突然生じた腰の痛みは、様々な原因が考えられます。筋肉によるもの、椎間板と呼ばれる腰のクッション材となり得る物の問題、骨による物、関節によるものなど多岐に渡ります。

腰の骨折は割と起こりやすく、年配の方になるとくしゃみや咳で骨折することもあります。年配の方の腰の骨折の多くは転倒による外傷が多いです。骨粗鬆症を合併していると骨ももろく骨折しやすくなります。骨折は身近に潜んでいる起こりやすいものです。

今回は疲労骨折による腰痛に関して詳しく知っていただき、腰の痛みの原因となる1つを詳しく述べていきます。

疲労骨折とはなぜ起きるのか

疲労骨折は、通常の骨折が打撲や転倒などの外力が骨に加わることによって起きるのに対し、繰り返し骨の一部に負担がかかり続ける経過を経て骨折に至るものです。

直接どこかをぶつけることがなくても骨折が起きてしまうことがあります。特に特定のスポーツを繰り返し行う学生や選手、ランニングが趣味の方でも起こることがあります。

同じ動作を繰り返し行うことによって、そのスポーツ特有の負担がかかりやすい部位に繰り返し負担がかかりますと、骨にひびが入り、その状態でも負担をかけ続ければ骨が完全に折れてしまうこともあります。

特に短期間に過度なトレーニングを集中して行う時期があると、疲労が抜けきらない中で同じ動作を繰り返しますので、疲労骨折しやすくなります。

また、身体の発達が未成熟な10代頃の年代で、運動の負荷量と身体の筋力のバランスが取れていないと、骨に負担がかかり続け、疲労骨折に至ってしまうこともあります。

成長期の骨というのは、関節成長軟骨が通常よりも弱い状態ですので、負担をかけ続ければ疲労骨折に至ってしまいやすいのも特徴です。

では成長期に起こりやすい疲労骨折である腰椎分離症とはどういった疾患なのでしょうか。

腰における疲労骨折である腰椎分離症とは

腰椎分離症とは、成長期に起こる代表的な疾患です。基本的に腰を過度に動かし、反復的にジャンプや腰を捻るスポーツに起こりやすいです。

バスケットやバドミントン、バレー、サッカーなどは、反復的なジャンプや腰を捻ることが多いスポーツの代表例です。

腰椎には椎間関節という関節が左右に一箇所ずつあります。この椎間関節は、腰を反る動作や、捻った方の関節が狭くなり、圧迫を受けます。
成長期の関節は発達が不十分なので、繰り返し関節に負担がかかりますと疲労骨折に至ります。
腰でいうとこの椎間関節の後方で亀裂が生じ、疲労骨折を生じます。これが腰椎分離症の初期状態です。

腰の骨折に気づかずに繰り返し腰の椎間関節に負担をかけ続けることによって、亀裂が広がり、椎間関節の後方で腰椎自体が2つに分離してしまうことを腰椎分離症と言います。

腰椎分離症は成長期のスポーツ選手の内、30%から40%が起こっている疾患ですので、昔腰椎分離症と診断を受けたことがある方というのは多い傾向にあります。

腰椎分離症になってもスポーツなどの過度な負荷を腰に与え続けると、分離した腰椎が癒合することなく経過し、正しい腰椎の動きや支持性が得られず、腰椎分離すべり症という合併症を引き起こします。
こうなってしまうと、将来的に慢性的な腰部痛に悩まされることがあり、腰の痛みだけでなく、お尻や足の痺れを生じるなどの症状が引き起こされる場合があります。

ですから腰椎分離症は、早期に発見し適切に治療がなされることが、腰椎分離すべり症にならないためにも必要です。

腰椎だけではなく脊椎全体として分離症は起こる

背中にある脊柱は、頚椎が7個、胸椎が12個、腰椎が5個の骨が積み重なることで構成されています。

分離症の多くは、可動域が広く関節の動きが出やすい腰椎で起こりやすいですが、その他の脊椎でも同様に脊椎が分離してしまうことがあります。

これは、身体が硬いことで腰の動きが乏しい場合、脊柱の上の方で代償しなくてはならなくなるため、胸椎にも運動時の負荷が加わり続けることがあるためです。

普段から姿勢が悪い方や、身体の硬さを感じている方は、脊椎全体的にも負担がかかりやすいのだと理解しておきましょう。

腰や背中の痛みが生じた時に大切なこととは

成長期で腰や背中に痛みが生じた場合、整形外科などの医療機関を受診することをおすすめします。

これは腰の筋肉の痛みだなとか、単なるぎっくり腰だなといった、安易な自己判断は腰椎分離症に気づかず悪化させる恐れがあるので止めたほうがいいでしょう。

腰や背中に痛みが生じたときには、必ずどうして痛みが出ているのか特定することが重要です。

大抵の整形外科では、レントゲンを撮影し、脊柱の骨折がないか確実に診断をしてくれます。
骨の骨折全般は、レントゲン所見が一般的で、この検査なしには骨折の有無の判断はできないのです。
腰椎分離症ではないのか、確実な判断を医師にしてもらうことが、分離症を見逃さず、悪化を防ぐ第一歩となると思います。

腰椎分離症の疑いが分かった場合、確定診断を下すためにMRIも合わせて取ることを判断する医師もいます。
MRIは骨の状態を輪切りにして、骨に炎症が起きていないか、骨折がないか、分離症の心配がないか、詳しく調べることができます。
レントゲンだけで不安を感じた際には、MRIといった選択肢があることも知っておくと良いでしょう。

腰椎分離症の症状とは

腰椎分離症の初期は、症状として明確に出現しにくく、自身の判断でスポーツや過度の運動を継続してしまいがちです。
腰椎分離症は、基本的に椎間関節に負荷をかけることで痛みが生じますので、腰を反る動きや、腰を捻る動きで痛みが生じるかどうかを確認しましょう。

腰椎分離症が進行し、腰椎の骨が2つに分離すると、分離した骨が腰の神経と接触し、お尻や足に痺れ症状が出現する場合があります。
足にかけての痺れは椎間板の変性やヘルニアによって神経を圧迫しても生じますので、分離症との確定診断が必要です。

腰椎分離症を放っておくと、腰の骨が2つに分離したまま経過し、癒合する機会を失います。
そのため、腰の正しい動きができなくなり、腰の支えが低下することで腰椎分離すべり症となり、慢性的な腰部痛や足の痺れ症状と付き合いながら生活することになります。

腰椎分離症のリハビリ治療、改善策とは

まず始めに、腰の痛みを安易に考えず、整形外科を早期に受診し、なぜ腰が痛いのか特定することが大切です。
レントゲン所見で、腰椎分離症と診断を受けた際には、腰を反るなどの腰に負担がかかる動作は避けて、スポーツも控えるようにしましょう。

腰の動きを最小限に抑えるために、腰のサポータやベルトが必要と指示を受けた際には、必ず装着して日中を過ごすようにしましょう。

腰椎分離症は骨折ですから、安静にしていれば癒合し、骨として再生します。もし再生を望めないと診断を受けた際には、どの程度動きをすると腰に痛みが生じるのか、確認しながら生活していくことが大切です。
骨の癒合期間としては、3週間から4週間はかかりますが、安易に考えずに医師が指定した安静期間は守るようにしましょう。

経過としてレントゲン所見ではっきりと分離した骨が癒合したのが分かれば、少しずつ運動を再開していく流れになります。

2つ目に、腰回りや足のストレッチをすることです。
立位から腰を屈めて背筋群を伸張することや、太ももの後面の筋肉であるハムストリングスを柔軟に保つことは、腰の椎間関節への負担を軽減することができます。

スポーツの運動量が多いときほど、身体のケアは重要なものです。
自身の身体のコンディションは今どういった状態なのか、日々確認していくことが、長期的に選手として活躍していくことにつながるのです。

著者情報

金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD
金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD

早稲田大学スポーツ科学学術院教授

日本整形外科学会専門医・脊椎脊髄病医

日本スポーツ協会認定スポーツドクター

日本水泳連盟理事・医事委員長 ほか

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