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椎間板ヘルニアとは

 日頃の労働やスポーツに伴う急激な椎間板内圧の上昇により椎間板内の組織(髄核組織)が突出し神経を圧迫することになるのが椎間板ヘルニアです。神経が圧迫されることで下肢痛や感覚障害などが出現する。その他に間欠性跛行がある。これは脊柱管狭窄症などでも見られる症状であり、歩行していると時間経過で疼痛が増加していき歩行が困難となり一定時間休んでは歩行を再開しそれを繰り返すことです。椎間板ヘルニアで最も特徴的な所見としてデジェリーヌ徴候があります。
これは重度なヘルニアでは咳やくしゃみをすると下肢に疼痛が出現するというものです。この兆候が認められた場合には中等症状であると考えられます。

👉椎間板ヘルニアの症状。痛みが出る部位・特徴は?

椎間板ヘルニアの治療とは!?

 椎間板ヘルニアの治療ではまずは、発症年齢が大きく影響します。これは椎間板ヘルニアは安静にしていると通常は3か月程度で自然治癒するとされているためです。椎間板にも自己修正機能が備わっており椎間板から脱出した細胞はその周囲に肉芽を形成するため血管が成長していく過程で貪食細胞を生成します。その貪食細胞が椎間板から脱出した細胞を取り込むために安静にしているとその大部分のヘルニアは自然治癒が可能です。しかしこれはある程度年齢が若い人に選択されることがあります。あまりに高齢になると細胞の成長速度なども遅くなり自然経過では修正がされないことがあります。そのために年齢が大切となります。
 ヘルニアの保存療法としては薬物、支持療法、体操療法が主に挙げられます。まずは薬物療法は鎮痛を目的として行われます。椎間板ヘルニアは疼痛と感覚障害を起こします。疼痛については日常生活の影響となるため年齢によっては活動量の低下や認知症の悪化、廃用症候群を引き起こすきっかけとなります。そのため専門医による適切な疼痛管理が重要です。一般的に使用する鎮痛剤としてはアセトアミノフェン、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などが第一選択として使用されます。しかし椎間板ヘルニアによる神経を圧迫することで生じる神経性の疼痛は改善しない例もあります。そこで神経障害性疼痛治療薬が使用されることもあります。
 2つ目の支持療法とは簡単に言うとコルセットです。コルセットを使用して腰の位置を固定しずれるのを防ぐ目的があります。腰の位置のずれが少なくなることで神経を圧迫する回数も減りその分、症状が改善しやすいという特徴があります。コルセットはドラッグストアーや病院でも作成し購入することが可能です。
 3つ目に腰痛に対する体操療法です。この体操療法は簡単に言うと、筋トレです。腰の位置を安定させるためにコルセットを支持療法として使いますが、このコルセットは部位で見ると腰周辺を覆っている腹横筋という筋肉を補助する意味もあります。体操療法ではこの腹横筋を鍛えることを目的としそれにより腰の安定性を高めるという意味があります。以上で3つ紹介しましたがこれはどれも対症療法や予防法であり完治を目的するものではありません。

椎間板ヘルニアの手術①

 最初に紹介するのは後方椎間板切除術です。これは世界で最初に選択される治療法で成功率は90%以上と効果が高い手術とされています。この治療方法はうつ伏せ状態になってもらい全身麻酔管理を行い手術をする方法です。腰部から皮膚を切開していき、腰椎についている筋肉を傷つけないように丁寧にはがしていきます。人によっては全身麻酔で管理はしますが皮膚切開時に疼痛を感じることが多く麻酔から覚醒することがあります。
皮膚切開後は、手術専用の顕微鏡を使用して処置を行っていきます。筋肉を剥離することができたら腰椎の背中側の骨を切除していき脊柱管まで進みます。脊柱管内を進んでいき圧迫されている部分の除圧を行います。この際に神経損傷が発生しやすくなっているために慎重に時間をかけて行っていきます。神経を圧迫しているヘルニアを摘出することで簡単に神経症状は改善します。上記の工程で手術は終了となります。
手術時間としては約40分~60分ほどで一般的な場合には終了となりますが、重症度によっては手術時間がそれ以上になることも予想されます。事前に主治医からの説明があると思いますのでそちらで必ず確認をしてください。

手術後の生活①

 手術後はたいていの場合はドレーナージを行います。これは手術をして筋肉を切ったり骨を削りヘルニアを除去しているため多少なりとも出血を伴います。手術中は直接出血を吸引して外に出すことができますが、縫合し手術が終了した後では再度傷口を開けて血液を外に出すことはできません。ヘルニアを削った場所は空洞になっており閉鎖するのには時間を要します。
閉鎖するまでの間に血液が流れこんで血腫を形成することでヘルニアと同様に脊柱管を圧迫し神経を圧迫することにあります。そのためヘルニア症状や脊柱管狭窄症と同様の症状が出現することになります。それを防ぐためにも手術を行った総部にはドレーンと呼ばれる管を挿入し自然と出てくる出血を体外へ排出するということを行っていきます。ほとんどの場合には手術中にドレーンを挿入するため痛みはありません。
早い人ですと一種間程度でドレーンは抜くことができます、実はドレーンには血液を体外へ排出するだけではなく手術をした創部が感染しているかどうかを判断する指標にもなります。
 前述したように手術部からは少量の出血があります。手術をする際には基本的には無菌的に処置を行っていきますが、何らかの原因で創部感染を起こすことが稀にあります。そうするとドレーンから排出される廃液の色が変化したりすることで目視で感染を判断することができます。そのためにもドレーンは重要な役割を果たしています。

手術後の生活②

 手術後は麻酔がまだ残っているため少なからず翌日までは絶対安静が基本です。また手術部の疼痛の出現がひどい場合にはトイレへ行くことも制限されおしっこの管を入れるなど対応が必要です。また前述したようにヘルニアを除去しているために腰椎に空洞が出現しています。急激に動いたりすることにより血がたまりやすくなることや、再ヘルニアを発症するリスクもあるため行動には注意が必要です。食事については基本的にはベッド上で短時間で食べることから始めていきます。
腰の空洞が塞がるにつれていつも通りの生活に戻ることはできますが2週間ほど時間がかかります。入院期間は平均で1か月ほどで退院までには,マッサージやストレッチ、体幹トレーニングなどのリハビリなどを行い日常生活に支障のない範囲まで回復することができます。しかし退院したからと言って、激しい肉体労働やスポーツ、長時間の立ち仕事などは制限されます。退院後も数週間一回は状態を主治医に確認してもらい段階的にできることが増えていくようになります。

最後に

 ヘルニア治療で大事なのは、ゆっくり、しっかりと治療することです。手術をしたことで入院し社会復帰まで時間がかかるため焦る気持ちも出現します。しかしヘルニア治療は焦って行うことで逆効果となり症状を悪化させる要因にもなります。焦ることなく段階的に自分のできることを体調の回復に合わせて行っていくことが必要となります。

<参考文献>
・日本脊髄外科学会 http://www.neurospine.jp/original27.html
・公益社団法人 日本整形外科学会http://www.neurospine.jp/original27.html
・日本整形外科学会(2011) 「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン 改訂第2版」南江堂

著者情報

ショーン
ショーン

保有資格

正看護師国家資格

日本コミュニケーション協会認定 心理カウンセラー

日本コミュニケーション協会認定 コーチングコーチ

経歴

武蔵野大学 人文科学部卒業

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