腰痛・腹痛を引き起こす内臓疾患には様々なものがあります。痛みの種類や場所はそれぞれ違う性質をもっているため、医師の目からみればその痛みの程度と場所で疾患を予想することができるのです。しかし、この記事を読んでくださっている方にはなかなか腰痛・腹痛の場所や痛みの程度で疾患と特定するのは難しいと思います。
腰痛と腹痛が同時に現れた際に起こる内臓疾患について一緒に学んでいきましょう。

消化器疾患

 ・胃・十二指腸潰瘍
 胃・十二指腸潰瘍とは、胃液(強い酸性)の刺激により胃や十二指腸の組織が剥がれ落ち、内部が損傷した状態のことをいいます。本来、胃は消化液を分泌し食べ物を消化するという働きを行っています。この胃液が様々な原因で、胃や十二指腸の組織をも消化してしまうことで潰瘍が起こります。
胃潰瘍の場合は食事中から食後に、十二指腸潰瘍の場合は空腹時にみぞおちや腰痛が現れます。早期の場合には無症状のことも多いですが、胸やけ・胃もたれ・吐き気・食欲不振などの症状が出ることもあります。
しかし、症状は進行すると潰瘍から出血したり、穿孔(せんこう)してしまうこともあり、出血や穿孔を起こすと強いみぞおちの痛みや腰痛が起こります。
 
・アニサキス症
 アニサキスとは、さばやイカ・カツオ・さんまなど私たちがよく食べる海洋生物に寄生する寄生虫のことです。火を通して食べる場合には死滅していることが多いため問題ないのですが、お刺身など生で食べる場合、魚などと一緒に摂取してしまうことがあります。アニサキスを食べると胃や腸の壁を食い破ることにより、強烈な胃痛と腰痛、吐き気が起こります。
食べてから数時間以内で発症することが多いため、お刺身を食べたなどという場合にはアニサキス症を疑います。胃カメラをしてアニサキスを除去すれば痛みはすっとなくなります。お刺身を食べる時にはよく噛んで食べるようにしましょう。

 ・胆石・胆のう炎
胆石症とは、胆石により引き起こされる病気のことです。肝臓で作られた胆汁の成分が石となり、胆のう内に蓄積されます。まれに総胆管や肝内胆管に石が詰まってしまう場合があり(総胆管結石)、胆石が詰まると右腰痛・腹痛が起こります。胆石が流れた場合には痛みが治まります(胆石発作)。しかし、胆石が詰まったままの状態が続くと胆のう炎を引き起こし、右の腰痛・腹痛だけではなく発熱も出現します。
そのような状態になると内視鏡で胆石を除去する治療が必要になるのです。

 ・急性膵炎
膵臓は血糖をコントロールするインスリンやグルカゴンなどのホルモンや様々な消化酵素を作っている臓器です。食事などを摂取すると膵臓から消化酵素が分泌され、消化吸収を助ける働きをしています。しかし、何らかの原因で消化酵素が膵臓の中で働いてしまうことがあり、膵臓は間違って自分を溶かしてしまいます(自己溶解)。自己溶解が進むと膵臓だけでなく、その周囲の臓器をも溶かしてしまうため、溶け出した有害物質が血液にのり全身に行き渡り、命を脅かす場合もあります。みぞおちや左の腰部の激しい痛みが現れ、発熱を伴うのも特徴です。急性膵炎の場合、抗生剤などの治療で軽快することが多いですが、重症膵炎に進行すると死に至ることもあります。

泌尿器疾患

 ・尿路結石症
腎臓から尿道までの尿路に結石ができることを尿路結石症といいます。特に中年程度の男性や閉経後の女性に多くみられます。症状としては、疝痛発作(せんつうほっさ)つまり激しい腰痛が現れるのが特徴です。腎臓は左右に1個ずつあり、右の尿路に詰まれば右の激しい腰痛が起こります。痛みが強すぎるため、腰に手を当てながら冷や汗を流している場合が多くみられます。肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)はなく、尿検査で血尿がみられます。結石が大きい場合には砕石術(さいせきじゅつ)を行いますが、基本的には鎮痛剤と水分摂取で自然に流れ出ていきます。

 ・腎盂腎炎
腎盂腎炎は、膀胱炎などの尿路感染症により腎臓にまで細菌が生じたことをいいます。
主に発熱や腰痛、吐き気などが起こることが多いです。基本的には抗生剤の点滴で治療します。

 ・前立腺がん
前立腺は男性にのみある臓器です。前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、自己増殖することにより前立腺がんは発症します。前立腺がんのほとんどは無症状であり、「尿が出にくい」や「排尿回数が多い」といった前立腺肥大と同じ症状として現れることがほとんどです。早期に発見できれば治癒する疾患ですが、近くのリンパ節や骨に転移しやすいのが特徴です。進行すると血尿や骨への転移により腰痛が起こります。前立腺肥大と似ているため、ちょっとでも尿の出の悪さや頻尿の場合には病院に行きましょう。

婦人科疾患

 ・子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜やそれに似た組織が何らかの原因で、子宮の内側以外の場所で発生し発育していきます。女性ホルモンの影響で、月経周期に合わせて増殖したり、月経時に血液が排泄されずに蓄積されたり、周囲の組織と癒着することで様々な痛みに繋がります。不妊症の原因にもなります。
子宮内膜症の主な症状は「痛み」と「不妊」です。特に痛みは様々な多種多様で、腰痛や下腹部痛・排便痛・性交痛などが起こります。

 ・子宮がん
子宮がんは子宮体部にできる「子宮体がん」と子宮頸部にできる「子宮頸がん」に分類されます。子宮頸がんは正常な状態から異形成というがんになる前段階を数年経てからがんへと発展します。異形成の時期は無症状なことが多く、進行すると月経以外の時や性交時などにも出血し、おりものも茶色や膿っぽいものが出たりします。さらに進行すると下腹部が痛んだり、腰痛が出たり、尿や便に血が混ざることも出てきます。下腹部痛や腰痛が出る時には進行していることが多いので、おかしいなと気が付いた時には早めに受診することが大切です。

循環器疾患

 ・心筋梗塞
心筋梗塞は日本人の死因の第二位の病気です。心筋を取り巻いている冠動脈は心臓に血液と酸素を送っています。これが動脈硬化によりコレステロールなどが沈着することで血液の通り道が狭くなったり、塞がれてしまいます。そのため心筋に血液を送ることができず、心筋は酸欠状態となり心筋細胞が壊死します。これを心筋梗塞といいます。
心筋梗塞が起こるとみぞおちや腰部の強い痛みが起こり、締め付けられるような痛みや圧迫されるような痛みが出現するのが特徴です。痛みが出てきた場合すぐに受診し、心臓カテーテルを行うことが重要です。放置しておくと命に関わることもあるため、強い痛みが現れた時には受診するようにしましょう。

 ・腹部大動脈瘤
腹部大動脈瘤は、人間の体の真ん中を走る大動脈の壁が膨らみ瘤(こぶ)作る状態のことをいいます。腹部大動脈瘤をもっているだけだと無症状なことが多いですが、血圧の上昇などにより瘤に圧がかかると瘤が大きくなり破裂してしまうことがあります。大動脈瘤が破裂すると想像を絶するほどの腹部と腰部の痛みが出現し、冷や汗が流れます。すぐに手術をする必要があり、時間が経過すると意識が悪くなり命を脅かします。

まとめ

ひとえに腰痛・腹痛といっても様々な内臓疾患があります。もちろん痛みの程度や場所によって起こる疾患は違いますが、軽い腰痛や腹痛だからといって放置するのは危険だということがお分かりいただけたでしょうか。症状が持続する場合や他の症状も一緒に出ていた場合には受診し検査するようにしてください。

参考文献
・病気がみえる循環器
・病気がみえる消化器
・病気がみえる腎・泌尿器
・病気がみえる婦人科・乳腺外科 出版社メディックメディア
・エビデンスに基づく症状別看護ケア関連図 中央法規出版

著者情報

腰痛メディア編集部
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