MENU
メニュー

読者のみなさんは「腰痛」と聞いて、どんな病気を連想するでしょうか?「ぎっくり腰」「椎間板ヘルニア」「脊柱管狭窄症」など、パッと思いつくのは腰が原因の病気が多いと思います。
では、「腰痛と腹痛が同時に起こる疾患は?」と聞かれたらどうでしょう。医療関係者でもなければ、なかなか解答するのは簡単ではないですよね。

腰痛の原因は実に多岐にわたりますが、腰痛のなかには「腰以外」が原因でとなる場合も少なくありません。「腹痛を合併した腰痛」もその代表で、頻度は少ないですが一定数の患者は確実にいるのです。

今回の記事では、腰痛と腹痛が同時に起こったときに考慮すべき4つの病気についてお伝えします。症状に心当たりがある方は、最後まで読むことで、ご自身の原因がつかめるかもしれませんよ。

腰痛と腹痛が同時に起こることはあるの?

単純に腰が痛いだけでなく、腹痛を合併することから想像できるように、今回ご紹介する病気はいずれも「整形外科以外」が専門の病気になります。

いいかえれば、「腰痛のなかには、整形外科以外の病気も存在する」ということです。そのため。「ただの腰痛だと思ったら、全く別の病気だった」という事例も少なくないのです。特に慢性的な腰痛で、整形外科を受信しても改善しない場合は、腰以外が原因の可能性があります。素人判断せずに、一度病院を受診してもいいかもしれませんね。

腎臓の病気「水腎症」

腎臓は、「後腹膜」と呼ばれる場所に位置する臓器です。「後腹膜」の具体的な場所は説明が難しいですが、「腰が痛いときにトントンと叩く背中の場所」といえば伝わるでしょうか。つまり、腎臓は内臓のなかでも背中側に位置するため、腎臓の痛みを腰痛として感じることが多いのです。

腎臓が原因で腰痛を引き起こす疾患は複数ありますが、代表的な病気に「水腎症」があります。

腎臓の主な役割は、尿を産生することです。腎臓でつくられた尿は、尿管と呼ばれる管を通って膀胱に貯留するのですが、この管が狭窄して尿が流れなくなると、腎臓がパンパンに腫れてしまいます。この病気が「水腎症」なのです。

尿管は腫瘍や炎症など、様々な原因で狭窄することがありますが、原因として最多なのが「尿管結石」です。石が尿管にハマり込むことで尿の流れが悪くなり、水腎症を引き起こします。

尿管結石の症状は腰痛が主体ですが、その発症は急激であることが多いです。また、血尿がみられる場合もあります。発症の時間帯も特徴的で、尿管結石は体が脱水状態のときに起こりやすいため、睡眠中に起こることも多いのです。

加えてお伝えしたいのが、「叩打痛」という症状です。尿管結石など、腎臓が原因で腰痛を惹起している場合、腰を叩くと痛みが増強する特徴があります。

対して、ぎっくり腰など腎臓以外が原因の腰痛では、背中を叩いても痛みは変わらないか、かえって緩和されることも多いので、鑑別の手がかりになるのです。これは、診療の現場で医師が実際におこなっている診察法になります。

婦人科の病気「月経困難症」

女性の場合、婦人科疾患も腰痛と腹痛を同時に引き起こします。そのなかで、最も代表的なのが「月経困難症」ではないでしょうか。

月経困難症は、月経に伴って腹痛・腰痛などの痛みを引き起こす疾患です。子宮自体が痛みの原因になるため、腹部のなかでも下腹部を中心にした痛みになります。また、疼痛以外にも吐き気・嘔吐などを伴うことがあり、月経の終了と同時に症状が緩和することも特徴的です。一言で表現するなら「毎回ひどい月経痛が起こる病気」ということです。

月経困難症は、その原因によって「機能性」と「器質性」の2種類に分類されます。

機能性月経困難症は、目に見える特別な異常がないのに月経困難になるものです。特別な異常がないため、鎮痛剤や漢方薬で痛みを緩和したり、ピルで月経をコントロールするなど、対症療法が主体になります。

対して器質性月経困難症は、主に子宮の疾患が原因で、月経困難を発症するものです。子宮筋腫・子宮内膜症・子宮の炎症などの病気は、みなさんも聞いたことがあるでしょう。

月経困難症を2分する理由の一つに、「器質性であれば、原疾患の治療ができる」点があります。つまり、原因となる病気を治すことで、腰痛や腹痛が根本的に解決される可能性があるということです。

治療法は、その病気によって様々ですが、「薬剤や手術によって腰痛が治る」可能性があることは、慢性的な痛みに苦しむ方にとって、大きな希望になると思います。

「もともと生理痛がつらい方」や「子宮筋腫と診断された方」などの腰痛は、月経困難症が原因かもしれません。心当たりの方は整形外科でなく、産婦人科・レディースクリニックを受診してはいかがでしょうか。

消化器の病気「胆石症・膵炎」

消化器が原因で腰痛をきたす場合もあります。具体的には、胆嚢・膵臓が腰痛をきたす代表的な臓器です。

胆嚢が原因で腰痛を惹起する病気としては、胆石症が有名です。胆石症は、胆嚢のなかにできた石が、胆嚢を刺激することが原因で起こります。そして、この刺激を、腹痛・腰痛・場合によっては肩こりとして捉えるのです。

胆嚢は、消化器のなかでも上部に位置します。そのため、腹痛も上腹部を中心に感じることが多いのです。医学用語では「右季肋部」と表現しますが、胆石症では右寄りのみぞおちを押すことで、強い痛みを感じるはずです。

性別的には2;1で女性に多く、肥満の方に発症しやすい特徴があります。現代の日本は、食の欧米化に伴って胆石症も増加傾向にあり、成人の10人に1人は胆石を持っているとされます。いつ誰が胆石症になってもおかしくないのです。

また、膵臓が原因で腰痛をきたすことも多々あります。

膵臓も、腎臓と同じく後腹膜に位置する臓器です。そのため、腹痛だけでなく背中の痛みも感じやすいのです。膵臓の疾患で強い痛みを伴うものといえば「膵炎」が代表的です。

膵臓は2つの異なる働きをしており、その一つが「消化酵素の分泌」です。健康な体では、消化酵素が自分の体を消化することはありませんが、急性膵炎の場合は事情が異なります。膵臓から分泌される消化酵素が体を分解してしまうため、腹痛や腰痛をはじめとする諸症状が出現するのです。

膵炎の最多の原因は、「お酒の飲みすぎ」です。アルコールが膵臓を刺激し続ける結果、大量の消化酵素が分泌されることが原因とされています。また、先ほどお話しした「胆石症」も急性膵炎の原因になることがあります。

慢性的な腰痛をお持ちの方で、お酒を飲みすぎる傾向がある場合、その原因は膵炎かもしれません。

ここでご紹介した「胆石症」と「膵炎」は、いずれも消化器科の医師が専門の疾患です。

まとめ:腰痛の原因は腰だけにあらず!腹痛も合併したときは要注意

今回の記事では、腰痛と腹痛が併発したときに考慮すべき、4つの病気についてお話ししました。

本記事で取り上げた4つの病気は、いずれも内臓が原因で腰痛を引き起こすものでした。

「腰が痛い」と聞くと、どうしても原因を腰に求めてしまいがちです。しかし、今回お伝えしたように腰以外、特に内臓が原因で腰痛を惹起することもあるのです。

特に、腰痛以外の症状も同時にみられた場合は要注意です。今回はその例として「腹痛」を取り上げましたが、腹痛以外の症状が同時に出現する場合も十分にあります。「ただの腰痛だから大丈夫!」と素人判断せず、心配であれば病院で精査を受けることをおすすめします。

【参考文献】
・標準婦人科学第4版 岡井 崇 / 綾部 琢哉 医学書院
・標準泌尿器科学第9版 赤座 英之 医学書院

著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator