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腰痛持ちの方から、よく聞かれる質問に「腰痛のときはお風呂に入っていいの?」というものがあります。

たしかに、痛みを抱えた腰を温めることは良さそうな気もしますが、医学的にはどうなのでしょうか?腰痛持ちのみなさんも、疑問に思ったことがあると思います。

実は、腰痛のときにお風呂に入っていいか否かは、「ケース・バイ・ケース」が正解です。つまり、腰痛の原因によっては、お風呂が効果的なこともあれば、逆に腰痛を悪化させることもあるのです。

この記事では、「入浴を避けるべき腰痛」と「入浴が効果的な腰痛」について解説しています。読んでいただければ、「自分の腰痛がどちらに該当するか?」把握することができ出来るでしょう。

また、記事の後半では、入浴が効果的な腰痛に対して、正しいお風呂の入り方をお伝えしています。ただ湯船につかるだけでなく、より効果を高められる入浴方法にも触れていますので、ぜひご参考にしてください。

腰痛のときはお風呂に入っていいの?

「お風呂で腰を温めれば、腰痛も和らぎますよ!」という言葉を聞いたこともあるかと思いますが、それは本当に正しいのでしょうか?
直感的には、「腰の血流も良くなるし、なんとなく良さそう!」と思いがちですが、実は、入浴がかえって腰痛を悪化させる場合もあるのです。
ここでは、「入浴を避けるべき腰痛」と「入浴をすべき腰痛」に分けて、解説したいと思います。

入浴を避けるべき腰痛は「ぎっくり腰」

タイトルで結論を言ってしまいましたが、入浴を避けるべき腰痛の代表は「ぎっくり腰」です。
ぎっくり腰は、医学的には「急性腰痛」という名称が正しく、急激に発症する腰痛の総称です。ぎっくり腰のメカニズムは正式には解明されていませんが、腰周囲の筋肉・靭帯の損傷が原因というのが通説です。
つまり、急に重いものを持ち上げるなどの運動を引き金に、腰周囲の筋肉が損傷して炎症を起こす結果、腰が痛くなるのです。

それでは、筋肉や靭帯が炎症を起こした状態で、お風呂に入るとどうなるでしょうか?
入浴は血流を増加させる効果があります。そのため、炎鵬が起きている腰の血流も促進させ、疼痛を悪化させる要因になるのです。
ぎっくり腰だと思ったら、できるだけ入浴は避け、シャワー程度で済ませる方が良いでしょう。
ただし、勘違いしないでほしいのは、「お風呂も入れないし、安静が一番なんだ!」と思って、体を休めすぎてしまうことです。ぎっくり腰の場合、「痛みを感じつつも、可能な範囲で日常通りの生活をした方が治りやすい」という研究結果があるのです。
ぎっくり腰は入浴こそ避けるべきですが、出来出来るだけ普段と変わりない生活を意識することが大切なのですね。

入浴が効果的な腰痛は「筋性の慢性腰痛」

入浴が効果的な腰痛は、「筋肉が原因の慢性的な腰痛」です。
先ほども出てきましたが、入浴の最大の効果は「お湯による血流の改善」です。筋肉が原因で慢性腰痛を引き起こしている場合、筋肉は硬直していることがほとんどです。入浴による血行促進効果が硬直した筋肉をほぐし、柔軟性を高めることで腰痛が緩和されるのです。

腰痛の原因となる筋肉は腰だけでなく、太ももの筋肉群も原因になることが多々あります。太ももの筋肉群の一つに、ハムストリングス(太もも裏の筋肉)と呼ばれる筋肉があります。ハムストリングスが硬直していると、前傾姿勢をとるとき、より背骨を曲げなけいと前へ屈むことが出来出来ません。そのため、ハムストリングスが硬い人は、背骨への負担が大きく、腰痛になりやすいのです。

お風呂に入ることで、腰周囲筋やハムストリングスの血行が促進されます。血行が促進されれば、筋肉の柔軟性も高まり、腰への負担も軽くなるのですね。

同様の理由で、筋性の慢性腰痛にはストレッチも効果的です。特に入浴後は、筋肉や関節がほぐれているため。ストレッチに適したタイミングです。こちらの記事は、サッカー選手と腰痛に関しての記事ですが、「サッカー選手の腰痛ストレッチ」の項目に、大殿筋・大腿四頭筋・ハムストリングスのストレッチ法を解説しています。すぐに試せる簡単なストレッチなので、今日のお風呂上がりに実践してみてはいかがでしょうか。サッカー選手のための腰痛対策!正しいストレッチ法も詳しく解説!

おすすめの入浴方法

入浴が効果的な腰痛の場合、より効能を高める入浴方法がないか気になるところですよね。
ここでは、普通に入浴するよりも、より腰痛に効果的な方法を解説しています。「毎日湯船につかつかっているけど腰が痛い!」という方は、ぜひ試してみてはどうでしょうか。

人工炭酸泉と入浴剤の併用がおすすめ【医学的根拠あり】

過去の論文には、”入浴剤と併用した温泉療法(主に人工炭酸泉)は、肩こり・慢性腰痛・末梢循環障害の症状改善のための日常的な補助療法として有効と考えられた”(「温泉療法を主体とした他療法との併用効果」王・烏帽子田・鏡森、日温気物医誌第73巻3号2010年5月 )という研究結果があります。
要約すれば、「人工炭酸と入浴剤をあわせて使つかうと、慢性腰痛に効果的だよ」ということです。

「人工炭酸泉」は、お湯に炭酸ガスを溶かした炭酸温水のことです。日本の天然温泉には、高濃度の炭酸泉が湧出する場所が少ないため、人工的な高濃度炭酸泉の方が一般的なのです。
炭酸泉の効果は科学的に証明されており、通常の入浴に比して約3倍の血流改善効果が期待でき出来るのです。実際、炭酸泉に入ると、全身に細かい泡が付着することが分かると思います。この泡の正体は炭酸ガスの気泡で、全身の毛穴から炭酸ガスが血管に吸収されることで血管が拡張し、血流も改善するのです。肉眼的にも、皮膚が紅く変化するのが確認でき出来ると思います。

この人工炭酸泉に入浴剤を併用することで、慢性腰痛の改善が期待でき出来ます。現在は、ネットショッピングなどでも人工炭酸泉装置を購入可能です。気になる方は試してみてはいかがでしょうか。

腰痛にはお風呂用イスの選択も大切

お風呂で髪や体を洗うときは、座って洗うのが一般的ですよね。そのため、腰痛持ちの方は、お風呂用のイスも適切なものを選びましょう。
具体的には、「座面が広めで、ゆったり座れる」イスがおすすめです。座面が広いことで、お尻との接触面が大きく、座ったときの安定性につながります。

また、イスの高さも外せないポイントです。「床から座面までの高さが40cm程度」の、高めのイスを選びましょう。座面が低いイスの場合、腰掛けたり、立ち上がったりする度に腰に負担がかかりがちです。
腰痛にお悩みの方は、「座面が高くて幅広いイス」で快適な入浴ができ出来ますよ。

まとめ:腰痛時のお風呂に入るかは原因で判断しよう

今回の記事では、腰痛と入浴の関係についてお伝えしました。

腰痛時に入浴すべきか否かは、原因によって異なります。急性炎症が原因の場合は、入浴が腰痛の増悪要因になりえますので、十分に注意しましょう。
筋性の慢性腰痛に対しては、人工炭酸泉と入浴剤の併用が、医学的にも効果のある入浴方法で、睡眠の質も高まります。慢性腰痛にお悩みの方は、ストレッチなどの腰痛体操と合わせて、ぜひ試してみて下さください。

参考文献:
「温泉療法を主体とした他療法との併用効果」 王・烏帽子田・鏡森 日温気物医誌第73巻3号2010年5月
入浴剤の効用(Effects of Bath Additives)
Ishizawa Taichi(Products Development Department, Bathclin)
日本温泉気候物理医学会雑誌 (0029-0343)81巻1号 Page2(2018.02)

参考:効果的な入浴方法【腰痛改善法】 エーザイ株式会社

著者情報

腰痛メディア編集部
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