はじめに

物を持ち上げようとしたとき、腰をひねろうとしたとき、ただ立とうとしただけでも急に腰痛が起こることはありませんか?
その腰の痛みが原因で起き上がることや歩行が困難になると、ぎっくり腰と思う方もいると思います。しかし、実は棘突起間インピンジメント症候群という疾患である可能性も否定できません。この2つは症状や原因など類似していることが多いのですが、ぎっくり腰の方が広く知られているため、あまり棘突起間インピンジメント症候群と疑われることはありません。
インピンジメント症候群自体は主に肩峰下に現れることが多く、野球選手や水泳選手など肩を酷使してしまうスポーツ選手にみられ、腰の棘突起間に起こることは極めてまれにしかありません。そのため一般的には馴染みのない病名といえるでしょう。この病名について、ぎっくり腰と似たような原因と症状であることや、棘突起間インピンジメント症候群について詳細な情報があまりないためよくわからないことも多いです。
ここでは、まだ、あまり知られていない棘突起間インピンジメント症候群やぎっくり腰との関連性について説明していきます。

原因と症状

そもそも棘突起間インピンジメント症候群とはどういったものなのか。まず棘突起とは椎骨の後ろの突出した部分のことをいいます。背中をみるとゴツゴツとした骨が連なっているのが見えると思いますが、それが棘突起といいます。第二頚椎から仙椎までのすべての椎骨にありますが、外見で明確に確認できるのは背骨が多いです。 棘突起はお互いに密接しているわけでなはなく、一定の間隔に保っています。その間隔が空いた部分を棘突起間といいます。インピンジメントとは衝突を意味しています。この場合、骨(棘)同士がぶつかり合っていることを表します。つまり、棘突起間インピンジメント症候群とはなんらかの原因により骨と骨の間(棘突起間)で骨(棘)同士がぶつかり合うことで炎症を起こしてしまうことをいいます。
外見上で異常がみられることはないようですが、炎症が起こっていればMRI確認できる場合があります。また患部を押すことで局部に疼痛を感じることができます。
この原因というのが症候群と呼ばれるだけあって明確にはなっていません。ただ症状が腰を反らせば腰痛が出ますが、腰を曲げれば腰痛は軽減されることから、主に体を反らす動作に原因があると考えられています。体を反らす動作が長期にわたって行われていることで骨同士がぶつかった状態のままになり炎症を起こしてしまっているのです。
とくにスポーツ選手は技術向上のためにどうしても体を反らす動作が日常的に常に起こっているため、棘突起間インピンジメント症候群を起こしやすいといえるでしょう。ただ、スポーツ選手以外にも運送や土木関係など、ほぼ長時間にわたり体を反らす動作をしなければならない作業をしている方であれば起こる可能性は非常に高いです。
棘突起間インピンジメント症候群の症状は腰痛のみですが、腰痛の範囲が広がったり激痛を伴うようになる、安静にしていても痛みが消失しない場合は炎症部分が広がってしまっていたり、炎症部分を悪化させないために他の筋肉がサポートして常に緊張した状態になっているかもしれません。
手足にしびれが出た場合は別の疾患の可能性もあるため早期の受診が必要です。

治療・改善方法

棘突起間インピンジメント症候群は原因が明確でないため治療はほとんどなく、肩峰下とは異なり手術の適応にもなりません。そのため改善は主に他の腰痛と同様に炎症が収まるまで安静にしていることが効果的です。ただ注意しなければいけないことはただ安静にしているだけだと筋肉が硬くなり、さらに腰痛を悪化させてしまうことや神経に意識が集中してしまうため常に腰痛を感じ、気づいたら慢性腰痛の状態になってしまいます。2~3日安静にして、しびれや腰痛の増強がないようならできる範囲で体を動かすようにしましょう。その際は体を反らせる動作は避けましょう。また腰回りを温めることで腰部の筋肉の緊張がほぐれ痛みも改善されやすくなり、体も動かせるようになります。
炎症した部分に治療する薬剤はないため、もし、どうしても腰痛が改善されない場合は患部へのブロック注射が適応になります。そうすることで痛みが治まり、少しずつ動けるようになるため、筋肉が硬くなるなどの悪化防止に役立てます。

ぎっくり腰との関連性

一方でぎっくり腰はなんかしらの原因で腰椎や筋肉、筋膜などに炎症を起こしている状態です。ただ、その原因は腰椎の老化や疲労の蓄積などといわれていますが明確にされておらず、あくまでも要因のひとつといわれています。
またMRIなどの画像診断で骨や筋肉などに異常所見がみられないため、どこで炎症が起こっているのか特定することは極めて困難とされています。
症状としては、なんかしら行動を起こそうとした際に腰に急激な痛みが現れ、場合によっては起き上がることができないこともあります。
これらに対し、棘突起間インピンジメント症候群はMRIで判断可能であることや、腰を反らすと痛みが出ることから関連性はあまり高くないでしょう。
しかし、この原因不明な点や原因、治療法も明確にされていないことから2つは類似しており、ぎっくり腰は棘突起間インピンジメント症候群が原因ではないのか、実はこの2つは同じものではないのか、などとなにか関連があるのではないかと考える方もいます。
現時点では互いに明らかなことがほとんどないため関連性を疑うことはありませんが、今後、医療が進むことによって原因追及や治療法、さらには予防法などが確立していくかもしれません。
ただ同じ症状として腰痛があり、安静が必要とされていることは共通しているため、どちらにしても腰に負担をかけないことが重要です。

まとめ

以上のことから、棘突起間インピンジメント症候群についてまとめていきます。
原因として体を捩じる動作を行うことで骨同士が衝突しあって、炎症を起こしているために腰痛がおきてしまいます。
治療法について炎症を起こしているため触診やMRIで患部を特定することが可能のため、悪化予防のために患部を刺激せず安静にしていることが重要です。ただ長期にわたり安静にしていることで慢性腰痛になってしまう可能性があるため、少しでも改善がみられたら腰痛がおきない程度に体を動かしていくことが必要です。なるべく早めに体を動かせるような状態にしておくためにも、もし腰痛が続くようならブロック注射で痛みを軽減することも検討しましょう。ぎっくり腰と類似していることがあるため関連性があるとされることもあるが、今のところ関連性について明確にされておらず、また症状や診断方法が異なるから関連性はあまり高くないと考えられます。
未知なことが多い棘突起間インピンジメント症候群ですが、腰痛が関係していることから日々の腰に対するケアが必要です。日常でも腰に過度な負担をかけないようコルセットを着用するなどの工夫が必要となるでしょう。また温めたり、正しい姿勢を維持したり、腰を休めるなどをして腰痛改善に努めていきましょう。

【参考書籍】
大沼寧著(2010)『専門医に聞く 腰痛』 株式会社日本文芸社 
鈴木晶子(2015)『今すぐできる!腰痛を治す35のルール』 株式会社学研パブリッシング

著者情報

腰痛メディア編集部
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