MENU
メニュー

多くの男性は50歳を過ぎた頃、前立腺の病気が気になりはじめます。この時期は、加齢もあり腰痛の悩みも増えるもの。一見何の関係もないと見過ごされやすい腰痛と前立腺ですが、原因のはっきりしない腰痛がきっかけで、前立腺がんが発覚する事例も少なくありません。泌尿器科に行くのは「恥ずかしい」「痛い診察がある」といった先入観で抵抗があるものです。しかし近年増え続ける前立腺の病気に対して、さまざまな配慮がなされるようになりました。早めに発見・対処で、その後の人生も大きく変わります。ここでは、腰痛と関係がある前立腺の病気を知り、前立腺の健康を守る生活の工夫をお伝えしていきます。老後も自分らしく健康に生きるため、前立腺について考えてみませんか?

腰痛と前立腺の関係

前立腺は、精液の成分のひとつである前立腺液を作る器官です。作られた前立腺液は、精子とともに精のうに貯められます。精のうにためていた精液を射精として押しだすとき、前立腺の筋肉は収縮します。同時に膀胱側の尿道をキュッとしめることで、精液の膀胱への逆流を防ぐ役割もあるのです。こうして前立腺は筋肉によってはたらきを維持しています。
加齢とともに筋肉が衰え腰痛がおきやすくなるように、血管や内蔵、各器官の壁の筋肉のはたらきも弱くなり、前立腺の動きも落ちてきます。また、前立腺は男性ホルモンの影響を多く受けているため、加齢によりホルモンバランスが崩れると前立腺の病気へとつながるのです。
また、前立腺は下半身に位置し腰に近いため、前立腺の病気で腰痛がおきやすいといえます。

前立腺がん

前立腺の病気で腰痛がおこるといえば、まず頭をよぎるのは前立腺がんでしょう。前立腺がんは、進行が遅く予後もよく、全がん協生存率のデータ注1)では、1期~3期の5年生存率が100%という結果になっています。しかし腰痛で受診するころには、隣接する臓器や骨に転移していることが多く4期となります。4期の5年生存率は65%に下がるため、腰痛のサインを見逃さないようにしたいものです。

症状

初期は自覚症状がほとんどありません。
進行してくると、尿がでにくい、トイレが近くなる、排尿しても尿が残っている感覚があるなど現れますが、加齢によるものと見過ごされやすくなります。
さらに進行してくると尿もれや排尿時の痛み、血尿など不安になる症状が現れます。しかし、疲れや細菌感染、炎症のせいなどと放置してしまいがちです。
がんが膀胱や尿道に広がると、尿がでなくなったり痛みが増したりして異変を感じ、精のうに広がると精液に血が混じりることがあります。
がんがリンパや骨に転移すると腰痛、脚のしびれやむくみ、神経に及ぶと激しい痛みやまひなどの神経症状がでてきます。

症状がひどくなるまでに発見することが大切です。

前立腺がんの検査

法律で定められている定期検診では、前立腺がんの検査は含まれていません。そのため前立腺の検査をしたことがない人は多いでしょう。しかし、早期発見するためにも50歳を超えたら検査をおすすめします。泌尿器科には抵抗があるものですが、前立腺がんのPSA検査は血液検査なので、内科など他科のクリニックや病院でも行えます。自治体のがん検診や人間ドックでも検査ができるので、ぜひ受けてみましょう。

手術のあとに腰痛の悩みも

前立腺がんの手術や放射線治療をした場合、前立腺を囲む筋肉も弱くなります。筋肉の衰えで骨盤や腰回りの不調がおこり、症状のひとつにあるのが腰痛です。
加齢で筋肉が減少すると腰痛の原因にもなるため、女性だけでなく、中年以降の男性にも骨盤底筋体操が有効です。とくに尿もれや尿のキレが悪くなった悩みの方におすすめします。

前立腺炎

前立腺炎は、前立腺に炎症がおこり、腫れや痛みなどの症状があります。とくに10代後半から50代に多い病気です。原因は通常不明ですが、急性の場合細菌感染が多くなります。
前立腺炎の症状では腰痛が多くみられます。膀胱や骨盤の筋肉、とくに会陰の筋肉がけいれんすることで、さまざまな症状がおこるのです。排尿に関する違和感、下腹部や足の付け根あたりの違和感、鈍い腰痛、お尻の違和感など、生産性の高い世代にもかかわらず、集中力を欠いてしまい仕事に支障がでる可能性が高くなります。
はっきりとした原因がわからない、慢性前立腺炎は、骨盤内うったい症候群とも呼ばれます。日々の長時間のデスクワークやバイクや自転車での骨盤内血流のうったいで、若い人にも多いのです。
薬での治療のほか、筋肉の緊張をやわらげ血行をよくするための前立腺マッサージや入浴やリラクゼーションなどが効果的とされています。

前立腺肥大

老化にともなう生理的な現象として、前立腺が大きくなる前立腺肥大症。原因は、加齢で男性ホルモンのバランスが変化するためと考えるのが一般的です。前立腺の発育は思春期と50歳以降におこり、思春期は細胞の数が増え、50歳以降では細胞1つ1つが肥大します。前立腺肥大で腰痛を訴える人は多くありません。腰痛で医療機関にかかり、排尿トラブルがある話がでて、前立腺肥大症がわかることが多いようです。

症状

初期は肥大した前立腺が尿道を圧迫しはじめるため、トイレが近くなる、尿意を感じてから我慢できずにもれそうになるなどの症状からはじまります。
肥大がすすむと、尿が勢いよくでずにチョロチョロと長引く、キレが悪い、ファスナーをしめたあとにも少しずつにじみでる、残尿感があるといった症状になります。
さらに進行すると、尿がまったくでなくなります。
前立腺肥大は軽視されやすいですが、尿路の感染率も高くなるので、早めに受診しましょう。
また、前立腺肥大が前立腺がんに変わることはありません。前立腺肥大は前立腺の中身の組織が肥大し、前立腺がんは主に中身を包むようにしてある外側の組織に発生しますので別物です。しかし、前立腺肥大の症状と前立腺がんの症状では重なる部分も多いため、識別するために前立腺がん検査をすることがあります。

男性の更年期障害

「最近だるい、疲れやすい」「急なほてりやのぼせ、動悸があるので脳や心臓が心配」「めまいや吐き気がつらい」「イライラして怒りっぽい、人間関係のトラブルも」「性機能が心配」など、原因不明でさまざまな不快な症状を示すのが男性更年期障害。男性ホルモンの減少により、40代頃から現れます。この男性更年期障害の症状のひとつに腰痛があるのです。前立腺は男性ホルモンの影響を受けるため、更年期の代表的な悩みになります。
男性更年期障害のトリガーとなるのが、精神的・身体的・社会的なストレスです。若い頃は無理がきいたからと、同じように精神的・身体的に負荷をかけていませんか?また仕事などの社会生活も、ライフステージにあわせて変えていくことが必要です。もう一度自分を見つめ直してみましょう。

すこやかなシニアライフのために

前立腺の病気は直接命にかかわる可能性も高くはないため、軽視されやすい問題です。しかし、加齢にともなう前立腺の病気や不調で生活の質が低下すると、自分らしい生活が阻まれてしまうでしょう。すこやかで元気なシニアライフを満喫するためにも、気をつけたいことがあります。できるだけ男性ホルモンの低下をゆるやかにし、同時に腰痛を予防することです。

筋トレ

筋トレは、テストステロンという男性ホルモンの分泌を増やすと知られています。運動習慣のない人は、腕たてふせや腹筋、スクワットなどの筋トレを日課にしてもいいでしょう。同時にタンパク質の量を意識し、脂質を抑える食生活が、筋肉低下防止に欠かせません。また、アルコールやたぱこも筋肉をつけるためには悪影響です。健康的な生活が大切になってきます。

男性も骨盤底筋体操を

前立腺肥大症の行動療法では、運動や食事、嗜好品の生活指導、膀胱訓練、骨盤底筋体操があります。腰痛予防のためにも、男性にも骨盤底筋体操はおすすめです。長時間のデスクワークや運動不足は、前立腺や腰痛にいい影響をもたらしません。こまめに体を動かすことは生活習慣病だけでなく、男性のアイデンティティーにおいても重要な役割をしめすのです。

中高年男性にとって腰痛と前立腺の関係は大切

あまり意識しない腰痛と前立腺の関係ですが、じつは中高年の男性にとって、とても興味深いものでした。前立腺の悩みは人にも相談しづらく、泌尿器科の受診も敷居が高く感じます。しかし、加齢とともに弱る足腰や前立腺を守るために、規則正しい健康的な生活、ストレス・コーピング、がん検診を忘れずにいたいものですね。健康寿命を意識して、生き生きとしたシニアライフを送りましょう。

【参考サイト】
注1)かんたんデータ|全がん協加盟施設の生存率共同調査 全がん協生存率
https://kapweb.chiba-cancer-registry.org/
前立腺の病気 |山口県東部泌尿器科研究会
http://www.rguey.jp/p34.htm
前立腺がん 基礎知||[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)
https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/index.html
前立腺がん患者は運動をすべきですか? | 海外がん医療情報リファレンス (cancerit.jp)
https://www.cancerit.jp/62191.html
前立腺炎 – 21.男性の健康上の問題|MSDマニュアル家庭版 (msdmanuals.com)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/21-%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E8%89%AF%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%89%8D%E7%AB%8B%E8%85%BA%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%89%8D%E7%AB%8B%E8%85%BA%E7%82%8E?query=%E5%89%8D%E7%AB%8B%E8%85%BA
前立腺肥大症診療ガイドライン|泌尿器科学会
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/08_prostatic_hyperplasia.pdf
【6.男性の更年期障害】| 大阪府医師会 健康教育テキスト
http://www.jotoishikai.or.jp/kyouiku/kenkou/06/index.html

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator