上体を反らすと腰痛が出現する、もしくはもともとあった腰痛が増強する方はいませんか。これは「伸展型腰痛」といい、腰痛患者の中でもこの症状に悩まされる方は多いとされています。伸展型腰痛の発症には様々な要因が絡んでおり、治療には腰椎だけでなく胸椎や骨盤、股関節の柔軟性の改善や、反り腰についての理解が重要です。今回は伸展型腰痛が生じるメカニズムと、対処法について紹介します。

腰を反る場面

1)日常生活における腰を反る動作
実は日常生活において腰を反らせる場面はそれほど多くありません。長時間座って作業をしたあとに伸びるときや、ベッドでうつ伏せになって本を読むときくらいではないでしょうか。しかし、腰椎がお腹側の方向に凸に弯曲している人(いわゆる反り腰の人)は、立つ、座る、歩く、走るなどのあらゆる動作で腰椎が反る方向へのストレスにさらされることになります。特に女性では反り腰の方が多いため、伸展型腰痛が生じやすいです。
2)スポーツ動作における腰を反る動作
器械体操、新体操、バレエ、フィギュアスケートでは、競技の特性上、伸展型腰痛の発生頻度が高いです。

上体を反らす動作に求められること

腰に負担をかけずに上体を反らす動作を行うのには、
・股関節が柔らかく使えているか
・骨盤が適切に後方に傾いているか
・胸椎と腰椎が連動してそれているか
という3つのポイントが存在します。
例えば上体を反らせようとするときに膝が曲がってしまう場合は、股関節が硬い可能性があり、腰を頂点にくの字に折れ曲がってしまう場合は胸椎が硬い可能性があります。
このように、これらのポイントのうちどれか1つでもうまくいかなくなると、伸展型腰痛が出現する可能性があります。

なぜ上体を反ると痛みが出現するのか

1)椎間関節への負荷
人間の背骨は椎体とよばれるいくつもの骨が積み重なるようにして構成されており、椎体1つ1つの接合部分を椎間関節といいます。上体を反らす動作では椎間関節を強力に圧縮する力が加わるため、腰椎が可動域の限界まで動いてしまったり、負荷が過剰であったりすれば腰痛が出現することがあります。ちなみにこの腰痛を椎間関節性腰痛といいます。
2)仙腸関節への負荷
仙腸関節は仙骨と腸骨の結合部分に存在する関節で、左右に1つずつあります。脊柱の根元で上半身を支えつつ、地面からの衝撃を緩和している、いわば衝撃吸収装置としての役割を果たしていると考えられています。わずかな可動性で大きな負荷に対応しているため、不意の力や繰り替えしの衝撃で関節に不適合性が生じます。仙腸関節は様々な靭帯でその動きを制限しており、この靭帯が刺激されると、腰痛として痛みが出現することがあります。上体を反る動作は、仙腸関節に負荷をかけている可能性があります。
3)筋・筋膜への負荷
上体を反らす際に、腹筋の筋力低下がある場合は背筋が過剰に活動することになります。
このような異常な筋活動は、筋肉内の血流や筋膜の滑りを悪くし、腰痛を発生させることがあります。これを筋・筋膜性腰痛といいます。
4)脊柱管の狭窄
脊柱管とは、背骨の真ん中にある空洞を指し、この中を通っている脊髄神経を守るトンネルとして機能を果たしています。脊柱管は上体を反らす動作を行うと狭まります。健常人はこれだけでは神経の圧迫は起こりませんが、様々な原因により脊柱管が狭い人は神経が圧迫されてしまいます。その結果、腰痛や、脱力、お尻から脚に広がる痺れや痛みが出現することがあります。この病態を脊柱管狭窄症といい、原因は加齢による変性が大半を占めるため、手術を行わなければ治らない場合があります。脊柱管狭窄症が疑われる場合は、以下で紹介する保存療法が無効な場合、もしくは悪化する場合があるため、すぐに医師の診察を受けるようにして下さい。

伸展型腰痛の治療法

ここまでの話を整理すると、伸展型腰痛は、上体を反らしたときに股関節、骨盤、胸椎、腰椎の柔軟性が乏しく、うまく使えない場合に生じ、原因となる組織は、椎間関節、仙腸関節、筋・筋膜などがあげられ、上記の組織に何らかの異常をきたすと、腰痛が出現します。これを踏まえて、次はどのようにして負担を減らしていくのかを考えていきましょう。
1)なるべく上体を反らない
もっともシンプルな負担の減らし方は、日常生活でなるべく体を反らないことです。伸びをするときに、上体を反らし過ぎていませんか?寝る前に長時間うつ伏せで本を読んでいませんか?生活の中で無理な反りを行っていないかを見直すことは、伸展型腰痛を持つ人の治療の第1選択といえるでしょう。
2)反るなら上手に反る
次に重要なことは、上手に反ることです。上体を反らす動作には、3つのポイントがあることは前に紹介しました。その中でも、股間節、胸椎が硬いがゆえに、うまく反り動作が遂行できないケースが多いです。股関節や胸椎の柔軟性が低下することによって腰椎により大きな運動が求められ、これにより原因組織に負担がかかっている可能性が高いです。以下に、股関節、胸椎を柔らかくするストレッチを紹介します。
(1)股関節伸展ストレッチ
股関節が硬い人は腸腰筋の柔軟性が低下している可能性があります。腸腰筋は股関節の付け根付近についている筋肉で、硬くなると腰が反りやすくなります。腸腰筋をストレッチするには、立った状態で、伸ばしたい方と反対の脚を1mほど前に出します。そのままあごを引いて上体を軽く後ろに倒します。後ろ脚の股関節の付け根が伸びている感覚があれば上手にストレッチができています。
(2)胸椎伸展ストレッチ
胸椎を反らせる方向にストレッチするにはまずタオルを用意し、10cmくらいの厚みになるように折りたたみます。次仰向けに寝て、そのタオルを肩甲骨の真ん中あたりに、体に対して横になるように入れます。最後に両腕をバンザイするように上にあげます。この時腰が
反らないように膝を立てると良いです。胸椎が伸びるような感覚があれば成功です。タオルの位置や高さを調整しながら、もっとも効果を感じられる位置で行うのがポイントです。
3)反り腰を修正する
反り腰の人はあらゆる動作で腰椎が反る方向へのストレスにさらされることになり、伸展型腰痛が生じやすいです。反り腰の人の中でも、腹筋やお尻の筋力が弱い人は、腰痛の発生率が高いとされています。以下に、反り腰の修正に効果的な腹筋、お尻の筋肉のトレーニングを紹介します。
(1)腹横筋の筋トレ(ドローイン)
反り腰の人は、インナーマッスルである腹横筋が弱い可能性が高いです。腹横筋を鍛えるためにはドローインという方法がおすすめです。まず、仰向けになり、両膝を立てます。次に、息を吐きながら下腹部を床に近づけるように凹ませていきます。お腹がしぼむように力が入れば成功です。
(2)お尻の筋トレ(ヒップリフト)
お尻の筋肉のうち、大殿筋という筋肉が弱くなると反り腰を助長してしまいます。ヒップリフトで大殿筋を刺激しましょう。まず。仰向けになり、両膝を90度くらいに曲げて立て、膝と膝の間はこぶし1つ分あけます。次に腕の力を使わず、お尻を上にあげていきます。お尻に力が入り、硬くなっていれば成功です。

結論

伸展型腰痛には様々な原因が存在します。対処法として、生活習慣を見直すことが第1選択です。それでも効果がない場合は、股関節、胸椎の硬さが腰椎の負担を生み出していたり、反り腰が慢性的に腰椎にストレスをかけていたりします。今回紹介したストレッチや筋トレは自宅で手軽にできるものであり、負荷も調整しやすので、無理のない範囲で試してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
1)成田崇矢編:脊柱理学療法マネジメント 114-136,2019.
2)福林徹 蒲田和芳 監修:筋・筋膜性腰痛のメカニズムとリハビリテーション 95-101,2011

著者情報

Haya

保有資格

理学療法士

経歴

宮城県某医療系大学 理学療法学科 卒業

宮城県某病院 就職

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