尿の混濁
・発熱
腰や背中、側腹部の痛み

原因

腎臓で作られた尿は、腎盂、尿管を通って膀胱にためられ、尿道から体の外へ排出されます。本来、健康な人は、この尿の通り道には細菌は存在しません。
尿の出口から侵入した細菌が、尿の通り道をさかのぼって腎盂に達し、そこで炎症が起こることで発症します。
通常であれば、尿路に侵入した最近は体の外へ排出され、免疫力によって退治されるため、簡単には腎盂腎炎は起こりません。免疫力が低下しているときに誘発されやすくなります。
まれに、血管を通って腎臓に感染することもあります。

感染の原因となる原因菌にはさまざまなものがあり大腸菌などの腸内細菌のほか、緑膿菌やブドウ球菌などの細菌も原因となります。
一般的には女性の方がかかりやすい傾向があります。女性は尿道が短く、大腸菌などが存在する肛門と距離が近いなどが挙げられます。

腎臓が関係していない痛みもある

腰や背中の痛みがあるからといって、必ずしも腎臓病と関係あるとは限りません。腰痛以外の腎臓病の症状もあわせて確認してみてください。
腎臓内科、泌尿器科を受診しても異常が見つからなかった場合、整形外科などを受診して検査をしていくことになります。
例えば、神経痛、筋肉痛、椎間板ヘルニアなどが代表的です。

腎臓病の見分け方(腰痛以外の腎臓病の症状)

腰痛だけでは腎臓が悪いと見分けにくく判断しにくい場合があると思います。
腎臓がうまく働かなくなると起こる他の症状もあわせてとチェックしてみましょう。

尿量の異常
腎臓は老廃物を濾過し不要なものを尿として排出する役割を担っています。健康な人の尿量は通常1000〜2000ml/日ですが、腎臓がうまく働かないと尿量に異常をきたすことがあります。

1日の尿量が400ml以下の時は頻尿、100mlの時は無尿と呼びます。頻尿は腎臓に流れる血流量が減ったり尿管や膀胱が閉塞していることにより起こります。無尿は腎皮質壊死など重篤な異常の可能性があります。

逆に1日の尿量が2500ml異常の時は多尿と言われます。多尿は腎臓の昨日が低下し尿の濃縮力が低下することで起こります。

尿の性状の異常
尿の色
尿の色調は通常淡黄色から淡黄色褐色ですが、尿量の変化によってその色調は変化します。尿量が多い時は透明に近い水のような尿となり、尿量が少ない時は濃い色になります。

尿が排尿直後から混濁している時場合も病的な可能性があります。尿に血液が混濁していると血尿となり、尿に細菌が感染していると濃尿となる。また白色に混濁しているものを乳び尿と呼びます。

尿潜血
本来糸球体のフィルターを通り抜けられないものが尿として排出されます。赤っぽい尿や茶色い尿なので目で見て分かります。

尿の性状
たんぱく尿
本来腎臓で必要な物質として血液に戻るはずのたんぱく質が、大量に尿に排出されると便器内の尿は泡立ちます。

尿からの異臭
ツンとしたにおいがしたり、甘いにおいがしたりします

むくみ(浮腫)
むくみは体から腎臓がうまく働かなくなり十分に水分が排出されていないために起こります。顔や足の甲、ふくらはぎなどに目立ちやすいですが、太腿の内側などを指で押すと圧痕を残す症状が見られることもあります。

浮腫の原因は腎臓の異常以外にも心臓や肝臓、内分泌系や栄養障害でも見られることがあります。

腎臓病による浮腫の代表として、腎炎やネフローゼ症候群、腎不全に伴うことが多いとされています。

だるさ(倦怠感)
だるさは腎不全の末期でよく見られる症状です。腎臓が働かなくなり尿毒素が蓄積されてしまうことで認められることがあります。他にも貧血が進行したり、体内の水分が増えてしまうことなどさまざまな要員でだるさの症状が現れます。
高血圧
腎臓には血圧を調節するホルモンを産出します。また尿を作ったり排出したりすることによって体の水分量の調節やナトリウムや電解質の再吸収によって血圧を調節することがあります。そのため腎臓がうまく働かないと高血圧の症状が多く見られます。

高血圧と腎臓病の関係は悪循環がよく見られます。すなわち高血圧は腎臓病を引き起こし、その腎臓病が高血圧を悪化させてしまいます。


病院を受診するときの目安は?何科に受診したらいいの?

病院を受診するときの目安

放置していると腎臓の機能が低下し、急性腎不全や感染症を合併する場合があり注意が必要です。
もし、発熱がある場合や急激に症状が悪化している場合は炎症を伴っている可能性が高いので、すぐに病院へ受診することをおすすめします。
高熱に伴い重篤な敗血症に至る症例もありますので、病気を悪化させないためにも早期の検査と治療が重要です。
腎臓病か見分けがつかない場合にも何らかの不調を自覚している場合は、早めに病院へ行きましょう。

受診するのは何科?

腎臓病の症状がある場合は、腎臓内科・泌尿器科の受診をおすすめします。

症状から探せる、病気がわかる、ドクターが見つかる|ドクターズ・ファイル

※ご自身で判断できない場合は、電話で病院に問い合わせても良いでしょう。

夜間や早朝など病院が空いていない場合は、夜間救急を利用するのをおすすめします。お住いの地域によっては、夜間救急や救急車を利用する前に相談できる窓口があります。自分の住んでいる地域は、救急電話相談を行っている地域か事前に確認しておきましょう。
サービス提供機関の情報(救急・夜間診療情報)
救急安心センター事業(#7119)をもっと詳しく|総務省消防庁


放置は危険!進行すると命の危険が…早めの受診で早期発見・早期治療を行いましょう。

まとめ

今回は、腰痛と腎臓病の関係、見分け方について解説していきました。
腰痛が起こる病気はさまざまなものがありますが、腎臓病からくる腰痛がどのようなものかご理解いただけましたでしょうか。
ご説明の通り、腰痛以外の他の症状と合わせて現れることもよくあります。
もし気になる症状がある場合は、早めに病院へ受診することをおすすめします。



参考:
・尿路結石症診療ガイドライン 第2版 2013年度版 日本泌尿器科学会 日本泌尿器内視鏡学会 日本尿路結石症学会 編  金原出版株式会社
・山本新吾、他.JAID/JSC感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-.感染症誌 2016;90:1-30.

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著者情報

庄司 しおり
庄司 しおり

保有資格

看護師

経歴

大学病院にて看護師として勤務。

成田先生の運動療法に出会い、7年間悩まされていた腰痛がみるみる改善。今では自分で腰痛をセルフコントロールできる状態になりました。

同じく腰痛に悩む多くの人々に少しでも役に立てるよう情報発信していきます。

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