脊椎(腰椎)分離すべり症は、青年期における腰痛疾患の代表的なひとつです。
その要因としては、激しいスポーツでの分離やすべりが原因とされています。スポーツによる激しいぶつかり合いなどが起こった時に腰椎に過度なショックが起こったため分離やすべりが起きます。重なり合ってできている脊椎は、激しい外力によって容易に滑ります。老化やスポーツによる酷使によって椎間板が変形し、椎体をしっかりと支えきれなくなると外からの圧力を吸収しきれずまともに受けて、やがてずれてしまうのです。

今回は青年期に多い腰痛疾患「腰椎分離・すべり症」の概論についてまとめました。

腰椎分離症とは

腰椎椎弓を構成する上下の関節突起部の連続性が断たれた状態が病態の本質です。青年期の激しいスポーツが原因で起こることが多く、その奥は第5腰椎(L5)に発生します。青少年の10%程度に見られ、スポーツをする青年の場合は、一般の青少年と比較してその発生率は約3倍といわれています。成長期における過度な運動による腰椎の過度の進展や屈曲による荷重が関節突起部に繰り返し加わって生じるストレスが原因と考えられています。
また、世界的にはイヌイットに多いといわれている疾患で、潜在性二分脊椎症を併発したり、家族性が認められたりすることもあります。分離した椎体と椎弓はそれぞれ安定性を失います。その状態で椎体が前方にすべりだすと「分離すべり症」となります。

腰椎分離症の治療法

青少年期における腰椎分離症は、腰痛を実感して早期であれば、保存療法で分離した部分の骨癒合が期待できます。
すなわち6ヵ月間はスポーツ活動を休止させ、ハードコルセットを装着し腰椎の安静を図る必要があります。スポーツ選手である場合、取り残されるのではないかというストレスが大きく、心理的な落胆が発生しやすいので、メンタルケアが必要になります。
急性期が過ぎて骨癒合が期待できなければ、腰痛が支障になっていないようならば無理にスポーツ活動を禁止する必要もありません。選手の環境に配慮して薬物療法やブロック注射などで経過を見ることもあります。
成人期になり腰椎分離症が発覚することもあります。成人期になってしまえば、保存療法での骨癒合は期待できません。しかし、分離症があるからといって腰痛が必ず起こるわけではありません。腰痛がない場合、あるいは腰痛が軽度の場合は無理にスポーツや仕事を制限する必要はないのです。コルセットを装着して腰痛をやり過ごしていることもあります。
一方で腰痛が激しく、慢性の経過をたどっていて、日常生活や仕事に支障をきたしているようであれば、手術を選択します。

腰椎すべり症とは

1つの椎骨が尾側の椎体に対し前方へ滑っている状態の総称です。すべり症の程度は4段階に分けられ、レントゲンの画像診断により判断されます。
原因からみた分類は以下です。
①先天的な形成異常によるL5の高度なすべり症
②脊椎分離すべり症
③椎間板や椎間関節など可動部分の変性による変性すべり症
④外傷性すべり症
⑤悪性腫瘍や感染などの骨破壊によるすべり症
このうち1~3の病態を把握し鑑別することで治療の方向性を見定めます。

先天性の腰椎すべり症

腰痛と大腿後面の痛みを訴える患者さんが多くいます。L5とS椎間のすべりによる後弯変性とそれをサポートしようとして、腰椎の前弯が強度になる姿勢を取ります。高度のすべりが発生し、馬尾障害(※1)や神経根の障害により違和感を覚え思春期前後に来院することが多いようです。
基本的には脊椎の固定術が適応です。しびれや知覚鈍麻、歩行障害などの神経症状があれば除圧固定術が適応になります。
※1馬尾障害→両下肢の脱力感、会陰部のしびれや熱感、膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい→残尿感、頻尿、便秘など)、男性時は歩行時に勃起症状が出ることもあります。

脊椎分離すべり症

腰椎によく起こるすべり症です。運動や姿勢の変更など、腰が屈曲するときに腰がずれるような違和感を覚え、張り感や腰痛を自覚します。またときに片側、もしくは両側の下肢痛やしびれを感じます。場合により間欠跛行(かんけつはこう)が出現することもあります。基本的には椎弓は後方に残っているので馬尾障害を呈することはあまりありません。
保存療法の場合は、基本的に局所の安定化を図ります。日常生活によって負荷がかかる腰椎や仙椎への刺激を軽減させる目的で、軟性コルセットと日常生活動作の配慮が基本となります。必要に応じ腰痛を鎮静させるために、ブロック注射や鎮痛剤を使用し治療をします。
手術が選択される場合には、脊椎固定術や椎間固定術が選択されます。しびれや知覚鈍麻、歩行障害などの神経症状があれば除圧術も付加されます。

変性すべり症とは

椎弓の分離がなく、椎体が前方にすべっている状態をいいます。40歳以上の女性に多くみられます。発生要因としては、後方の椎間関節や椎弓の平坦になっているなどの解剖学的危険因子がもともと存在していて、さらに老化などにより椎間板の機能が破綻することで椎体のすべりが発生すると考えられているようです。
女性に多いことから、女性ホルモンが関係しているのではと考えられているようですが、まだはっきりとしたことは分かっていません。多くはL4で発生します。L4変性すべり症は、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)の代表的な原因の1つで馬尾障害を呈することもある重要な疾患です。
徐々に腰痛が発生し、腰部脊柱管狭窄症にともなって発見される傾向があります。主な症状や、腰痛や下肢痛、多根性のしびれ、間欠跛行が見られます。ほかのすべり症よりも馬尾障害を呈することが多く、緊急で処置が必要になることもしばしばあります。
腰痛が主訴である場合には、コルセットによる保存療法が治療の中心です。合わせてブロック注射やリハビリ、鎮痛剤の使用、日常生活に配慮しながら症状が落ち着くのを待ちます。しかし、馬尾障害が出現している場合は、できるだけ早期に手術する必要があります。また、保存療法を試みても、症状の改善が得られない、改善したけれども日常生活や仕事に支障が出る場合などには手術が選択されます。

まとめ

いかがでしたか?「若いのに腰痛なんて。」と思われ見過ごされることもある腰椎分離すべり症ですが、発見が早ければ手術をしなくても完治を目指せるのが青年期における特徴です。スポーツ選手であれば、スポーツ休止期間が設けられ、ストレスを感じることもあるでしょうが、その他の筋肉などに侵襲を加える手術と違い、治療後は速やかに復帰できるのもメリットです。成人期になると、保存療法で完治するのは難しい問題です。完治を目指すのであれば手術が必要になります。

早期に発見し、早期対処できる青年期だからこそできることもあるのです。今回の記事が腰痛にお悩みの青年期の方やその親御さんへ、参考になれば幸いです。

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腰痛メディア編集部
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