バレーボールは世界的にメジャーなスポーツであり、競技人口は5億人とされています。
この数字はなんと全スポーツ中で第1位であり、世界で愛され取り組まれているスポーツといえるでしょう。
日本においても約40万人がバレーボールに熱心に取り組んでいるといわれています。

そんな多くの人が熱中しているバレーボールですが、実は腰痛との関連が非常に高いスポーツなのです。

中学生から大学生のバレーボール選手を対象としたいくつかの調査では、選手の約2~4割が腰痛を経験したことがあると報告されています。
そのことからバレーボールに本気で取り組む選手にとって、腰痛は天敵であるとも言えるでしょう。

今回は、そんな多くの選手を悩ませている腰痛とバレーボールの密接な関係について解説していきます。
バレーボールと腰痛の深い関係を知ることで、腰痛に対しての意識が変わり、腰痛を予防することにつながるはずです。

意外に多いバレーボール選手の腰痛有病率


前述したとおり、バレーボール選手の腰痛有病率は非常に高いです。
国として大きなデータを出されてはいませんが、茨城県水戸地区の高校生バレーボール選手を対象とした藤井らの調査によれば、バレーボール部員264名中、103名(40.9%)が腰痛の経験があると報告されています。(藤井ら、2004年)

鹿内らの行なった調査においても37%の選手で腰痛の既往があるとしています。(鹿内ら、1992年)

日本整形外科学会が行なった年代別の腰痛有病率の調査によると、10代の頃に治療が必要な腰痛が生じた割合は男性で6.9%、女性で5.7%と低い割合を示すことから、どれだけバレーボール選手が腰痛を発症する割合が高いかがわかると思います。(日本整形外科学会、2003年)

バレーボール選手の怪我の中でも腰痛は多い


先程の紹介した藤井らの調査によると、264名の中高生バレーボール選手のうち、なんらかの怪我があると答えた割合は85.2%であったとしています。

そしてその怪我をした部位別の割合を見ると、最も多かったのは突き指をはじめとする「指(65.2%)」であり、ついで捻挫などの「足関節(49.6%)」。3位に「腰痛(40.9)」となっています。
動作の中で多く使いそうな肘や肩に関しては10%以下でした。
このことから、何かしらの怪我を行うことが多いバレーボール選手の中でも、腰痛を発症する割合は非常に高いことがわかります。

バレーボールにおける腰の役割

腰痛はいうまでもなく、腰で生じる痛みです。

スポーツ動作における腰の役割は、下半身や上半身の動きに合わせて土台となる体幹を安定させることにあります。

腕や足を効率よく動かすためには体幹の安定性がとても重要です。

イメージとしては、不安定な揺れる床の上では、私たちはうまく歩くことができませんよね。
それと同じように腰が安定していなければ土台が不安定となり、腕や足は効率よく動かすことができません。

そのため、スパイクやレシーブ、サーブなどで腕だけでなく、下半身も激しく動かす必要があるバレーボールでは腰の役割は必然的に大きくなるのです。

選手が腰を痛めると

そんな腕や足の土台を担う腰を痛めるとどうなってしまうでしょうか?
想像に容易ですよね。
スパイク、レシーブ、サーブ等。さまざまな動作で腰痛が生じ、パフォーマンスは著しく低下してしまいます。

また、痛みを放置したままプレーを続けていると、より腰痛は悪化してしまうため、いずれ治療が必要となり試合はおろか練習にも参加することが難しくなってしまいます。

最悪の場合、数カ月~1年単位でプレーできない。なんてこともあり得るのです。

そうなってしまえば、チームとしても影響がでますし、何より選手自身が試合や練習にも出ることができずに非常につらい状況におちいってしまいます。

腰痛が起きる原因の第1位は「練習の積み重ね」

藤井らは同調査において、腰痛の経験があると答えた103名の選手に、その発生した状況も聴取しています。
その結果、最も多い腰痛の発生状況は「練習の積み重ね」と答えた選手が60.2%と最も回答数が多く、次いで「スパイク(35.0%)」、「レシーブ(17.5)」という結果となったとしています。

一般的な腰痛患者さんに置いても、一度の負担より、日々の小さなストレスの蓄積が腰痛の発症に関連するという報告も多く見られることから、毎日行う練習の中でこそ腰痛を予防するという考え方を持つ必要があるかもしれません。

スパイクやレシーブは腰の大きな負担になる

2番目に多かったスパイクに関しても動きを細かく分析すると、非常に腰に大きなダメージを与えることは容易に想像できます。
スパイクは基本的に腰を強く反り(腰椎の伸展)、そしてひねる(腰椎の側屈と回旋)という動作の集合体です。

そして腰椎の伸展、回旋という動きの組み合わせは、急性腰痛の原因となりやすい椎間関節に対するストレスに直結します。

姿勢別での椎間関節へのストレスを検討したMcGillらの研究によると、椎間関節を圧縮するストレスは腰椎の伸展、側屈、回旋で最大になったと報告しています。(McGill 、1997)
そのためスパイクにより生じる腰の動きは腰椎の椎間関節に多大なるストレスを生じさせることがわかります。

また、レシーブのようなかがむ姿勢は腰椎に対する曲げストレス(屈曲)が発生します。
腰椎の屈曲では、腰椎におけるクッションの役割を担う椎間板に対する強いストレスを生じさせ、椎間板ヘルニアなどリスクを増加させるのです。

バレーボールではほとんどの動作で腰椎の伸展・側屈・回旋や、腰椎の屈曲を伴います。
それを毎日反復して精度を高めるために日々選手は練習を積み重ねるので、「練習の積み重ね」が腰痛を引き起こすことは半ば当たり前とも言えるでしょう。

そのため、腰痛に対する予防を日々の練習から行うことは非常に重要なことなのです。

バレーの金の卵と呼ばれたあの人も腰痛で引退

小学生の頃から「バレーの金の卵」と称され、高校生で全日本代表にも選出された大山加奈選手もまた、小さな頃から腰痛に悩まされ、腰痛によって選手としてのキャリアに幕を閉じることになった被害者の1人です。

大山選手がバレーを始めたのは小学校2年生。
当時からその才能には注目が集まっており、小学校6年生の時点で175cmの身長を誇り、チームを優勝に導くなど、誰もが今後華々しいキャリアを築いていくことを期待していました。

しかし、大山選手はわずか12歳のころから腰痛を抱えており、全国優勝を果たした小学校、中学校、高校時代も常に腰痛と戦っていたことを後に明かしています。

高校卒業後、プロとして国内リーグや世界大会で活動するも、腰痛により試合に欠場することも増え、26歳の若さで現役引退となりました。

このように、腰痛は優秀な選手の選手生命すら削ってしまう可能性もあります。

バレーボールを実際に行う選手も、指導する側も、正しく腰痛に対して向き合わなければ、これからも腰痛の被害者は増えていくことが考えられます。

腰痛を予防しながらバレーボールを楽しもう

腰痛はバレーボール選手を苦しめる大きな怪我の1つです。

さまざまな調査からもバレーボールと腰痛の間には密接な関係があることがわかります。
腰痛が発症するのは腰に負担をかける動作を日々積み重ねていることが原因であるのは疑いようがありません。

選手も指導者も、腰痛に対する正しい知識をもって、バレーボールに取り組むことが、選手生命を守ることにも直結します。

是非、日々の練習から腰痛を予防する意識を持ってバレーボールを心置きなく楽しんでいただければと思います。

出典:
藤井成徳ら(2004年)『高校バレーボール部員の腰痛に関する研究』
鹿内節夫(1992年)『高等学校バレーボール部員におけるスポーツ傷害に関する研究』
McGill(1997年)『et al:Distribution of tissue loads in the low back during a variety of daily and rehabilitation tasks』

著者情報

SHOTAM

保有資格

理学療法士

運動器認定理学療法士

転倒予防指導士

Immsjアドバンスコース終了

病院にて勤務。

ストレッチ、筋力トレーニング、検査測定、疼痛、栄養について学会発表、論文投稿などの学術活動も行う。

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