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誰でも1度は聞いたことがあるであろう「疲労骨折」という疾患名ですが、初期の段階では安静時の痛みがないため、発症に気が付かずに日常生活を送っている方もいます。
しかし、放っておくと「腰椎分離症」と呼ばれる重症な疲労骨折に発展し、治療が難航する可能性もある、実はとても怖い疾患です。
今回の記事では、腰痛に苦しんでいる方に有益な情報となるように腰の疲労骨折についてまとめていきたいと思います。

疲労骨折とは

疲労骨折の概要

疲労骨折とは同じ骨・同じ部位に繰り返し圧力が加わることで発症する「骨折」のことを指します。1回の大きな衝撃で発症する通常の「骨折」とは違い、1回に加わる圧力は小さいことが特徴です。決定的なきっかけに欠けるので発見が遅くなってしまうこともあります。
また、体を酷使したら必ず発症するというわけでもないので遺伝的要素・体質的要素に影響される疾患でもあります。比較的男性に多く、日本人の成人男性では約6%が罹患しているとされています。

👉成長期のスポーツは腰痛から疲労骨折になりやすい・メカニズムを徹底解説!

腰の疲労骨折?具体的にどこ?

腰の疲労骨折といっても具体的にどこが受傷しているのかイメージできない方もいるのではないでしょうか。解剖生理をふまえて、腰の疲労骨折のメカニズムを解説していきます。通常、脊椎(背骨)は頚椎、胸椎、腰椎の3ブロックに分かれています。腰の疲労骨折ではこの腰椎の中でも一番下方にある第5腰椎に好発します。
この腰椎を形成している椎骨は非常に繊細で、加圧・可動を繰り返していると、疲労骨折につながります。また、ひどくなると椎骨が分離してしまう、腰椎分離症につながってしまいます。

腰の疲労骨折の症状と痛みの種類

腰の疲労骨折では、もちろん腰痛が主訴となります。先述した通り、腰椎の下部で発症するため大腿部や臀部付近に痛みが現れることも珍しくありません。腰の疲労骨折では、神経症状のしびれ・感覚鈍麻などは出現しないのが一般的です。
特に「腰の骨のあたりを抑えると腰痛が増強する」「腰をそらせたら腰痛が増強する」「腰をひねったときに腰痛が増強する」などの痛みが出るのが特徴的です。3つとも当てはまる方は疲労骨折の可能性が高いのですみやかに受診するようにしましょう。

年代別に見る腰の疲労骨折の原因・よくあるきっかけ

小学生の場合

一見、腰痛とは無縁に感じる小学生ですが、腰痛で受診した約半数の小学生が「腰の疲労骨折・腰椎分離症」であったという統計もあります。クラブチームでスポーツをしている児童の腰痛は特に注意が必要です。小学生の場合、自身で受診することが難しいので発見までに時間がかかることもあります。

10代から20代の場合

腰の疲労骨折が最も発症しやすい年代です。12歳から16歳が発症のピークとされ、成長期や部活動などの日々繰り返し行うスポーツ(特にバスケットボールや野球、サッカー、テニス、柔道など体をひねる動作のあるスポーツ)や、20代では若年層での肉体労働などで発症します。

30代から40代の場合

スポーツを日常的に盛んに行っている方や、引っ越し業や、土木建築業などで現場仕事に出ている方に多い疾患です。長期的な腰痛に悩まされている方は業務内容の見直しが必要になります。

それ以上・高齢者の場合

高齢になるにつれて、発症率は低下していきます。まれに体質的な要因で発症する方もいたり、若いときの疲労骨折に気が付かず高齢になってから腰痛を自覚したりするケースもあります。また、若いときに腰の疲労骨折や腰椎分離症の既往がある方は、高齢になっても後遺症や慢性腰痛に悩まされる可能性もあります。

腰の疲労骨折の治療方法と治療期間・完治までの道のり

確定診断までの手順

腰の疲労骨折と診断されるまでには画像検査が必要になります。軽傷のケースだと、レントゲン上でははっきりわからないこともあり、CT検査や磁気共鳴画像装置(MRI)検査で確定診断されることになります。医療設備の整っている総合病院や整形外科医院に受診するようにしましょう。

一般的な治療方法は?

治療方法は疲労骨折の重症度によって変わります。一般的な治療法について紹介していきます。

安静

まずは、腰痛部位の安静を徹底しましょう。疲労骨折した骨を癒合させるのには数カ月かかるので、痛みが軽快したからと言って自己判断で安静を解除するのは危険です。医師の判断に従うように心掛けましょう。

痛みのコントロール

腰痛のある時には無理せず医療機関で処方された鎮痛薬を内服・貼付し、腰痛を軽快させましょう。痛みの程度によって内服薬が変わることや、鎮痛作用のある注射を導入することもあります。しかし、鎮痛薬の量を増やすのでは根本的な治療にはならないので、一進一退が続く場合には次の治療を考える必要があります。

コルセットで矯正

安静療法のひとつですが、活動制限と併せてコルセットの着用をすることで安静効果をより高めることが期待できます。可動も制限されるので痛みの緩和にもつながります。受診時に医師に相談して導入していきましょう。疲労骨折が発症してしまっている場合は、自己判断で市販のコルセットを使ってしまうのは悪化を招くことにもつながるのでやめましょう。

手術療法

疲労骨折の重症度によって「脊椎固定術」や「修復術」などを施行される場合もあります。特に若年層では手術をすすめられることがあるかもしれません。手術の際の入院期間は最低2週間以上となります。術後のリハビリテーション期間も含め、学校や職場との調整が必要になります。

理学療法

理学療法とは、わかりやすく言うと「リハビリテーションや筋力トレーニング」のことです。痛みが出る動作から受傷箇所を分析したり、腰痛改善の筋力トレーニングやストレッチなどの腰痛体操を指導されたりします。どの病院にも理学療法士が常駐しているわけではないので、受診時に相談するのが良いでしょう。

完治は目指せる?

疲労骨折の痛みと安静制限にストレスを感じている人は少なくありません。ここで気になるのが、疲労骨折の完治は可能であるかどうかということです。実はこの腰部の骨の癒合(治癒)には3カ月~半年程度必要とされています。その間に症状の軽快は得られます。そのため完全に治っていない状態で安静を解除してしまう方が非常に多く、完治が難しいとされています。
安静を守り、専門的な腰痛外来などの専門的な機関で治療に取り組むことで完治は目指せる疾患です。

腰の疲労骨折の予防方法について

最も効果的な予防方法は腰への身体的な負担を減らすこと、反復動作は避けることの2つです。しかし、部活動や職業などの事情によっては対応が難しいこともあります。そのような場合には腰の柔軟性をたかめるためのストレッチを行ったり、腰を支える筋群である腹筋・背筋の強化をしたりすることで予防効果が表れます。さらに、下肢全体の筋力が低いと腰に負担をかけてしまうので下肢の筋力トレーニングも予防につながります。
現時点で腰痛がない場合に限っては、市販のコルセットの装着も効果的です。

まとめ

疲労骨折についてまとめてきましたが、腰痛改善のヒントになったでしょうか。腰痛を「まだ我慢できる」と軽んじていると、難治性腰痛に発展するかもしれません。整形外科などの専門機関や医師に相談して腰痛のない充実した生活を手に入れましょう。

参考文献
著 加藤 光寶『運動器 成人看護学』[系統看護学講座 ]出版社 医学書院, 発行年 2014
著 坂井建雄 / 岡田隆夫『解剖整理学』[系統看護学講座 ]医学書院, 発行年2014
著 医療情報科学研究所『運動器・整形外科』[病気がみえるvol.11]出版社 医療情報科学研究所, 発行年 2017
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/25/2/25_119/_pdf(脊椎分離症 西良浩一)
URL:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbago.html(日本整形外科学会)
URL:https://www.jslsd.jp/(一般財団法人 日本腰痛学会)

著者情報

益田 香
益田 香

保有資格

看護師国家資格

経歴

2014に資格取得後、小児科病棟をメインに成人病棟や外来など様々な部署で腰痛を訴える患者の看護業務をしてまいりました。

自身の経験から腰痛患者に有益な情報を発信していきます。

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