腰痛や腹痛は、いろいろな疾患の自覚症状として、しばしばあらわれます。腰痛や腹痛が単独であらわれ原因がはっきりしている場合は自宅で療養していても問題ないケースがほとんどですが、腰痛と腹痛が同時に起こった場合は要注意。なにか病気が隠れているサインかもしれません。しかし、病院に行くのは意外とハードルが高く、「腰とおなかの痛みが気になっているけど、どうしたらいいかわからない」「自分の体にどんな病気が隠れているのか知りたい」と悩んでいる人も多いですよね。ここでは、腰痛と腹痛があるときに考えられる疾患と、病院を受診するべき症状などを紹介していきます。

腰痛と腹痛があるときに考えられる疾患

腰痛と腹痛が同時におこるときは、腰以外の臓器に原因があることも多く、以下のような疾患がうたがわれます。

・胃や十二指腸などの消化器系の疾患
・腎臓や尿管などの泌尿器系の疾患
・腹部大動脈などの血管系の疾患
・子宮や卵巣などの婦人科系の疾患

ここでは、婦人科以外の疾患について症状別に紹介していきます。

下痢や嘔吐がある場合

下痢や便秘のような便の異常や、吐き気や嘔吐がみられる場合は、消化器に関する病気である可能性があります。腰痛と腹痛が同時に起こることがある消化器系の疾患を紹介します。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の壁が傷つけられることによって起こる病気です。壁が傷つく大きな原因は、ピロリ菌への感染や、痛み止めとして使用される非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を内服することです。これらは、胃や十二指腸を保護している粘液を減少させたり、粘膜を保護する力を弱めたりすることによって潰瘍ができやすい環境を作りだします。とくに、腰痛がある人はこのような痛み止めを内服していることが多く、腰痛にくわえて胃潰瘍や十二指腸潰瘍を発症する人が増加しています。

症状
潰瘍ができた場所や、進行度合いによって症状は異なりますが、胃潰瘍では食後に痛みを感じることがあります。十二指腸潰瘍では夜に痛みが強くなることが多いのが特徴です。そのほか、以下のような症状がみられることがあります。

・みぞおち(上腹部にあるくぼみ)から、わき腹にかけての痛み
・腰痛
・吐き気、胸やけ
・吐いたものや便に血が混じる

痛みがはげしい場合や、症状が長く続いている場合、また、出血がみられる場合は早めに病院を受診したほうがいいでしょう。

胆石症・急性胆のう炎
胆石症は、胆のうや胆管などに石ができる疾患であり、胆のう炎は胆のうが炎症を起こしている状態です。胆石症の発症には食生活など関係しているとされています。急性胆のう炎は、胆石症やウイルス感染などが原因とされており、放置すると重症化することもあるため注意が必要です。
症状
胆石症は人によって症状のあらわれ方は異なりますが、右の肋骨の下やみぞおち周辺、肩や腰の痛みを訴える人が多いようです。急性胆のう炎になると、発熱や嘔吐をともなうこともあります。
膵(すい)臓がん
体の奥の方に位置する臓器である膵臓。がんになっても早期に見つけるのはむずかしく、予後が悪いがんのひとつです。はっきりとした原因はわかっていませんが、血のつながった人に膵臓がんの人がいたり、自分に糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍の既往があったりすると、膵臓がんの発生リスクが高まることがわかっています。

症状
膵臓がんは、初期にはあまり症状がないことが多く、がんが進行することで以下のような症状があらわれます。
・腹痛、腰痛、背部痛
・体重減少
・糖尿病の悪化
・食欲不振
・尿が褐色になる
・白目や肌が黄色っぽくなる

痛みがだんだん強くなる場合や、不自然な体重の減少がみられる場合は、早めに病院を受診しましょう。

急性膵炎・慢性膵炎
膵臓に炎症が起こっている状態です。アルコール摂取や胆石のほか、喫煙なども膵炎を引きおこす要因になることがわかっています。

症状
急性膵炎では、上腹部のはげしい痛みや、腰や背中の痛みが起こることがあります。そのほか、吐き気や嘔吐をともない、急速に病状が進行するのが特徴です。早急に、病院を受診する必要があります。

慢性膵炎の場合は、急性膵炎のようなはげしい痛みは少なく、持続的な痛みが起こることが多いです。目立った症状があらわれないことも多く、糖尿病になってから慢性膵炎になっていたことに気づくこともしばしば。脂っこいものやアルコールを摂取することにより、痛みが強くなることがあります。
下腹部の痛みや尿の異常がある場合
血尿など尿に異常がみられる場合は、腎臓や尿管などの泌尿器系の病気が隠れていることがあります。腰痛や腹痛をともなう泌尿器系の疾患を紹介します。

尿管結石・腎結石
結石がある部位によって病名が異なりますが、どちらも結石ができる病気です。体質や代謝異常、食生活や生活習慣などが原因です。

症状
腎臓は左右にあるため、結石が片側にのみある場合は、片側にだけ痛みがあらわれることがあります。小さな結石であれば、無症状のまま自然と排出されることがありますが、排出できなかった場合は、わき腹や腰、背中にかけて激しい痛みがあらわれます。そのほか、以下のような症状があらわれることがあります。

・頻尿・残尿感
・血尿
・吐き気・嘔吐

はげしい痛みがある場合や、血尿がみられる場合は、早めに病院を受診しましょう。

腎盂腎炎
細菌感染により腎臓が炎症をおこした状態です。大腸菌などの腸内細菌が尿道から逆行してくることがおもな原因です。
症状
腎結石と同じく、炎症がおこっている腎臓側のわき腹や腰、背中にかけて痛みが起こります。そのほか、以下のような症状をともなうことがあります。

・悪寒、発熱
・排尿痛
・頻尿
・嘔吐

自然治癒することはむずかしいので、発熱が続く場合や症状がつよい場合は、病院を受診しましょう。
はげしい腰痛と腹痛がある場合
腹部大動脈瘤の破裂や腹部大動脈瘤解離が起こると、腰痛と腹痛がとても強くあらわれます。これらの病気は、放置すると命にかかわることもあるため、早急な対処が必要です。
腹部大動脈瘤の破裂
大動脈瘤は、大動脈の壁の一部がこぶのようにふくらんだ状態です。動脈硬化や高血圧などさまざまな要因で血管の壁がうすくなり、大動脈瘤ができると考えられています。

症状
大動脈瘤があるだけでは自覚症状がないことが多いです。大動脈瘤が大きくなり破裂しそうになると、持続する激しい腹痛や腰痛がみられます。破裂してしまうと、おなかの中で大量に出血するため、緊急手術が必要です。

腹部大動脈解離
大動脈解離は、大動脈を構成している壁の一部がさけて、大動脈内に二つの通り道ができる疾患です。大動脈瘤と同じく、動脈硬化や高血圧などさまざまな要因が関係しているとされています。冬場に発症することが多く、夏には少なくなる傾向があります。

症状
腹部の大動脈に解離が起きると、なんの前ぶれもなく突然おなかや腰に激痛が走ります。解離が起こると血管壁が薄くなるため、破裂しやすくとても危険な状態です。救急車などで、できるだけ早く病院に行くことが望まれます。
受診が必要なのはどんな場合?何かを受診する?
どの疾患であっても共通しているのは、はげしい痛みがある場合や、動いていないときも痛みが続く場合、だんだん痛みが増したりする際には注意が必要です。早めに病院を受診したほうが安心でしょう。受診する際、原因がはっきりわからない状態であれば、まずは内科を受診しましょう。

まとめ

腰痛と腹痛が同時に起こることがある代表的な病気をいくつか紹介しましたが、どの病気に関しても、症状のあらわれ方には個人差があります。そのため、これらの情報だけで、病気を特定するのは困難です。気になる症状や不安なことがあるときは、一度病院を受診してみることをおすすめします。

●参考
日本消化器病学会ガイドライン https://www.jsge.or.jp/guideline/
国立循環器病研究センター病院 http://www.ncvc.go.jp/hospital/
名古屋大学大学院医学系研究科 https://www.med.nagoya-u.ac.jp/uro08/index.html
兵庫医科大学泌尿器科学教室 https://www.hyo-med.ac.jp/department/uro/index.html

著者情報

若山まゆ
若山まゆ

保有資格

臨床検査技師

経歴

20代で椎間板ヘルニアを発症。脚のしびれが出るまでに悪化したこともありますが、正しい知識を得ることで、うまく付き合えるようになりました。

同じように腰痛に悩む人に「正しい知識を届けたい」「あきらめずに向き合ってほしい」という思いから、腰痛に関する情報を発信しています。

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