多様化する働き方の中から生まれた『在宅ワーク』。
場所や時間の制約がなく、自分の裁量で仕事ができるというメリットから多くの方が取り入れるようになってきました。

しかし、その一方で、
「ずっと座りっぱなしで腰の痛みが・・・」
「最初は気にならなかったのに時間が経つと疲れてきて・・・」
といった、カラダにまつわるデメリットな声も多く聞かれます。

そんな悩みをお持ちの方は,もしかすると作業姿勢が自分のカラダに合っていないことに加えて、『ずっと同じ作業姿勢をとり続けている』ことが原因かもしれません。

仕事中の作業姿勢を見直すだけでも、もともと腰痛をお持ちの方でも仕事に集中して取り組むことができるようになります。

座る姿勢では骨盤の位置で腰痛の生まれやすさが変わる

オーストラリアの研究者が世界20カ国を対象に1日に座っている時間を調査したところ、世界で最も長い時間座って過ごしているのは日本人であることが分かりました。さらに、各国の平均が1日5時間であったのに対し、日本人では男性で7時間、女性においては8時間であったことからも、多くの日本人が、一日の大半を占める仕事時間の中で『座る姿勢』を選んで作業をしていることが伺えます。確かに、エネルギー消費が少なく体重を支える脚への負担を考えると『座る姿勢』は楽な姿勢であり、一見、作業姿勢に向いているように思われても仕方がありません。

しかしながら、座る姿勢をとるだけで自ずと骨盤は後方へと傾きやすくなり、これに伴って腰では衝撃吸収のための生理的な弯曲(曲がり)が減らされ、クッションの役割として背骨と背骨の間に存在する椎間板に負担がかかりやすくなります。その結果、『立つ姿勢』に比べて、背骨や腰にはおよそ1.4倍の負荷がかかり、その状態から上半身が前方に倒れた前かがみ姿勢になることで負荷は1.85倍にまで増大することからも、『座る姿勢』自体が腰痛を生みやすい姿勢であることが分かります。反対に骨盤を前方へ傾けた状態で座ると、今度は背骨を真っすぐに支える背部筋の働きを高めすぎてしまい、疲労を生みやすくなるとともに、腰の関節に集中したストレスがかかり、こちらも腰痛を生む原因となってしまいます。

体にあった椅子の選択

 
このような点からも、『座る姿勢』で作業をする場合には、骨盤が前後方向へと傾き過ぎることなく、常に中間的な位置に留まり続ける状態(骨盤が立った状態)であることが大切となり、骨盤の位置で腰痛の生みやすさが大きく変わってくるのです。
 
特に椅子を使用する場合は、時間の経過とともに背部筋が疲労し、前かがみ姿勢をとりやすくなります。さらに、背骨の生理的な弯曲が変化することで腹筋が緩みやすくなり、次第に大腿部を圧迫するようにもなります。そのため、これらの影響を避けるために、腰痛の発生を防止する観点からも、以下に挙げた5つのことを考慮して椅子を選ぶ必要があります。

1.体格に合わせて座面の高さ、背もたれの角度、肘掛けの高さや位置、座面の角度等が調節できるもの。
2.腰をサポートするパットなどを備えているもの。このとき、パットの頂点が5つある腰椎の真ん中あた
り(第3腰椎と第4腰椎の中間)にくるものが望ましい。
3.座面が大腿部を圧迫しすぎないもの。
4.座面や背もたれは、熱交換が良い材質を使用しているもの。
5.作業に応じて、その位置を移動できるようにキャスター付きで安定したもの。

骨盤を中間的な位置に保つことを念頭に置きながら、背もたれの形状や傾き、座面のクッション性などを考慮に入れた椅子を使用しましょう。腰への負担を軽減させるサポート的なパットを併用するなどのさまざまな工夫を取り入れることで、腰痛を発生しやすい『座る姿勢』であっても、より快適に作業が行えるようになるといえます。

「静」と「動」の使い分けが腰痛の発生を回避する

私たちは,四六時中重力の影響を受け続けており、その中で常にカラダの一部を接触させながら、カラダへの負担が最も少なく、安定して体重を支え続けることができる位置を無意識的に探っています。

つまり、カラダはわずかな体動を伴わせながら、常に目に見えない重力と一進一退の攻防を繰り広げているのです。そのため、どんなに良い姿勢であっても、その姿勢をとり続けられる時間には限界があり、特に『座る姿勢』では30 分以上経つと腰周りの筋肉が疲労しやすくなり、腰痛を生みやすくなることを知っておく必要があります。

そこで大切になるのが、「静」と「動」の使い分けです。

『座る姿勢』で過ごす影響は、身体活動量を低下させ、糖尿病などのリスク要因となる肥満や心臓血管系の病気の原因にもなることからも、時間を短くする必要性がいわれています。特に欧米諸国では、2000年以降から座りすぎによる身体への悪影響を問題視してきており、既にイギリスやオーストラリアなどでは、長時間座ったままで過ごすリスクを少しでも軽減しようと、『座る姿勢』に代わる作業姿勢として積極的に『立つ姿勢』を取り入れるキャンペーンを官民一体で展開してきています。

また、その中で生まれた『スタンディングデスク』を使用した作業が、座っている時間を短縮することはもちろんのこと、『座る姿勢』で前かがみになりやすい人の姿勢改善や腰痛を軽減する効果、デスクから離れて行動に移しやすくなるといった運動不足の解消にもつながるといったメリットをもたらすことが分かり、日本でも導入する企業やPCワーカーが年々増えてきています。

実際に『立つ姿勢』、『座る姿勢』、『歩行』、『(立つ・座る・歩行の)全て』といった4つの姿勢や動きを通して作業を行い、1日の作業時間における腰痛の変化を比較した国内の研究でも、作業後に最も腰痛が悪化したのは『座る姿勢』と『歩行』を取り入れた作業であり、作業後も腰痛に変化がない、または軽減傾向を示したのは『立つ姿勢』と『全て』を取り入れた作業であったことを明らかにしています。

さらに、日本のオフィス家具メーカーと労働科学研究所による共同研究の結果からは、心身のストレス反応は「座る姿勢」で大きく、「立つ姿勢」で少なかったことが分かりました。一日の作業時間の中で最大30分の『座る姿勢』と最大40分の『立つ姿勢』を交互に組み合わせながら作業を行うことで、以下に挙げた5つの効果がもたらされることが明らかにされています。

1.腰痛や肩こりを大幅に軽減させる
2.身体の疲労感を改善させる
3.足がむくみにくくなる
4.作業中の眠気を解消し、集中力を高める
5.睡眠がよくなる

つまり、長時間にわたって『座る姿勢』だけを選び続けるのではなく、『立つ姿勢』を作業姿勢として取り入れること、さらに、姿勢変換とともに「動き」を生み出しながら作業を行うことを通して、腰痛の発生が回避されやすくなるのです。

まとめ

人の顔がそれぞれ異なるように、体型はもちろんのこと、カラダを構成する骨格や臓器も一見同じようで大きさや形には違いがみられます。それだけに、自分のカラダに合う姿勢も人によって異なります。まずは、いろいろな作業姿勢を取り入れながら実際に作業を行い、ご自身のカラダに合った作業姿勢を見つけることからはじめていきましょう。

そして、たとえ自分に合った作業姿勢であったとしても、その姿勢だけを長時間とり続けることは避け、「静」と「動」を上手に使い分けながら作業を行い、快適な在宅ワークにしていきましょう。

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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