季節の変わり目や、日中の温度差が大きい時期は「なんとなく腰が痛んで…」という方も少なくないと思います。

このように、天気・温度・気圧などの気象条件によって、身体に不調を生じることを「気象病」と言います。環境の変化に身体がついていけず、いろいろな症状を呈するのです。腰痛もその症状の一つということですね。

気象病が生じるメカニズムとしては、一般的に「自律神経が原因」とされています。自律神経がセンサーの役割を果たし、気圧の変化を鋭敏に感じ取ることで、身体のバランスが崩れて症状が出るとのことです。

なんとなく理屈は通っていそうですが、果たして専門的な観点からはどうなのでしょうか?みなさんも疑問に感じるところだと思います。

今回の記事では、医師である私が、医学的見地から「天気と痛みの関係」をご説明したいと思います。医学ジャーナルの内容をもとに、みなさんにも分かりやすく解説しますので、「天気が崩れる度に古傷が痛む」という方は、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

加えて、記事の後半では「気象病の疼痛対処法」をお伝えしています。便利なスマホアプリも出てくるので、痛みがつらい方はぜひ活用してみて下さい。

天気と慢性痛の関係

慢性的な痛み抱える患者さんは、様々な要因で痛みが悪化することがあります。そのなかの一つが「気象条件」であることは、経験的に医師も分かっています。

一方で、研究結果によっては「天気と気象には関連性を見出せない」というものもあり、一貫した見解がないのです。

ここでは、医学ジャーナルをもとに「天気と気象の関係」について解説したいと思います。なお、ここで登場する「痛み」は、ずべて「運動器の痛み」を念頭にお話しています。胃・腸・子宮などの内臓痛とは異なりますので、誤解なさらぬようご注意ください。

「慢性痛と気象の関係」日本人のアンケート結果は?

愛知医科大学・学際的痛みセンターが実施した「尾張旭市で行った大規模住民アンケート調査」によると、”尾張旭市に住む20歳以上の住民2687人のうち、慢性痛(3ヶ月以上続く痛み)を抱える人は約39%”、”そのうち、天気が悪くなると痛みが悪化する人は約25%”という結果が得られています。

つまり、慢性痛で悩む患者さんの約1/4が「気象の悪化が痛みの悪化につながる」と回答しているのです。医師だけでなく、患者さん自身も「天気と慢性痛の関連性」を自覚しているのですね。

慢性痛と性の関係は日本だけじゃない

では、「気象と痛み」の関連を訴えるのは日本人だけでしょうか?

アメリカの4都市における調査によると、”558人の慢性痛を抱える患者さんのうち、多数が「天気によって痛みも影響を受ける」と回答している”というデータがあります。患者さんのなかでも、若年層と関節炎を有する方が「特に天気に敏感」という結果も得られています。

このように、気象条件が原因で慢性痛が悪化することは世界中で知られているのです。

天気の影響を受けやすい慢性痛

では、気象の変化を最も受けやすい症状は何だと思いますか?関節リウマチ、頭痛、肩こり、線維筋痛症など、痛みのなかでも運動器が原因の疼痛が多いことが分かっていますが、そのなかでも最も多い症状は「腰痛」でした。

腰痛と気象の関連性を6ヵ月間にわたって調査した研究結果によると、”気温と気圧が低くなると、腰の痛みが強くなる”ことが分かっています。また、”痛みだけでなく、患者さんによっては。「関節のこわばりが強くなる」「頭痛もひどくなる」などを訴える方もいる””ことが示されており、気象の影響が腰だけに留まらないことが推測されます。

天気と慢性痛のメカニズム

気象の変化によって痛みが強くなるメカニズムとしては、専門的な観点からも「自律神経系の変化」が原因として考えられています。

慢性痛と交感神経系痛には深い関係があり、慢性的な炎症時が続くことで、交感神経系と痛覚神経の間に、異常なネットワークが構築されることが分かっています。そのため、気象の変化によって交感神経が刺激されると、活性化した交感神経が直接、痛覚神経を刺激して痛みを引き起こすのです。

ラットを用いた動物実験でも、慢性痛と気象の関係は証明されています。”気圧または気温を低下させた環境にラットを放置すると、ラットの慢性痛が強くなった”という研究結果が報告されているのです。

このように、慢性痛と気象の関係には「交感神経」が大きく関与しています。本来であれば、交感神経と痛覚神経はまったくの別物ですが、慢性痛患者においては両者間にネットワークが構築されているため、痛みを惹起してしまうのですね。

天気による腰痛を予防するには?

気象変化による腰痛を緩和するには、「痛みを記録すること」が非常に有効です。

慢性痛を抱えた方の多くは、無意識のうちに痛みを回避しようと、必要以上の安静をとりがちです。また、心理的にもストレスを感じやすく、場合によっては抑うつ状態に陥ることもあります。つまり、慢性痛のつらい経験が日常生活を制限し、さらに痛みを増強させるという「負の循環」を作り出してしまいます。

そこで、「痛みを記録」することが大切になります。記録をすることで、自分の痛みが発生しやすい天候・気温・気圧などを把握することができます。痛みを把握することは、痛みへの不安を軽減することに直結しますから、「痛みの記録」はとても有効的なのです。

もちろん、ノートやメモ帳に記録してもよいですが、便利なスマホアプリもあります。「頭痛ーる」という名称のスマホアプリでは、痛みの記録はもちろん、痛みの予防も可能です。天気予報機能もあるので、気圧の低下が予想されるときなどは、事前にバナー通知をしてくれます。そのタイミングで鎮痛薬を内服すれば、痛みの発症を予防することもできるのです。

便利な上に無料で使用できますので、慢性痛のお悩みの方はダウンロードしてみて下さい。

まとめ:天気と痛みは医学的にも関連性がある。便利なアプリで発症予防!
今回の記事では、天気と痛みの関係について解説してきました。

経験的に「天気が崩れると痛みも悪化する」ことは分かっていますが、医学的にも関連性が示されているのですね。痛みの部位としては腰痛が最も多く、交感神経系が悪さをしていることも分かりました。

また、気象に有効的な対策として「痛みを記録すること」をご紹介しました。スマホをお使いの方なら「頭痛ーる」という便利なアプリがあるので、一度試してみてもよいかもしれません。

みなさんの慢性痛が少しでも良くなることを、切に願っております。

【参考文献】
・運動器慢性痛における気象の影響
櫻井 博紀,佐藤 純,牛田 享宏
日生気誌55(2):77-81,2018

・頭痛―る公式HP https://zutool.jp/

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

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著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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