椎間板ヘルニアは、腰痛の原因のうちでもっとも多いものだと言われています。しかし、腰の痛みを感じたとき、それが疲れや炎症からくるものなのか、椎間板ヘルニアの兆候なのか、判断するのは難しいですよね。

この記事では、椎間板ヘルニアの兆候となる症状と、重症化した場合の症状の進み方、治るまでの期間をまとめました。椎間板ヘルニアの兆候を見逃さず、適切に医師の診断を受けましょう。

椎間板ヘルニアの兆候とは

椎間板ヘルニアには、兆候となる特徴的な症状があります。
腰の痛みだけでなく、次の症状があらわれたときは要注意です。

・下肢痛
・しびれ

下肢痛とは、おしりからふともも、ふくらはぎ、そして足先にかけて生じる痛みをいいます。神経が圧迫されるため、腰から離れたところにも痛みが現れます。

このため椎間板ヘルニアの痛みは、「おしりが痛い」「ふとももの裏が痛い」と表現されることがあります。

もうひとつ、椎間板ヘルニアのチェックポイントとして見逃せない兆候が、下肢のしびれです。これもやはり、おしりから足先にかけての部分に生じます。正座したあとのようなじんじんとしたしびれが持続します。

どちらの症状も、左右片側だけに生じることが多いようです。

椎間板ヘルニアの検査

椎間板ヘルニアの検査には、SLRテスト・FNSテストやレントゲン、MRI検査が一般的に用いられています。

SLRテストとFNSテストは、下肢を動かしたとき、椎間板ヘルニアに特徴的な痛みが出るかどうかを調べるものです。

SLRテスト

SLRテストは、下肢伸展挙上テストとも呼ばれます。腰椎の中でも下のほうにある、4番・5番腰椎にヘルニアがあるかどうかを調べるテストです。なお、4番・5番腰椎は、椎間板ヘルニアが起こりやすい部分です。

SLRテストでは、患者さんはあおむけに横たわり、足を伸ばしたまま、医師が上に持ち上げていきます。4番・5番腰椎に椎間板ヘルニアがある場合、持ち上げるとおしりやふとももの裏、ふくらはぎに痛みが出ます。重症になると、痛みでほとんど足が上がらない方もいます。

FNSテスト

FNSテストは、大腿神経伸展テストともいわれます。上のほうにある2番・3番腰椎にヘルニアがあると、特徴的な痛みが出ます。

患者さんはうつ伏せになり、膝を曲げた状態で医師が足首を持ち、股関節を伸ばすように引っ張ります。2番・3番腰椎に椎間板ヘルニアがある場合、ふとももに痛みが出ます。

腰痛の患者さんが、SLRテストやFNSテストで痛みを訴える場合、椎間板ヘルニアが疑われます。ただし、ヘルニアがあっても、必ずSLRテスト・FNSテストで痛みが出るとは限りません。高齢の患者さんでは、ヘルニアがあるにも関わらず、どちらのテストでも痛みを感じないこともあります。自宅で足を上げてみて、痛くないから大丈夫かな?と、自己判断してしまうのは禁物です。

より正確に椎間板ヘルニアの有無を検査するには、レントゲンやMRI検査を使います。レントゲンやMRI検査では、椎間板を撮影して、ヘルニアがあるかどうかをしっかりチェックできます。手術前など、椎間板の状態をより詳しく確認する必要がある場合には、CT検査が行われることもあります。

椎間板ヘルニアの症状はこう進行する

椎間板ヘルニアが進行すると、どんな症状が出るのでしょうか。段階を追ってまとめてみました。

① 腰痛
椎間板ヘルニアの初期症状は、腰痛です。はっきりした痛みでなく、違和感を覚える方もいます。

② 下肢痛・しびれ
椎間板ヘルニアが進行すると、下肢痛やしびれなど、明らかな兆候があらわれてきます。下肢痛の範囲も、おしりから足先へと、ヘルニアが重度になるにつれてだんだん広がっていきます。

③ 腰の曲げ伸ばしができなくなる
腰の痛みが特に強まる時期(急性期)には、からだをまっすぐ保ったり、いつもどおりに動かしたりすることが難しくなり、次のような症状が出ます。

・からだが片側に傾く
まっすぐ立っていることができず、どちらか一方に傾いた姿勢になります。

・腰を曲げられない
腰を前方に曲げる(前屈)ことができなくなります。また、腰の自然な反りがなくなり、からだが全体としてフラットな状態になります。

・腰を伸ばせない
症状が進行すると、反対に腰を伸ばすことができなくなり、からだが丸まった状態になります。

④ 筋力低下
椎間板ヘルニアがさらに進行すると、神経の圧迫による影響(神経症状)が出てきます。足をさわってもあまりさわられた感覚がしなくなったり、足に力が入らなくなったりします。足の筋力が低下すると、とっさに踏ん張ることができず転びやすくなるので、高齢の方は特にご注意ください。

⑤ 排泄障害
椎間板ヘルニアによる神経症状の中でも、重度のものが、膀胱直腸障害です。ヘルニアが腰椎の「馬尾(ばび)」と呼ばれる部分を圧迫すると、尿が出にくくなったり、逆に尿漏れを起こしたりして、排泄がうまくできなくなります。

なお、椎間板ヘルニアは、必ずしも段階を追って進行するとは限りません。兆候に気づく間もなく、突然強い痛みにおそわれたり、腰痛とともに足がしびれたりする場合もあります。ヘルニアの兆候を感じた場合には、すぐ医師の診断を受けるなど、早めの対応をこころがけてください。

椎間板ヘルニアが治るまでの期間

椎間板ヘルニアが生じても、全員が手術を受けなければならないわけではありません。椎間板ヘルニアは、腰椎の間にある椎間板の髄核が飛び出して神経を圧迫することが原因であると言われています。手術する場合はこの髄核を切除するわけですが、人のからだが持っている自然治癒力によって髄核が吸収されてしまい、自然に症状がなくなることも少なくありません。

これには、数週間から2~3ヶ月かかるといわれています。その間は薬で痛みをおさえ、できるだけ安静にして様子を見ます。痛みやしびれがおさまってきたら、徐々に通常の生活に復帰できます。

手術する場合には、手術方法にもよりますが、2泊~7泊程度の入院が必要です。手術したあと、あまり早く動き回ると再発の危険性が高くなりますので、じっくりリハビリを行う必要があります。かんたんな仕事なら手術後2週間~1ヶ月程度、力仕事の場合は1~2ヶ月程度で復帰できます。手術後2~3ヶ月程度で、スポーツもできるようになります。

椎間板ヘルニアの手術が必要な場合

先ほども述べたとおり、椎間板ヘルニアが見つかったとしても、即手術になるわけではありません。椎間板ヘルニアで手術が必要になる場合をまとめました。

1ヵ月ほど様子を見ても、症状が改善されないとき

椎間板ヘルニアが発症してから1ヶ月程度が経過しても症状がおさまらず、むしろ悪化するような場合には、自然治癒する見込みが少ないため、手術が必要となります。

すぐに仕事に戻らなければならない事情があるとき

自然に治癒するとはいっても、数週間から2~3ヶ月の間、仕事を休んで安静にしているのが困難な方は多いですよね。また、大事な会議がひかえているため休むわけにはいかないなど、人によって事情もあります。このように、できるだけ早く仕事に復帰したい場合に、手術が選択されることがあります。

神経麻痺や排泄障害があるとき

足の神経麻痺が著しい場合や排泄障害がある場合には、緊急手術が必要です。神経が圧迫され、深刻なダメージをこうむってしまうと、回復するのが難しくなるためです。人によっては後遺症が残ることがあるので要注意です。

特に排尿・排便障害は深刻です。早めに手術しないと深刻な排泄障害が残ってしまうため、尿が出にくい、または漏れに気づかないといった症状がある場合には、すぐに専門医を受診してください。

足の神経麻痺、それにともなう筋力低下も、進行すると回復までに時間がかかります。足に力が入らない、つま先立ちができない、足の指が動かせない、といった症状が見られた場合には、手術を検討することになります。両足でしっかり立てないと、日常生活を送るのも大変ですよね。

まとめ

椎間板ヘルニアは、自然治癒することの多い疾患ではありますが、治癒には時間がかかり、悪化すると後遺症が残る危険性もあります。兆候を早めにキャッチして、医師の診断を受けてください。また治療中も、筋力の低下が進んでいたり、排尿・排便に支障が生じたりしていないか、チェックしておいてくださいね。

◆参考著書
近籐 泰児,腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症 正しい治療がわかる本,法研出版,2010年08月

著者情報

腰痛メディア編集部
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