序論

「腰の一部分がピンポイントで苦しい」、「上体をひねったり反ったりすると腰痛が出る」そんな症状にお困りの方はいませんか?その痛み、もしかすると「椎間関節性腰痛」かもしれません。椎間関節性腰痛は、原因のわからないとされている非特異的腰痛の中でも発生頻度が高く、手術をしなくても良好な治療成績が得られやすい腰痛症です。この記事では、椎間関節性腰痛の原因や、自分で行える確認方法、治療法などをご紹介します。

椎間関節性腰痛の病態

椎間関節とは

人間の背骨は椎体とよばれるいくつもの骨が積み重なるようにして構成されており、椎体1つ1つの接合部分を椎間関節といいます。椎間関節は、骨、軟骨、関節包線維(関節を包む袋のようなもの)などでできており、この構造に負担がかかって生じる痛みを椎間関節性腰痛といいます。慢性腰痛患者のうち椎間関節由来である頻度は15~52%との報告もあることから、腰痛の原因の中でも比較的多いと言えます。

症状

椎間関節性腰痛の大部分は、背骨の中央ではなくやや横側に出現します。症状の多くは左右のうち片方だけに出現しますが、中には両側性のものや、お尻や太ももの外側まで広がるケースもあります。また、患者自身が痛みの出現している部位を明確に答えられる場合が多いとされています。

腰痛発生のメカニズム

前述のとおり、椎間関節は骨、軟骨、関節包線維などの複数の組織から構成されています。その組織の中には侵害受容器(痛みを感じるセンサーの役割を果たすもの)が豊富に含まれており、他の組織と比較して痛みに敏感である事がわかっています。そのため、椎間関節に負担がかかる動きを繰り返し行い、一部分にストレスが集中すると容易に腰痛が引き起こされてしまいます。また、椎間関節を支配している神経は背筋と繋がっているため、筋・筋膜性腰痛とも密接に関連している可能性があります。さらに、椎間関節に炎症が起こると近くの神経も巻き添えを食らうように障害され、結果としてお尻や太ももの外側まで痛みが広がる原因にもなります。

椎間関節に負担がかかる動作とは

椎間関節に負担がかかる動作は、以下の3つとされています。
1.体を後ろに反らす動作(伸展) 
2.上体をひねる動作(回旋) 
3.上記1と2の複合動作(伸展+回旋)

椎間関節性腰痛を疑ったら

椎間関節性腰痛を疑うべき身体所見として特に重要なものを3つ紹介します。

背骨の真ん中から、1.5cm以上外側に痛みがある

背中に手をあてて背骨を触ると、ボコボコとした隆起を確認できるはずです。これは棘突起とよばれる背骨の一部分で、この1.5cmほど外側に椎間関節が存在します。したがって、棘突起より1.5cm以上外側に痛みがある場合は椎間関節性腰痛の可能性があります。

伸展・回旋・伸展+回旋時に痛みがある

体を後ろに反らす動作(伸展)、上体をひねる動作(回旋)、これら2つを合わせた動作(伸展+回旋)は、椎間関節にストレスをかけ、腰痛を引き起こします。回旋動作では、回旋した方と反対側の椎間関節に痛みが出ることが多いです。

痛みの出現している部位を明確に答えられる

腰痛を引き起こす代表的な疾患には、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、すべり症などが挙げられますが。これらの病気は、「なんとなく腰が痛い」「背中全体が重苦しい」「お尻や脚全体に電気が走ったような激痛が走る」など、症状の強さがさまざまで、かつ問診をしても痛みの部位が限局されない場合がほとんどです。しかし、椎間関節性腰痛の場合、患者自身が痛みの出現している部位を明確に答えられることが多いです。したがって、痛みが出ている部分を指一本で指し示すことができれば椎間関節性腰痛を疑います。このテストはOne finger testとよばれ、誰でも簡単にできるため診断の一助として重宝します。

治療

日常生活やスポーツでの伸展・回旋動作への注意

椎間関節性腰痛が疑われる場合は、伸展、回旋動作の繰り返しにより同じところに過度のストレスが加わっていることが大半です。例えば、伸びをして体を反らす、うつ伏せになって本を読む、車で後部座席にある荷物を取ろうとするなど、知らず知らずのうちに伸展、回旋動作が習慣化していませんか?また、野球の投球動作や、円盤投げ、砲丸投げなどのスポーツは、同じ方向に何度も腰を伸展、回旋する動きを伴うため、利き手と反対側の椎間関節にストレスがかかり、腰痛が引き起こされやすいとされています。これらの動作のくせを治したり、正しい体の使い方を覚えたりするだけで、著しく症状が改善することも少なくありません。動作のプロである理学療法士や、スポーツトレーナーに相談し、動き方の指導を受けるとよいでしょう。

運動療法

上記のように、伸展、回旋動作をなるべく防ぐことが治療の基本ですが、そもそも筋肉に柔軟性がない人は、伸展、回旋しやすい体になっている可能性があります。そのため、ストレッチや運動で腰痛が改善する場合があります。そこで今回は、硬くなってしまうことで椎間関節性腰痛の原因になりうる2つの筋肉のストレッチ方法をご紹介します。

大腿直筋のストレッチ

大腿直筋は太ももの前面についている筋肉で、硬くなると骨盤が前に傾き、結果として腰骨が反る方向に動きやすくなってしまいます。大腿直筋をストレッチするためには、うつ伏せになり、足首を持って膝を曲げていきます。踵がお尻に近づくにつれ、太ももの前面が伸ばされている感覚が得られれば上手にストレッチができています。

腸腰筋のストレッチ

腸腰筋は股関節の付け根付近についている筋肉で、腰骨に直接付着します。この筋肉が硬くなると腰が反りやすくなり、椎間関節性腰痛のみならず多くの腰痛を引き起こす原因となります。腸腰筋をストレッチするには、立った状態で、伸ばしたい方と反対の脚を1mほど前に出します。そのままあごを引いて上体を軽く後ろに倒します。後ろ脚の股関節の付け根が伸びている感覚があれば成功です。

ブロック療法

日常生活動作の見直しや運動療法で改善がみられない場合、ブロック療法が選択されます。ブロック療法では組織に針を刺し、局所麻酔とステロイド剤を注入します。椎間関節性腰痛が疑われる症例は、椎間関節とその近くの神経にブロックを行い、痛みが減るかどうかをみます。これは診断的ブロックと呼ばれ、確定診断をするために必須の確認作業ですが、同時に治療効果も期待できます。ブロック効果は数時間から、症例によっては1年以上の長期間にわたって持続する場合があります。我が国の腰痛ガイドラインでも、椎間関節ブロックは、短期的・長期的に腰痛軽減に有効とされています。

手術療法

運動療法やブロック療法の効果が得られない場合は、手術療法という選択もあります。慢性腰痛患者に対して、椎間関節ブロックや神経のブロックが一時的にも有効であれば、神経の経皮的電気焼却術の適応が考慮されます。経皮的電気焼灼術はその名の通り、痛みの原因となっている神経を電気で焼く手術です。

結論

椎間関節性疼痛は、腰痛の中でも比較的発生頻度が高く、体の伸展、回旋動作の繰り返しが原因とされています。症状にはいくつかの特徴的な所見があるため、それらを理解し正しく対処することができれば良好な治療成績が得られます。治療の基本は、日常生活の中で腰痛の原因を作っている動作を減らすことです。それでも効果が得られない場合は、ブロック療法や手術療法も視野に入れるとよいでしょう。


参考文献
1)鈴木秀典、田口俊彦:特集:保存療法で治せる腰痛症の見極めと治療 椎間関節性腰痛
2)成田崇矢編:脊柱理学療法マネジメント 39-41,2019.

著者情報

腰痛メディア編集部
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