今も腰痛でお悩みの方、おつらいですよね。腰痛は本当にたくさんの人が抱えている悩みです。
ご自分の腰痛について痛みがでている原因を知っていますか?一度は調べたことがありますか?
腰痛の原因は多種多様といわれています。なぜって、それはもう、腰には、筋肉や骨はもちろん、痛みを受け取る脳から、腰にある様々な臓器に至るまで、幅広いからだの機能を支えている場所、からだの重要な部分だからです。
その中でも、今回は、あまり聞きなれないと思いますが、「脊髄腫瘍」(せきずいしゅよう)、脊髄のがんについてお話させていただきますね。ご自分に関係ないと思われるかもしれませんし、腰痛の原因の頻度からはまれですが、ぜひご一読ください。なぜなら、命やその後の生活に大きくかかわる腰痛の原因だからです。
かくいう自分も腰痛で悩み、腰痛を抱える家族もいますし、以前は救急外来で腰痛で受診された方を診察した経験もあります。分かりやすくを心がけてお話させていただきますね。

脊髄を知ろう

「脊髄」と聞いて、ピンとくる人は珍しいでしょう。
大まかにいうと、脳からつながった背中の真ん中にある神経の束のことです。
人にとっては命にかかわる、大切な、とても大切な部分なので、脊椎と呼ばれる背中の骨の中、脊柱管(せきちゅうかん)と名前のついているトンネルみたいな空間にすっぽり守られる形で存在しています。脊髄は脳と同じ、全身をつかさどる司令塔のような存在で、脳とともに中枢神経と呼ばれます。
これで脊髄の説明は終わりたいのですが、もう少しだけ、腫瘍のお話にかかわる脊髄のまわりのことにも触れておきます。
背骨つまり脊椎は、おおざっぱな表現ですが首から腰の上端まで積み木を縦に重ねたように複数の椎骨が連なっています。ただし、腰から下の脊椎の中にあるのは、脊髄ではなく馬尾(ばび)神経と呼ばれています。脊髄という神経から小さな穴を通ってからだの各臓器にでるので末梢神経と呼ばれて、中枢神経と区別されています。

そして脊髄は、人間にとっては大変大切な部分なので、丈夫な袋のような中に大切に入れられています。この袋を硬膜(こうまく)といって、さらにその内側にクモ膜と呼ばれるさらにもう一枚の薄い膜に包まれています。

脊髄腫瘍、脊髄のがんと一言でいっても、脊髄そのものにできることもあれば、脊髄を包む膜の内側にできる場合も、外側にできる場合もあるので、ちょっと細かい説明になってしまいました。そして、悪性のもの、つまりがんも含まれていますが、良性のものもあるので、ここからは「脊髄腫瘍」と統一してお話していきます。

脊髄腫瘍の症状とは?

脊髄腫瘍の症状、それはやはり痛みです。ですので腰痛も含まれます。多くの方が痛みを自覚されて発見されます。
症状がでる理由ですが、できた腫瘍によって、脊髄や馬尾神経が圧迫されることで起こります。
ですので、腰痛としてでるほか、しびれ、感覚がおかしい、筋力が落ちるなどです。
しびれといわれても分かりにくいかと思いますが、正座をしすぎたときの足の間隔が、足の指先や手の指先にでることをいいます。

脊髄に腫瘍ができると、圧迫によって一般的には感覚と運動の機能の両方が同時に損なわれます。先ほどお伝えしたように、脊髄は脳から腰の上端までつながっているので、腫瘍のできた場所によって症状が腕にでる場合、足にでる場合と様々です。重症としては手足が動かなくなる麻痺(まひ)という症状があげられます。
また、なかには膀胱直腸障害といって、排尿や排便にかかわる機能に影響がでて、失禁してしまうことがあります。やっかいなことに、なかには腫瘍がゆっくりと大きくなるため、症状に気づかずに大きくなってしまう場合もあるといわれています。

脊髄腫瘍かもと思ったら(診断、検査)

もし、腰痛でつらいほかに、前項にかかせていただいた腰痛以外の症状に少しでも心当たりがありましたら、整形外科を受診なさってみてはいかがでしょう。
大変ご不安になってしまった方のためにも、ここで頻度についてお話させていただきますが、脳腫瘍よりもまれな、一年間に10万人のうち、2人ほどの方が診断されると報告ではいわれています。年齢は様々で、子供を含めた若い方から年配の方まで含まれています。
診察のときに、ハンマーのような診察器具でトントンされたことはありませんか?深部腱反射といって神経系の反応を確認すると反り返るように反射が強くでるという所見がみられる方もおられます。ただ、さきほどお伝えした通りで、腫瘍のできる場所によってはこれがみられないこともありますね。

診断の方法ですが、画像検査とりわけMRI検査が大変有用です。MRIの中でも造影剤という薬を使った検査が、さらに腫瘍のタイプや広がりを確認するために行われることが一般的です。

脊髄腫瘍の治療法は?

もし、MRI検査で脊髄腫瘍が見つかったら、治療法としての原則は腫瘍切除という手術になります。手術でその腫瘍組織の一部もしくは全てを取って、さらに詳しい診断のため病理組織を調べます。
病理診断というのは、顕微鏡を使って、腫瘍の組織を詳しくみて、最終診断をすることです。これが治療に大変重要な役割をはたすのです。
腫瘍はそれぞれの性質を持ちます。どんな薬が効きやすいか、放射線が効果的かなどです。病理組織からその腫瘍に効果の高い治療を組み合わせて行われます。
全く症状がない場合や軽度の場合、またはご高齢で進行が遅いと分かれば、手術をせずに様子をみていく場合もあります。

ここからは少し細部になりますが、脊髄腫瘍の種類についてお伝えすると、1.脊髄を知ろうの最後の部分で触れましたが、腫瘍のできる部位により大きく3つに分けられています。
脊髄そのものにできる髄内腫瘍、脊髄を包む硬膜の中で脊髄の外にできる硬膜内髄外腫瘍、膜の外にできる硬膜外腫瘍です。
この部位による分類のほか、顕微鏡で確認する病理組織学的な違いから、腫瘍の名前やタイプ分けがされています。
硬膜内髄外腫瘍に多いのは、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)や髄膜腫で、脊髄腫瘍の中では多く、前者で全体の3割、後者で2割を占めるといわれています。ともに基本的には良性の腫瘍ですが、それでも圧迫によって麻痺を起こすこともあります。
硬膜外腫瘍に多いのは転移性といわれていますが、神経そのものや硬膜から発生する腫瘍もあります。ちょっと専門的な話になってしまいました。

まとめ

今回は、脊髄腫瘍という大変、とっつきにくいテーマではありましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。腰痛でお悩みの方の、大多数の方にはあてはまらないかもしれない、まれな原因の一つではありますが、この病気の存在をご自身が知らなければ、疑うこともないですよね。そして、なかなかまれゆれに、疑われることも少ないかもしれません。ただ、早期に発見できることでその後の予後は変わります。知らなければ損をする方がおられるかも!そんな思いで腰痛で長く悩まれている方には読んでいただきたく、お話させていただきました。

出典:
日本脊髄外科学会
日本脊椎脊髄病学会
日本整形外科学会
腰痛ガイドライン
脊髄腫瘍の診断と治療 角田圭司 2019
日本病理学会

著者情報

腰痛メディア編集部
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