慢性腰痛にはいろいろな原因がありますが、椎間板に原因があるケースも見られます。椎間板というとヘルニアをイメージされる方も多いと思いますが、椎間板性腰痛はヘルニアとは異なります。

今回は椎間板性腰痛の特徴や治療法についてご紹介するとともに、慢性腰痛を改善するためのひと工夫をご紹介します。

椎間板性腰痛とは

ヘルニアとの違い1
それでは早速ですが、椎間板性腰痛とはどのような腰痛なのか、また、原因や治療法はどうなっているのかについて見ていきたいと思います。

慢性腰痛の一種

腰痛にはいろいろなタイプがありますが、椎間板性腰痛は慢性腰痛の一種に分類されます。腰痛には大きく分けて、急性、亜急性、慢性の3タイプがあります。

急性腰痛は発症してから4時間以内の腰痛のことを意味します。代表的な急性腰痛がいわゆるぎっくり腰です。ただ、ぎっくり腰の原因に関しては、ハッキリしたことがよく分かっていません。

亜急性の腰痛は発症してから4時間以上、かつ3カ月未満の腰痛を意味します。ただし、専門家の間でも亜急性の腰痛に関する定義は一定していません。

慢性腰痛は、発症してから3カ月以上続く腰痛のことを意味します。椎間板性腰痛も慢性腰痛に含まれており、多くの方が長期間にわたり腰痛に悩まされています。

腰痛全体に占める椎間板性腰痛の割合

日本の腰痛に対する治療指針をまとめたものが、『腰痛診療ガイドライン』と呼ばれる文章で、日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修者となって策定をおこなっています。

2012年に発表された初版では、欧米の権威がある雑誌に寄せられた論文をもとに策定がおこなわれ、腰痛の内85%が非特異的腰痛(検査をしても原因が分からない腰痛のこと)と記述されていました。

検査をして原因がハッキリと分かる腰痛については、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、加齢による椎間関節の変成、圧迫骨折、感染症、腫瘍などがあげられていました。

ところが近年になって発表された整形外科専門医の報告によると、原因が特定できない腰痛は22%にまで減少したということです(『腰痛診療ガイドライン2019改訂2版より』)。

原因がハッキリとしている腰痛の内訳をみてみると、椎間関節性の腰痛が22%ともっとも多く、次いで、筋肉および筋膜の損傷にともなう腰痛が18%と、両者だけで腰痛全体のおよそ40%を占めていることが分かります。

今回のメインテーマである椎間板性腰痛に関しては、腰痛全体のおよそ13%を占めるという報告が上がっています。

椎間板性腰痛の原因

椎間板性腰痛の原因としては、加齢や荷重などによって腰椎の椎間板を構成する線維輪に亀裂が入ることだとされています。

腰椎の椎間板は、腰の骨(ようつい)と骨の間にあり、クッションとしての役割を果てしています。椎間板がクッションとして働くことで、地面からの衝撃などをナチュラルに吸収してくれるわけです。

椎間板は外側を線維輪と呼ばれるコラーゲン上の成分で覆われており、中心部には髄核と呼ばれるゲル状の組織があります。

髄核の大半は水分で構成されていますが、加齢などが原因となって髄核の水分量が減少することで、クッションとしての働きが低下します。

その結果、侵害受容器(痛みを脳に信号として伝達する器官)を持つ線維輪に傷がつくことで、痛みを発すると考えられているのです。

腰椎椎間板ヘルニアとの違い

椎間板や線維輪、髄核といった言葉を目にした方の中には、「ヘルニアと何が違うの」と思われる方もいらっしゃることと思います。

簡単に言うと、腰椎の椎間板が圧迫されることで髄核がとびだし、神経圧迫を起こしたものが腰椎椎間板ヘルニアと呼ばれています。椎間板性腰痛の場合は、髄核の逸脱を認めません。

さらに厳密に述べるなら、腰椎椎間板ヘルニアにともなう神経症状は神経因性疼痛に分類されるものであり、侵害受容性の疼痛に分類される椎間板性腰痛とは異なるタイプの腰痛です。

椎間板性腰痛の治療法

ヘルニアとの違い3
腰痛を持っている方の内、およそ13%が椎間板性腰痛の可能性があるということですが、仮に椎間板性腰痛と診断された場合、どのような治療がおこなわれるのでしょうか。

投薬治療

現在のところ、椎間板性腰痛に対しては、有効な治療法はないのが現状です。そのため、対症療法的に投薬治療がおこなわれています。

腰椎椎間板内高周波凝固法

ペインクリニックなどでは、腰椎椎間板内高周波凝固法(IDET:Intradiscal Electrothermal Annuloplasty)と呼ばれる治療法が採られることもあります。

レントゲン下で専用の針を椎間板に刺し、針先に熱を加えることで、痛みを伝える神経の働きを阻害したり、傷ついた線維輪を硬化させたりして、痛みの緩和を図ります。

運動療法

先ほど紹介した『腰痛診療ガイドライン2019改訂2版』の作成には多くの委員がかかわっており、委員会のメンバーによる投票よって治療法の推奨度や、エビデンスの強さが決定されています。

治療法の推奨度は、その治療をどれくらいおこなった方が良いかを示しており、エビデンスの強さはその根拠を示しています。

治療法の推奨度は1から4の4段階に分かれており、推奨度1は「おこなうことを強く推奨する」、推奨度2は「おこなうことを弱く推奨する(提案する)」とポジティブな評価となっています。

一方、推奨度3は「おこなわないことを弱く推奨する(提案する)」となっており、推奨度4は「おこなわないことを強く推奨する」とネガティブな評価になっています。

エビデンスの強さに関しては、「A:硬化の推定値に強く確信がある」「B:(同)中程度の確信がある」「C:(同)確信は限定的である」「D:(同)ほとんど確信できない」となっています。

例えば、「腰痛に対して薬物療法は有効か」という問いに対しては、委員会のメンバー全員(100%)が同意しており、推奨度1、エビデンスAともっとも高い評価を得ています。

「腰痛に対して運動療法は効果的か」という問いに対しては、慢性腰痛に関して90.9%の同意が得られ、推奨度1、エビデンスがBと比較的高い評価を得ています。

椎間板性腰痛も慢性腰痛に分類されるため、腰痛診療ガイドラインの基準によれば、椎間板性腰痛に対しても運動療法が有効だと考えられます。

椎間板性腰痛を予防する方法

残念ながら、現在のところ椎間板性腰痛に対する効果的な治療法は確立されていません。そのため、椎間板性腰痛を発症しないよう、予防を心がけることが重要といえます。

腰椎に偏った負担をかけない

背骨は横から見ると緩やかにカーブしていますが、その構造によって、背骨にかかる負担を逃すことが出来るようになっています。

椎間板自体も垂直の圧には強くできているのですが、偏った圧には弱い傾向があります。そのため、どちらか一方の手だけで荷物を持ったり、足を組んだりすることは避けたほうがよいでしょう。

日ごろから適度に身体を動かす

私たちが筋肉といった場合、それは骨格筋を指すことがほとんどです。骨格筋はその名の通り、骨格を支える役目を持っています。

骨格筋が衰えると骨や椎間板への負担が増すため、普段から適度に身体を動かし、骨格筋の筋力が低下しないよう気を付けましょう。

ヨガやストレッチで柔軟性を保つ

腰痛に限ったことではありませんが、身体が硬いとケガをするリスクが増すとされています。そのため、日常的にヨガやストレッチに取り組み、身体の柔軟性を保つよう意識しましょう。

まとめ

椎間板性腰痛は、腰椎と腰椎の間にある椎間板が傷つくことで発症し、その原因としては加齢や過剰な負荷があげられています。

残念ながら現在のところ、椎間板性腰痛に対する有効な治療法は確定されていません。そのため、日ごろから適度に身体を動かし、筋力の低下を防ぎ、身体の柔軟性を保つことが重要です。

<参考文献>

腰椎椎間板ヘルニアとは・福岡整形外科病院
https://www.fukuokaseikei.com/disease/%E8%85%B0%E3%81%AE%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%85%B0%E6%A4%8E%E6%A4%8E%E9%96%93%E6%9D%BF%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%A8%E3%81%AF/

腰椎椎間板内高周波熱凝固法・大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニック
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/anes/www/pain/link/idet.html

腰痛診療ガイドライン2019改訂2版・日本整形外科学会、日本腰痛学会
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf

椎間板性腰痛の基礎・日本腰痛会誌
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yotsu/13/1/13_1_10/_pdf

著者情報

腰痛メディア編集部
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