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腰痛持ちのみなさんにとって、立って靴下を履くと腰に痛みが走るときはありませんか?立って靴下を履くのはとても難しい動作で、この動作がスムーズにできるかどうかは足腰の強さの指標にもなっています。今回は靴下を履く動作に焦点をあてて、その難しさや履き方のコツをお伝えします。

「立って靴下を履く」ことはとても難しい

みなさんは「ロコモティブシンドローム」=ロコモという言葉を聞いたことがありますか?
ロコモとは、骨や関節、筋肉などの運動器が衰え、転倒、それによる骨折や寝たきりの可能性が高い状態をいいます。
そして、この「片足立ちで靴下を履く」という動作。ロコモをチェックする7つの項目の中の一つに含まれているのです。
骨や関節、筋肉の衰えをチェックするテストに「片足立ちで靴下を履く」が含まれているということは、「片足立ちで靴下を履く」ことがどんなに難しいか分かりますよね。

それでは、「立って靴下を履く」ことがどうして難しいのか、動作を分析してみましょう。

片足で立つ

「片足で立つ」って「バランス」が悪いですよね。
人が両足で立っているとき、両足裏とその間の空間から体が大きく外れないようにコントロールする能力が「バランス」です。

足で支えている面が広いほどバランスをとりやすく安定します。よちよち歩きの幼児ががり股だったり、高齢者が杖を突いているのは、支える面を広げて安定して歩こうとしているためなのです。

対して、片足立ちではどうでしょう。
片方の足の裏という狭い範囲の中に体を収めなければならないので、バランスがとりにくいのは簡単に想像できますよね。

大きく前かがみ姿勢をとらなければならない

立って靴下を履くときは大きく前かがみしなければなりません。
「背骨(脊椎)」は、頭の下から骨盤の上まで、小さな24個の骨(椎骨)が積み重なってできています。この、ひとつひとつの椎骨を支えているのが「筋肉」や「靭帯」です。

さらに、椎骨と椎骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」があります。
大きく前かがみするには、背骨を構成する「筋肉」「靭帯」「関節」「椎間板」などのすべてに痛みがなく、スムーズに動かなければなりません。

安定性と運動性、どちらも必要

立って靴下を履く場合、前かがみ姿勢で体を固定しながら、手足を動かして靴下を履く必要があり、正反対の動作を同時に行うことが必要となります。

間違った靴下の履き方による腰痛への影響・対策

大殿筋の緊張

無理な姿勢で靴下を履こうとすることで、大殿筋というお尻の筋肉が硬くなり、腰にストレスが加わってしまいます。お尻の筋肉が緊張することで、足の筋膜なども引っ張られ、より前かがみへなりづらい状態となってしまい、腰痛を引き起こしてしまうのです。

大腰筋の緊張

靴下の間違った履き方による腰痛への影響は大きいということが分かりましたが、実際、靴下の正しい履き方はどのようなものでしょうか。正しい靴下の履き方をマスターし、腰痛の症状改善につなげ、腰痛によるつらい毎日から抜け出しましょう。

腰を丸めた前傾姿勢をとらない

腰を丸めないというのも腰痛を生じさせないために、重要なポイントといえます。座った状態で膝を胸の方へ近づけるのではなく、膝を外に曲げ、斜め外側へ持ち上げることが大切です。膝を外へ出すように曲げることで腰を丸めて靴下を履くといった動作をせずに済み、腰痛への負担を大きく軽減できるでしょう。

目線は足元ではなく、少し先を見る

手元や足元を見る行動は首の動きも大きく関連しています。首に大きな負担がかかれば、神経がつながっている腰部へ負担をかけてしまうのです。目線の向け方も腰痛の原因になりうるため、目線は足元より少し先を見るように意識してみてください。

どうして立って靴下を履くときに腰が痛むの?

椎間板そのものや、椎間板が神経を刺激して痛む

前かがみ姿勢をとると椎間板に圧迫負荷がかかるのですが、加齢や繰り返しかかる負荷で椎間板が傷むと椎間板そのものに痛みを生じるようになります。
腰椎椎間板ヘルニアは、前かがみ姿勢をとることで椎間板から髄核という組織が飛び出し、それが神経を刺激して痛みを生じた状態です。

体の後面の筋肉の柔軟性が低下している

体の後面の腰や背中、おしりの筋肉に疲労が溜まっていたり柔軟性が低下していると、前かがみ姿勢をとったときに筋が引き伸ばされたり、断裂したりして痛みを生じます。

椎間関節の動きが悪い

椎骨と椎骨は、椎間板と背中側にある2つの椎間関節で連結しています。前かがみ姿勢では、背中側にある椎間関節は離れていかなければなりません。ですが、椎間関節を包んでいる袋(関節包)に炎症や癒着があると、前かがみ姿勢をとったときに、関節包が引き伸ばされたり、断裂したりして痛みを生じます。

腰痛がある時の靴下の履き方

足の冷え

それでは、靴下を履いてみましょう。座って履くのが絶対安全ですが、どうしても座れない場合もあると思います。立って履く場合と、座って履く場合の方法をご紹介します。

台を使って立って履く

台を使うことで、両方の足を接地できるので安定します。
前方に台を用意し、背中をまっすぐにして立ちます。
普段、靴下を履くときは、上半身を足先に近づけるように背中が丸くなってしてしまいがちです。腰が痛む場合は、上半身を直立にして股関節を曲げるよう意識しましょう。

壁や机にもたれて立って履く

壁や机にもたれることで片足立ちが安定します。
台を使うときと同様に、背中は丸めずに上半身を直立にして、股関節を曲げるように意識しましょう。

いすに座って履く

いすに座り、背中を丸めずに上半身を直立にして、足先を体に引き寄せるようにして履きます。
このとき、膝を上半身の方に近づけるのではなく、外側へ持ち上げるようにするとさらに負担が減ります。
これでも難しい場合は、足を組んだ状態から、あぐらをかくようにし、反対の太もも上に足先を乗せるようにしても構いません。

立って靴下を履けるようになれば健康の証?

ストレッチと筋トレで腰痛と体力低下を予防しよう!

前かがみ姿勢で痛みが出やすい太もも裏~ふくらはぎの筋肉、お尻の筋肉、股関節の周りのストレッチと、片足立ちで姿勢を保持するために働く筋肉を鍛えるトレーニングをご紹介します。

腰痛と体力低下予防のための習慣にしていただきたく、あえて姿勢別で紹介しますので気軽に始めてみてください。

仰向けで行うトレーニング

・太もも裏~ふくらはぎを伸ばすストレッチ(準備するもの:フェイスタオル)
1.片方の足の裏にタオルをひっかけます。
2.できるだけ膝を伸ばしたまま、手でタオルを引っ張って足を上げていきます。
3.そのまま20~30秒キープします。
※椎間板に問題がある場合は、強い痛みやしびれを伴うことがあるので中止してください。
反対側の膝を立てて同様に行うと、ストレッチの強度が弱まり楽に行えます。

・お尻と腰のストレッチ
1.両膝を両手で抱え込みます。
2.太ももを胴体の方に近づけて腰を丸めます。
3.そのまま20~30秒キープします。
※まずは片足ずつ交互に行っても構いません。ストレッチの強度が弱まり楽に行えます。

膝をついて行うトレーニング

・腸腰筋のストレッチ
1.背中をまっすぐにして片膝を立てます。
2.立てた方の膝に体重を移動していきます。骨盤を前に出して、腰は少し落とすイメージです。
3.後ろの足の太もも前~骨盤前の筋肉が伸びていることを意識します。
4.そのまま20~30秒キープします。

・四つ這いでの体幹筋トレ
1.四つ這いになります。背中が丸まったり反ったりしないように注意します。
2.左手と右足を伸ばした姿勢を数秒キープします。
3.右手と左足を伸ばした姿勢を数秒キープします。

立って行うトレーニング

・片足立ち練習
※バランスを崩してしまったときにすぐ手でつかまれるように、壁やテーブルなどの近くで行ってください。
1.まっすぐに立ちます。
2.片足立ちになって、もう片方の足の膝が直角になるまで上げます。
3.そのまま20~30秒キープします。
4.反対の足も同様に行います。

おすすめストレッチ&筋トレ

大殿筋のストレッチ1

1、 腰を左右にゆっくり倒し、腰をひねる。
2、 両肩はなるべくベッドから離さないようにし、目線は正面をキープする。

大殿筋ストレッチ2

1、 仰向けに寝て腰が浮かないように意識する。
2、 片方の膝を両手で胸の方へ引き寄せ、反対の足は床につけたままにする。

大殿筋ストレッチ3

1、 座った状態で膝の上に足のくるぶしを載せる。
2、 膝を下に押し、臀部の筋を伸ばす。

大腰筋のストレッチ4

1、 足を前後に開き、後ろ側の足で膝をつく。
2、 両手を前側の足の膝に置き、状態を前に少しずつ重心を乗せるように、スライドさせる。
3、 ゆっくりともとに戻す。
4、 反対側も同じ動作を繰り返す。

まずは、1回20秒ずつ、5~10セット程度、これらのストレッチをやってみましょう。毎日自分ができる範囲で行い、徐々に増やすなど工夫を凝らしていってみてください。靴下を履くときの動作で使われる筋肉の柔軟性を高められ、腰痛の負担軽減につながります。

まとめ

・立って靴下を履く動作はとても難しく、足腰の衰えを判断するひとつの指標。
・立って靴下を履くには「片足で立つ」「大きく前にかがむ」「安静性と運動性」が必要。
・立って靴下を履くときに腰が痛くなる原因は、椎間板への負担や筋肉の柔軟性低下、椎間関節の問題などが考えられる。
・靴下を履くときは背中を丸めずに股関節を曲げるよう意識する。立って履くときは台や壁を利用すると安定する。
・ストレッチや筋力トレーニングで靴下を履くときの腰痛や不安定さが改善できる。

以上、靴下の履き方や痛みの原因についてまとめました。腰痛と体力低下の予防を兼ねて、是非ご紹介したストレッチ、筋力トレーニングを行ってください。

参考文献
山下敏彦『運動器の痛み診療ハンドブック』南江堂 p82~108
冨士武史、河村廣幸、小柳麿毅、淵岡聡『整形外科疾患の理学療法』金原出版株式会社 p46~80

腰痛の科学|知識の宝庫!目がテン!ライブラリー
【腰痛の方向け】この動作にご用心!靴下、ズボンを履く時編|赤とんぼ整体院・整骨院
【セルフケア】立ったまま靴下を履く姿勢で、腰に痛みや違和感が出る|みどり堂整骨院
靴下を履く時に腰が痛む3つの原因|GREEN整骨院
腰痛改善ストレッチ・ツボ押しなど 自宅で行える5つのおすすめ対策|痛みWith|OMRON
http://www.tokyo-reha.jp/unit/welfare_coop/material/pdf/unit/welfare_coop/stretch.pdf

著者情報

腰痛メディア編集部
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