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「食欲がない」「慢性的な気分不良」など悩んでいませんか?

人間の体は心理的ストレスを抱えることで、様々な症状がでてきます。
多くの方は、ストレスなどの心理的なもので生じる病気は「うつ症状」や「パニック障害」などの精神的な病気を思いがちです。

しかし、最近の医療で分かってきたことは、ストレスが原因で「腰痛」などの身体的障害もでてくると考えられています。

何故、心理的要因から「腰痛」などの身体的障害がでてくるのでしょうか?

今回は、食欲低下などの心理的要因と腰痛の関係性を解説して、どういった対処をしたらいいのかを解説していきます。

特異的腰痛と非特異的腰痛

医師の診察や画像診断(X線やMRIなど)で原因が特定できるものを特異的腰痛、厳密な原因が特定できないものを非特異的腰痛といいます。

特異的腰痛には、背骨と背骨の間にある椎間板(ついかんばん)が潰されて、神経を圧迫するために痛みが起こる椎間板ヘルニアや、椎骨にある脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなることで起こる脊柱管狭窄症などが知られてはいます。

こういった症状で知られている特異的腰痛は、実は腰痛全体の15%しかありません。
反対に、画像診断などで原因が特定できないものは非特異的腰痛に分類されますが、腰痛全体の85%は非特異的腰痛だといわれています。

非特異的腰痛の中には、ぎっくり腰などの姿勢や動作に関係する「腰の不具合」と心理的なストレスを伴う「脳機能の不具合」によるものがあると考えられています。
「脳機能の不具合」には、仕事や人間関係のトラブル、腰痛に対する恐怖や不安による心理的ストレスなどが関係しています。

ストレスが腰痛を起こすメカニズム

ストレスと脳の関連性

近年解明されてきたのが、痛みをコントロールする「ドーパミンシステム」と腰痛の関係です。
2009年9月発刊の『臨床整形外科44巻9号』に掲載された『慢性腰痛とドーパミンシステム』によると、腰痛の痛みとドーパミンシステムの因果関係について、以下のように解説されています。

人間の脳は、痛いはずの状況であっても「ド―パミン」という脳内伝達物質が大量に分泌されます。このドーパミンが放出されると、感じる痛みが軽減される「オピオイド」という物質が放出されます。このオピオイドの鎮静作用が効くことで腰痛が軽減される、という脳のメカニズムが「ドーパミンシステム」と呼ばれているのです。この人間にもともと備わっている脳のシステムによって、私達の痛みはコントロールされています。

しかし、慢性的にストレスを抱えていたり抑うつ状態にあったりすると、ドーパミンがきちんと脳内で産生されないため、オピオイドも十分に分泌されずに痛みの抑制機構が働かなくなってしまうことがわかりました。

またストレスや不安、うつが存在した場合、痛み刺激に対するドーパミンの反応性が低下してしまい、十分なオピオイドが産生されないため、さらに痛みが増幅することも明らかになりました。これによって、さらに当事者は腰痛の痛みを強く感じ、その痛みがストレスになりさらに痛みが増強する、といった「負のスパイラル」が生まれて腰痛が悪化してしまうのです。

また、ドーパミンと同様に、痛みのコントロールに大きく関わってくるのが「セロトニン」という神経伝達物質です。セロトニンは感情や気分のコントロール、精神の安定に関わってくる重要な物質と言いれています。

そしてセロトニンは、精神作用以外にも「腰痛の痛みも軽減」してくれることがわかりました。しかし、ストレスや抑うつ状態にある人はセロトニンの分泌が不足し、痛みを十分に和らげることができないことも明らかになっています。

つまり、ストレスによって心理的負荷がかかっていると、ドーパミンとセロトニンの分泌が十分にこれからの脳の痛みのコントロールシステムの働きを鈍らせてしまうため、腰痛の痛みが緩和されず、むしろ痛みが増強する可能性が高いのです。

ストレスと身体の関係性

そして、ストレスによるメンタルへの影響は、身体にも現れてきます。まず、ストレスによる心への負荷がかかることで、我々の姿勢は無意識のうちに崩れる傾向にあります。うなだれたり、猫背になったりと姿勢が崩れてしまうのです。そういった姿勢は腰に負担をかけ、腰へのストレスも蓄積されてしまいます。

また、ストレスは脳機能の不具合を引き起こし、筋肉の血流量の低下も引き起こすことがわかっています。筋肉の血流量が低下することによって、腰や肩の血行も悪くなり、腰痛が生じやすい身体状態となってしまう可能性が高まるのです。

上記のメカニズムが複雑に絡み合うことで、ストレスに起因する腰痛が発生します。ちなみに、ストレスによる腰痛は、長期間に渡るストレスの心理的負荷によって症状が身体化するため、慢性腰痛に分類されます。反対に「急性腰痛」と呼ばれるものは、いわゆるぎっくり腰などを指します。

こちらは急に重いものを持った、あるいは運動などで急に背骨を捻転した場合に起きる腰痛です。ここで注意したいのは、「自分はまだ長期間のストレスは感じていないから大丈夫」と楽観視しないでください。ストレス耐性には個人差がありますので、無理は禁物です。

このまま対処しなかったら

まず急性腰痛・慢性腰痛を問わず、腰痛に悩んでいる多くの方が、日々の痛みにストレスを感じ、日常や仕事の中で「この姿勢はまた痛いのではないか」「もっと痛くなるのではないか」という不安や恐怖を抱いていることがわかりました。「もう一生治らないのはないか」という強い恐怖心を抱く方も少なくありません。これらの思考は「恐怖回避思考」と呼ばれています。

2019年に日本理学療法士協会にて発表された『腰痛患者と恐怖回避思考評価の関連性について』によると、調査対象とした急性・慢性腰痛症候群の両者ともに「腰痛発生後の恐怖回避思考の評価結果が悪化している」という結果を認めています。つまり、腰痛に悩むほとんどの方がこの恐怖回避思考を持ち、動作をするたびに「大丈夫だろうか」といった不安や恐怖心がつきまとっている、ということがわかりました。

この思考が強い場合には、日常生活や仕事上にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

まず、動作をするたびに常に腰痛への不安や恐怖がよぎるため、無意識的に過度に腰をかばう動作となり、さらなる腰痛の悪化を引き起こす可能性が考えられます。腰をかばうあまりに、腰以外の身体の部分を痛める可能性もあります。

また、この恐怖回避思考自体が心理的負荷になり、ストレスが蓄積されます。腰をかばいすぎて身体を動かすことを避けることで、さらに脊椎や筋肉の柔軟性が失われ、さらに腰痛が悪化する懸念もあるでしょう。つまり放っておくと、どんどん「負のループ」から抜け出せなくなってしまうのです。

最終的にはプライベートや仕事にも大きく支障をきたし、趣味を諦めざる負えなくなる、または仕事面でも転職を余儀なくされるかもしれません。

今すぐできる6つの対処方法

整形外科の受診

まだ腰痛に悩んでいるけれど、実際に病院を受診されていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。まずは整形外科に行き、医師の診断を受けましょう。もしかすると、自分では「ストレスの腰痛だろう」と感じていても、実際は画像上の異常がある可能性も否定できません。まずは整形外科を受診し、医師の診断を得ることをおすすめします。

また、整形外科には大抵の場合、理学療法士や作業療法士が勤務しています。プロの施術を受けることで、腰痛が緩和することもありますので、まずは整形外科の受診をしてみましょう。

整体や接骨院の受診

整形外科で画像上の異常がないことや、整体や接骨院の受診許可が得られたら、整体や接骨院への受診をおすすめします。いきなり整体や接骨院に行くと、原因がわからないのに施術を受けて、余計に腰痛が悪化する可能性もありますので、まずは整形外科を受診してから行くことが望ましいでしょう。

整体や接骨院で、腰回りのこわばりをほぐすことで腰痛が緩和することはもちろん、リラックス効果も得られるので、ストレス軽減やリフレッシュ効果も期待できます。

日常生活動作や環境の見直し

日常生活の動作の中で、無理な姿勢をとってはいませんか?また、過ごす環境はどうでしょうか?姿勢は毎日のことなので、日常生活の中でも対策をとることが大切です。

下の物を拾う時には腰を曲げずに膝を曲げて拾う、下に重いものを置かずに高い場所に置くなど、動作方法や環境を整えることもよいでしょう。座っている椅子の座面が低い場合には、高い座面の椅子に変えることで腰への負担も軽減します。

仕事の調整

仕事でやむを得ず腰に負担のかかる場合は、コルセットなどを着用してみましょう。また、上司に仕事の内容や、仕事量を調整してもらえないか、掛け合うこともよいでしょう。ドライバー職や事務職の方は、椅子に工夫をすることで対処ができます。腰の背骨の部分にクッションやタオルを入れて、腰のカーブをサポートしてあげましょう。また、腰をサポートしてくれる座椅子を使うこともおすすめします。

メンタルクリニックの受診

精神面の影響が大きい方は、メンタルクリニックの受診をおすすめします。メンタルクリニック、あるいは精神科と聞くと、敷居を高く感じられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。薬を処方してもらうことで、少し気分が軽くなったり、明るくなったりと、心の負担が軽減されます。もちろん、絶対に薬を飲まなければならない、ということもありません。

まずは医師の先生に相談するところからでも大丈夫です。臨床心理士のカウンセリングを受けることで、腰痛との向き合い方が変わることもあるかもしれません。心のSOSを見落とさないでくださいね。

運動やストレッチを生活の中に取り入れる

痛めにくい身体づくりも大切です。運動やストレッチを取り入れることで、腰回りの筋肉を強化し、柔軟性を高めてあげましょう。

また、適度な運動はストレス解消効果もあり、ストレスの軽減が期待できます。屋外を散歩するもよし、自宅でヨガやストレッチをするもよし、なにか教室に通ってみるもよし、自分にあった身体の動かし方を見つけてみましょう。

心理的ストレスに心当たりがない場合の腰痛

ストレスを抱える男性のイラスト

自分には、心理的ストレスに思い当たる節はないけど、食欲などの低下と共に腰痛が認められる場合は可能性は高い方ではないですが、癌などの重篤な病気が原因の腰痛も考えられます。

癌が原因の腰痛の場合は、微熱や吐き気、食欲低下や体重減少など腰痛以外にも症状がでることが多いです。

一般的な腰痛の場合は身体を動かした場合に痛むことがほとんどですが、癌性の腰痛の場合は安静時、特に夜間などに症状がでる傾向があります。

癌の既往歴があり、じっとしていても良くならない慢性的な腰痛の場合は、一度かかりつけ医に相談することをオススメします。

非特異的腰痛の対処法(急性期)

非特異的腰痛の対処法は急性期と慢性期で異なります。

急性期治療では、腰痛ガイドラインによると、以下の対応を取ることが多いです
・アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛薬の服用
・必ずしも安静を勧めない
・非特異的腰痛の原因にもなる、職場環境や人間関係のストレスの改善

詳しく解説していきます。

急性期治療のアセトアミノフェンやNSAIDsの治療は、整形外科などでもらえる一般的な鎮痛薬になります。
主に、カロナールやロキソニンなどの痛み止めを患者さんの年齢や肝機能、腎機能などの数値と照らし合わせて判断して服用していきます。
場合によっては、湿布薬などの貼り薬も処方されます。

また、腰痛の症状がひどい場合でも過度に安静を続けることは危険です。
海外の研究によると、「腰痛を患っても、できる範囲での作業の継続をした方が、痛みの改善を早くして、再発予防にも効果があった」という情報が明記されています。
オススメとしては、「これだけ体操」という方法です。

方法としては、「脚を肩幅ほど開いて立ち、膝を伸ばしたまま、息を吐きながら上体をゆっくりと反らし3秒間ほど固定する」というような体操です。
簡単な体操ですので、空き時間を見つけて実践するといいでしょう。

そして、はじめに説明した通り、患者さんの心理的ストレスも腰痛を悪化させ、腰痛を慢性化することも分かっているので、心理的ストレスを取り除いてあげることも重要です。
心理的ストレスが強く、「うつ状態」などの病気も発症している場合は精神科などで治療も視野に入れて考えます。腰痛以外にも、頭痛、吐き気、めまい、食欲低下など複数の症状がある場合は、体と心の両方からケアしていきます。

非特異的腰痛の対処法(慢性期)

また、慢性期治療は上記の急性期治療に加えて、下記の2点で対応します
・運動療法
・認知行動療法

ここでいう、慢性期とは「3ヶ月以上続く腰痛」のことを指すので、覚えておきましょう。

腰痛の「運動療法」では、体幹の安定性向上と正しい姿勢の獲得を目的とします。
ストレッチや筋力トレーニングなどが一般的なものです。
全身を使う運動としては、ウォーキングや水中歩行、水泳などもあります。

「運動療法」をすることで、関節や筋肉のバランスの改善や痛みを抑える神経の活性化が期待できます。特に、有酸素運動は神経の活性化をする可能性が考えられています。

また、「認知行動療法」とは、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法と運動などの行動を組み合わせたものです。認知とはもの考え方や受け取り方という意味です。

人は慢性の腰痛などの痛みのストレスがあることで、悲観的に考えるようになり、問題を解決できないこころの状態に追い込んでいきがちです。
「認知行動療法」では、行動日誌をつけることで、どういうときに痛みを感じやすいか、どういうときに痛みを忘れているかなどを記録します。

この方法をとることで、悲観的な考え方を、「痛みがあってもできることはある」とポジティブな考え方に変え、痛みと上手に向き合えるようになっていきます。

大事なことは、常に完璧を求めるのではなく、「痛みはあったが家の掃除ができた」などポジティブな見方ができるようになることで、痛みによるストレスの改善に繋がります。
こうした考え方を持つことで、「脳機能の不具合」も改善されていき、痛みを抑える神経伝達物質も正常に分泌されていきます。

いかがだったでしょうか?

食欲不振、吐き気などの心理的ストレス症状は腰痛に関わってくることが理解できたかと思います。
心理的ストレスが密接に関わる腰痛は、痛み止めや湿布薬などだけではなかなか改善しません。
もし、自分に当てはまる内容がある場合は、上記のような対処法を参考にしてもらえると幸いです。

【参考文献】
・腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版、日本整形学会・日本腰痛学会、https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf

・第2章 腰痛対策、厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0001.pdf

・疼痛.jp 「認知行動療法・リエゾン療法」より、痛みの情報サイト 疼痛.jp
https://toutsu.jp/cure/ninchi.html

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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