病院では特に問題ないと言われたのに、3ヶ月以上も腰痛で困っている。やる気がおきない、なにをするのもおっくうといった意欲の低下も大きな悩み。
一見なんの関係もないように思える腰痛と意欲の低下ですが、実は深い関係があったのです。
『腰痛診療ガイドライン2019改定第2版』※1によると、腰痛の慢性化と治療の結果が心理・社会的要因に強く関係すると示されています。つまり、腰痛症とこころには深い関係があるということなのです。ここでは、ながびく腰痛と意欲の低下の関係と、その対処法をお伝えします。

意欲の低下と腰痛は関係がある

原因不明の意欲の低下が続いたとき、なかなか腰痛とは結びつきづらいものですよね。ですが腰痛と意欲の低下が続く場合、次の4つが原因である可能性があります。

  

精神的な病気が原因の腰痛で意欲の低下がおこる

腰痛とこころには密接な関係があります。
精神的な病気では、主にうつ病、不安障害、適応障害、ヒステリーなどで意欲の低下がみられます。同時にこれらの精神的な病気の症状のひとつとして腰痛があり、腰痛と意欲の低下は無関係ではないのです。
また、原因不明の慢性腰痛に、うつ病の診断がついていない場合でも、痛みのコントロールに抗うつ剤の効果が認められています。イギリスでは腰痛に認知行動療法に有意性があるとの報告がありました。
腰痛と精神医療の分野には深い関係があるのです。

  

内科的な病気が原因の腰痛で意欲の低下がおこる

内科的な病気では主に、内臓疾患や内分泌疾患、がんで意欲の低下が認められることがあります。これらの病気で腰痛の症状を伴うものも少なくありません。
ほかに、気分の落ち込みやうつ症状はなくとも、原因不明の体の不調が続き心身症と診断されることがあります。心身症の症状のひとつにあげられるのが腰痛です。
腰痛の原因が内科的な病気の場合も、意欲の低下がみられることがあります。

  

心理的要因の腰痛で意欲の低下がおこる

実は、3ヶ月以上も続く慢性腰痛では、病態が特定できない非特異性腰痛が約85%も占めているのです。
非特異性腰痛で考えられる原因のひとつとして、心理的・社会的なストレスがあります。1991年には腰痛のある患者さんの38%に心理的要因を認めた研究結果が発表されました※2。
このようにこころの問題と腰痛は深い関係があります。ストレスはゆううつや落ち込みなどの気分の変調をきたしやすく、意欲の低下をおこす一因となります。ストレスによる腰痛では、意欲の低下を伴うことがあるのです。

  

腰痛のストレスで意欲の低下がおこる

椎間板ヘルニアなど、原因が整形外科領域ではっきりわかる腰痛でも、意欲の低下がおこることがあります。
ながびく腰痛では、いつよくなるの?どうすればいいの?と不安をたくさん抱えることになるでしょう。そうした病気への不安が、大きなストレスを生み出します。
また、痛みそのものによるストレス、痛みに伴う行動の制限で、仕事や家庭などの社会生活にも大きな影響がでます。それは自分が思うよりずっと、大きなストレスになってしまうものです。こうした状況から、抑うつ状態になる人も珍しくありません。
続く痛みや、生活上のストレスから抑うつ状態になり、意欲の低下が現れることがあるのです。

脳科学からみる腰痛と意欲の低下の関係

腰痛で脳は次のような変化がおきていることがわかっています。

  

腰痛と脳内物質

痛みを感じたときに、脳ではセロトニンやドーパミンという脳内物質が分泌され、痛みを抑えるはたらきをします。しかし強いストレスがかかると、このはたらきがうまく作動しなくなるのです。痛みの原因が取り除かれているにもかかわらず、痛みを感じ続けることにもなります。セロトニンやドーパミンが不足すると、ひきおこされるのが意欲の低下です。ストレス過多の状態では、意欲の低下など気分が落ちる症状がでやすくなるのです。

  

腰痛と脳の血流

原因不明の慢性腰痛の患者さんは、椎間板ヘルニアで腰痛をもつ患者さんと比べて、前頭部の脳血流が低く、小脳では増えていることがわかりました※3。また、ドーパミンを放出する側坐核という部位の血流も低下します。
このように、慢性腰痛の患者さんは、健康な人に比べて脳の一部の機能が低下していることがわかっています。前頭前野のはたらきが低下すると、やる気を失い意欲の低下などの症状がでるのです。

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心理的なアプローチが評価されている

過去では腰痛外来でも、腰痛体操のすすめや日常生活の工夫などの指導がメインでした。『腰痛診療ガイドライン2019改定第2版』※1に、「心理社会的な内容の小冊子のほうが、医学的なものより有効であった」とあり、治療機関でも広く認識されるようになってきています。
以前は腰痛は治りにくく、場合によっては一生付き合っていくものとの認識がありました。10年以上も病院や整体、鍼やマッサージを利用し続け、さまざまな情報に翻弄されながら、多くの治療費をかけても改善しない人も少なくはなかったのです。しかし現在は心理的なアプローチが評価され、精神科医や心療内科医、カウンセラーなどとの連携を深め、こころと同時にみていく流れになってきています。
また、治療者の共感や励ましといった精神的な対応が、腰痛の治療成績によい効果をもたらしているエビデンスもあるのです※4
このように、腰痛と心理的な要因が深く関わっていることが、近年、より認識されるようになっています。

腰痛と意欲の低下が気になったらやりたいこと

腰痛と意欲の低下に深い関係があるとわかったなら、次にどう対処すればよいのかが気になるところです。
自己判断よりも、かかりつけの医師に相談することが大切です。

  

腰痛と意欲の低下を主治医に伝える

腰痛で初診の時点で意欲の低下が気になる場合は、主治医に伝えておきましょう。
もうすでに通院ずみで、検査もいろいろしたけれど、原因は特定できないまま3ヶ月が過ぎていった場合も、主治医に気分の変化をあなたの言葉で伝えてください。イライラする、気分がふさぐ、やる気がおきない、気がかりで寝付きが悪い、などありのままを伝えてみましょう。
現在心療内科や精神科に通院中で、腰痛が気になる場合は、まず主治医に伝えてください。そのうえで整形外科に受診するかどうかを判断することがおすすめです。

  

リラックスをこころがける

怒り、不安、悲しみなどのネガティブ感情がでているとき、こころは緊張状態にあります。こころが緊張しているとき、生理的な反応として、同時に体の筋肉も緊張しているのです。肩に力が入ったり、眉間にしわがよったり、歯をくいしばったりと、自然に体が反応しているはずです。ネガティブ感情が続くと筋肉の緊張も続き、コリやこわばりなどがおこります。こうしたときに痛みが発生しやすくなり、より痛みを感じやすくなるのです。
普段から意識的にリラックス状態を作る必要があります。マッサージやストレッチで筋肉を緩める、瞑想や入浴などでリラックスを感じるなど、緊張を解きほぐしましょう。同時に自分を安心させてあげるこころのもち方が必要です。ネガティブ感情にのみこまれるのでなく、ほっとすることに焦点を当てる意識付けをしていくとよいでしょう。心配や不安はそっと脇に置いて、心地よいことに時間を多くもてたらよいですね。回復のために、周囲の人にも協力を求めることも大切になります。

腰痛と意欲の低下が気になったら放置しないで

腰痛と意欲の低下は結びつきにくいばかりに、見過ごされやすい問題です。腰痛と意欲の低下は深い関係があり、腰痛が改善されると意欲の低下が改善され、逆に意欲の低下が改善されると腰痛の悩みから解放されることにも繋がります。腰痛と意欲の低下が気になったなら、早めの対処をこころがけ、悪化防止につとめたいもの。
あなたの大切な時間を腰痛の悩みで埋めてしまわないように、ドクターアプリを活用し、1日も早く自分らしさを取り戻してくださいね。

【参考・引用文献】
1腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版 https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf
2厚生労働省 Minds ガイドライン https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0021/G0000052/0063
3ケアネット https://www.carenet.com/news/general/carenet/37649
4J-STAGE 心身健康科学慢性腰痛患者の身体所見と心理社会的要因との関連 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/7/2/7_2_79/_article/-char/ja/
書籍 『NHKガッテン! 腰痛をラクに改善する!科学の特効ワザ』主婦と生活社

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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