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「もう、何カ月も腰の痛みが治らない…。一生、治らないのだろうか」
「あの激痛がまた起こるかもしれないと思うと、怖くて動けない」
「腰痛のせいで、何をしても楽しくないし、気がふさぐ」
そんなお悩みをお持ちではありませんか?
腰痛の約8割が原因不明であり、なかなか治らず慢性化する方も多いのが現状です。
皆さんは、ストレスが引き起こす「心因性腰痛」をご存じでしょうか。
驚かれるかもしれませんが、「長引く腰痛の原因がストレスだった」というケースはとても多いです。
この記事ではストレスによる心因性腰痛について紹介します。
心因性腰痛のチェック方法や相談先、対処方法などを詳しくお伝えしていきます。

ストレスが引き起こす心因性腰痛とは?

心因性腰痛とは、ストレスが原因で引き起こされる腰痛のことです。
腰の痛みが3カ月以上続く状態を慢性腰痛と言います。
慢性腰痛は、腰に異常がない、あるいは異常が治っているにも関わらず痛みが続くものであり、ストレスによる心因性腰痛は、この慢性腰痛の一種です。
慢性腰痛の多くには、ストレスや自律神経失調症が影響を与えているとも言われています。

ストレスが腰痛を引き起こす仕組み

1.長期ストレスによる脳内物質の分泌の乱れ

皆さんは、健康番組などでドーパミン、セロトニンなどの名前を聞いたことはありませんか?
どちらも、痛みを抑えるのに関連する神経伝達物質です。腰から脳へ痛みの信号が伝わると、脳内でドーパミンが放出されます。すると、セロトニンなど他の神経伝達物質が放出されて、痛みを脳に伝える経路が抑制されます。
ところが、長期間ストレスにさらされ続けていると、脳内のドーパミンが放出されにくくなってセロトニン等の分泌も低下するため、痛みを抑える仕組みが働きづらくなり、痛みを強く感じたり、痛みが長引いたりするようになります。

2.社会的・心理的ストレスによる痛みの増強

仕事に家事に人間関係、私たちの身の回りには、ストレスの原因がたくさんあります。
労働環境(職場の人間関係、労働時間、業務内容、収入など)
家庭環境(家庭内の人間関係、育児や受験などの負担など)
数えきれないほどのストレス要因に囲まれて、私たちは日々の生活を送っています。
先にお伝えしたように、長期的にストレスを受け続けていると、痛みを軽減する神経伝達物質の分泌が低下し、痛みを強く感じるようになってしまいます。
ストレスの感じ方は人それぞれですが、状況や性格(がんばりすぎてしまう、実直に受け止めすぎてしまう)などによりストレスの影響を受けやすくなる場合があります。

3.恐怖回避志向による運動不足

身体を動かせなくなるほど激しい腰痛を経験した方も、いらっしゃるかと思います。
痛みの経験そのものが強いストレスとなりますし、「あんな痛みは二度と味わいたくない」という恐怖から、運動不足になる方もいます。
運動不足で腰まわりの筋力が低下し、筋肉が上手く働かず、骨の一か所だけに負担が集中して痛みが起こると言われています。結果として、腰痛が悪化・長期化します。適度な有酸素運動やストレッチなどを行い、運動不足を解消しましょう。

あなたの腰痛はストレスが原因?チェック方法

医師がストレスによる心因性腰痛を診断する際には、BS-POPという問診票がしばしば用いられます。
BS-POPは福島県立医科大学の整形外科と精神科が2000年に公表した質問票で、” Brief Scale for Psychiatric Problems in Orthopaedic Patients”の略称です。
翻訳すると「整形外科患者における精神医学的問題を知るための簡易問診票」となります。
BS-POPには患者版と医師版があります。
ご自身の腰痛をチェックするための目安として、ここでは患者用を掲載します。

引用元:金景成、井須豊彦(2015) 脊髄外科研究に用いられるスコアリングシステム及びその特徴②腰椎疾患の評価システム 脊髄外科Vol.29 No.1,23-24

皆さんはどれくらい当てはまりましたか?
このBS-POPで、患者用が15点以上かつ医師用10点以上、あるいは医師用だけで11点以上が当てはまる場合に、心理的な原因が関わっていると疑われます。
ここで注意点ですが、ご自身で調べた今の結果は、あくまでひとつの目安としてとらえてください。実際に心因性腰痛かどうか判断するには、医師の診断が不可欠だからです。
ストレスが関わっている場合でも、骨や内臓の病気が隠れているケースもあります。自己判断をせず専門医への受診が必要です。

心因性腰痛かもしれないときの相談先

ストレスの関与が疑われる方も、そうでない方も、まずは整形外科に相談しましょう。
原因不明の腰痛が約8割であるということは、裏返せば約2割のケースでは腰痛の原因が特定できるということです。しかし、検査しても原因が分からず、漫然と鎮痛薬を飲むだけの日々が続いているような場合は、手詰まり感や治療への不信感から抑うつ状態を引き起こすことがあり、要注意です。
そのような場合は、痛みに対する考え方や、行動を見直すと良いでしょう。
精神的なセルフケアについては、次の項目でお伝えします。ただ、あまりにつらくて暮らしに悪影響が出ている場合には、すぐ心療内科に相談しましょう。
ストレスに対する薬物治療や、カウンセリングが必要になるケースもあるからです。

ストレスの悪循環になる考え方を断ち切る

認知行動療法という言葉を、聞いたことはありますか?
認知とは、ものの受け取り方、考え方という意味です。
認知行動療法は、ストレス源となる出来事などの受け取り方を変えて気持ちを楽にする心理療法の一種で、心因性腰痛を含めた慢性痛の治療にも取り入れられています。ストレス対処のセルフケアにも、この認知行動療法の考え方を取り入れると良いでしょう。
難しく考える必要はありません。身体の緊張をゆるめて、自分にぴったりな活動と休息のペースをつかみ、悲観的すぎる思考のクセがあれば、バランスよく修正していきます。

悲観的すぎる思考のクセとは、
・ 感情的決めつけ(「嫌われたに違いない」などとすぐ決めつける 等)
・ 選択的注目(良いことも起きているのに、悪いことばかり気になる 等)
・ 過度の一般化(ひとつ上手くいかないだけなのに「何一つ上手くいかない」と考える 等)
・ 拡大解釈、過小評価(ささいな失敗を深刻に捉え、上手くできていることは評価しない 等)
・ 自己非難(なんでも自分のせいと考え、自分を責める 等)
・ 完璧主義(少しの失敗も許せず、完璧な成功でなければ結果を認められない 等)
・ 自分で実現してしまう予言(ネガティブな予測をして行動を制限し、その結果、予測通りに失敗してますますネガティブに陥る 等)
などが挙げられます。

認知行動療法の医療現場での活用には、厚生労働省ホームページの福祉・介護>心の健康のページで紹介されています。
その内の、認知行動療法の項目から閲覧できる「患者さんのための資料[PDF]」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdfは、心因性腰痛ではなくうつ病に対する認知行動療法の内容ですが、バランスの良い考え方を身につけるコラムなど、参考になります。

長期化した原因不明の腰痛に対しては、深刻に考えすぎて引きこもってしまうより、気持ちを切り替えて、体幹トレーニングやヨガワーク、ピラティスなど適度に体を動かすほうが良い場合もあるのです。(病状次第ですので、必ず主治医の意見を聞いてください。)
痛み以外のことにも目を向け、つらいこと、できないことに向かいがちな心を、のびやかで楽しいものへと傾けていきましょう。

まとめ

・ 長引く腰痛は、ストレスによる心因性腰痛の場合も考えられる
・ ストレスが痛みを抑制する脳内物質の分泌を鈍らせ、痛みを増強する
・ ストレスによる心因性腰痛が疑われる場合も、自己判断せず整形外科へ受診
・ 整形を受診しても改善せず長引く場合は、心療内科の意見を聞いたり、精神ストレスを和らげるセルフケアを取り入れて
あなたの意識が変わることで、ストレスの影響は緩和され、心因性腰痛を改善することができます。痛む部分に、そっと手を触れてみてください。
自分の心と体の声に耳を傾け、どうかご自身を大切に想ってください。
皆さんが痛みを軽くして、のびやかな暮らしを楽しんでいただきたい。それが私たちの願いです。
これからも役立つ情報をお伝えしますので、よろしくお願いいたします。

【参考文献】
・ 厚生労働省ホームページ 社会福祉施設における安全衛生対策マニュアル~腰痛対策とKY活動~ 第2章腰痛対策
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d.pdf
・ 厚生労働省ホームページ 福祉・介護 心の健康
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
・ 認知行動療法とは 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター ホームページ 慢性痛に対する認知行動療法
https://www.ncnp.go.jp/cbt/research/archives/9
・ 金景成、井須豊彦(2015) 脊髄外科研究に用いられるスコアリングシステム及びその特徴②腰椎疾患の評価システム 脊髄外科Vol.29 No.1,23-24

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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