H28年国民生活基礎調査で男女ともに、上位に位置するお悩みが「腰痛」。国民病とも言われるほど、多くの方が腰痛で苦しい思いを抱えている現状があります。腰痛持ちの方は、年齢問わず、腰痛がない方に比べて、転倒する割合はぐんと高まります。腰痛と転倒の関係性、転倒を引き起こす原因、そして転倒によって引き起こされるリスク、さらに転倒予防につながる方法をご紹介します。腰痛でお悩みの方は、転倒に対する正しい知識と予防行動に努めることで、転倒リスクを下げられるでしょう。

転倒につながる要因とは?

内的要因

1)身体疾患
持病の有無は、転倒の有無に大きく関連します。腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなどの整形疾患による腰痛を感じている方はもちろん。他にも、まひ症状が見られやすい脳梗塞や出血などの脳血管障害、パーキンソン病やALSなどの脳神経疾患、視覚障害、不整脈や心不全などの循環器疾患も、既往疾患として持っていれば、転倒リスクはより高まるといえるでしょう。
2) 内服状況
内服の副作用というのも大きく関連しています。腰痛持ちの方であれば鎮痛剤を内服している方は多く、高齢者の方であれば睡眠コントロールのため、睡眠導入剤を使用する方は多いのではないでしょうか。これらの内服薬は副作用として意識混濁やふらつき、めまい、血圧低下といった症状を引き起こす可能性があります。もちろん、副作用の出現は個人差がありますが、高齢の方ほど肝臓での解毒機能や腎臓の排泄(はいせつ)機能低下が著しいため、副作用が出やすいでしょう。医療現場では副作用による転倒は多いため、十分、注意が必要です。
3)加齢・筋力低下
年を重ねると、加齢により、歩行時における筋力低下や平衡感覚不良が生じます。腰痛を抱えていると、運動自体する機会が減るため、筋力低下や平衡感覚不良といった状態がより目立つでしょう。また、加齢・腰痛に伴い、運動速度の低下などが見られるため、転倒する瞬間、転倒予防動作を取れない・間に合わないといった状況もあり得ます。さらに、加齢により必ず見られるのが、認知力の低下です。認知力の低下は、転倒に対する危機意識を下げてしまいかねません。そのため、加齢による影響がどの程度かを正しく認知する必要があるでしょう。
4)歩行状態
加齢のほか、腰痛を抱えていると、腰痛を庇うあまり、転倒しやすい歩き方や姿勢、歩幅になりがちといえます。転倒と歩行は密接な関係性があり、高齢者や腰痛持ちの方に共通していえるのは、歩幅の狭さや足の上がりづらさ、すり足、腕の振り方が弱い、前傾姿勢、目線が下向きといった点です。一歩一歩の歩幅が狭まり、足を十分に上げて踏み出せられない状況となったり、すり足となったりし、つまずく可能性は高まります。さらに、目線が足元などの下向きかつ前傾姿勢となり、腕の振り方が弱ければ、歩行時における重心のずれが大きくなるため、なおさら転倒を起こしやすいといえるでしょう。

外的要因

1)家屋状況
家屋内の段差や急で幅の狭い階段、引き戸なども、転倒を引き起こしやすい原因の1つといわれています。築年数の古い物件というのは、高齢者や腰痛持ちの方にとって、転倒を起こしやすいため、体の状態に応じたリフォームなどがおすすめです。また、不十分な照明や滑りやすい床、コード類が散らかっている状況も、転倒につながりやすいため、生活スペースなどの掃除はこまめに行うようにしましょう。
2)不適切な歩行器具の使用
それぞれのADL(日常生活動作レベル)に合わせた補助具を使用できていないことが引き金となって、転倒が引き起こされるともいえます。腰痛があり、歩行状態が不安定な方やまひが残り、自立歩行が難しい方は歩行器やつえなどを使用する方を多くいます。しかし、適切な補助具を選択できていない上に、使い方が間違っているため、転倒しやすい状態をなっている場合が多いのです。

腰痛と転倒は相互関係といえます。転倒につながる要因を知り、転倒のリスクファクター(危険因子)を減らすことが、腰痛持ちの方は、転倒を引き起こさないようにするための重要なポイントです。

こんな人は気を付けて!転倒を起こしやすい人
転倒を起こしやすい人というのは、転倒につながる要因を持つ方が挙げられます。

・高齢者
・腰痛持ち
・まひ症状がある方

上記に当てはまる方はもちろん、他にも転倒しやすい人として挙げられるのが、転倒歴があるという方です。転倒歴がある方は、過去1年間に転倒したことのある方は、転倒したことがない方に比べ、約3~4倍転倒しやすいといわれています。

転倒により引き起こされるリスクとは

転倒により引き起こされるものには、転倒症候群といった軽症なものから、打撲や骨折など重症なものまであり、最悪の場合には死亡につながる可能性もあります。腰痛やさまざまな病気が原因となって引き起こされるでしょう。重度なものから詳しく見ていきましょう。

死亡

2018年人口動態調査では、死亡届のうち、「転倒・転落・墜落」が原因で死亡した方の割合は、23.4%と交通事故などよりはるかに上回る状況です。さらに、転倒・転落で死亡した方のうち「スリップ、つまずき、よろめきによる転倒」が死因別に見た年次別死亡率、第1位となっています。つまり、身体上の問題が原因となり、転倒を引き起こして亡くなるというケースが多いのです。

骨折

転倒により骨折を引き起こせば、大きな支障が生じ、当たり前の日常生活を送れなくなる可能性があります。さらに、骨折がひどい場合、経過観察で済まず、手術などの治療が必要となる可能性もあります。命の危険とまではいきませんが、新たな治療を要するため、心身ともに負担が大きいといえるでしょう。

転倒後症候群

転倒後症候群とは、骨折などまで至らなくても、転倒という経験により、歩行や移動における恐怖や不安を持ち、活動が大きく制限されてしまうことをいいます。転倒症候群となると、筋力の低下が加速し、日常生活の活動は制限されてしまうでしょう。引きこもりがちな性格となれば、明るい性格だった方でもうつ病などを引き起こす可能性まであります。そのため、転倒後のメンタルケアも大切といえるのです。

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腰痛持ちは知っておきたい!転倒を予防するための方法

腰痛による転倒を予防するため、日常生活で取り組める方法がいくつかあります。短時間でも習慣化することで、転倒リスクを軽減できる上に、腰痛症状の改善にもつながるでしょう。

筋力強化訓練

【スクワット】
・立った状態で、両手を頭の後ろで組む。
・息を吸いながら、ゆっくりと両膝を曲げる。
・息を吐きながら、両ひざを伸ばす。
【太もも上げ】
ゆっくりと片方の太ももを上げ、ゆっくりと下ろす。

【かかとの上げ下ろし】
椅子などの背もたれに手をかけ、膝を曲げずに立った状態でゆっくりとかかとをあげ、ゆっくりと下ろす。

それぞれの動作を10~20回程度、毎日繰り返すことで、下肢の筋力向上が図れ、転倒リスクは軽減できるでしょう。

バランス保持訓練

・片足立ちを左右30秒。
・片方の足を一歩出して、元の位置に戻す。(10回ずつ)
・片方の足を横に出して、元の位置へ戻す。(10回ずつ)
・一本引かれた直線に沿って、片方の親指の先にもう一方の足のかかとをつけて、後ろ脚のかかとを前脚の親指につけて歩く。(10歩ずつ)

不安定な姿勢で、歩行時の動作を繰り返すことで、バランス強化や安定感の向上となり、腰痛の症状改善にもつながります。
※転倒のリスクがあるため手すりなどのつかまれるものがある環境で行いましょう

身なりを工夫し、正しい歩行を

・ズボンの裾は床につかないものを選択する。
・底が硬く、滑りづらい靴や、ヒールが低い靴が最適。
・なるべく両手が空けられるよう、ショルダーやリュックなどのかばんを持つ。
一歩一歩を踏み出すときは「足を上に上げる」「歩幅を広く持つ」「手をしっかり振る」という3点に意識してみてください。
服装やアクセサリー類に工夫を凝らすだけで、転倒予防に効果大といえるでしょう。

環境整備

上記で説明した通り、生活スペースにおける転倒リスクファクターを取り除いておくことが重要です。
・コード類は一定の場所にまとめる。
・夜間使用する階段や廊下の足元には、十分な照明をつける。
・床や階段など、歩く場所には物を置かない。
・滑りやすい浴室や狭いスペースのトイレ・階段などには手すりをつける。
・浴室や台所、洗面所など、水回りスペースには滑りづらいマットを敷く。

自宅の改修は難しい方もいると思いますが、部屋の片付けなどは誰でも簡単に取り組めることです。腰痛持ちの方は転倒リスクを軽減できるため、ぜひ、試してみてください。

転倒により、私たちのADLは大きく低下します。ADLが低下すれば、心身ともに何かしら影響が生じ、当たり前の日常生活を送れなくなります。腰痛の持ちの方は、腰痛により日常生活においてさまざまな支障を感じているにもかかわらず、さらに、つらい思いを抱えながら生活を送るなんてつらいものです。そういったことを避けるため、当記事でご紹介した、腰痛持ちにも起こりやすい転倒の要因を知り、転倒に対する予防行動を実践してみてください。きっと、新たな病気の発症予防につながるでしょう。

■参考文献
転倒につながるリスクとは?|アルメディアWEB
シニアが気をつけること|くすりと健康の情報局
転倒経験者は3~4倍転倒しやすくなる!?転倒歴から考える転倒予防|ニチイの介護サイト
バランス訓練|メンテナンス体操
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/38/4/38_233/_pdf
http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/handbook01_p8-11.pdf

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著者情報

腰痛メディア編集部
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