「ストレス社会」と呼ばれる現代で、ストレスが引き起こす身体の不調に悩まされている人は少なくありません。一見関係がないように思えますが、ストレスは腰痛も引き起こすのです。今回、ストレスと腰痛の驚きの関係について説明します。

現代人に増え続ける慢性腰痛

慢性腰痛とは、腰の痛みを感じてから3か月以上経過している状態を指します。また、腰の痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返している状態も慢性疼痛と呼ぶことが多いです。慢性腰痛は小学生から高齢者までの幅広い年代で起こり、特に働き盛りの30〜50代で最もその訴えが多くなっています。

現在、日本において腰痛を訴えている方は2,000万人以上にものぼると言われています。慢性腰痛の原因は様々ですが、その中でも約85%が直接的な原因が特定できていません。そのように原因が特定できない腰痛の多くは、生活習慣や無意識にとってしまっている姿勢、そしてストレスなどの心の状態が影響していると言われています。

原因が特定できない腰痛って何?

腰痛を感じると、ひとまず病院にかかる方も多いのではないでしょうか。しかし、病院に行ってレントゲンなどの画像検査を行っても、その原因がはっきりと特定できない場合があります。そのような場合、正しくない姿勢や運動不足といった身体的原因だけでなく、職場や家庭でのストレス・不眠などの心理的原因が腰痛を引き起こしていることもあるのです。

仕事などで日々溜まっていくストレスによってある日突然腰痛になり、次第に慢性腰痛へと移行していく場合もあるため注意が必要です。

ストレスと腰痛の関係

日本整形外科学会と日本腰痛学会が監修する『腰痛診療ガイドライン2019』において、「腰痛の治療成績と遷延化には、心理社会的因子が強く関連する」と指摘されました。つまりこれは、日々ストレスを受けている人やうつなどの精神的な問題を抱えている人ほど、治療を受けても腰痛が治りにくいということを示しています。

腰は身体の中心にあり、「身体のかなめ」と言われる部位です。様々な動作の中心となっている腰は身体の中でも特に負担がかかりやすい部位であると言えるでしょう。そのため、ストレスを受けることで腰がダメージを受けやすいということも納得できますよね。

なぜストレスが腰痛を引き起こす?

では、なぜストレスが腰痛を引き起こしてしまうのでしょうか?一見ストレスと腰痛は直接的な繋がりはないように思えますが、「痛みを感じる脳のメカニズム」が深く関係しています。

そもそも痛みとはどのように伝わるのでしょうか?そのメカニズムを簡単に説明します。例えば腰から脳に痛みが伝わると、脳からドーパミンという神経伝達物質が大量に放出されます。ドーパミンには痛みを抑制する作用があり、それによって私達は普段感じる痛みを軽減させています。これは元々脳に備わっている機能であり、皆が持っているものです。

しかし、ストレスを長時間受けることで脳内物質のバランスが崩れて、ドーパミンの放出が減少してしまいます。ドーパミンの放出が減少することで、今まで耐えることのできていた小さな痛みでも強く感じたり、痛みが長引いてなかなか治らなくなったりするのです。

痛みがストレスになることでさらにドーパミンの放出も減少……といった負の連鎖が起きることも少なくはありません。

心因性腰痛に陥りやすい人の特徴

これまでストレスと腰痛の関係性について説明してきましたが、どのような人が心因性腰痛になりやすいのでしょうか?東京大学医学部附属病院22世紀医療センターの松平浩氏による研究の調査結果によると、過剰な労働時間や職場の人間関係などに悩んでいる方が心因性腰痛を多く引き起こしていることが判明しました。

職業では、事務職や研究者などの専門職が多かったそうです。長時間の同じ姿勢や前かがみの姿勢などが続くと腰への負担が増し、そこにストレスが重なることでより腰痛を感じやすくなります。

ストレスってどんな時に受ける?

現代日本は「ストレス社会」などとも呼ばれていますが、実は自分でも気が付かないうちにストレスを受けていることもあるのです。また、心因的腰痛の原因の多くは、気が付かないうちに受けているストレスであるとも言われています。

分かりやすいストレスとしては「仕事が多すぎることによるストレス」「人間関係によるストレス」「家庭環境によるストレス」などが挙げられ、これらのストレスは比較的自覚しやすいのではないでしょうか?

しかし、厄介なのは日常生活の中で知らず知らずのうちに受けているストレスです。例えば、「タバコの煙や排出ガスなどによる環境的なストレス」「季節の変わり目に受けるストレス」「パソコンやスマートフォンのLEDによるストレス」などが挙げられます。

それ以外にも、過去や未来に対しての不安もストレスに繋がるのです。ストレスは身の回りの様々なところに潜んでいます。最初は小さなストレスでも、放っておくと蓄積し、腰痛を代表とする体の不調に関係してきます。

腰痛の原因がストレスかどうか判断するために

自分では腰痛の原因がストレスによるものかどうかを判断することは少し難しいかもしれません。そのような時に使えるのがBS-POPという評価表で、正式名称を「整形外科患者に対する精神医学的問題評価のための簡易質問表」と言います。

この方法では患者が自身で回答する質問表と、医師が精神的要因から患者を評価する質問表の2種類を使って総合的に評価します。

項目は2種類合わせて15個あり、その中の11個は患者が回答するものとなっています。「いいえ=1点、時々=2点、いつも・ほとんど=3点」で回答していき、当てはまる項目の合計点が15点以上かつ腰痛がある場合は心因性腰痛の可能性が考えられます。

ストレスによる腰痛をなくすためには

ストレスによる腰痛を何年も抱えていると、ちょっとしたことで痛みが強くなるなどの悪循環が起きてしまいます。悪循環をなくすためには、痛みと向き合いながらストレスの解消やウォーキングやストレッチなどの適度な運動を行うことが重要です。

腰痛解消に繋がるストレス解消法は様々ですが、一番良いのは自分に合った解消法を見つけることです。ここでは、心因性の腰痛を少しでも軽減するためのポイントをいくつか紹介します。

ぐっすり眠る

睡眠不足は大きなストレスの原因です。不安などがあり眠りにつきにくいという方もいらっしゃるかもしれませんが、目を瞑って横になっているだけでも身体の疲労感は軽減します。

適度な運動をする

日本整形外科学会の『腰痛診療ガイドライン』によると、慢性腰痛に対して運動療法は有効であるとされています。特に、コアマッスルと呼ばれる深部の筋肉を鍛えることは腰痛改善に効果があると言われています。

痛みのことばかり考えないようにする

痛みのことばかりを考えることは、さらなるストレスに繋がります。身体を動かしたり、他の楽しいことを見つけたり、痛みから意識を反らすことも重要です。

誰かに話を聞いてもらう

ストレスを誰にも打ち明けられず溜め込んでいる方も多いでしょう。もし話を聞いてくれる方が近くにいるのであれば、たまには愚痴を吐いてみるのもストレス解消には有効です。

これらは、いわゆる「当たり前のこと」に思えるかもしれません。しかし、実際に実践できている方は意外と少ないのです。今出来ている方も出来ていない方も、腰痛改善に向けて少しでも意識を変えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回はストレスと腰痛の関係について詳しく説明しましたが、いかがでしたか?自分の腰痛の原因が何なのか不安に思う方もいると思います。もし日頃からストレスを感じている方がいれば、それが腰痛に繋がっているかもしれません。

◆参考資料
東京大学医学部附属病院22世紀医療センター
腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3979726/
◆参考著書
渡邉 和之・矢吹 省司 ,脊椎脊髄ジャーナル 33巻4号,三輪書店,2020年4月25日

著者情報

腰痛メディア編集部

こんにちは。 腰痛で悩む多くの方に役立つ情報を毎日お届け。それぞれが違った痛みの場所・違った痛みの度合い・違った原因をお持ちです。 一人一人が自分の腰の状況(病態)を理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目標です。記事のご意見・ご感想お待ちしております♬

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