スマホ版の腰痛改善アプリのスタディという項目の中の抜粋記事です。
腰痛の痛みの原因は何なのか、自分の腰痛のステージはどれに当てはまるのか、病院に行かなければならない症状はどういったものなのか?
を解説していきます。

【金岡恒治先生】動画解説

2021年12月 早稲田大学 金岡研究室

腰痛の”病態”とは

腰痛の病態とステージ分類、つまり痛みの程度についての説明をします。

病態というのは、その痛みがからだの中のどの場所、どの組織からおきているのかを指す言葉で、つまりは痛みの“震源地”のことです。「あなたの腰痛の病態は、椎間板におきた損傷からくる椎間板性腰痛のようです」と言うような使い方をします。 体の中の特定の機能を持った場所のことを“組織”といいますが、腰痛の“震源地”には色々な組織があります。

まず一番一般的な病態は筋肉からくる腰痛(筋性腰痛)ですね。
“あなたの腰痛の病態は、筋肉に負担がかかったことによって起きている筋性腰痛ですね”、という言い方をします。

次に多いのが脊柱の骨と骨をつないでいる組織である椎間板椎間関節です。椎間板はクッションの役割を持ちますがいろいろな理由でクッション性能が低下すると損傷が起こり痛みが出るようになります。また椎間関節も指の関節と同じような関節で、大きく動かされたり、大きな荷重がかかることで痛みが出ててしまいます。さらには骨盤を作っている仙骨と腸骨の間の関節(仙腸関節)も痛みを出すことがあります。

つまり腰痛の病態は大きく、筋性腰痛、椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛の4つに分けることができます。

腰痛の”ステージ”について

各ステージの特徴を表す表を載せます。
書籍: 金岡恒治・成田崇矢, 腰痛のプライマリ・ケア, 文光堂, 2018 より

痛みの震源地が病態ですが、地震の震度に当たるその病態の障害程度を表す言葉が腰痛のステージになります。
地震で言えばヒトが感じない程度のものから、大震災まで様々な程度がありますが、腰痛にもいろいろな程度、ステージがあります。

からだを動かすことで、からだの中の特定の機能を持った場所、つまり“組織”に何らかの負担が加わることで、最初は違和感や、詰まる感じがあると思います。この程度の症状をステージⅠとします。

組織に負担のかかる動作を繰り返してるうちに、組織の中のコラーゲンや軟骨などにごく小さい損傷(微細損傷)が起きてしまい、組織に負担のかかる動きをするときに痛みが出るようになってきます。この段階をステージⅡとします。

組織におきた微細損傷を、体内の見張り番の白血球が見つけると、そこをなおすためにサイトカインという物質が出て、修復の為に血管や神経を呼び寄せます。血管や神経は水を求めて土の中に伸びていく植物の根のようにからだのなかを伸びていきます。このように血管や神経が集まってきた状態のことを“炎症”といいます。
血管を通ってやってきた細胞が損傷した組織を、皮膚の傷が治るように修復します。そして神経は修復が終わるまで、いたんだ場所に負担をかけないように、負担が加わったときに痛み信号を脳に送ります。

炎症が起きると動いたあとにもズキズキした痛みが出るようになります。典型的な例としては、前の夜少したくさん動いた。そしたら朝起きたら腰が痛い。それはおそらく炎症が起きていると思われます。この段階をステージⅢとします。

炎症は損傷部位を修復するために必要な反応です。炎症を起こした組織への負荷を減らしておけば、自然に修復されて元通りです。不要になった血管や神経も自然にいなくなります。生命の素晴らしい自己修復機能です、自然の神秘です。
しかし、もし炎症が起きている組織に負担を加え続けたらどうなるでしょう?炎症は続き、血管はとどまり、細胞は修復に必要なコラーゲンを作り続け、かさぶたのような肉の塊を作り、伸び続けた神経はこの肉の塊に取り込まれ、押すと痛みの出る肉の塊(有痛性肉芽)を作ってしまいます。
このような有痛性肉芽が組織の中にできてしまうと、その組織に負荷が加わるたびに痛みが出てしまうようになります。

さらには血管を通ってやってきた、骨を作る細胞が、肉芽を骨に変えていきます。このように骨にも変形が出てきて、軟骨も傷んできて、痛みも増して、日常生活にも困るような状態をステージⅣとします。

そしてさらに変形が進んでいくと、関節は動かなくなり、変形した骨(骨棘)が神経を圧迫し、神経痛が出てくるようになってしまう最終段階のステージⅤに至ります。
この段階の病態は、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎圧迫骨折などです。これらの病態にも程度があって、神経の圧迫が強くて、痛みがひどかったり、足の力が入りにくいなどの麻痺症状や排尿障害などの神経症状がある場合には手術治療も考えなければならなくなります。

“見える腰痛”と“見えない腰痛”

腰痛のステージⅣになると骨の変形が起きて、骨や関節の形が変わります。このような状態のことを器質的変化と呼ぶので、ステージⅣよりうえは器質的な障害と呼ばれます。そしてこの段階になって初めて、レントゲン検査などで、病態である震源地が見える様になるので、私は“見える腰痛”と呼んでいます。

一方、程度の軽いステージⅢより下の段階では、骨の形の変化は起きていないので、レントゲン検査などでは痛みの震源地は特定できません。つまりこの段階は原因が“見えない腰痛”なのです。“見えない腰痛”が痛みを出しているメカニズムは、震源地の病態の組織に、何らかのからだの機能低下が原因で有痛性肉芽ができてしまって、そこに負荷が加わることで痛みが出ています。つまりからだの機能低下が原因なので、機能的障害とも呼ばれます。

腰痛で病院に行ってレントゲンをとっても悪いところが見つからずに原因不明と言われたことがありませんか?多くの整形外科の医師はレントゲンで見えない腰痛は原因不明として、くすりやコルセットで痛みをとる、いわゆる対症療法で済ませてしまっています。本当に痛みをとりたいなら、痛みがでた原因である、あなたのからだの機能低下を改善しなければなりません。

ではどのようにして“見えない腰痛”の震源地(病態)を見つければよいのでしょう? 痛みの犯人(病態)を探るためには、まず詳しい聞き込み調査(問診)が行われます。どのような状況で痛みが出たのか、仕事や生活習慣などできるだけ細かく多くの情報を集めます。

次にからだを動かしてどの方向で痛みが出るのかを確認します。これは今後どのような運動療法が有効であるかを見極めるうえでも重要な情報です。そして、痛みがある場所を指で押して震源地を確認していきます。痛みが背骨にある場合には椎間板や椎間関節から、痛みが筋肉の場所にある場合には筋筋膜から、仙腸関節の場所にあるなら仙腸関節からきている腰痛であることが疑われます。痛みの場所をできるだけ細かく知ることは病態探しに重要です。さらにはからだの動かし方の中で痛みが出るかどうかを探していきます。

こうしてレントゲンという物的証拠があがっていない腰痛に対しては多くの状況証拠を集めて、病態を推定していきます。犯罪者を捕まえるときには、状況証拠だけでは有罪にすることはできないのですが、腰痛に関しては状況証拠が上がっていれば、最も疑わしい病態に対して、痛みを取る働きかけをしてみます。

そして、それによって痛みが減れば、そこが悪かったんだな、推定病態が犯人だったんだな、と考えて差し支えないと思います。病態がわからないからくすりで痛みだけとって、犯人は野放しにして何も治療しない。それは痛い人、被害者にとっては良いことはなにもありません。

つまり、まずは病態を推定することが大切です。
そのために皆さんは細かいアンケートに答えたり、いろいろと動いて痛みのある場所を確認してきたわけです。

整形外科に行かなければならない症候

先に示した、ステージⅤの段階は整形外科的治療が必要になりますので、病院での治療が優先されます。

また腰痛を呈する疾患のなかには、まれに red flagとも呼ばれる、腹部大動脈瘤解離、化膿性脊推炎、脊椎腫瘍や転移性腫瘍などの早急に処置を要する病態もあります。これらの疾患では、安静にしていても痛みが和らがない、寝ていても痛みが続く、発熱している、食欲がない、理由なく体重がへっているといった症状があります。これらの症状を伴うときには、 red flagを疑って早急に専門的検査や治療が行える病院に行きましょう。

また高齢者に好発する脊椎の圧迫骨折においては、骨粗鬆症の程度が強い場合には徐々に椎体がつぶれていって大きな変形を残すこともありますので、整形外科を受診してください。アプリでは腰痛評価で red flagが出た場合はすぐに病院への案内を勧めていますが、もしそのような表示がされていなくても、上記に当てはまる方は病院を受診してください。

 

 

 

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著者情報

林 慎一郎(はやし・しんいちろう)
林 慎一郎(はやし・しんいちろう)

専門

株式会社ZEN PLACE アプリ開発責任者

金岡恒治先生、成田崇矢先生監修のYO-TSU DOCTORの開発を担当

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