腰椎疾患の中でも、比較的若年層に多く見られるのが「腰椎椎間板ヘルニア(ようついついかんばんへるにあ)」です。20代から30代の若い年齢層が罹患する整形外科領域の疾患でよく見られます。その病状もさまざまで、なんとなく腰痛を感じる程度から、激痛の腰痛、ひどい場合には歩行障害や排尿障害まで起こることもあります。

若年者が腰椎椎間板ヘルニアを発症する原因

スポーツを好んでする若年層に多く見られる椎間板ヘルニア。これにはスポーツによる腰の動きが負荷となり、椎間板が劣化し、損傷することで起こります。激しいスポーツやウェイトトレーニングを好む人に多く見られるのです。椎間板は背骨にかかる衝撃の70%を吸収しているといわれています。日常的に、背骨に負荷のかかるスポーツや仕事をしている若年層に見られがちな病態です。

また、ヘルニアは、肥満や運動不足が原因で起こることもあります。とくに小児の椎間板ヘルニアの場合は、運動不足にともなう肥満、もしくはスポーツなどによる運動の負荷がかかり、それに対し腰を支える筋肉の発達が追い付いていないことによる筋力不足が原因で起こる傾向があります。

子供の場合も、初めは腰痛を実感し、次いで足への放散痛やしびれを感じ発症を自覚するケースが多いようです。

腰椎の椎間板とは?

椎間板とは、脊柱において椎骨と椎骨の間に挟まっている軟骨のことです。脊柱の3次元方向への動きを可能にして、さらに垂直方向の衝撃を吸収するクッションとなっています。
椎間板は線維軟骨組織でできています。中央には髄核と呼ばれる部分があり、その周囲を繊維状軟骨が覆っています。椎間板の上下には、椎間終板と呼ばれる板状の骨性組織に挟まれています。髄核は生まれたときには90%以上の水分含有率を誇りますが、30代以降になると30~40%程度まで減少します。

継続的な外力が加わることで、椎間板の線維輪が分断され、椎間板内の線維輪や髄核が脱出(ヘルニア)します。これが椎間板ヘルニアの病態です。

椎間板ヘルニアの分類

椎間板ヘルニアは、その脱出の程度より、以下に分類されます。

・線維輪の断裂が何髄核膨隆
・線維輪の部分断裂がある髄核突出
・線維輪の完全断裂がある髄核脱出
・髄核が分離して移動する髄核分離

さらにヘルニアが脱出する方向により以下に分類されます。

・正中型ヘルニア→両下肢痛、しびれが出現します。馬尾神経までの圧迫が及ぶと膀胱直腸障害を起こすことがあります。
・椎間孔内側ヘルニア→脱出した神経根の症状があらわれます。片側の下肢痛、しびれ、知覚鈍麻、筋力低下などがおこります。
・外側型ヘルニア
基本的に単神経根症状として腰痛や下肢痛の症状があらわれます

若年層の腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアは多くの場合、急激な腰痛から始まります。その後、ヘルニアの脱出レベルや脱出の部位に応じで徐々に症状の出現の仕方がわかれてきます。

自覚症状で多く見られるのが腰痛と下肢への放散痛です。若年者の場合だと、安静でいくらか症状が軽快することもあります。症状が急激に発症する場合と、緩徐に慢性的に進行する場合があります。

ぎっくり腰の主要原因ともされているヘルニアですが、通常発見されるまでには、反復して軽度の腰痛や、経過観察で改善する程度の腰痛があったところに、急激に激しい腰痛と下肢痛が出現し、病院受診して病態が発見されるパターンが多いようです。

若年者の場合は、安静と市販の鎮痛薬で改善すれば、症状を重篤とみなさず、経過観察してしまう傾向があります。これがぎっくり腰として腰痛が劇症化してしまう要因になっています。

中には急性腰痛症状が1~2日で収まった後に、下肢の放散痛やしびれ、歩行困難を自覚し、受診に至るケースもあります。下肢痛は、咳やくしゃみで増悪する「デジェリーヌ徴候」というのが有名です。

若年層の腰椎椎間板ヘルニアの予後

ほとんどの患者さんは、基本的に発症後3カ月以内に保存療法で症状が改善します。文献にもより異なりますが、およそ6~7割の人は症状が軽快します。椎間板ヘルニアの半分以上、とくに硬膜外腔に脱出したヘルニアは、周囲に肉芽が形成され、その肉芽から遊走した貪食細胞によって貪食され消失します。この貪食反応がよく起こり、症状がよく改善するのも若年者のヘルニアの特徴です。

若年層の腰椎椎間板ヘルニアの治療

腰椎椎間板ヘルニアの治療で行われる保存療法は、以下です。

・安静→急性期にはとくに自分の腰痛の程度に応じて安静を促します。腰痛の範囲が自分で我慢できるようになったら、鎮痛剤を飲みながらでも構わないので、積極的に日常生活動作をするようにしましょう。過度な安静は筋力低下をもたらし、さらなる腰痛を呼び起こします。
・薬物療法→基本的には非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)を中心として投薬を開始します。筋緊張が強い場合には、筋弛緩薬や湿布・軟膏剤も併用します。
・ブロック注射→局所麻酔薬にあわせて、ステロイド薬も注射し、患部の除痛を図るとともに、炎症反応を抑えます。反応が良ければ一度で功を奏しますが、通常は2~3回繰り返します。長くても半年以上は行われません。腰痛に対しての保存治療としては、最も効果があるといわれています。
また、症状を起こしている部位を特定するために、鑑別として注射をする場合もあります。
・日常生活指導→腰痛が増強する姿勢や、動作を説明し、これらの動作を避けるように気を付けます。不意な姿勢で腰痛が悪化するので、日ごろから腰に負担がかからないような姿勢を理解しましょう。多くの施設では、パンフレットや小冊子などを用意して、いて自宅で見返せるツールがあるので、把握するのに不安を覚える方は、指導のほかにツールの持ち帰りも希望してみるとよいでしょう。
・リハビリ→急性腰痛の症状が軽快したのち、運動が可能になった時点から行います。おもに腰背筋や腹筋を強化し、腰部脊柱の支持性を強化することが目的です。施設や理学療法士により、提供される技術は少しずつ違います。自分にあっていて、自宅でも継続していける方法を担当の理学療法士に相談し、習得していくとよいでしょう。日常的に行えるものを習得していくのがおすすめです。
・コルセット→症状によっては、コルセットの装着をすすめられます。コルセットの目的は、腰部を支持し、腰椎にかかる負担を減らすために使用されます。症例により使用されるコルセットは異なりますが、急性期を脱し、腰部の安静が不要になれば、徐々にコルセットに頼らない生活をすることも重要です。不用意に長く使用することで、腰部や起立筋群の筋力が低下し、かえって腰痛の要因ともなりかねません。

手術を選択する事例

保存療法をいろいろと試してみて3~6カ月、症状の改善を試みます。それでも症状が改善しない、むしろ悪化した、軽快はしたが日常生活や仕事に支障が出るといった場合に手術療法が検討されます。

まとめ

いかがでしたか?今回は比較的若い方に特徴的な腰椎椎間板ヘルニアについてまとめました。とくに肉体労働職の方に多い「腰椎椎間板ヘルニア」。症状が悪化する前に早期対処できるのが望ましいでしょう。今回の記事が腰痛を持っていて「あれ?」と思い当たる方の参考になれば幸いです。

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腰痛メディア編集部
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