野球選手の腰痛

野球選手の怪我や故障で、膝や肩と並んで多いのが腰痛です。
現在プロ野球界で活躍している選手の中にも、腰痛に悩まされている選手が意外と少なくありません。10代の野球選手に多い椎間板ヘルニアや腰椎分離症、腰椎疲労骨折は早期発見、早期治療が必要です。

野球で将来の夢を見ている小中学生や高校生、その保護者の方のために、野球で腰痛が起きてしまう原因とその予防方法について解説していきます。

野球で起こる腰痛の原因

実は、野球は中腰姿勢でいることが多いスポーツです。
内野選手は中腰で構えていますし、バッティングは止まっている姿勢から急激に腰をひねります。また、走ってボールを追いかけて捕球するときにも腰をひねる動作がよく見られます。中腰から身体をひねったり、急に背中を伸ばしたりすることで、腰椎に大きな負担がかかるのです。またキャッチャーは長時間しゃがみこんでいるため、背中や腰の筋肉が緊張状態にあります。そこに疲労が加わると疲労骨折を起こしやすい状態になります。

腰痛の種類

腰椎分離症・腰椎疲労骨折

腰椎分離症は、脊椎関節の椎弓部の疲労骨折が原因です。椎間関節に負荷がかかり疲労骨折してしまい、骨と骨が離れたままになってしまうことを腰椎分離症といいます。第5腰椎に起こりやすい障害です。

腰の痛みは亀裂の度合いによって徐々に強くなり、骨折時に強く痛みます。その後はだんだん弱くなります。足のしびれなどの神経症状は出ません。45度斜位のレントゲン撮影で所見がわからなければ、CT、MRI 撮影が必要です。2週間くらい痛みを訴えたときには、専門医にかかりましょう。

腰椎疲労骨折は背骨の後ろにある部分で骨折が起きます。小学生でも中学生でも腰痛を訴えたら、必ず整形外科で診てもらいましょう。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、椎間板の髄核や線維輪という組織が脱出して神経を圧迫して起こる疾患です。前傾姿勢や前かがみの姿勢を長時間続けることや、急激に椎間板を圧迫して起こります。

野球では中腰姿勢をとることが多く、椎間板ヘルニアを起こしやすいといえます。また、急性腰痛(ぎっくり腰)を何度か経験しているとなりやすいといわれています。中腰やしゃがんだ姿勢を長時間保っていると、背中や腰の筋肉が緊張しやすく疲労が積み重なって腰痛を引き起こすのです。臀部や足のしびれを伴うこともあります。

仙腸関節障害

仙腸関節は多数の人体により強固に結束されていますが、わずかに動きます。仙腸関節障害の多くは、転倒などの強い外力が加わり周辺の靭帯が損傷することで起こります。椎間関節と同じく、捻挫や炎症が原因となって仙腸関節をロックしてしまい、衝撃吸収が出来なくなっているために痛むのが普通です。非特異的腰痛と診断されることが多く、放置されやすい障害です。椎間板ヘルニアのように坐骨神経痛などの神経症状があります。

予防方法は

脊椎疲労骨折・腰椎分離症

まずは早期発見が重要になります。
小・中学生でも、オーバーユース(使い過ぎ)で疲労骨折を起こすことがあります。ですが腰痛を起こしてもしばらく安静にしていると痛みが治ってしまうため、早期発見出来ずに腰椎分離症になってしまうケースが少なくありません。腰痛が発生したら早めに対応しましょう。

腰痛が2週間も続くようであれば、小中学生の50%に疲労骨折が見られるといいます。専門の整形外科を受診して正確に診断してもらいましょう。

腰椎分離症の原因となる疲労骨折は、背骨の後ろ側にある椎間関節周辺で起こります。初期の亀裂はレントゲンでは写りにくく発見が出来ないことがあります。ですが2週間の腰痛の訴えはこの骨折の可能性が高いですから、CTなどで確認してもらいましょう。
骨折がなければ、しばらくの安静で治癒していきます。

腰椎分離症の予防法は以下の通りです。

・腹筋と背筋の筋力バランスをとるようにトレーニングする
・多裂筋、腹横筋などのインナーマッスルを鍛える
・上体を反らして身体をひねる動作をしない
・脚力を鍛える
・お尻、太ももの筋肉を柔軟に保つ

最近では、相撲の「四股」や「腰割り」をトレーニングに組み込むこともあるようですが、下半身の使い方やバランスのとり方を体感するのにはいいトレーニングかもしれません。

椎間板ヘルニア

前屈で強い腰痛と下肢のしびれがある場合には椎間板ヘルニアを疑いますが、若い頃の椎間板ヘルニアは安静にすることでほとんどが治ります。

椎間板ヘルニアが発生する原因には、背筋が弱いことと股関節の使い方がうまくいっていないことが考えられます
2009年に実施された高知県スポーツドクター協議会の調査によると、高知県の高校球児の腰痛について調べた結果、腰痛を訴える選手には腹筋よりも背筋が弱く、ひねる力もボールを投げる方向の力が弱いという結果が見られたようです。
このことからも、腹筋と同時に背筋を鍛えることで、前かがみの姿勢で椎間板への負担を軽減しやすくなることがわかります。

またひねる力は胸椎が担うことが多いので、胸椎の柔軟性の確認も必要です。身体をひねって捕球する、投球する、打つ、という動作は、胸椎と股関節を使うことで腰への負担が減ることがわかっているためです。

椎間板ヘルニアの予防には、以下が効果的です。

・腹筋と共に背筋を鍛える
・胸椎(背中)の柔軟性を保つ
・股関節を使う
・ハムストリングスの柔軟性を保つ
・インナーマッスルを鍛える

仙腸関節障害

仙腸関節がロックされている場合には動きが感じられませんので、関節の動きを徐々に引き出していくように誘導を加えます。この手技は専門のトレーナーさんや理学療法士さんにやってもらいましょう。

また骨盤の安定化トレーニングとして、外腹斜筋や股関節内転筋群を強化します。これにより仙腸関節が安定化されて、関節の動きすぎを調整出来るようになります。
なかなか治らない腰痛があり、腰椎分離症や椎間板ヘルニアではない場合には、理学療法士さんなどに骨盤や脊柱の様子を見てもらい指導してもらうといいでしょう。

まとめ

プロ野球選手でも腰痛で苦しむ選手は珍しくありません。巨人の菅野投手は「腰痛は肩や肘と違ってやっかいだなと感じた。体に力が入らないし、走ることも出来ない」といっています。阪神にいた新井選手も腰椎の疲労骨折で苦しみました。また、プロになってから椎間板ヘルニアの手術をした選手も少なくありません。

小学生から野球を始める人が多いと思いますが、成長期の腰痛が原因でやがて深刻な腰痛症に苦しむことがないよう十分に気を付けましょう。

膝や肩、肘であれば大事に至らないように対処しやすいものhttps://www.daily.co.jp/opinion-d/2017/06/14/0010279855.shtmlです。ですが腰痛は打撲や疲れとして特に専門家の診断を仰ぐこともなく、湿布や痛み止めでやり過ごしてしまいがちです。このことが、野球選手としての将来に影を落とすことにならないよう、正しく診断してもらうことが大切なのです。

腹筋と同時に背筋も鍛えて筋力のバランスをとったり、インナーマッスルが使えるような筋トレやストレッチを取り入れたりして腰痛を予防しましょう。
表面的な筋肉だけではなく、地味で簡単でもインナーマッスルを鍛えることが選手たちの将来に役立つはずです。
また、股関節がうまく使えていないことも腰痛の一つの原因だといわれています。ハムストリングスが十分に伸びて股関節の可動域を広げることが出来れば、腰への負担は減るでしょう。
成長期には将来を見据えた体作りが必要です。時には専門家に意見を聞きながら痛めにくい体作りをしていきましょう。

出典:中尾浩之著 『よくわかる腰痛症 原因と直し方』、酒井慎太郎著 『新しい腰痛の教科書』    
参考:スポーツ選手の腰痛についてー高校野球選手の腰痛調査結果よりー,坂本、佐藤達らが次々とダウン…今年も各球団を苦しめる主力の“腰痛”問題|ベースボールキング,【野球】プロ野球選手も悩まされる「腰痛」 現役トレーナーが語る“防止策”|デイリー

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腰痛メディア編集部
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