腰痛とは?

腰痛を経験している人は多く、厚生労働省の国民生活基盤調査によると有訴者率、受診率ともに例年上位を占めています。腰痛により日常生活や仕事など支障を来たすことも多く医療業界では問題となっています。発症から4週間未満のものを急性腰痛、3ヵ月以上継続する腰痛を慢性腰痛と定義されています。原因のはっきりしている特異的腰痛、原因がはっきりしない非特異的腰痛の2つに分かれます。特異的腰痛はレントゲン写真やMRI画像などで原因がはっきりしている腰痛(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など)のことをいいます。非特異的腰痛は原因がはっきりしておらず、過度の不安や安静は腰痛を長引かせるだけでなく再発の原因にもなるといわれています。原因としては脊椎、神経、内臓、血管、心因性(うつなど)などが挙げられます。

疫学

スポーツ選手の腰痛発生率は同年代の一般の人よりも発症率は高くなっています。高校野球選手を対象とした検診データによると20~40%の選手が腰痛を抱えているといった報告や、大学生アスリートを対象に行った調査にて野球選手はバレーボール選手に次いで腰痛経験頻度が高いと報告されています。腰痛の種類としては成長期で代表的なものが腰椎分離症です。腰椎椎間関節障害、棘突起インピンジメント、腰椎椎間板障害、仙腸関節障害、筋筋膜性腰痛などの種類があります。

腰椎の解剖

腰痛を生じる場所は脊柱の一部である腰椎またはその周りの筋肉や軟部組織に生じる場合がほとんどです。腰椎の正常は前弯(前に突き出ている)の形を取り、前屈・後屈では約45°の可動性があり側屈(側方への動き)には約20°の可動性があります。回旋(捻る動作)は約5°程度しかありません。こういった特徴により上記の可動域以上の負担が腰椎にかかることで腰痛の原因となります。

原因

誤った動作が続く、ある関節の硬さや筋肉の硬さがある、不良姿勢があると腰痛が出現します。以下に原因となりうる因子を挙げていきます。

・誤った動作
誤った投球動作や打撃動作の繰り返しにより腰椎へのストレスが蓄積して腰痛となります。投球動作の例としては、投球側の肩の可動域制限や肘の可動域制限などがあると、ボールをリリースするポイントがずれる可能性があります。そのような機能制限があると脊柱の胸椎や腰椎で代償しようとして過度な負担がかかることになります。また同一の動作を行うことにより腹筋群が硬くなることがあり柔軟性の低下により腰痛が出現することもあります。
打撃動作の例では、スイングする際にステップ脚(左打者の右脚)側の股関節の回旋制限により骨盤の回旋運動が制限されることで、腰椎の伸展・回旋運動が増強します。それが腰椎へのストレスとなり腰痛となる可能性があります。

・筋肉の硬さ、関節の硬さ
筋肉に硬さがあるとケガをするリスクが高くなります。野球やサッカーなどの試合前にはストレッチを含めた準備運動が行われます。これは筋肉をしっかり動かして血液の循環を良くして柔らかくした状態(動きやすい状態)で試合に臨むためです。こうすることによりケガの予防にもなりパフォーマンスも向上します。

体を曲げた(前屈)時に腰痛が出現する場合
→ハムストリングス、脊柱起立筋が硬い可能性

ハムストリングスは大腿部の後面にある筋肉です。股関節を後ろに伸ばしたり膝関節を曲げたりする主要な筋肉です。骨盤の後ろから膝関節の後面に付着しています。体を曲げた時にハムストリングスは伸張され、この筋肉が硬いと腰椎の前方へストレスがかかります。代表的な疾患では腰椎椎間板ヘルニアがあります。立った状態で体を曲げた時に指先が床に接地しない人、長座体前屈が苦手な人はハムストリングスが硬いので注意が必要です。

脊柱起立筋は背筋群と呼ばれており背中にある大きい筋肉です。体幹を伸展する(背中を伸ばす)のが主な作用です。体を曲げると脊柱起立筋は伸張されます。この筋肉が硬い場合でも腰痛発生のリスクがあります。

股関節を伸ばす筋肉である大殿筋の硬さも腰痛に大きな影響を与えます。

体を伸ばした(後屈)時に腰痛が出現する場合
→腸腰筋、大腿四頭筋が硬い可能性

腸腰筋は腰椎の前方や骨盤(腸骨)から大腿骨に付着する筋肉です。股関節を曲げたり骨盤を前傾したりするのが主な作用です。体を伸ばした時に筋肉は伸張され、この筋肉が硬いと腰椎の後方へのストレスが強くなり腰痛が生じる原因となります。骨盤から膝関節まで付着する大腿四頭筋も同様です。

成長期では身長の伸び(背骨の成長)に対して筋の長さが変わらないため筋肉が硬くなりやすいといわれています。そのため、日々ストレッチを行い筋肉が硬くならないようにしておく必要があります。

筋肉が硬いと関節への影響も大きくなります。例として、股関節は球状で自由度の高い関節ですが可動域が減少していると股関節から上の体幹→肩→頭部や頸部へのストレスが大きくなりケガの原因となります。股関節は特に体の中心の関節であり自由度も高いためとても重要な機能を有しています。

・筋力低下
野球動作を行う上で筋力低下があると腰部への負担が強くなり腰痛の原因となります。以下に主要な原因となる筋を挙げていきます。

筋の硬さの所で挙げた筋肉と重複しますが腹筋や背筋、股関節周囲の筋力低下があるとやはり腰部へのストレスとなり腰痛の原因となります。体幹と股関節は共同して働いてしっかりとした姿勢制御が可能となります。腹筋が弱いと脊柱は伸びる方向に力が働き腰椎の後方へストレスがかかり腰痛の原因となります。一方で背筋が弱いと脊柱が曲がってしまうため腰椎の前方にストレスがかかり腰椎椎間板ヘルニアなどの原因ともなります。上半身を支える土台となるのが股関節であり、筋力低下があると脊柱にダイレクトに影響がかかることになります。

・不良姿勢
普段の姿勢も腰痛の原因となり得ます。よくいわれる猫背の姿勢では体は曲がっているため腰椎前方へのストレスとなります。背筋は伸張され腹筋は短縮し筋発揮がしにくい状態となりバランスも崩れてきます。骨盤は後傾して股関節は少し曲がった状態となり筋への影響も出てきます。このように姿勢が少し悪いだけで他の関節や筋肉へ影響して、筋肉や関節が硬くなったり筋力が弱ったりします。まずは普段の姿勢から治すように意識し、プレー中も正しい姿勢や動作の学習が必要となります。

・腰椎分離症
中学生~高校生のスポーツをしている人の腰痛の原因として多いのが腰椎分離症です。運動時に腰痛を訴えることから始まり、運動をしていない時には何ともないことが多いです。腰部への負担が増えることで腰椎と腰椎を繋いでいる椎弓といわれる骨に亀裂が入ります。いわゆる疲労骨折です。腰を反らした時に痛みを生じるのが特徴で、悪化すると腰を曲げたり捻ったりする時も痛みを生じるようになります。やってはいけない動きは腰を反らすのと捻る動作です。治療は安静が基本であり治癒はするのですが、発見が遅れると治癒も難しくなります。コルセットを使用することもあります。そのまま骨がくっつかないこともあり、慢性腰痛として痛みが残ることもあります。運動時に腰痛が続く人は早期の受診をして頂ければと思います。

<参考文献>
・理学療法Vol.33 No.10 2016 メディカルプレス
頸部・体幹のスポーツ障害の理学療法における臨床推論 p.904-913
・理学療法 Vol.34 No.11 2017 メディカルプレス
スポーツ理学療法におけるコアスタビリティトレーニングの実際 p.973-981
・総合リハビリテーション Vol.44 No.7 医学書院
スポーツ障害のリハビリテーション p.581-586
・スポーツ外傷・障害予防ガイドブック
公益財団法人 スポーツ安全協会.公益財団法人 日本体育協会 p.32-46

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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