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腰痛に悩んでいる人は多く、60歳以上の約半数以上は腰痛が起こっているとされています。

東京大学の研究グループが行った12019人を調査した疫学的データによると腰痛の有病率は38%であったと報告されています。40歳以上の約2800万人が腰痛を有していると推定されるため腰痛はとても身近な疾患といえます。

腰痛と聞くとぎっくり腰をイメージすることが多いですが、椎間板性腰痛という慢性的に痛みが続く腰痛が存在します。椎間板性腰痛は放置していると日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。

今回は椎間板性腰痛の原因と予防などを解説していきます。

椎間板性腰痛とは

椎間板性腰痛は、椎間板を損傷したり、変性したりすることで起こる慢性腰痛症のことです。45歳までの年齢層で多く起こり、慢性腰痛の中でも40%が椎間板性腰痛とされています。

通常では上半身を前に倒したり、腰に負担のかかるような姿勢になったりすると強い痛みを感じること多いです。椎間板が飛び出している状態のヘルニアは見られないためレントゲンでは異常を見つけることが難しいとされています。

しかし、MRIと呼ばれる検査をおこうと正常な椎間板は白く映りますが、椎間板性腰痛の場合には黒く映ります。

椎間板性腰痛は、数分から数十分ほど座っていると強い痛みがあらわれ、横になると落ち着くことがあります。

椎間板性腰痛の原因

腰の骨である腰椎と腰椎の間にクッションの役割を渡している椎間板が存在しています。

椎間板は加齢とともに水分が減少して弾力性が低下します。弾力性が低下している状態で過度な圧力が加わると椎間板が変性し、損傷することもあります。MRIで検査をすると黒く映る理由としては椎間板内の水分量が低下することで映りにくくなってことが原因です。

加齢によって椎間板の弾力が下がることが大きな原因ですが、過度な負荷によって椎間板が損傷することでも腰痛が起きるため猫背など姿勢が悪かったり、中腰での作業など腰に負担がかかる生活習慣を送ったりすると椎間板性腰痛になりやすいといえるでしょう。

症状が進行するとどうなる?

椎間板性腰痛を放置していると椎間板の損傷が大きくなる可能性があります。椎間板が潰れて飛び出している状態のことを椎間板ヘルニアと呼びます。椎間板ヘルニアは、飛び出した椎間板の一部が神経を圧迫して腰だけでなく、おしりや足にかけて痛みや痺れを起こすことがあります。

神経が強く圧迫されると激しい痛みがでたり、トイレのコントロールが難しくなったりすることもあります。そのため、椎間板性腰痛を放置していると日常生活がうまく送れなくなる可能性もでてきます。

他の腰痛とどう違う?

腰痛といえばぎっくり腰を想像する方も多いのではないでしょうか。ぎっくり腰は、椎間板性腰痛とは異なり椎間板ではなく筋肉や筋膜が損傷することで起きる腰痛です。ほとんどの場合では、1カ月以内に痛みが落ち着くことが多いです。

椎間板性腰痛では、椎間板の加齢による変性や強い負荷による損傷が原因で起こる腰痛でぎっくり腰に比べると慢性的に継続します。

その他の特徴としては、左右どちらかに起こりやすい、症状によってはお尻や太ももの裏の方まで痛みが発生することがあります。

また、腰を反らす・腰をひねるなどの動作で痛みが起こりやすいという特徴もあります。

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椎間板性腰痛の治療

椎間板性腰痛では根本的な治療方法というものが存在していないのが現状です。腰痛による痛みを和らげるために鎮痛剤を使って安静にすることも重要な治療法ですが、運動によって腰を支える筋肉をつけるという方法もあります。その他にも、痛みを感じにくくする手術というものも存在します。

薬物療法

腰痛などの痛みや腫れなど炎症がある場合などでは非ステロイド性抗炎症薬と呼ばれる解熱鎮痛薬が使われることが多いでしょう。痛みや炎症を引き起こす体内物質にプロスタグランジンというものが存在します。

非ステロイド性抗炎症薬は、体内でプロスタグランジンが生成されるのを阻害して痛みや炎症を抑えます。強い鎮痛効果を持っているので内服薬だけでなく湿布などの外用薬などにも使用されています。

しかし、痛みの根本的な原因を取り除くことができないので注意が必要です。痛みを抑えて椎間板に負荷がかからないように安静にした方がいいでしょう。

その他にも、オピオイド鎮痛薬と呼ばれる神経の働きを直接抑える医薬品もありますが、長期間使用すると痛みに敏感になってより痛みを強く感じることがあるので激しい痛みが出た時に短期間だけ使用することが推奨されています。

運動療法

薬物治療によって痛みが治った後に医師や理学療法士によるリハビリや運動療法することで回復を早めることができます。腹筋や背筋などの体幹を支える筋肉を鍛えることで椎間板にかかる負担を分散させられます。

また、椎間板に過度な負担がかからない姿勢や運動の仕方を身につけることで椎間板性腰痛の症状を和らげることができます。

安静にすることで腰痛は落ち着くことが多いですが、運動によって痛みが強くなることであるので医師や理学療法士の指導の元でリハビリをすることが重要です。

IDET治療

レントゲンを用いて椎間板の中に針を通してから針先に熱を加えます。熱を加えることで椎間板中に存在する神経を麻痺させて痛みを感じにくくします。また、椎間板の膠原繊維が硬化して椎間板が安定化することで痛みを起きにくくさせます。

椎間板性腰痛の治療法であるため椎間板ヘルニアまで進行するとIDET治療が効きません。
通常の鎮痛薬や神経ブロック注射などの治療を半年以上行っても効果がでない場合に適応となることがあります。

椎間板性腰痛の予防は?

股関節周辺の筋肉が硬直していると、足の動きによって骨盤が過剰に動いてしまうため腰への負担が強くなることがあります。そのため、股関節の筋肉を柔らかくするためにストレッチを行った方がいいででしょう。

また、腹筋や背筋など体幹を支える筋肉は腰椎も支えています。体幹を支える筋肉を鍛えることで椎間板にかかる負担を軽減できます。猫背など姿勢が悪い状態だと腰椎に負荷がかかるので姿勢を矯正したり、運動のときの体の使い方を身に付けたりするといいでしょう。

腰痛だと思ったら医療機関へ

腰痛は、加齢とともにかかる頻度が増えて60歳以上の人では半数の方に起こるともいわれています。若い人が腰痛になった場合では重篤な状態になることがほとんどなく、何週間も継続している状態でなければ検査をする必要がないことが多いです。

しかし、腰痛を引き起こす重大な疾患も存在しています。脊髄に病原菌が侵入した場合や脊髄に腫瘍ができた場合には激しい腰痛が起こることがあります。

また、腎結石や憩室炎などの消化器疾患などでも腰痛が起こります。そのため、腰痛が長期間にわたって継続する場合や激しい痛みが伴う場合、発熱、体重減少、嘔吐、痙攣などがある場合には重篤な疾患の可能性があるので医療機関へ受診してください。

まとめ

椎間板性腰痛は、椎間板に過度な負担がかかって損傷することが原因で起こる腰痛です。

加齢によって椎間板の水分は減少してクッション性も低下します。そのため、椎間板を支える腹筋や背筋などの筋肉を普段から鍛えることで腰痛予防にもなります。その他にも、正しい姿勢や運動の仕方を身につけることも重要です。

根本的な治療は存在していませんが、薬物治療で痛みを抑えて安静にしてから運動療法することで改善できることが知られています。その他にもIDET治療で痛みを抑制できます。
腰痛が継続する場合には一人で悩まず医療機関へ受診してみてください。

参考文献
椎間板性腰痛に関する基礎研究|千葉大学大学院医学研究院整形外科学|高橋和久
慢性椎間板性腰痛に対する椎間板内高周波熱凝固法
腰椎椎間板内高周波熱凝固法|大阪大学医学部附属病院麻酔科ペインクリニック
ぎっくり腰との違いとは?腰椎椎間板症の症状を徹底解説
腰の痛み・腰椎椎間板症|札幌スポーツクリニック
現代腰痛事情
MDSマニュアル家庭版

著者情報

腰痛メディア編集部
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