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バドミントンは前後、左右、斜め、ジャンプ動作、スマッシュ動作など様々な動作を繰り返し機敏に行うスポーツです。そのため、身体への負担は大きいため様々なスポーツ障害が発生します。

バドミントン選手を対象に行った調査では、ハムストリングスの肉離れ・半月板損傷などの下肢の障害が多いと報告されています。

社会人のバドミントン選手で上位を占めているのは以下の通りです。

1.足関節捻挫
2.肉離れ
3.靭帯損傷
4.アキレス腱断裂
5.ぎっくり腰

障害の経験として多いのが以下の通りです。

1.テニス肘
2.腰痛
3.腱鞘炎
4.椎間板ヘルニア
5.腰椎分離症

障害を経験した選手は約90%と報告されています。今回は腰痛を生じる原因から解説していきたいと思います。

バドミントンで怪我をする原因

外傷で上位に挙がっているのがぎっくり腰です。腰痛には特異的腰痛と非特異的腰痛の2種類に分類されます。

医師の診察や画像検査の結果で腰痛の原因が特定できるものが特異的腰痛、厳密な原因が特定できない腰痛を非特異的腰痛といいます。

ぎっくり腰は椎間板という腰椎間にある衝撃を吸収する組織の怪我も含まれ非特異的腰痛に分類されます。障害経験に挙がっている腰痛も非特異的腰痛となり、非特異的腰痛は腰痛全体の約85%を占めるとされています。

①筋力低下

特に下肢・体幹(腹筋・背筋)の筋力低下があると腰痛の原因となります。素早い移動から急激なストップ動作が必要となり、負担を軽減するためには筋力が非常に重要な要素となります。

またスマッシュを打つためには下肢・体幹の安定性が低下していると上肢への力が伝わりにくくなるためスマッシュも弱くなります。

②柔軟性の低下

柔軟性は筋肉が主に影響しています。腰痛に関わる筋肉としては体幹筋、股関節周囲の筋肉が重要になります。腹筋や背筋が硬いと背骨の動きが制限され腰椎(脊柱の腰の部分)にストレスがかかります。

股関節は自由度が高く様々な動きに対応しています。殿筋群や骨盤~大腿の前面に付着する腸腰筋や大腿四頭筋が硬いと、動作により腰椎へのストレスとなり腰痛発症の要因となります。

また下肢の動きは上肢にも影響を及ぼすため体の中心である体幹や股関節の柔軟性が低下していると肩関節や肘関節にも影響し、上肢のスポーツ障害を発生する可能性もあります。

③不良動作

スポーツを行う上で不良動作を行っていると怪我を発症するリスクが高くなります。バドミントンは前後、左右、斜めの動きが非常に多いスポーツです。重要なキーワードが重心です。

体の重心の位置は骨盤の中にあります。スポーツ動作を行う際に体の重心がどの位置にあるかで怪我や障害を発症する可能性が変わってきます。

例えば、前に移動しなくてはならない場合、膝関節が先行して前に出ていると重心は後方に残り膝関節へのストレスが強くなり何らか怪我や障害を発生してしまう可能性が高くなります。

重心が股関節~足関節より前にある状態で体が曲がる、反る、捻るといった動作を行ってしまうと腰部へのストレスとなり腰痛の原因となります。また急激に体を曲げたり、反ったり、捻ったりすることも要因の1つです。

原因疾患

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎は5つありその間にクッションの働きをする椎間板というものがあります。椎間板は弾性があり上下の腰椎を支えており前後左右に動くことが可能になっています。椎間板の外には線維輪というものがあり、内部には髄核というものがあります。

何らかの原因で線維輪が断裂して髄核が出てしまい神経を圧迫してしまう病態を腰椎椎間板ヘルニアといいます。発症年齢は50歳台がピークであり男性は女性の2倍の頻度で発症するとされています。

症状は腰痛、下肢の痺れ、まれに排尿や排便障害が認められます。一側の下肢に症状が出現することが多いです。

治療としてはコルセットを着用して安静にすることが基本とされています。痛みに応じて鎮痛薬を服用することもあります。手術をすることもひとつの選択肢であり、神経を圧迫している髄核を摘出する方法が代表的です。

腰椎分離症

成長期に起こる腰椎の疲労骨折です。腰を反らしたり、捻ったりする動作を続けることによって腰椎にストレスをかけ続けることが原因となります。

腰椎分離症と診断された場合には、身体を反らす動作と捻る動作は進行の可能性があるため行ってはいけません。腰椎分離症は早期発見・早期治療により治癒する可能性が高くなります。

レントゲン、MRI、CTなどの画像所見により診断されます。腰椎分離症と診断されるとコルセットを装着して安静が基本となります。腰痛が落ち着くと少しずつプレーに復帰していきます。骨折した骨がつかないことも多く経過観察が重要になります。

バドミントンと腰痛との関係性!原因と対策について解説

バドミントンによる怪我の予防法

筋力強化

下肢と体幹の筋力強化が基本となります。下肢では股関節~膝関節に付着する大きな筋肉である大腿四頭筋とハムストリングスの強化が必要です。

スクワットが最も効率的な方法となります。また股関節周囲の筋肉である殿筋群も非常に重要です。体幹では腹筋・背筋共に重要です。

特にインナーマッスル(ローカル筋)と呼ばれる腹横筋や多裂筋が脊柱の動きに安定化をもたらし動作の安定性に起因しています。代表的な方法としてはドローインが挙げられます。

しっかりと息を吸い込み口をすぼめてお腹をへこませながら5~10秒程度かけて息を吐きます。この時にお尻の穴を締めるようにするとより効果的です。

ストレッチ

下肢では先程も挙げた筋肉である大腿四頭筋、ハムストリングスが重要となります。大腿四頭筋は立位にて片手で膝を曲げる、寝た状態で膝を曲げて伸ばす方法があります。ハムストリングスは立位で体を曲げて床に両手を付けるようにする方法や、長座体前屈などがあります。

体幹では腹筋・背筋共に重要であり曲げたり反ったり、捻る動作にて伸張を図って頂ければと思います。またラケットを使用する際には肩関節~手関節の動きも非常に重要になるため周りの筋肉や関節を動かしておくことは必要です。

動作練習

バドミントンで必要となる正しい動作を体に覚えさせる必要があります。スクワット、フロントランジ、サイドランジが挙げられます。スクワットは腹筋にしっかり力を入れて胸を張るように重心を下に移動させます。

膝が前に出すぎないまた内側に入らないように意識して下さい。フロントランジは前への動きの練習です。これもまた膝が前に出すぎないように意識してお尻を後方に突き出しながら股関節をしっかり曲げるようにしましょう。

サイドランジは横の動きの練習です。支持する足と体幹が真っすぐになるように意識して行って下さい。

<参考文献>
・小学生バドミントン選手のスポーツ障害受賞に関する調査研究 p879-882
理学療法学 33(6) 2018
・社会人バドミントン選手のスポーツ障害 p131-136
神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科理学療法学専攻
村尾 浩
・腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版
監修:日本整形外科学会 日本腰痛学会
編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 腰痛診療ガイドライン策定委員会
・腰椎椎間板ヘルニア 日本脊髄外科学会
・バドミントン競技における異なる態勢によるスマッシュ動作の分析-スタンディング及びジャンピング時の筋活動-
日本スポーツリハビリテーション学会誌 2015.4 p9-16

著者情報

腰痛メディア編集部
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