激しい運動をした後や、普段あまり使わない筋肉を使った後、筋肉痛を発することがあります。筋肉痛になると一般的には「筋肉が痛い」と思われがちですが、実は、筋肉を構成する筋繊維は痛みを感じることがありません。

では、どこが痛みを感じるのかというと、それは筋肉を覆う筋外膜や、筋繊維の束を結び付けている筋内膜、筋肉と骨を結んでいる腱などとされています。もし原因が分からない腰痛に悩まされている場合、それは筋膜や腱に由来する腰痛なのかもしれませんよ。

目次

筋肉が痛いから腰痛になる?そもそも痛みとは


腰痛がある場合、「腰の筋肉が痛い」と感じることが一般的だと思います。ただ、痛みのメカニズムは非常に複雑なので、どのようにして痛みが出るのか簡単に解説しておきたいと思います。

痛みを感じるのは侵害受容器

あまり耳なじみのない言葉ですが、簡単に言うと侵害受容器とは、外部からの刺激を異常感覚として捉え、電気的信号に変換して脳に伝えるための器官です。

外部からの刺激としては、熱や冷たさ、圧力、感覚、まぶしさなどいろいろありますが、中でも侵害刺激が組織に加わることによって、痛みとして認識されるようになります。

痛みの種類

痛みは大きく分けて、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛、そして心因性疼痛の3つに分けられます。侵害受容性疼痛は、脳から送られる神経の末端部にある神経受容器に、侵害刺激が加わることで起こるタイプの痛みです。

神経障害性疼痛は、神経そのものが傷つくことによって起こります。ただ、神経障害性疼痛による痛みのメカニズムは非常に複雑なので、今回の記事では詳しく触れません。

心因性疼痛はストレスなど何らかの原因で、中枢神経自体が痛みを感じるタイプの疼痛です。かつては心の病とされることが多かった心因性疼痛ですが、最近では脳の機能的変調が原因ではないかと考えられるようになっています。

腰痛は筋肉が痛いわけではない!?

筋膜3

腰痛がある場合、「腰の筋肉が痛い」と感じることが普通だと思います。ただ、詳しくみていくともう少し複雑なメカニズムがあるようです。

筋繊維には侵害受容器がない

筋肉は筋繊維という束からできており、1つの塊として存在しているわけではありません。筋繊維について理解するなら、茹でた鳥のささみや胸肉をイメージされると良いでしょう。

茹でた鳥のささみや胸肉は容易に手で裂くことができますが、避けた1本1本が筋繊維というわけです。そして、筋繊維には痛みを感じるための侵害受容器はないとされています。

筋組織において痛みを感じるのは筋膜

筋肉は線維の束でできており、それを包むようにして筋膜(筋内膜)があります。筋繊維の束がいくつか集まり、それがさらに筋膜(筋外膜)によっておおわれています。

これらの塊のことを、私たちは筋肉、正確には筋組織と呼んでいるわけです。筋組織において痛みを感じるのはいわゆる筋肉である筋繊維ではなく、主に筋膜であることが分かっています。

鶏肉の皮をはぐと、薄い膜のようなものが見えると思いますが、あれが筋膜だと思って頂いて間違いありません。筋膜は全身の筋肉を覆っているため、第二の骨格と呼ばれることもあります。

筋膜性腰痛の原因

筋膜4
多くの腰痛は正確に言うと、筋肉が痛いのではなく、筋膜に侵害刺激が加わっている状態を意味します。では、筋膜にどのような侵害刺激が加わることで、腰痛が発生するのでしょうか。

筋膜に対する重積

重積とは積もり重なることを意味しますが、筋膜に対する圧迫や刺激が繰り返されることによって、侵害受容器が過敏になり、腰痛をはじめとした痛みを感じることとなります。

筋膜をはじめとする結合組織のことを医学的にはファシア(Fascia)と呼んでいますが、超音波検査をおこなうと、重積がある場所のファシアは白く映るということです。

整形外科やペインクリニックなどでは、画像上確認された異常なファシアに対し、注射を用いて薬液を注入します。

また、整骨院鍼灸院、整体院では徒手や鍼によってファシアを緩める施術に取り組んでいるところもあります。

筋膜の癒着

筋線維は筋膜によっておおわれ、筋組織を形成しています。また、筋組織同士も筋膜によってつながっています。例えば上腕の場合、上腕二頭筋と上腕三頭筋が筋膜でつながっています。

肘を曲げる時、上腕二頭筋の筋膜は収縮し、上腕三頭筋の筋膜は伸展します。このような筋膜の動きを、筋膜の滑走と呼んでいます。

ところが、筋膜に重積が加わるなどして筋膜同士の癒着を起こすと、筋膜の滑走がスムーズにいかなくなり、その結果、腱や関節への負担を増すこととなるのです。

腰に関しても同様で、腰部の表面にある腹横筋(ふくおうきん)と、奥にある腰方形筋(ようほうけいきん)の癒着が起こることで、筋膜の滑走が妨げられ、腰痛を発症するリスクが増します。

腰部の筋肉を緩めると腰痛が緩和するのは、腰部筋膜の癒着が取り除かれるからです。ストレッチやヨガで腰痛が緩和するのも、同じようなメカニズムといえます。

腰の筋肉が痛いときの対処法

腰痛は筋肉ではなく筋膜が痛みを感じることで起こりますが、筋肉(筋組織)が痛いと感じることも間違いというわけではありません。では、腰の筋肉が痛い場合、どのように対処すればよいのでしょう。

急性腰痛の場合

急性腰痛はいわゆるぎっくり腰と呼ばれる症状で、重いものを持ち上げた時や、急に姿勢を変えた時に発症するほか、くしゃみや咳がきっかけとなるケースもあります。

ぎっくり腰の原因としては腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などもあげられますが、実際には原因が分からないことも多いです。

ドイツをはじめとした西洋では魔女の一撃と呼ばれることもあり、その衝撃や症状のつらさをうまく表現しているといえます。

急性腰痛を発症した場合、患部の強い痛みと腫れ、機能障害をともないます。ひどいときには、トイレに行くのも這っていかなければならないケースもあるほどです。

それほど強い痛みが出ている場合、一時的にアイスパックなどで冷やすことがおすすめです。また、背中を丸めた姿勢で横向きに寝て、安静にしているとよいでしょう。

ただし、最近の研究によって、安静が必ずしも急性腰痛からの回復を早めないことが分かってきています。そのため、無理のない範囲で身体を動かすことも重要です。

慢性腰痛の場合

日本腰痛学会と日本整形外科学会が策定する『腰痛診療ガイドライン』によると、発症してから腰痛が3ヶ月以上続く場合、慢性腰痛と呼ばれるようになります。

慢性腰痛に関してもハッキリとした原因は分かっていませんが、仮にお風呂に浸かって腰痛が楽になるようであれば、筋肉や筋膜の緊張に夜って腰痛を起こしている可能性があります。

そのため、日ごろから筋肉や筋膜が硬くならないよう、適度な運動やストレッチ、ヨガなどをおこなうことがおすすめです。

また、疲労が蓄積すると筋膜の重積も悪化するため、お風呂で温まってリラックスし、十分な睡眠時間を確保することも重要です。

自分で努力してもなかなか改善がみられない場合は、整骨院や鍼灸院、整体院などで施術を受けるのもよいでしょう。ただし、痛みのメカニズムについてよく理解している施術所を選ぶことが重要です。

まとめ

腰痛を発症すると「筋肉が痛い」と思いがちですが、実際には筋組織を形成する筋膜や腱に痛みを生じるということです。

とはいうものの、筋肉を緩めれば筋膜も緩むため、腰痛への対処法がさほど異なるわけではありません。ただ、効率よく腰痛を改善するためには、筋膜に対する理解が欠かせないことも事実です。

慢性的な腰痛に悩まされている方は、筋膜を緩める意識を持ち、運動やストレッチ、ヨガなどに取り組むとよいでしょう。自助努力ではどうしようもない場合、専門家に相談することもおすすめです。

<参考文献>
わかる!痛みのメカニズムと対処法・酒井医療
https://www.sakaimed.co.jp/knowledge/category/pain-meniscus-and-coping-method/

痛みはどうして起きるのか?ももたろう痛みのクリニック
https://www.momotarou-painclinic.com/sick/reason/

エコーガイド下Fascia(ファシア)ハイドロリリース・木村ペインクリニック
https://www.kimura-painclinic.com/release_under_echo.html

腰痛診療ガイドライン・日本整形外科学会、日本腰痛学会
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf

著者情報

腰痛メディア編集部
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