野球による繰り返しのピッチングやバッティングにより、腰痛を引き起こしてしまうケースは多いです。
腰痛が慢性化すると、プレーを長時間続けられなくなったり、思うようなプレーができなくなったりしてしまいます。
しかし、野球による腰痛は、適切な痛みの評価と対策を行うことで、軽減することが可能です。
この記事では、野球による腰痛を抱える方のお悩みを解決するために、特徴的な症状と原因、対策について解説します。

野球による腰痛の特徴と原因

野球の動きの特徴

野球は、ピッチングやバッティングの際、腰椎(腰の骨)に強いねじれの力と回転の力が加わります。
ピッチングの場合
ピッチングサイクル中、片足立ちの横向きから正面に向かって投げる際、腰→背中の順でねじれが加わります。
そのねじれのバランスが崩れてしまうと、背中、仙腸関節(腰とお尻の間の関節)、椎間板(腰の骨と骨の間のクッション)に痛みが生じます。
投球力の50%は腰、骨盤の動きであると言われています。
バッティングの場合
バッティングでは、下半身の動きに伴い激しく腰が回転し、その際、腰椎に大きな回転圧力が加わります。
打撃のタイミングがずれると、腰椎に強い圧力が加わり、痛みが生じます。
その圧力は、体重の6倍を超えると言われています。

このように野球は、下半身から上半身へと力を伝達する連続的な動きが基本となっています。下半身と上半身をつなぐ部分、つまり支点として最も負担が大きい部分が「腰」なのです。

野球による腰痛の原因3つ

野球による腰痛の原因は3つあります。
体幹と腰の動的な安定性の低下
野球の動きの支点となる腰や骨盤の安定性はとても重要です。
バッティングの場合、スイング→ボールの接触→フォロースルーの時、腰を高速回転します。その高速回転により、腰椎の軟部組織(筋膜、靭帯、椎間板など)に強い負荷がかかります。腰や骨盤周りの筋肉が不十分だと、この回転を制御できず、軟部組織に小さな傷ができます。これが腰痛の原因となります。

ピッチングとバッティングにおける不適切なタイミング
ピッチングとバッティングにおいて、動作中に発生する腰のねじれと回転力が最も強い瞬間があります。
ピッチングの場合は、先導する足が地面に接触する時、バッティングの場合はボールがバッドに接触した後です。
この最も腰への負荷が強い瞬間に、適切なタイミングで腰・骨盤回りの筋肉を最大に活動する必要があります。
このタイミングが遅れたり早まったりすることで、結果的に腰椎の軟部組織を傷つけ、腰痛に繋がります。

関節可動域と柔軟性の低下
ヒトの腰椎の動きは、屈曲(前に曲がる)、伸展(後ろに曲がる)、側屈(横に曲がる)、回旋(回る)の4種類があります。
野球において、腰椎の側屈と回旋の動く範囲(関節可動域)が狭いと、パフォーマンスが低下すると言われています。
この関節可動域が狭い状態(つまり、体が固い状態)で高速な回転が加わると、腰周りの筋肉に余計な力が入り、筋肉に痛みが生じます。

この3つが原因となり、腰椎に対して、反復的、高速的に、非対称の異常な力が加わり、腰痛が発生します。
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野球のポジションの違いによる腰痛

大学の野球選手を対象に、野球の腰痛に関するアンケートを実施した研究があります。ポジションで比較すると、投手より野手の方が痛み発生率が多かったと報告しており、これは野手が行う頻度の高いバッティングが影響していると推察されています。
さらに、痛みを誘発する動きは、バッティング(171例、29.4%)、走る(141例、24.2%)、ピッチング(140例、24.1%)、グラウンダーをキャッチする(87例、14.9%)、滑る(43例、7.4%)であったと報告されています。

つまり、野球のポジジョンにおいて、最も腰痛を発生しやすいのはバッティングであると言えます。

野球による腰痛の評価と対策

それでは、野球による腰痛の適切な評価と対策をお伝えします。
今すぐできる方法もお伝えしますので、実際にやってみましょう。
評価
適切な評価、それはやはり、病院で診察してもらうことです。
未治療のまま慢性化してしまい、手遅れにならないように注意が必要です。
プレーを撮影して動作を解析する方法もありますが、これは特殊な機械が必要であり、簡単に今すぐできる評価ではありません。

ここからは、今すぐできる評価を2つご紹介します。

片足挙げテスト

鏡の前で真っ直ぐ正面を向いて立ち、片足を挙げます。その際、骨盤を水平に保つことができるかどうかを評価します。これは主に中殿筋という骨盤周りの重要な筋肉の力を評価できます。骨盤がどちらかに傾く、またはグラグラして不安定な場合、骨盤周りの筋肉が不十分なので、腰痛に繋がるリスクがあります。

片足スクワット

先程ご紹介した片足挙げテストの状態で、スクワットをします。これは、動的な安定性を評価するテストで、中殿筋だけでなく足や体幹の筋肉がさらに必要です。片足挙げテストと同様、骨盤の傾きやバランスが不安定な場合は腰痛のリスクがあります。

対策
対策は、体幹、腰・骨盤周りの筋力強化、そして柔軟性の向上です。
野球による腰痛の原因は、体幹と腰の動的な安定性の低下や柔軟性低下であることを解説してきました。これらの強化こそが対策です。

野球による腰痛をお持ちの方に特化した、「基本的な運動から始めて野球の動きで終わる」という順序に則った効果的なアプローチ方法をご紹介します。

プログレッシブリハビリテーションアプローチ

手順1:腹横筋の強化(声での合図)

     仰向けの状態で両膝を立て、両手を頭の後ろに回します。
     いわゆる一般的な腹筋トレーニングの方法です。
     ゆっくり5秒かけて上半身を持ち上げます。この時、息を吐きます。
     ゆっくり5秒かけて元の状態に戻ります。この時、息を吸います。
     この運動は1人で行うよりも、声かけ(1、2、3というように)の元で行うと、より効果を発揮できます。

手順2:仰向けと横向きの臥位で行うトレーニング

    ・レッグリフト
      仰向けになり、両手を頭の後ろに回します。
      両足を伸ばし揃えた状態で踵を床から浮かせます。
    ・ブリッジ
      ブリッジの体勢が難しい場合は、ハーフブリッジがオススメです。
      仰向けで両膝を立て、手の平を床についた状態でお尻を持ち上げます。
    ・ヒールスライド
      仰向けになり、踵を床にスライドさせながら膝を曲げます。
      この時、腰が反らないようにお腹を締めることが大切です。
      両足交互に行います。
・プランク(上と横)
 両肘を床につけて、うつ伏せの状態になります。
 この状態で腰を浮かせ、頭、腰、踵が一直線になるようにキープします。
 同様に横向きも行います。
・股関節内転筋・外転筋の運動
 横向きに寝た状態で、膝を伸ばしたまま足を天井に向かって挙げ下ろしします。
 左右ともに、ゆっくり挙げ下ろしを行いましょう。

手順3:抗重力下で行うトレーニング

・片足・両足のスクワット
  先程ご紹介した、今すぐできる評価の片足スクワットと同様です。
  両足と片足の両方でスクワットを行います。
・回転体幹運動
  足は肩幅より広めに開き、少し膝を曲げて立ちます。
5kgのボールを体の近くで持ち、左右に動かします。
腹筋・腰・骨盤周りの筋肉を意識してリズムよく行います。
・バランス練習
 バランスボートの上に立ち、体幹を意識して体を安定させます。
 余裕のある場合は、この状態で重りを持つことも効果的です。
手順4:野球特有のトレーニング
ピッチング、バッティングの技術練習

運動の回数は、10回×3セットを基本として行います。
腰の痛みがある場合、手順1から順番に行うことが大切です。
動作を達成することだけを意識せず、正しい動作で行うことが重要です。

まとめ

野球による腰痛の症状と原因、対策について解説してきました。
痛みが慢性化しないよう、適切な痛みの評価と対策を行うことが大切です。
お伝えさせて頂いた方法を今すぐ実践し、野球による腰痛を改善しましょう。

(参考文献)
1)Joseph G.Wasser,Jason L.Zaremski,Daniel C.Herman,and Herther K.Vincent.Prevalence and proposed mechanisms of chronic low back pain in baseball:partⅰ.Res Sports Med.2017;25(2):219-230
2) Joseph G.Wasser,Jason L.Zaremski,Daniel C.Herman,and Herther K.Assessment and rehabilitation of chronic low back pain in baseball:partⅡ. Res Sports Med.2017;25(2):231-243
3) Tomoki Oshikawa,Yasuhiro Morimoto,and Koji Kaneoka.Unilateral rotation in baseball fielder causes low back pain contralaral to the hitting side.The Journal of Medical Investigation Val.65 2018

著者情報

腰痛メディア編集部
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