みなさんは寝起き後の腰痛を経験したことはありますか?せっかく十分な睡眠をとっても、起きたときに腰が痛いと、寝起きの気分も落ち込んでしまいますよね。裏を返せば、それほど「腰痛が睡眠の質に与える影響は大きい」ということです。

では、起床時の腰痛を避けるには、どのような工夫ができるでしょうか?腰の病気を抱えている人であれば、病院での治療も大切ですが、腰痛は完治するのに時間を要するケースも多々あります。

そこで、簡単にできて、即効性もある方法が「寝具を整える」ことです。睡眠の質を確保するに当たり、寝具が大切なのは周知のとおりですが、具体的にはどのような寝具を使えばよいのでしょうか。

この記事を読んでいただければ、腰痛持ちのためのマットレスの選び方がわかります。結論を先に言ってしまうと、どのマットレスが最適かは「腰痛の種類ごとに異なる」のです。まずは、ご自身の腰痛の種類を把握し、それぞれの腰にピッタリなものを選びましょう。

分かりやすいように、まずは腰痛の種類を解説したあとに、その種類ごとのベストなマットレスをご紹介したいと思います。起床時の腰痛にお悩みの方は、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います。

腰痛の種類には何がある?【起きたときの腰痛を予防する基礎知識】

「腰痛の原因は?」という質問に、みなさんはどのような解答をするでしょうか?圧迫骨折、椎間板ヘルニア、脊柱菅狭窄症など、いろいろな疾患が思い浮かぶと思います。このように、「明らかな原因を特定できる」腰痛は特異的腰痛」と呼ばれますが、その頻度は腰痛全体のわずか15%しかありません。

では、残りの85%の原因はなんでしょうか?答えは「非特異的腰痛」というものです。非特異的腰痛は、「明らかな原因がわからない」腰痛の総称を指します。つまり、腰痛のほとんどは明らかな原因を特定できないのです。

非特異的腰痛は明確な原因こそ指摘できませんが、痛みを増強する要因はわかっています。疼痛を増強する要因として代表的なのが、「前屈姿勢」と「後屈姿勢」の2つの姿勢です。

「椎間板性腰痛」は前屈姿勢で増強する腰痛

「椎間板」とは、脊椎(背骨のこと)と脊椎の間に存在する組織で、クッションのような役割を果たしています。このクッションがあることで、脊椎と脊椎が直接接触することなく、なめらかな脊椎の動きが可能になります。

椎間板性腰痛は、この椎間板が圧迫されることで引き起こされる腰痛です。椎間板が圧迫されるタイミングとしては、前屈姿勢をとったときが代表的です。よって、ものを拾おうと中腰姿勢になったときや、和式トイレで用を足す際に、腰の痛みが増強する特徴があります。

椎間板性腰痛は、非特異的腰痛の約40%を占めており、背筋力の弱い方に発症しやすいのです。そのため、根本的な解決には、背筋のトレーニングが有効的です。

現代日本では、デスクワークで作業をする方も多く、どうしても前傾姿勢になりがちです。慢性的な腰痛にお悩みの方で、前屈姿勢で増強するようならば、それは椎間板性腰痛かもしれません。

「椎間関節性腰痛」は後屈姿勢で増強する腰痛

一方、椎間関節性腰痛は後屈姿勢(反り腰)で増強する腰痛です。弱い腹筋力をカバーしようと、後屈姿勢をとりがちな方に発症しやすい特徴があります。腰痛の部位としては、左右のどちらか一方だけに痛みが限局することも多く見受けられます。

慢性的な後屈姿勢は、椎間関節(脊椎の背側にある関節部分)をぶつけやすく、これが腰痛へと発展します。正しい姿勢をとろうと胸を張りすぎている方や、腰をひねる動きが多い方では、椎間関節がズレやすく腰痛の原因になるのです。

根本的な腰痛対策としては、腹筋力を鍛えることが大切です。しかし、体育の授業でしたような腹筋運動ですと、かえって腰への負担が大きくなりがちです。おすすめの腹筋運動を下記に紹介しますので、後屈姿勢で腰痛が増強する方は、ぜひお試しください。

1.膝を立てた状態で仰向けになり、息を深く吸いつつ、お腹を膨らませます
2.お腹を限界まで膨らませたら、次は息を吐きながら、お腹を凹ませます
3.この動作を10回ほど繰り返せば終了です

種類に見合ったマットレスで起きたときの腰痛を予防

腰痛予防に適したマットレスは、腰痛の種類によって変わってきます。ご自身の腰にマッチしたマットレスを選ばなければ、かえって腰痛を悪化させかねません。

まずは、先ほどお伝えした内容を参考に、自分の腰痛が「椎間板性腰痛」と「椎間関節性腰痛」のどちらに該当するかを確かめることをおすすめします。

「椎間板性腰痛」は硬めのマットレスがおすすめ

椎間板性腰痛は、お伝えしたように「前傾姿勢」で痛みが増強する特徴があります。

柔らかいマットレスに仰向けになったときを想像して下さい。全体重のうち約40%が腰にのしかかるため、腰を中心にしてマットレスに沈み込んでしまうでしょう。腰が沈み込めば、身体は自然と前屈姿勢になってしまうので、柔らかいマットレスは椎間板性腰痛には不向きなのです。

そのため、椎間板性腰痛の方は「やや硬め」のマットレスをおすすめします。腰の沈み込みが深くないほうが、前屈姿勢を回避しやすいのです。ただし、あまりにも硬すぎるマットレスだと、寝ていて身体が痛くなってしまうので、あくまで「適度な」硬さのマットレスを選ぶようにしましょう。

具体的なマットレスとしては、「高反発性ウレタン」「ボンネルコイル」「高密度スプリング」などの種類であれば、適度な硬さを提供してくれます。

椎間板性腰痛にお悩みの方は、やや硬めのマットレスを選択しましょう。

「椎間関節性腰痛」には柔らかめのマットレスがおすすめ

椎間関節性腰痛は、腰を反ることで腰痛が悪化しやすい特徴がありました。そのため、硬めのマットレスを使用すると反発力が大きく、腰も自然と反り返ってしまいます。

そこで、椎間関節性腰痛の方は「柔らかめ」のマットレスを使うとよいでしょう。マットレスが適度に沈み込むことで、身体全体をやさしく包み込んでくれます。そのため体重の分散効果に優れ、腰の一点で体重を支えることもなくなります。

具体的なマットレスとしては、「低反発性のウレタン」や「ポケットコイル」などがおすすめです。身体を面で支えてくれるのでフィット感もよく、寝心地よく睡眠が取れるでしょう。また、ウレタン製のマットレスは保温性にも優れているので、特に冬場は腰を冷えから守ってくれる効果もあります。

椎間関節性腰痛の場合は、柔からめのマットレスを選んで、起床時の腰痛を予防しましょう。

まとめ:腰痛の種類によってマットレスを選びましょう

今回の記事では、腰痛の種類の解説と、種類ごとのマットレスの選び方をお伝えしました。

いまや国民病とも言われる腰痛のほとんどは、原因を特定できない「非特異的腰痛」です。原因がわからなければ、その対策も難しいと思いがちですが、起きたときの腰痛に関しては十分に予防が可能です。

椎間板性腰痛の方は硬めのマットレスを、椎間関節性腰痛の方は柔らかめのマットレスを選ぶことで、起きたときの腰痛が緩和される可能性があります。医療機関を受診しての治療やマッサージも大切ですが、毎日使うマットレス選びも同じくらい大切なのです。

睡眠は「こころと身体の休息時間」です。ご自身にピッタリなマットレスを見つけて、睡眠の質を高められるといいですね。

【参考文献】
・腰痛対策 – 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf

・朝の腰痛への対処 ベッドのマットレスを硬めのものにしたり、朝起きたときのストレッチ体操などもよい(Q&A)
大瀬戸 清茂(東京医科大学 麻酔科), 伊達 久
日本医事新報 (0385-9215)4798号 Page59-60(2016.04)

著者情報

広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

この著者の他の記事を見る