「腰椎すべり症」というものをご存じですか?これは数ある腰痛の原因の1つで、気付かないうちになってしまっていることが多いです。脊柱管狭窄症の症状にも似ていると言われるこの疾患ですが、本記事では腰椎すべり症の症状や脊柱管狭窄症の違いなどについて詳しく説明します。

腰椎すべり症とは?

人間の身体を支えている背骨は、椎骨という骨が積み木のように重なって形成されています。その中でも腰を支える椎骨を腰椎と言いますが、「腰椎すべり症」はその名の通り何らかの原因で腰椎が前方もしくは後方に滑り出してしまっている状態を指します。

すべりが大きくなればなるほど神経が刺激され腰痛を始めとするさまざまな症状を引き起こす腰椎すべり症ですが、「分離すべり症」と「変性すべり症」の2種類に分類されることが多いです。

「分離すべり症」は腰椎分離症(腰椎分離症の記事)が悪化したもので、腰椎を構成する椎体と椎弓が分離してしまっている状態を指します。一方で「変性すべり症」は加齢に伴って起こる場合が多く、椎間板や靭帯などの腰椎を支える組織が変性することでずれてしまった状態を指します。

これらの2種類の腰椎すべり症の原因は異なりますが、出現する症状自体はほとんど変わりません。これから、腰椎すべり症の原因や症状などについて詳しく紹介します。

腰椎すべり症の原因

腰椎すべり症には骨が後ろにずれる「後方すべり」と前にずれる「前方すべり」がありますが、ほとんどの場合が前方すべりであると言われています。また腰椎すべり症には、原因によって「分離すべり症」と「変性すべり症」の2タイプに分けられます。

「分離すべり症」は成長期の激しい運動などが原因で起こる腰椎分離症が原因で引き起こされることが多く、椎体と椎弓が離ればなれになることで椎体が前に滑り出てきてしまうことで発症するのです。この場合、負担がかかりやすい第5腰椎に頻発すると言われています。腰椎分離症を発症した方の一部が腰椎すべり症に移行すると言われていますが、まだその原因は詳しくは分かっていません。

一方で「変性すべり症」についても発症の詳しい原因は分かっていませんが、50〜60代の閉経後の女性に好発することから女性ホルモンが関係しているのではないかと考えられています。この変性すべり症の場合は、第4腰椎が好発部位です。

腰椎すべり症の症状

腰椎すべり症の症状は、脊柱管狭窄症(脊柱管狭窄症の記事)の症状によく似ていると言われています。主な症状として見られるのは、腰痛と下肢の痛み。すべりが大きければ大きい程腰椎にある神経の通り道が細くなり、神経が圧迫されることで腰痛や下肢痛などの痛みやしびれが生じるのです。

また症状が進むと、脊柱管狭窄症でよく見られる「間欠性跛行」という状態が見られることも。間欠性跛行の特徴としては長時間歩き続けると腰痛や臀部痛などが生じ、休息すると痛みが収まるというものがあります。

基本的には腰椎すべり症では、安静時や座っている時などは症状が出ないことが多いです。そのため腰椎すべり症になっていることに気付かない方もいらっしゃいますが、症状が進行すると安静時でも痛みが出現するようになるため注意が必要です。

腰椎すべり症の主な原因として多くの方を悩ませる腰痛ですが、長時間の立ち仕事や腰を反らせた姿勢で痛みが増強する場合があるので十分に気をつけるようにしましょう。

腰椎すべり症の診断

腰椎すべり症の診断は、医師の問診に加えてエックス線検査やMRIを使用。腰椎のずれに関してはX線検査で診断を行うのですが、前屈の姿勢で撮影を行うことでよりはっきりと診断がつきます。狭窄の部位によって治療法なども異なってくるため、より性格な診断が重要です。

また、X線検査よりも精密な診断が必要な場合にはMRIを選択します。MRIではどれぐらい神経が圧迫されているのかを診断することが出来ますよ。MRIは寝ている状態で検査を行うため、動いている時の状態を見たい場合は脊髄造影やCT検査を行うことも。

しかし検査を行った場合も脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどでも腰痛や下肢のしびれ、歩行障害など腰椎すべり症とよく似た症状を呈することがあるため、これらの病気との鑑別も非常に重要です。

腰椎すべり症の治療

腰椎すべり症の治療には保存療法と手術療法があり、その程度によってどちらかを選択します。それぞれメリットやデメリットがあるため、必ず医師の診察を受けた上で検討するようにしてください。

保存療法

腰椎すべり症は腰痛などの症状は出るものの悪性の疾患ではないため、薬物療法やコルセットの使用などで治ることがほとんどです。それでも痛みが改善しない場合は、理学療法やマッサージなどを行っていきます。

薬物療法では、消炎鎮痛薬の他に血流を良くするプロスタグランディン製剤を使用することもあります。プロスタグランディン製剤は、間欠跛行やしびれの改善に効果的です。

あまりに痛みが強い場合は、医師に相談した上で神経ブロックや硬膜外ブロックの使用などを検討してみてもいいかもしれません。

手術療法

保存療法を行っても症状が改善しない場合や、ひどい痛みがある場合などに手術療法を選択します。手術には大きく分けて除圧術と固定術があり、それぞれに特徴があるため詳しく説明します。

①除圧術
除圧術は滑り出して神経を圧迫してしまっている部分を削り、除圧することを目的とした手術です。滑っている部分の骨の動きが小さい場合は、除圧だけで症状が改善することもあります。手術の際は椎間関節を傷つけないように、神経を圧迫している部分だけを取り除くことが重要です。

②固定術
滑っている部分がぐらついている腰椎すべり症の場合には、脊椎の固定を行う固定術を行う必要があります。以前は脊椎の前方から椎間板を取り、それを使用して固定する方法がメジャーでしたが、現在は後方からアプローチする手術方法が増えています。

この2つの手術方法以外にも場所によって最近は内視鏡などを使用したMIS(最小侵襲手術)を選択することもできるため、自身の症状と相談しながらさまざまな手術方法を比較してみて下さい。

腰椎すべり症にならないために

腰椎すべり症ははっきりとした原因が分かっていないため、明確な予防方法というものはありません。しかし、腹筋や腰回りの筋肉を鍛えたり、身体が硬くならないように日常的にストレッチを行って腰痛の予防を行うことは重要です。

また、肥満の場合などは腰痛を発症するリスクが増加するため、しっかりとバランスを考えて食事をとることも腰痛予防に効果的です。

腰椎すべり症の治療を終えた方は、つらい腰痛を再発しないためにも日常的に腰に負担をかけすぎないようにして過ごしてください。

まとめ

本記事では腰椎すべり症についての詳しい情報を紹介しました。原因が分からない非特異的腰痛の1つである腰椎すべり症ですが、50代以上の女性を中心に誰にでも起こる可能性があります。

一度発症してしまうと激しい腰痛が続いたり、しびれなどで日常生活に支障をきたしてしまうことも。原因が分からない分事前に防ぐことは少し難しいかもしれませんが、普段から正しい食生活や適度な運動を心がけた上で腰にあまり負担をかけないように過ごすようにしてください。

現在腰痛などの症状が出ている方は、腰椎すべり症やその他の疾患が潜んでいる可能性があるため、できるだけ早く専門家の診断を受けるようにしましょう。

腰椎すべり症と診断されたら。腰椎すべり症をわかりやすく解説

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腰痛メディア編集部
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