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前にかがんだ時やうしろを振り向いた時、重たいものを持ち上げた時など、不意な激しい腰痛「ぎっくり腰」を経験したという方は多いのではないでしょうか?多くの方にとって、ぎっくり腰は大人になってから医療機関を受診する最初の理由とも言われています。

ぎっくり腰の大半は自然経過でよくなるものの、31%の人が6ヵ月後も完全回復に至っていないとされ、さらに25~62%の方が2年以内に再発したという報告があります。(1)

ぎっくり腰に対して適切な管理していくことは、腰痛の慢性化や再発の防止だけでなく、仕事や人生の幸福感など生活のあらゆる場面と関連していきます。

この記事では、ぎっくり腰を発症した場合のご自身で行える管理と再発防止に向けた方法についてご紹介します。

ぎっくり腰ってどんな病気?

ぎっくり腰の正式名称は「急性腰痛症」といいます。
痛みの部位は、「あばら骨の一番下からお尻までの範囲」のどこかに痛みが生じている場合を腰痛と定義します。
原因は、「筋肉」や筋肉を覆う「筋膜」の損傷、背骨のクッションである「椎間板」、背骨一つ一つの関節の「椎間関節」の損傷などが要因として挙げられます。
急性腰痛腰を発症するタイミングは前にかがんだ瞬間、後ろを振り向いた瞬間、重たいものを持ち上げた瞬間など多くは日常生活の何気ない動作で起こるとされています。(1)

※まれに急性腰痛症以外の重篤な病気が生じている可能性もあります。症状があまりにもひどい場合にはまず医療機関を受診しましょう。

👉ぎっくり腰とは? 症状、炎症期間、どのくらいで治るか、予防法を解説

急性腰痛症はいつまで痛みがつづくのか?

急性腰痛症患者を対象としたシステマティックレビュー論文の報告(3)では、計11,166名の患者の痛みの推移をまとめて報告しています。痛みレベルを100段階とした場合(100が最も痛い)、1週目52/100→6週目23/100→26週目12/100→52週目6/100。

このように、発症から1~2ヵ月ほどで大半の方の痛みは半減し、その後もゆるやかに改善するのが急性腰痛症の特徴です。

しかし、冒頭で述べたように31%の方は、6ヵ月を過ぎても痛みがとれず生活や仕事に支障を来しているとの報告もあります(1)。

急性腰痛症が長引く人の特徴は?

腰痛が長引く要因としてさまざまな報告がありますが、興味深いのは回復に対するマイナス思考と腰痛の慢性化の関連について報告されたものです。(4)この報告によると、痛みに対する「破局的な思考」が強い方ほど腰痛が慢性化し、労働制限につながったと報告されています。
腰痛に対する破局的思考とは、痛みが頭から離れない状態「反すう」、痛みに対しなにもできないと感じる「無力感」、痛みを大きく見積もる「拡大視」。これらの腰痛に対するネガティブな思考が、腰痛をより解決しがたいものにさせてしまいます。

つまり、急性腰痛は良くなるものと理解して、適切な管理方法をとって、不安の軽減を図っていくことが重要な心構えであるといえます。

急性腰痛症は温めるといい?それとも冷やすといい?

「冷やす効果」としては、発症直後の筋肉や関節の損傷により生じている炎症を抑え、回復を促す効果があります。

「温める効果」としては、血流を良くして痛みや疲労物質を流し、副交感神経の働きを高めリラックスさせる効果があります。

急性腰痛に対して発症直後は「冷やす」、発症から時間がたてば「温める」のが従来の管理方法でした。

しかし近年では、急性期から温めることによる痛み改善効果の報告も認められており、冷やす・温める論争に現在のところ決着はついていません。(5)

急性期管理としては「冷やす」だけに固執せず、入浴やホットタオルなど「温める」ことによるリラックス効果を求めてもいいかと思われます。どちらも試してみて、ご自身の体、痛みに合った方法を探してみましょう。

急性腰痛症に対してコルセットは使用した方がいい?

コルセットは腹部・腰部を引き締めることで、不安定な背骨を安定させて、痛みをやわらげるという効果が期待されます。コルセットを使用することで腰痛が和らぐようであれば使用しましょう。
しかし、コルセットを使用することによる予防効果と再発効果について検証した研究では、コルセットを装着することによるメリットは得られなかったとしています。(6)
コルセットを日常的に使用することは、ご自身のコルセットの役割を持つ体幹筋を使用する頻度が減り、体幹筋を弱くする可能性も考えられています。
むやみに使用することは避け、使用するのであれば痛みの軽減が確かに得られるのか、痛みが落ち着いているのに漫然と使用するなどは避けるように心がけましょう。

急性腰痛症は安静が一番?それとも運動?

この疑問に対するシステマティックレビュー論文(7)では、「ベッドでの安静に比べ通常通りの生活を送るようにアドバイスされた群はわずかながら痛みの改善が速く、身体機能の状態も良好であった。」としています。一方、「早期から運動を行う効果は認めなかった」ともされています。
痛みには安静が一番と体を休ませすぎると、痛みが慢性化するだけでなく、全身の筋力・体力の低下を招いてさらに悪循環に陥る可能性があります。急性腰痛症を発症した直後でも、できる限り従来通りの生活を行っていくことが大切です。だからといって、痛みの強い段階から筋力トレーニングなどを行ったとしても、その効果は認められなかったとしています。無理のない範囲からで、少しでも通常通りの活動に近づけるよう心がけましょう。

痛みが落ち着いてきたら運動で再発予防を!

痛みが強い急性期の段階では、通常通りの生活を心がけることが重要でしたが、痛みが落ち着いてきたらストレッチやウォーキングなど簡単な運動や腰痛体操を再開してみましょう。運動による腰痛再発防止効果を検討した研究論文では、なにも運動を行わなかった群に比べ、なにかしらの運動を実施していた群で、1~2年の腰痛再発率が50%軽減したとの報告もあります。(8)急性腰痛を繰り返さないためにも、痛みが落ち着いてきたら予防のため健康のために、ストレッチやウォーキングなどできる運動から始めてみましょう。

まとめ

急性腰痛症を発症した場合の管理方法についてご紹介しました。

病態と管理方法を理解し、「自分で管理できる!」と思えることで、精神的な負担を除いていくことは痛みを慢性化させない大切なポイントでした。

管理方法として「温める」「冷やす」「コルセットをする」など、いずれもご自身の体にあった痛み軽減方法を探し、できる限り「通常の活動」を続けていきましょう。また、再発予防に向けて痛みが落ち着いてきたら「簡単な運動」を始めていくことも大切です。

しかし、具体的にはどんな運動がいいのでしょうか?腰痛の原因は人によりさまざまです。腰痛の発生している部位と痛みのタイプに応じて適切な運動方法は変わります。

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【引用・参考文献】
1) Casazza BA。 Diagnosis and treatment of acute low back pain。 Am Fam Physician。 2012 ;85(4):343-50。
2) あ
3) da C Menezes Costa L, Maher CG, Hancock MJ et al。 The prognosis of acute and persistent low-back pain: a meta-analysis。 CMAJ。 2012;184(11):E613-24。
4) Hallegraeff JM, Krijnen WP, van der Schans CP, de Greef MH。 Expectations about recovery from acute non-specific low back pain predict absence from usual work due to chronic low back pain: a systematic review。 J Physiother。 2012;58(3):165-72。
5) French SD, Cameron M, Walker BF, et al。 A Cochrane review of superficial heat or cold for low back pain。 Spine (Phila Pa 1976)。 2006;20;31(9):998-1006。
6) van Duijvenbode IC, Jellema P, van Poppel MN, et al。 Lumbar supports for prevention and treatment of low back pain。 Cochrane Database Syst Rev。 2008;2008(2)。
7) Dahm KT, Brurberg KG, Jamtvedt G, et al。 Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low-back pain and sciatica。 Cochrane Database Syst Rev。 2010;(6)。
8) Choi BK, Verbeek JH, Tam WW, et al。 Exercises for prevention of recurrences of low-back pain。 Cochrane Database Syst Rev。 2010;(1)。
9) 日本整形外科学会、日本腰痛学会。 腰痛診療ガイドライン2019。改定第2版。

【参考】
腰痛 日本整形外科学会

著者情報

腰痛メディア編集部
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