日本人の約8割の人が50歳までのうちに一度は腰痛を経験します。

しかし、腰を痛めるリスクは人それぞれであり、なりやすい人となりにくい人がいることが最近の研究でわかってきています。今回は生活習慣と腰痛の関係性について解説し、どういう人が腰痛になりやすいのか、また、どういう生活習慣をしていけば腰痛のリスクを減らすことができるのかをお伝えしていきます。

喫煙と腰痛の関係性

2009年に喫煙と腰痛の関係性を調べた研究が発表されています。

タバコを吸ったことがない人、過去にタバコを吸っていた人、現在もタバコを吸っている人に分けて、過去12カ月・過去1カ月の間に腰痛の有病率を調べています。

その結果、現在も喫煙している人の腰痛の有病率は(OR 1.30、95%信頼区間[CI]、1.16-1.45)であり、タバコを吸っていない人よりも現在もタバコを吸っている人の方が、平均して1.3倍腰痛になるリスクが高くなります。

一方、別の研究では喫煙と腰痛には一貫した関係性はなく、リスクとして考えなくても良いと結論づけられています。

つまり、タバコと腰痛の関連性についてはほとんどないと言えます。

飲酒

次に飲酒と腰痛の関係性についてみていきます。

2013年に26件のアルコールと腰痛の関係性に関する研究を統合的に解析した研究では、統計学的にアルコールの摂取と腰痛の関係性は少ないと結論付けられています。

肥満(体重)

次に肥満傾向にある人は腰痛になりやすいのか見ていきます。

2010年にBMIが高い人が腰痛とどのような関係にあるのかを明確にするために、肥満と腰痛との関連について掲載されている62件の研究をまとめた論文が発表されています。

Body Mass Index (BMI): 体重kg ÷ (身長m)2

日本ではBMI=25以上から肥満ということになりますが、この論文では世界保健機関(WHO)と基準を採用しており、BMIが30kg/m2以上の人を肥満と定義しています。

研究の結果、62件中61件の論文でBMIまたは体重と腰痛との間に関連が存在することが明らかになり、BMIが高値であれば腰痛になりやすくなることが示されました。

さて、肥満と腰痛の関係を調べたその結果として、肥満が腰痛のリスクを高めることがわかりました。

どうして肥満になると腰痛になりやすくなるのか、そのメカニズムは完全には解明されていませんが、同論文では可能性として以下の説明をしています。

①肥満である方は体重が重く、日常のさまざまな活動中に腰や背骨に高い負荷を増加させる可能性があります。肥満である方はまた、事故による怪我を起こしやすくなる可能性があります。

②肥満(脂肪が多く蓄えられている人)は全身の炎症を介して腰痛を引き起こす可能性があります。脂肪はサイトカインや急性期反応物質の産生増加と関連しており、炎症の活性化と関連しているため、最終的に痛みにつながる可能性があります。

③一般的なからだ全体に脂肪がついている肥満よりもお腹周りのみの肥満の方が腰痛とのより強い関連性が示されています。それに加え、高血圧や脂質異常症と腰痛との関連もあります。この、腹部肥満、高血圧、脂質異常症が腰痛の構成要素であることから、メタボリックシンドロームが腰痛の病態に関与している可能性があります。

④肥満は背骨の部品の一つである椎間板が変形すること関連しています。背骨がしなやかに動けるかどうかは体重によって決まると言っても過言ではなく、体重が重ければ重いほど、背骨の可動性は低下し、これが椎間板の栄養を阻害する可能性があります。

また、肥満の人は血液の中のトリグリセリドと低密度リポ蛋白コレステロールという物質が増加し、高密度リポ蛋白コレステロールが減少しています。

そのため、脂質異常症は、肥満における動脈硬化症の大きなリスクになっています。そして、動脈硬化は、背骨の椎間板の細胞の栄養不良を引き起こす可能性があり、これが原因で椎間板変性になる可能性があります。

以上4つの可能性を同論文では示しており、つまり、BIMが高いと腰痛になるリスクが高いと言うことがわかります。

また、同論文によると、肥満と腰痛の発生との関係は男性よりも女性の方が強いことを示唆しています。

女性の方が腰痛になりやすい原因としては、、ホルモンが原因による肥満のなりやすさとそれに関連した疼痛感受性の変化によるものである可能性、さらに、男女における体脂肪量の分布の違いや除脂肪体重の割合の違いと関連している可能性が指摘されていました。

また、肥満の基準となるBMIについても、男性ではBMIが高くても、それは筋肉量が多いからである可能性があり、女性では脂肪組織の量を示している可能性があるとも記載されていました。

女性の方が構造的に脂肪を蓄えやすいため、その分肥満になりやすく、腰痛になりやすいということですね。

BMIが高ければ腰痛になりやすいことはわかりましたが、その逆に腰痛であれば肥満になりやすいことも論文では書かれていました。つまり腰が痛いと、活動量が低下しやすくなり、その結果脂肪が蓄えられやすくなるのです。

そして脂肪が多くなれば、その分腰痛のリスクも増えていくという悪循環になりかねません。

肥満と腰痛の関係性は深いことがわかったので、腰痛を回避するためには肥満にならないように生活していく必要がありそうです。

運動を普段からしている人は腰痛になりにくいのか?

最後に、運動と腰痛の関係について書いていきます。

2015年に日常での身体活動レベルと椎間板の高さや腰痛との関係性を調べた研究では、身体活動レベルが低ければ低いほど、腰痛になりやすいことが示されています。

そのほか、身体活動レベルが低ければ、椎間板同士の間の高さが低くなること(椎間板の高さの平均 -0.63mm、95%信頼区間(CI)-1.17mm~-0.08mm、P = 0.026)や、多裂筋の高脂肪含有量が増加することがわかりました。

椎間板については肥満と腰痛の関係性の中でもお話ししましたが、椎間板とは背骨を構成している部品の一つで、背骨にいくつも存在しており、椎間板によって背骨が曲がったりすることができています。
この椎間板の高さが低くなると言うことは、それだけ背骨の柔軟性が低下すると言うことになり、背骨に負担がかかりやすくなります。つまり腰にダメージが行きやすく、腰痛になりやすくなるということです。

多裂筋とは背骨を支える主要な筋肉群のことで、脂肪の含有量が増えるという事は、相対的に筋肉量が低下することにより、背骨を支える運動能力が落ちるということです。
こちらも椎間板同様に、背骨や腰にダメージが行きやすく、腰痛になりやすくなってしまいます。

適度な運動が腰痛の発生を軽減させていくことがわかりましたね。

まとめ

喫煙・飲酒・肥満であること・運動の4つの生活習慣が腰痛とどういう関係があるのかを見ていきましたが、この中ではどうやら肥満であることや運動を習慣的に行なっているかどうかが腰痛と関係がありそうです。

今現在、運動する習慣が全くない人は一日の中の少しの時間でもいいので、運動することを習慣づけていきましょう。運動を習慣化することができれば、肥満も徐々に改善していきます。

運動の習慣がない人にはつらいことかもしれませんが、少しでも取り組んでいき、腰の痛みに悩まされない生活を送っていきましょう。

著者情報
松平 浩,磯村 達也,岡崎 裕司, 三好 光太,小西 宏昭;日本人勤労者を対象とした腰痛疫学研究;日本職業・災害医学会会誌 JJOMT Vol. 63, No. 6
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腰痛メディア編集部

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