はじめに

2020東京オリンピックから公式競技にも追加されたスポーツクライミング。壁に備え付けられたカラフルなホールドを上っていく、柔軟性、筋力だけでなく空間把握能力や知力も試されれるスポーツの一つです。近年ではより注目されるようになったスポーツですが、スポーツクライミングで腰痛を訴える人も少なくありません。
今回はスポーツクライミングで腰痛になってしまう7つの原因と、その対応策を紹介したいと思います。

スポーツクライミングとは?

スポーツクライミングとは、高さ15メートルの壁を一気に登り上がる速さを競う「スピード」と、高さ4メートルの壁をどこまで登れるか競う「ボルダリング」、高さ15メートルの壁をどこまで登れるか競う「リード」に分けられます。
ボルダリングとリードはレベルによって壁の傾斜角度や、ホールドの位置が異なり、レベルが高くなれば高くなるほど設定された課題に対して自分の体をどのように使うかを問われるスポーツです。

ボルダリングで腰痛になる原因

スポーツクライミングの中でも高さが4メートルまでと限られていて、リードを使わずに登っていくのがボルダリングです。ボルダリングはスピードやリードと異なり登っていくだけでなく降りてくる技術も必要です。ボルダリングでよく腰痛の原因となるのが着地です。また、それ以外にも登るときの姿勢、着地のときの姿勢、柔軟性、コアスタビリティ、競技前の準備運動やアフターケア不足などが腰痛の原因として挙げられます。ボルダリングで腰痛がある人も、まだ腰痛はないという人も、これらのポイントをしっかりとチェックしてからスタートしましょう。

原因1:着地
4メートルの高さは、人によっては登りきった位置からジャンプで飛び降りることができる高さでもあります。ホールドで作られた課題の多くは壁の一番高いところにゴールが設定されているものが多く、ゴールまで到達したら思わず飛び降りたくなるものです。しかしゴール地点からジャンプでの飛び降りは、腰への負担となるだけでなくひざや足首など全身の関節への負担になります。長年ボルダリングをしている人の中には、最初は大丈夫だったけれども少しずつ腰やひざが痛くなってきたという人も少なくありません。それだけジャンプによる関節への負担は積み重なっていくものなのです。長期的にボルダリングを楽しむという目的でも、なるべく飛び降りないようにしましょう。ボルダリングではゴールまで到着したら、可能な限り低いところまで登ったときと同じようにホールドを使って降りてくるクライムダウンするのが理想的です。ゴールまで到着してクライムダウンで地上まで戻っこれる持久力を計算して登りましょう。

原因2:着地のときの姿勢
クライムダウンである程度の高さまで下がってきたら最後は着地です。低い位置からの着地も丁寧に姿勢を整えることで関節への負担は少なくなります。
着地の際は体が捻ったり、傾いたりしていない姿勢で、ひざを軽く曲げた状態、つまりスクワットの姿勢で着地すると腰を含む関節への負担が少なくなります。

原因3:登っていくときの姿勢や動作(ムーブ

ボルダリングは課題が高くなればなるほど難しい姿勢や動作いわゆるムーブが必要になってきます。これこそがボルダリングの醍醐味(だいごみ)とも言えるのですが、それと同時に無理なムーブはけがの元です。
また女性は特に骨盤の形状からもともと腰が反りやすく、ボルダリングなど空中で姿勢を保持する際に腰が反りすぎた状態になってしまう人が少なくありません。課題に集中すればするほど自分が無理な姿勢になっていることに気づきにくくなります。特にボルダリングでは日常生活では使わない筋力を多く使うため、競技に慣れていない人は疲れてくると今まで登れていたか課題も登れなくなってきます。このように少し疲れてきているときは無理な姿勢になりやすいため特に注意が必要です。

原因4:柔軟性の不足
ボルダリングでは高いパフォーマンスを発揮する上でも柔軟性が非常に重要視されています。柔軟性が乏しい状態で無理なムーブを繰り返すと、その代償が腰などの関節に及びます。
関節や筋肉の柔軟性は一度のストレッチで改善されるものではありません。毎日少しずつストレッチを継続することで、柔軟性は上がってきます。自分の苦手なムーブなどを研究して、そのムーブに必要な柔軟性を高めることで難しい課題がクリアできるようになるだけではなく、腰痛の予防にもなります。
また、ボルダリング初心者は無理のない自分のレベルに合った課題から挑戦していきましょう。

原因5:コアスタビリティの不足
まるでヨガのポーズのような柔軟な姿勢が求められるボルダリングでは、不安定な姿勢を安定させるために体幹深部の安定性、つまりコアスタビリティも重要視されています。これはどのスポーツにおいても同じことですが、不安定な姿勢で動作を安定させて高いパフォーマンスを発揮するためにはコアスタビリティは必須です。
空間で体を保持するボルダリングに備えたコアスタビリティの強化方法として、床上でひじをついて姿勢を保持する筋力トレーニングのプランクがおすすめです。

●プランクの方法
1. うつふせの状態で、前腕とつま先をつけておなかに力を入れて体を浮かせた姿勢をキープします。
2. この姿勢をできるだけ長く保ちます。
※頭から踵までが一直線上になるように意識します。
※特に腰が落ち込んで反り腰になってしまう人が多いので、腰の位置が丸まりすぎたり、反っていないか着目してみましょう。
※プランク中は息を止めないように、ゆっくりと深呼吸しながら行いましょう。
※この姿勢が難しい方は膝をついて行うと運動強度が下がり負担を軽減できます

原因6:準備運動不足
ボルダリングジムにはトレーニングルームを併設していたり、準備運動や整理運動のスペースを設けているところも少なくありません。ボルダリング自体がストレッチや筋力トレーニングの要素のあるスポーツですが、負荷がかからない状態での準備運動はけが予防のためにも重要です。特に肩や手首、腰、ひざ、足首には負荷がかかりやすいため念入りにストレッチするといいでしょう。時間をかけてストレッチを行えば、その分高いパフォーマンスが発揮できるので丁寧に準備運動に取り組みましょう。
また、もともと腰痛持ちの人や、ボルダリングで腰痛があるという人は腰へのテーピングなどを活用して、負担を軽減した状態で無理のない範囲で楽しみましょう。

原因7:アフターケアの不足
アフターケアはスポーツ障害の予防だけでなく、筋力強化や柔軟性の改善にも効果的です。手を抜きがちなアフターケアですが、特に自分が疲れていると思うポイントだけでもしっかりと抑えてストレッチをしておくことで、早期回復が見込めます。また、痛みがでたり熱を帯びている箇所は炎症が起こっている可能性があるので、氷枕でアイシングしたり、湿布を利用して炎症を抑えるといいでしょう。痛みや熱が続く場合は、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。

おわりに

ボルダリングもスポーツの一種なので、体の調子が整っていない状態で無理して行うと腰痛の原因になります。しかしボルダリングは全身運動ができるスポーツの一つでもあり、継続して行うことでストレッチや筋力トレーニングの効果もあり腰痛予防にもなります。上記の腰痛になりやすい原因をしっかりと頭に入れていれば、ジムに通うよりも楽しいトレーニングになるかもしれません。

【参考文献】
スポーツクライミング
https://tokyo2020.org/ja/sports/sport-climbing/

ボルダリング中にありがちな3つのケガ
https://www.climbing-net.com/special/topics/article.php?id=1062

ボルダリングで登る前後のコンディショニング
https://trip-climbing.com/tag/

スポーツクライミングと腰痛
https://west-tokyo-kato.com/2020/10/02/sport_climbing_low_back_pain/

著者情報

森 亜実

保有資格

理学療法士、ケアマネージャー

経歴

理学療法士として7年、老人保健施設を併設した回復期病院で子供からお年寄りまで幅広い年齢層の方に関わってきました。

腰痛で来院される患者様も多く、腰痛の予防と痛みのセルフコントロールは今後の大きな課題だと感じています。

健康で明るい生活を維持できるように、読者の皆様に少しでも役立つ記事を発信できるよう努めていきます!

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