腰痛の症状とともに食欲がないと、何か重い病気があるのでは?と不安になります。一般的に腰痛の原因は、骨や神経、筋肉に問題があると考えますが、実は内臓や血管、心に原因があることも※1。ここでは、整形外科的な病気以外に焦点を当て、考えられる原因についてご紹介します。腰痛と食欲がない原因を知る手かがりをつかむことで、1日も早く不安を取り除きましょう。

食欲がないレベルはどれくらい?

食欲がないと、精神的なストレスかな?胃腸の調子が悪いのかな?と自己判断で市販薬を飲んだり、消化のよい食べ物を少量摂ったりで様子をみることも多いのではないでしょうか。しかし腰痛があり食欲がない場合、重い病気が潜んでいる可能性も考えられます。
また、食欲がないと感じるレベルには個人差があります。とくに空腹を感じなければ食欲がないと判断する人もあれば、体重が減ってきてはじめて異変に気づく人などさまざまです。以下の食欲がない程度のレベルで確認してみましょう。

重症度 程度 症状
軽度 食生活に変化がない食欲の低下
中等度 著しい体重減少や栄養失調がない食事量の低下

著しい体重減少、栄養失調がみられる
     

※2参考:公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/shokuyoku-fushin.html
重度になると緊急性を要します。直ちに受診しましょう。軽度や中等度の場合もかかりつけ医に相談をしてください。

腰痛が先か食欲がないのが先か

腰痛と食欲がない症状に心当たりがあるとき、腰痛の症状が先にあったのか、食欲がないことが先で後から腰痛に気づいたかで原因も変わってきます。

先に食欲がなくなった

先に食欲がない状態が続いて腰痛を感じるようになった場合、十分な栄養を摂取できていないことからの腰痛である可能性が高いです。
栄養不足で、筋肉の働きや血行が悪くなり、血液の循環量が多い腰に負担がかかります。その結果腰痛がおきやすくなります。特に更年期女性になると、カルシウムやマグネシウム、ビタミンDといった骨に関係する栄養が不足し、骨粗鬆症の悪化に伴う圧迫骨折をおこしていることも考えられます。
胃腸機能の低下でも同様に食欲がない症状は多いですが、普段とさほど変わりなく食事が行えている場合でも消化吸収能力が低下して、必要な栄養を維持できなくなっていることもあるのです。
がんや血液の病気でまず食欲が落ち、伴う症状のひとつである腰痛が後からでてくることもあります。いずれも、続く食欲不振には自己判断ではなく、専門家に相談することが大切です。

先に腰痛があった

先に腰痛が続いて食欲がないことを自覚するようになった場合、精神的ストレスが考えられます。痛みそのものによる苦痛、可動域の制限で日常生活がスムーズにいかない不満、先行きの不安から食欲がなくなることも多いものです。精神的な原因では、食欲不振と腰痛の他に、不定愁訴と言われる原因のはっきりしない不快な症状を伴うことが多いでしょう。
血行不良や疲れによる全身症状の中で、食欲がなくなり腰痛になることもあります。
ほかに、腰痛のために日常的に内服している痛み止めの薬の副作用で、食欲不振があります。かかりつけの整形外科医に相談しましょう。

腰痛で食欲がないときにすぐ受診が必要な状態

腰痛と食欲がない症状がみられるときに、すぐに受診を必要とする病気が潜んでいる可能性があります。次のような場合はただちに受診しましょう。

・発熱
・拍動性の痛み
・安静にしていても持続する痛み
・眠れない痛み
・胸の痛みがある
・背中までに及ぶ痛み
・突然の激痛
・足のしびれ、感覚が鈍っている
・倦怠感がある
・胃やおなかの膨らみや張り
・排尿・排便の減少
・悪性腫瘍、他の病気の既往
・非合法薬物の使用
※3

腰痛で食欲がないときに考えられる病気

腰痛で食欲がないときに、骨や脊椎、関節、筋肉などの整形外科領域以外で考えられる病気は以下のとおりです。

がん

原因不明の食欲不振が続くとき、がんを疑う人も多いのではないでしょうか。腰やおなか付近にできる腫瘍の症状に、食欲がないこともよくみられます。がんの既往があるときは、骨、脊髄への転移も疑われるため、気づけば早めに主治医に症状を伝えることが大切です。

例)膵がん、前立腺がん、精巣がん、子宮がん、大腸がん、骨肉腫、悪性リンパ腫、白血病など

消化器系の病気

食欲がないときにもっとも出やすい症状は、胃腸の不調です。胃腸の痛みを伴うことも多く、複数の消化器症状を認める場合もあります。一般的にみぞおち付近だと胃・十二指腸が多く、左上腹部や背中にの突き刺すような痛みは膵胆管であることが多いです。

例)胃・十二指腸潰瘍、大腸炎、クローン病、肝炎、胆嚢炎、膵炎など

感染症の病気

腰痛で食欲がない、さらに発熱を伴う場合は感染症が疑われます。腰痛が重くなく見過ごしていたために、初診で内科にかかりMRIなどの画像診断がされずに悪化する例も。腰痛が続いている場合はその旨も医師に伝えましょう。インフルエンザや新型コロナ感染症での高熱時に腰痛を伴うことも知られています。

例)化膿性脊椎炎、髄膜炎、脊椎カリエス、インフルエンザ、新型コロナ感染症など

循環器系の病気

腹部大動脈瘤という、おなかの中心を走っている大動脈が風船のように膨らむ病気は、破裂の危険もあって注意が必要です。動脈のコブが大きくなり周りの腰椎や神経を圧迫すると突き刺すような痛みの腰痛がおこり、消化器を圧迫すると食欲不振がおこるのです。とつぜん胸と腰背部に引き裂かれるような強い痛みがおこると、大動脈の壁が裂ける解離の可能性があり、※4救急車を呼ぶ必要があります。

例)急性大動脈解離、腹部大動脈瘤、心不全、ジキタリス(薬剤)中毒など

腎臓・泌尿器系の病気

腎臓や泌尿器は腰付近に位置する臓器のため、主な症状のひとつに腰痛があります。特にドンと重たい痛みが特徴です。腎臓に炎症がおきる腎炎は悪化すると消化器症状も伴い、吐き気や食欲不振がおこります。腎・尿路結石も深夜から早朝に、腰背部痛がおこることで有名ですが、食欲不振の症状もみられるのです。

例)腎盂腎炎、糸球体腎炎・ネフローゼ・慢性腎不全、多嚢胞腎、尿路結石など

血液系の病気

血液系の病気で、腰痛と食欲低下の症状は多いです。

例)多発性骨髄腫、悪性貧血、白血病、悪性リンパ腫など

婦人科系の病気

子宮や卵巣も腰付近に位置しているため、婦人科系の病気でも腰痛を伴うことが多くなります。更年期障害や女性ホルモンの崩れでも、腰痛や食欲がない症状がでやすいのです。女性に多い低血圧でも、食欲の低下や腰痛を伴う場合があります。
また、妊娠が可能な時期では、腰痛があり食欲がないと妊娠の可能性を考えることも多いのです。

例)骨盤性腹膜炎、子宮内膜症、骨盤内症候群、女性ホルモンのアンバランス、更年期障害など

精神・ストレス系の病気

3カ月以上続く慢性腰痛には、特定の問題が見られないのに続くケースがあります。この場合心理的要因があるかどうかチェックすることが必要になります。BS-POP質問表が使われることが多いでしょう。※5心因的な要因がある場合、診断に応じて治療・対処されます。

例)神経性食欲不振、うつ病、自律神経失調症、不安神経症、ストレスなど

まとめ

腰痛で食欲がない場合、整形外科の病気以外に原因がある場合も多く、中には命の危険性を伴うものがあります。自己判断で薬を内服すると、発見を遅らせることにもつながるので、速やかに主治医に相談しましょう。不安が強いとストレスも強まり、さらに腰痛と食欲がない症状を悪化させたり、長引かせたりすることになりかねません。受診前に「腰痛ドクターアプリ」で現在の体の状態を把握しておくこともおすすめします。

【参考リンク】
※1腰痛診療ガイドライン https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf
※2公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネットhttps://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/shokuyoku-fushin.html
※日本理学療法士協会 腰痛予防に対する理学療法の基礎心理社会的要因をふまえてhttp://www.japanpt.or.jp/upload/branch/occhealth/obj/files/H29%E5%B9%B4%E5%BA%A6%20STEP%EF%BC%91%EF%BC%88%E6%B5%85%E7%94%B0%E5%85%88%E7%94%9F%E5%88%86%EF%BC%89%E9%85%8D%E5%B8%83%E8%B3%87%E6%96%99%E7%94%A8%2021-40-45-684.pdf
※4国立循環器病研修センタ病院 http://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/aortic-aneurysm_dissection.html
※5M-revier https://med.m-review.co.jp/article_detail?article_id=J0062_0201_0026-0029

著者情報

腰痛メディア編集部
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