腰と背中が痛いときに考える病気とは

腰痛と背中の痛みの両方があるときには、筋肉のコリによるものと思いがちです。
しかし、腰痛と背中の痛みがあるときには、体の病気からくる症状のことがあります。
特に注意が必要なのは、膵臓がんなどの生命の危機に陥る可能性のある病気です。
今回は、腰痛と背部痛があるときに考えられる病気について解説します。

腰痛と背部痛の両方があるときの原因となりうる内臓疾患とは

腰痛と背部痛がある場合に考えられる内臓疾患は、たくさんあります。
主なものとしては、胆石、胆嚢炎、膵臓がん、急性膵炎、慢性膵炎などです。
それ以外にも解離性大動脈瘤などもありますが、これらはすぐに呼吸困難や意識消失があり、すぐに救急搬送にとなることが多いですので、今現在「なんとなく痛いな」というくらいであれば、可能性は低くなります。

最も心配な内臓疾患は、慢性膵炎や膵臓がんが挙げられます。
日常的に、毎日のようにアルコールを飲む習慣のある方に多い病気です。

脂っこいものを食べた後に背中の痛みだけでなく、右の脇腹やみぞおちのあたりに痛みがでる場合は胆石、胆嚢炎の可能性があります。

急性膵炎、慢性膵炎、膵臓がんの場合も、背部痛と腰痛の両方があらわれます。
それぞれ腰痛、背部痛と一緒に出る症状が異なるため、それらに注意する必要があるでしょう。

慢性膵炎は腹痛、背部痛、腰痛などが代表的な症状

膵臓は、複数の消化酵素を含む「膵液」を分泌し、十二指腸で食べ物を消化できるようにしたり、血糖をコントロールするインスリンなどのホルモンを血液中に分泌する大切な臓器です。

慢性膵炎の原因は、長期間、大量にお酒を飲み続けることにより、膵液がたくさん分泌され続け、膵液が膵臓自体を溶かしてしまい、膵臓に繰り返し炎症を起こすことにより、膵臓の細胞が徐々に破壊されます。

最終的には、膵臓が線維化し、硬くなったり、膵臓に膵石という石ができたりします。

慢性膵炎の代表的な症状は、腹痛、背部痛、腰痛、倦怠感、下痢などです。
下痢になるため、体重が減ったり、白っぽいような黄色っぽいような水に浮く「脂肪便」が出ることもあります。
膵臓の働きが悪くなるため、血糖のコントロールができなくなり、糖尿病を発症することもありますし、慢性膵炎から膵臓がんになることもあるため、早期発見、早期治療が大切です。注1

慢性膵炎の治療は、禁酒することが重要です。
薬での治療としては、膵液が流れる「膵管」という管を緩めるような薬を使い、膵液の流れをよくしていきます。
痛みに対しては、非ステロイド性消炎鎮痛剤を使います。

それでも改善しない場合には、内視鏡を使って狭くなった膵管にステントという金属の網の管を入れて膵液の流れを改善するような処置をすることもあります。

慢性膵炎が進行してしまっている場合には、膵臓の消化酵素を補う薬(膵消化酵素剤)を使いつつ、膵臓がんが発生していないか定期的に検査をしていきます。

膵臓がんでは症状が出た時には進行していることが多い

膵臓がんは、進行するまで自覚症状が乏しいのが特徴です。
進行してから、腹痛、背部痛、腰痛、食欲不振などの症状が出現します。
慢性膵炎から膵臓がんになることもありますので注意が必要です。
慢性膵炎と同じく、長期間にわたり大量にお酒を飲む習慣がある方に多い病気です。
発見された段階で手術できるケースは2割程度と早期発見が難しい病気のひとつです。
症状が出た時には速やかに受診し、検査を受けることが重要でしょう。

手術をすることができたとしても、5年生存率が低く、がんの中でも予後が悪いものと言われています。注2

急性膵炎は発熱、上腹部痛、吐き気とともに背部痛が起きることも

急性膵炎では、発熱、左上腹部痛、吐き気などの症状が出ます。
「急性」であるため、症状の出方が激しいのが特徴です。
背部痛が起こることはまれですが、時々背部痛を訴える方もいます。

初期症状は軽い胃の痛みかなと思う方も多いものですが、時間が経過すると、みぞおちあたりの激痛が現れます。

重症のケースでは、胸水や腹水が溜まり、意識を失ったり、呼吸困難を起こしたりすることもあり、生命の危機に陥ることもある病気です。

治療としては、基本的に入院し、飲み物も食べ物も一切摂らないよう指示されます。
消炎鎮痛剤を使用して痛みを緩和させますが、激痛であるため、麻薬性鎮痛剤を使うこともあるほどです。

点滴で水分補給をして、膵臓の細菌感染予防のために抗生剤や、炎症を引き起こしている酵素の働きを抑える薬(たんぱく分解酵素阻害剤)などを使用し、治療をしていきます。注3

胆石、胆のう炎は上腹部痛、吐き気、発熱とともに背部痛や腰痛が現れる

胆石、胆のう炎では、脂っこい物を食べた後に上腹部痛、吐き気、発熱などの症状が現れるのが特徴です。
放散痛で背中に抜けるような痛みが出たり、腰痛が出たりすることもあります。
胆石が胆汁の流れを悪くした場合には、皮膚や白目が黄色くなる黄疸の症状が出ることがあります。

胆石は40歳代の肥満の女性に多いと言われています。

「胆石の4Fまたは5F」というものが有名です。
Female(女性)、Forty(40歳代)、Fat(肥満)、Fair(白人)、Fecund(多産婦、多く子どもを出産した人)では、胆石になることが多いため、それらの頭文字がFであるため4Fまたは5Fと呼ばれています。注4

特に、胆石は急性膵炎と同じように激痛となることが多く、救急車で搬送されるケースが多いものです。

治療としては、手術を行うのが一般的です。
手術をすれば完治します。
腹腔鏡下胆のう摘出術という手術では、大きくお腹を切らなくても手術が可能です。
お腹に3つ穴を開けて、器具を挿入します。
腹腔鏡でお腹の中を見ながら手術をしていきますので、大きな傷ができないため回復も早く体への負担も少なく済みます。

癒着がある場合など、一部のケースでは腹腔鏡から開腹手術に切り替えることもあります。注5

解離性大動脈瘤では急激に現れる激痛の背部痛、腰痛

解離性大動脈瘤は、生命にかかわる重大な病気です。
多くの場合は、突然現れる背部痛、腰痛とともに呼吸困難となり、意識を失いますので、救急搬送される重篤な病気です。

心筋梗塞の前兆で背部痛が起こることがある

心筋梗塞というと、20分以上続く激しい胸の痛み、胸の圧迫感が有名ですが、前兆症状があるのです。

前兆の症状としては、胸の痛みや圧迫感だけでなく、背部痛、胸やけ、歯が痛む、顎が痛む、肩の痛み、倦怠感、吐き気などの症状が前兆として挙げられます。注6

もともと腰痛がある方で突然背部痛が出現し、前述のような症状も伴っているような場合には心筋梗塞の可能性もでてきますので、循環器科を受診してみるとよいかもしれません。

時間経過とともに、症状が悪化してくることが多いですので注意が必要です。

症状が悪化するようなら、速やかに循環器科を受診しましょう。

背部痛と腰痛の両方があるときには内臓疾患の可能性を疑おう

これまで解説してきたように、背部痛と腰痛の両方があるときには、内臓疾患の可能性を疑う必要があります。

整形外科ではなく、背部痛と腰痛以外にどのような症状が出ているのかをよく観察して、胆石、胆のう炎、慢性膵炎、膵臓がんなどが心配なときは消化器科を、心筋梗塞が心配なときは循環器科を受診するとよいでしょう。

背部痛や腰痛も激痛である場合には、我慢せずに、救急車を呼び、受診することも大切です。

背部痛と腰痛の両方が現れる内臓疾患は、生命にかかわるような重大な病気もあります。
続く場合には、早めに受診して検査を受けるのがよいでしょう。
早期発見、早期治療が重要です。

参考文献
注1、注2)患者さんとご家族のためのガイド|日本消化器病学会ガイドライン(https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/

注3)急性膵炎診療ガイドライン|日本肝胆膵外科学会(http://www.jshbps.jp/modules/publications/index.php?content_id=6

注4、注5)高田忠敬編、急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018、医学図書出版

注6)急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)|日本循環器学会(https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2018_kimura.pdf

著者情報

腰痛メディア編集部
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