陸上競技は、「走」「跳」「投」を争うスポーツです。
中でも、短距離走、ハードル走、走り幅跳びや三段跳び、高跳び、砲丸投げなど、特に筋力、瞬発力、スピードを必要とします。
このような瞬発種目は、上半身よりも腰部や下半身に過剰な負荷がかかります。
大学陸上競技選手における腰痛の既往を調べた調査では、腰痛を経験していた選手の割合が高かったと報告しています。
つまり、陸上競技の瞬発力を必要とする種目では慢性的な腰痛を患う頻度が多く、腰痛の予防はとても重要と言えます。
ちなみに、陸上競技の中で最も腰痛を発生しやすい競技は何だと思いますか?
その答えは投擲です。
重いものを持って腰を回して投げる。まさに腰が痛くなりそうな動きです。
しかし、投擲以外の陸上競技も侮れません。

陸上競技による腰痛の身体的特徴を調べた興味深い研究によると、「膝」が重要なポイントになっていると報告しています。
「腰」と「膝」。陸上競技においてどのような関連があるのでしょうか。
この記事では、陸上競技による腰痛の身体的特徴について、「腰痛のある人とない人は一体何が違うのか」に着目し、詳しく説明していきます。

腰痛のある選手と腰痛のない選手の決定的な違い

腰痛のある選手と腰痛のない選手では、いったい何が違うのでしょうか。
その決定的な違いは、「膝」にあります。
では、詳しく説明していきます。

陸上競技の瞬発系種目を専門とする腰痛選手の特徴として、膝を伸ばす筋力に対して膝を曲げる筋力が低く、膝周りの筋力のバランスが均等でないことが示されています。
また、腰痛のある選手は、腰痛のない選手に比べて膝の筋力が高く、踏切をする側の足と、リードする側の足との間に筋力の差があると言われています。
筋力が高い方が腰痛になるの?と少し疑問になりますが、それにより左右の筋力の差が大きいと言われると納得です。
まとめると、「膝を曲げる筋力と伸ばす筋力のバランスの悪さ」、そして「左右の膝筋力の差の大きさ」が、腰痛につながっていると言えます。

では、膝のアンバランスが、なぜ腰痛に繋がるのでしょうか。
その理由は、膝の使い過ぎにより左右の支持システムにバランスの悪さが生じ、姿勢が不良となることによって腰痛が発生している可能性が考えられています。
陸上競技選手は、練習や競技会で下肢へ過剰なストレスを繰り返し受けやすい状況にあります。
特に、瞬発動作を必要とする種目が専門の選手は、踏切動作における踏切足へ過剰な負荷がかかり、この結果として、膝伸展屈曲(膝の裏表)および踏切側の足とリード側の足(左足と右足)の筋力のバランスに不均衡が生じることが、腰痛発生に繋がるのです。
陸上競技選手の腰痛発生には、膝屈曲伸展それぞれの筋力よりも、屈曲伸展力の比が関連しており、特に瞬発系種目選手では、踏切足で顕著となります。

また、子供の場合は大人とは少し違います。
発育の途中段階の陸上競技選手の腰痛の研究では、腰痛のある選手では、下半身の柔軟性低下が認められたとの報告があります。
成長の勢いが影響を及ぼす発育期に特徴的なことなのです。

陸上競技による腰痛を軽減するために必要なこと

瞬発系種目選手において、適切なランニングフォームの獲得、そして使い過ぎにならないような練習量の管理が必要です。
ここでは、今回ポイントとして着目した「膝」に関して、どのようなトレーニングが有効なのかを説明します。

膝伸展筋力>屈曲筋力アンバランスの改善

膝伸展筋力に対して膝屈曲筋力が弱いことによる膝前後の筋力アンバランスを改善する方法、それは、ハムストリングス(膝屈曲筋)の強化です。
特に、踏切足に顕著であるという特徴から、踏切足のハムストリングスの強化が有効であると言えます。
ちなみに、もし伸展筋よりも屈曲筋の力が大きい(つまり逆の場合)だと、人間の体はどうなるか想像してみて下さい。
もし、伸展筋よりも屈曲筋の力が大きく、膝の前後ろの筋肉の力に差が生まれた場合、「膝折れ」と言う現象が起こります。
つまり、膝がカクッと瞬間的に折れ曲がるような状態が起こってしまうのです。
少し極端な話にはなりましたが、このようにアンバランスになることによる弊害は大きいと言えます。
特に瞬発力やスピードの違いが成績に繋がる陸上競技において、この筋力のアンバランスを改善しておくことは腰痛軽減だけでなくパフォーマンスの向上にも影響を与えることになります。
ハムストリングスを個別で強化するには、徒手的な筋力トレーニング、機械を使うトレーニングが有効と言えるでしょう。
ご自宅で行う方法として、うつ伏せになって足首に重りを巻き、その状態から膝を曲げる方向へ動かすトレーニングが効果的です。
最近は、100円均一にてトレーニング用の重りを売っているお店も多くありますので、試してみることをオススメします。
また、うつ伏せで足首を上から押さえてもらい、膝を曲げる方向に力を10秒間入れる→休憩するという運動セットを繰り返し行うことも効果的でしょう。

左右膝筋力アンバランスの改善

左右、つまり踏切足とリード足の筋力の左右差を改善する必要があります。
瞬発系種目の特徴上、踏切足に過負荷がかかるため、リード足よりも明らかに筋力が強く、筋力の差が生じてしまうのです。
その左右差による不良姿勢が、腰痛に繋がると前項で説明致しました。
人間の体は外的な環境に対して順応するように作られているので、左右の足に筋力の差があったとしても、それを自覚せず過ごし、徐々に姿勢が変化してしまうことに繋がるのです。
ちなみに、テニス選手でも同じことが言えます。
テニス選手の左と右の足を比べると、明らかに踏み込み足が太いのが特徴です。
腰痛に悩む陸上選手の方は、左右の膝上5㎝部分の周径を測ってみて下さい。
もし、その長さに差があった場合は左右膝筋力アンバランスが生じていると言えるでしょう。
左右差を無くして腰痛を改善するために、リード足の筋力強化をすることを推奨します。
例えば、リード足でのフロントランジなど、全体的にリード足の筋力を鍛えられる方法の選択をオススメします。
また、リード足でのスクワットや片足跳び、段差昇降なども、動きの中で筋力を高めるトレーニングとして効果的と言えるでしょう。

まとめ

腰痛が原因で競技を引退する陸上競技選手は多いです。
陸上競技選手における3分の1程度しか病院を受診していないそうです。
腰に障害を持った状態であるにも関わらず、病院を受診せずに練習や競技に取り組んでいる選手が多い現状があります。
多くの選手が小学校高学年、中学校から競技を始めています。
競技を始める時から、競技の特性を把握した上で腰痛対策を行うことが、競技継続および高いパフォーマンスを発揮するために重要です。

(参考文献)
1) 齋藤義信,他.腰痛を有する大学陸上競技選手の身体的特徴.体力科学(2009)58,99-108

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る
バナー画像